第4話
そこには広大な草原が広がっている。蓮はそこに立っている大樹に寄り添っていた。
「ここが、異世界」
自分が今居るのが異世界とは、まだ実感していなかった。
……そう、まだ。
草原や大樹なんて自分がいた世界にもあった。だから実感していない。
蓮は今異世界に来たところだ。異世界に来たらする事は元の世界で決まっていた。
街に向かう事だ。
街に行けば宿があり、食事をする事ができ、更にはファフニールに関する情報を得る事ができる(ラノベやゲームの中では、だが)。
しかし、街に行こうにも地図が無ければ道もろくに分からない。
蓮は神がここに来る前(蓮の感覚では十分くらい前)に受け取ったカバンの中をあさった。
中には、カンパンのような食料、着替えであろう服、そして、地図とコンパスがあった。
「食料とか地図とかはいいけど、着替えって。しかもサイズ違うし……ん?」
蓮は違和感を感じた。制服のサイズが合っていないのだ。
確かに蓮の制服は大きくなっていた。しかし、制服が大きくなっているのでは無い、蓮が小さくなっているのだ。
「だからあの時、何か言いかけたんだな」と蓮は思ったが、前の事を恨んでも仕方がない。
取り敢えずカバンの中の服に着替える事にした。
着替えてみると、サイズはピッタリだった。
「服もバッチリだし、街にでも行きますか」
異世界転生して最初の壁を超えた蓮は、カンパン(のようなもの)を食べながら地図とコンパスに従い、街に向かう事にした。
今居るところから近いのがドランド(神の気遣いだろうか、カタカナになっている)という小さな村だ。
少し歩くと一本の道が出てきた。そこには木で出来た看板があり、
『この先、直進』
と書いてある(これも神の気遣いだろうか)。
そして地図とコンパスとチョクチョク出て来る看板に従い、三十分程歩いた時だった。蓮は思った、
「このままずっと歩くんじゃね?」
地図には街や村が書いてあった。蓮はそれが小さく書かれていたため、ドランドは近い、と勘違いしたのだった。
蓮が「ヤバイヤバイぞ」と思っていた時、後ろから馬車が道を通る音がした。
蓮は道の端に寄り、馬車を通そうとしたが目の前で止まった。近くで見ると何だか高価そうな馬車に蓮は内心、緊張をしていた。
すると中からは一人の男が出て来た。
「君はドランドに行きたいのかい?ここからはまだ遠い。私が乗せて行ってあげよう」
男はそう言うと蓮を馬車の中に入れた。
「あ、あの、ありがとうございます。困っていたところを助けて頂いて」
「いや、礼には及ばないよ。それに聞きたい事があってね」
すると、男は神がしたかの様な真剣な表情で蓮に言った。
「君は、転生者、だろう?」