第6話
ーー人と人ならざる者が共存している?しかもオーガもいるって。もしそれが本当なら“ファフニール”を討伐する事は夢でも無い!いや、待て、俺を殺すためじゃ無いならなんで俺を乗せた?
思考回路をフルに使い考える。今までの話からヒントを見つける。
ーー“魔王”は全てを知っている。転生の事、ファフニールの事、多分俺の“神の加護”の事も。
“神の加護’とは、蓮がここに来る前、神が異世界でも死なない様に、とのことで与えられた能力だ。
これは蓮のステータスを全て上げる能力があるが、それとは別に、もう一つ能力があるらしい。しかし蓮はその事を神から聞かされていなかった。
ーーそういえばファフニールって誰が出現させたんだ?やっぱり“魔王”なのか?いやでも、そしたら俺を殺すだろうな。でもそしたら……あああああーもうわけわかんねー。
蓮の頭はパンク寸前だった。
「ファフニールの出現は私がしたのでは無いよ。君は神から均衡が崩れて出現した、と聞いているのだろう?その通りだ。しかし私もなぜ均衡が崩れたのかはわからない。もしかしたら誰かが故意的にしたのかもしれないが、それはわからない。それと、私の事を“魔王”と呼ぶのはやめてくれ。その呼び名はあまり好んでいないんだ。あと、敬語もやめてくれ」
やはり“魔王”クロムの前ではどの様な考えも行動も、全てが見透かされていた。
そしてクロムは“魔王”と呼ばれる事を嫌っているらしい。
やはり、“魔王”という肩書きは人にあまりいい風に聞かれないのかもしれない。
クロムは“魔王”としてでは無く一般人として蓮に接して欲しいのだろう。
「じゃあ、あなたの事なんて呼べば良いんだ?」
「君の好きな様に呼べば良いよ」
そして、蓮は、普通に接するために、一つ名を考えた。
「じゃあ…おっちゃんで」
「お…おっちゃん?」
そう、蓮の脳が考えた呼び名は、(元)“魔王”の脳を停止させるのに充分なものだった。
「まあ、君がそう呼びたいのならそう呼べば良い」
“魔王”もとい、クロム(おっちゃん)は、すこしばかり嬉しそうにそう言った。
「よし、話を戻そうか。私が君を乗せた理由は、君のファフニール討伐を全面的に協力すると話をしたかったのだ」
「ち…ちょっと待ってくれ、俺に協力?おっちゃんが?全面的に?」
クロムは蓮の頭を壊したいのだろうか。そう思うくらい、クロムの発言は予想も出来ない事ばかりだ。