男子
(注意;この話は主人公 鶴井 優歩の視点でお送りします。)
困った!!
この学校に入ってから一週間、僕は男子校舎にいた。
なぜ困っているのかを説明する前にこの学校のこと、そして僕たちのことを説明しなければならない。
まず、僕たちの学校は一応形式上共学ということになっているが男子は男子校舎、女子は女子校舎に通わなければならない。
僕たちの学校は全寮制で生徒は男子寮、女子寮からそれぞれこの学校に通うことになっています。
一部の生徒を除いて男子、女子との異性同士の交流はほぼ禁止されています。
次に僕たちのことを説明しなければなりません。
僕は先天性の性転換症の症状を持っています。
性転換症とは朝起きるまでその日の性別が定まらない症状です。
つまり、その日その日で性別が変わるのです。
性転換症と言っても病気ではありません。
僕たちのいる世界ではマイノリティではありますが一定数います。
僕たちの学校はそういった人たちを受け入れている全国でも珍しい高校です。
僕はその学校の存在を知った時、衝撃を受け絶対に入りたいと思いました。
やはり普段は僕たちに対する差別や偏見があります。
この学校に入ることで差別や偏見を受けずに済むと思ったからです。
幸い、この学校の僕たちに対する態度は最高のモノでした。
そして僕たちに対する偏見や差別をなくすための授業も充実しています。
クラスメートもいいやつばかりで友達も入学してからすぐに出来ました。
早く僕たちに対する差別や偏見がこの世界から無くなることを切に願っています。
この学校に入るまでが大変だった。
この学校の存在を知って僕はいろんなことを調べた。
その結果、偏差値のレベルがめちゃめちゃ高いことに気づいた。
そのときの僕のレベルではとうてい追いつかないほどに。
そこで僕は幼なじみの双子の兄妹に泣きついた。
その兄妹は当時通っていた僕の中学では成績は学年で1位2位とダントツだった。
僕はその兄妹と幼なじみだったことを感謝しつつ必死に勉強した。
そして念願の高校に双子の兄妹と共に入学できたのだ。
(この双子の兄妹のことは後の話で詳しく話します。)
話を戻そう。
この学校には僕を含めて性転換症の生徒が10人いる。
1年生に3人、2年生に4人、3年生に3人だ。
そして僕たちの学校は1学年1クラスの少数精鋭の進学校だ。
当然授業のレベルも高い。
ついていくのに必死だ。(元々学力が高くなかった僕には)
そして、僕たち性転換症の生徒は男子寮、女子寮のどちらにも住んでいない。
考えてみて欲しい。
異性禁制の寮で日によって性別の定まらない僕たちが住めるわけがないのだ。
そこで僕たちは性転換寮と呼ばれる寮に住むことになっている。
学園生活は男子の時は男子校舎、女子の時は女子校舎に通うことになっています。
つまり、言い方はあれだが僕たちは例外的に男女両方の交流が出来るというわけです。
さて、冒頭なぜ困っていたのかというと入学してから1週間僕はずっと男子のままです。
このままでは僕が性転換症じゃないみたいです。
クラスの他の性転換症の人たちはもう既に女子校舎に通っている。
僕だけ通っていないのです。
クラスの人たちも僕が性転換症であることを知っていますが疑い始めています。
本当に僕は性転換症なのに!!
まぁ、幼なじみがフォローしていますが。
それに入学してから1週間、女子校舎のことが全く分からないのです。
仲間からはいつでもウェルカム状態だとは聞いていますが不安でなりません。
そのうえ、僕にとっての性別はまさに朝起きるまでで分からないのです。
早く女子校舎に行って不安を取り除きたい今日この頃です。