白い紙
白い紙に、黒い雫を一滴落とす。
ぽちゃん。
もう戻らない。
白い世界に、ひとつの意味が生まれた。
僕らは、誰かに記憶を伝えるため、記録する。
自然。こころ。すべて。
黄色い紙、赤い紙、色とりどりの紙が輝いていた。
白い艶やかな紙には、金色のカバーがかけられている。
僕には不要なものだった。
あちこちでネオンカラーが主張する。目がチカチカした。
まばゆい光が意味を屈折させる。歪んだ意味が僕らを魅了する。
僕は、きらびやかなネオンが、どうしても好きになれなかった。
色紙はどんどん増殖する。
同じ顔をした紙達が、塊になって、ほかの紙を飲み込んでいく。
大きな塊が、小さな塊を、むしゃむしゃと食べていく。
多くの人は気にも留めない。
僕は、破れた紙片を掃除する。
塊は、大きくなりすぎて、重みに耐え切れずに潰れてしまった。
塊を失った人間達は、新しい塊を求めてさまよい歩く。
もう、ここには、僕のような物好きしかいない。
また、白い紙に、黒い雫を落とす日々がはじまる。