表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

第5話

「な⁉︎……何でその事を知っているんですか」


 蓮は目を大きく見開いた。

 蓮が転生した事は神達だけが知っていることだった。だが、目の前にいる男は神の様な感じもしなく、ただの金持ちとしか思えない。その男が今、蓮や神達だけが知っている事を口にした。


「君の事なら何でも知っているよ。“向こうの世界”で人気者だった事、死んでしまって“こっちの世界”に転生した事、神から能力を底上げされた事、ファフニール討伐の事……。何でも知っているよ、梶沢蓮君」


 男は何でも知っていた。例えそれが神達でしか知り得ない物だとしても。そして神達でさえも知り得ないことでとしても。

 更に男は蓮の身体をじっと見て、

「君の身体はどうやら能力の影響で小さくなってしまったらしい様だ。服は神が用意してくれた様だが、それでは少しばかり見窄(みすぼ)らしいな。次の街で新しい服を用意してあげよう」


 男がそう言ったのに対して蓮の頭の中は整理がつかなくなってしまっていた。


「あなたは一体、何者なんですか。何故、神でも分からない事を知っているんですか」


 その問いが蓮の全ての疑問を代用していた。勿論(たか)蓮は目の前にいる男を高価そうな馬車に乗り、高価そうな服を着た、ただの金持ちの男とは思っていない。

 そして、男が言う答えは次の一言で、蓮を納得させ、又、最大の恐怖(きょうふ)(おちい)らせた。


「私はクロム・リヴァク。この世界、ユースティクスの“魔王”だよ」


 一瞬で蓮は背筋(せすじ)(こお)らされ、次の一瞬で身構えた。


 魔王。


 王道ファンタジーを知っている者なら誰でも知っているだろうその名は、物語において倒すべき、最強(さいきょう)にして最恐(さいきょう)最悪(さいあく)のラスボスだった。


 当然蓮も知っている、だからこそ、そこにいてはいけない名を聞き、背筋を凍らせるには十分だった。


「そう身構えないでくれ。別に君の事を取って食う訳では無いんだ」


「じ、じゃあ、あなたは何故俺の前に現れたのですか。“魔王”ならば、神から“救世主”とも呼ばれている俺は殺すべき相手なのでは無いのでしょうか」


 王道ファンタジーの中では“救世主”が“魔王”を倒し、人々を魔の手から救う、と言うのが一般的だ。だが、目の前にいる“魔王”は邪魔であろう者のために服を買おうとしているでは無いか。


「何か君は勘違(かんちが)いをしている様だ。“向こうの世界”の“魔王”は、倒すべき相手とされているのであろう?しかし私はゴブリンやオーク、ドワーフ、オーガなどの人ならざる者を統治(とうち)しており、人々と共存しているのだよ。君が今から行くドランドでも、人ならざる者が人々と一緒に商売をしたりしているのだ」


 “魔王”クロムが言うには人々と魔物達が仲良く暮らしている、と言う事だ。しかしその事は魔物と人々はいがみ合い、相対して来たとされていた“向こうの世界”の定義(ていぎ)を元として異世界について学んできた蓮の考えを(くつがえ)すものだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ