女子
(注意;この話は主人公 鶴井 優歩の視点でお送りします。)
やっと念願の女子校舎に登校できた。
この学校に入学してからはや1週間、ずっと男子校舎ばかりでせいせいしていた。
私という人格も全然出て来れなかったからね。
ここで1つ説明しなければならない。
私は鶴井 優歩のもう1人の人格であることを。
私たち性転換症の中には性別が変わると人格も変わる人たちがいます。
非常に珍しいんだけどね。
いわゆる二重人格という奴です。
多分この学校では私1人ぐらいだと思う。
私の場合、男の子の人格と女の子の人格を持っています。
ただし、普通の二重人格と違うのはお互いを認識していると言うこと。
そして記憶を共有していると言うことです。
私はもう1人の人格を弟と呼んでいます。
弟は私のことを妹と呼んでるみたいだけどどっちが上なのかはあまり気にしていません。
それが私たちの日常なのです。
弟には弟の男子としての人格があります。
私には私の女子としての人格があります。
好きになる対象は共に異性です。
弟は小中学生の頃、少年マンガばかり読み、おもちゃのロボットで遊んでいた。
私は小中学生の頃、少女マンガばかり読み、お人形さんで遊んでいた。
弟は数学が大好きな理系少年、今ではかなりのレベルの専門書を読破しています。
私はどちらかというと文系少女、英語文学を原語で読むのが趣味です。
というように弟と私は趣味趣向が大分違うのです。
しかし、弟の記憶もまた私の記憶の一部です。
弟も同じことが言えますが。
だから弟が男子校舎で過ごした1週間は全部綺麗に覚えています。
あと余談になりますが、受験勉強をしていた時に気づいたのですが私には完全記憶能力があるみたいです。
私は元々勉強が嫌いで教科書も開いたこともなく授業中も寝てばかり入りしていた不真面目な生徒でした。
ところがこの学校に入るため初めて教科書を開きまじめに勉強したのです。
そうしたら自分でもビックリしました。
一度見た教科書の文字、絵柄が一言一句綺麗に記憶されていくのです。
忘れることもなく。
こんなチートな能力、速く自分で発見していればとかなり後悔しました。
そしてそれから勉強が楽しくなったのです。
気がつけば私も弟も高校レベルをかなり超えるレベルまで学力を習得できました。
もちろん、この学校もらくらく入学できました。
まぁ、それまでが大変だったけどね。
なにせ、中学の教科書全部丸暗記でしたから。
なぜか受験に必要な教科まで丸暗記してしまいましたけど。
だから弟の体験したことも全て覚えています。
それに多分、同じ年頃の女子より男子に対する知識はめちゃくちゃあると思います。
絶対このことは友達には言いませんが。
言ったらどうなるかって。
かなりの確率で友達に質問攻めに遭います。
既に中学の時に経験済みです。
もう一つ言っておきますと私たちはおきているおき、1人の人格しか立ち上がりません。
つまり弟が起きている時は私の人格は寝ていることになります。
そして私が起きている時は弟が寝ています。
私は弟の記憶を受け継ぎながら日々生活をしているのです。
そして弟もしかりです。
話を戻します。
やっと私は入学できたのです。
弟はとっくに入学していたのだけど、私は入学できなかった。
私という人格が起きてこなかったからだ。
私たち姉弟はその日の人格は起きてみないと分かりません。
私たち姉弟は性別がその日によって違うからです。
わたしたち姉弟は性別と人格はワンセットなのですから。
何はともあれ今日から女子高生生活の始まりです。
初めての女子高生生活に胸を躍らせ私は教室に入った。
教室に入り、初めて目についたのは私と同じ性転換症の仲間の2人だ。
もちろん彼女たちの性転換後、つまり女子の姿も知っていたのですぐに分かりました。
あらかじめ言っておくと,この2人は私と違って二重人格ではありません。
まぁ、彼女たちも人知れず苦労してるみたいだが、取りあえず私の初登校を非常に喜んでくれた。
そして次に目についたのは幼なじみだ。
その娘は私を見るとすぐ駆けつけて抱きついて喜んでくれた。
私もやっと学生生活が始まると感慨に浸っています。
そして初授業、担任の先生が私のことを一通り説明してくれた。
そして私も男子校舎と女子校舎を行き来する性転換症であることはクラス中の知ることとなった。
二重人格であることも。
ただし、弟と記憶を共有していることは内緒。
いろいろと面倒くさいので。
それは担任の先生も了承済みです。
ちなみに男子校舎の先生方は全員男性の先生、女子校舎の先生は全員女性の先生です。
そして、弟の担任と私の担任は名字は違うが夫婦です。
新婚さんなのでとてもアツアツです。
そして私たち性転換症の生徒たちの良き理解者でもあります。
お互いに性転換症研究の第一人者でもありますしね。
(担任の先生方の話はこの後しますのでお楽しみ下さい。)
何はともあれこれで私の学生生活も始まったのです。
明日のことは分かりませんが、弟と一緒にこの学校の学生生活、男子も女子も楽しんでやろうと思います。