表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/23

女の子

 (今回のお話は北沖きたおき 和陽かずひの視点でお送りします)


 ついにこの日が来てしまった。

1(ひと)月に1回のアレが。


 女の子なら誰もが経験しているアレである。


 僕ら性転換症の人たちでも実はアレがある。

中学の時はなんとか誤魔化してきた。

何せ中学の時は普通の男子高校生を演じていたから。

しかし、今は違う。

この学校は共学でありながら男子校舎、女子校舎と別れている。

男子の時は男子校舎、女子の時は女子校舎に行かなければならない。

それに僕が女子の時はもう誤魔化しきれないぐらい胸が大きくなってしまっている。

つまり、男子を演じるのは不可能なのだ。


 そして、あえてアレを「女の子の日」と呼ぶことにしよう。

僕たちはその日は性別が固定されてしまうのだ。

人によっては違うが僕は大体1週間だろうか。

その時は否応なく「女子」に固定される。


 でも僕たちはそれが来る期間が大体分かる。

たとえば基礎体温とかだが毎日計っていれば大体は分かる。

後は周期的なので計算すれば分かる。

そして女の子になると決まった前日には散々、自分が男子であることを確認する。

必ずしも女子に固定される前の日が男子であるとは限らないので念入りに。

そうでもしないと自分のアイデンティティが崩壊してしまうから。


 僕たちのそれは一般の女子とは違う。

僕たちは男子の体と女子の体を共有する。

つまり男子の体の時は女子の体は休眠をするのだ。

恐らくどこか体に負担が来ているのだろう。

だから今まで曖昧にしてきたがつまり生理が非常に重い。


 症状は僕の場合だが頭がガンガン、お腹がギュルギュル、トイレに行けば異常な出血と様々な症状に見舞われる。

周りの女子たちに心配されるほど。

高校に入るまではそれすらも隠していたから少しは気が楽だけど。


 悩んでいてもしょうがない。

学校に行かなければならない。

急いで女子の制服に着替え、僕は女子校舎に向かった。


 教室に入るとクラスメートの星江さんが声を掛けてきた。

「どうしたの?

今日は顔色が悪いけど」

「今日は月に1回のあの日なんだ。

だからあまり話しかけないでね」

僕は頭を抱えながら答えた。


 もちろん、登校する前にちゃんとそれ用の薬を飲んでいる。

だから幾分か気分が楽なのだが。


 僕は生理初日に決まって変な気分になる。

別に変なことでは無い。

昨日散々、自分が男子であることを確認したのだ。

とてもじゃないが僕が女子校舎で女子としてにいるのが場違いなような気がするのだ。


 普段でも僕は心の中は男子だと思っているしその旨をクラスのみんなにもしゃべっている。

しかし、今日に限ってはその感じが非常に強い。

変な意味では無く。


 僕は女の子が好きだが女子校舎にいる時は女子に興奮することは無い。

その事は僕にとっても不思議なのだが本当にそうなのだ。

だから女子校舎でも普通に生活が出来る。

でも女子校舎にいる分、段々男子としてのアイデンティティが失われて行くような感じがする。

それは日が進むにつれ強く感じていく。


 流石に高校に入学して3ヶ月。

女子の制服には普通になれたけど、女子校舎にいる自分はまだ慣れないでいる。


 僕は女子校舎に登校すると決まった儀式がある。

それはクラスの女子に囲まれることだ。

別にいじめでは無い。

クラスの女子曰く僕には女子力が無いのだとか。

(心が男の僕にとっては当たり前なのだが)

それで始まるのが髪の毛のセット。

クラスの女子たちが入れ替わり立ち替わり僕の髪をいじってくる。

そして女子たちは

「いつも思うんだけど素が可愛いのにもったいないよね。

もっと自分が可愛いって自覚しなきゃ」

と説教をされる。

そして僕は面倒いので黙って頷くのみ。

この儀式も3ヶ月続いているのでもう慣れてしまった。


 僕はクラスの女子たち言わせるとかわいい系らしい。

その事についてはよく分からないがクラスで1番背が低いことも要因だろう。

小中学生の時も女子に可愛いって言われていたし。

(その時は男子として生活していましたが)


 そして、僕は女子たちに

「今日1日は女子であることを自覚しなさい」

と説教される。

これも最初はうんざりしていたが今ではすっかり慣れたもので聞き流すようにしている。

そして最後に髪の毛のセットが終わると女子の1人が

「姫、ご支度が終わりました。

今日も可愛く変身できましたよ。

よい女子の旅を」

そう言い終わるとクラスのみんなから拍手が終わる。

毎回、僕が女子の時はこの儀式がある。


 体育の時は地獄だ。

もちろん、僕は見学なのだが最近は僕が着替えの時、教室を出ていくのを許さない。

「姫、どちらにお出かけになるのですか?

女子に慣れるためにもしばしのご辛抱を」

いや、心は男だからと反論しようものなら

「姫は今、カワイイお姫様です。

私たちのカワイイマスコットであり癒やしなのです。

そういった悲しいことは言わないでください。

あなたは他の人たちと違い女子としての経験が圧倒的に足りません。

こういった経験こそが必要なのです」

と説得されます。

でも僕にも奥の手があります。

「今日はあの日だから気分が優れません。

保健室に行きたいのですが」

そう言うと何人かの女子が僕を負ぶって保健室に連れて行ってくれます。

しかし、それは生理の時だけ。

それ以外は逃げる口実としてクラスの人たちは聞いてくれません。


 とにかく1週間。

1週間、女子として我慢しなければなりません。

帰る時には男子だった頃が随分昔のように思えてきました。

とにかく今は早く男子に戻りたい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=804129382&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ