第2話
これは夢か、と思った蓮だったが、次の言葉でその考えは消された。
「お前さんはもう、死んだ」
背後から声がし、振り返るとそこには仙人の様な者が立っていた。
背は低く、いかにも仙人の様なヒゲを生やしていて、仙人の様な服を着ている。見る限り仙人だ。
「じいちゃん、それはどういう事なんだ。とゆうかじいちゃん、あんた何者なんだ」
まだ信じられていないのか、蓮は老人にそう問い掛けた。しかし老人は、「質問が多いのう。あんた、老人はいたわるものじゃよ」、そんな事を言っていた。
「お前さんはもう死んだ。それをなぜわしが知っているか、それはわしが神じゃからよ」
老人、もとい神はそう告げると、ぐゎっはっはっは、と笑った。
「じ、じゃあじいちゃん、俺、天国にでも行くのか?」
なんの前触れもなく死んでしまった事がまだ理解できていないのであろう、蓮は不安そうにしていた。
「まあまあ、話を最後まで聞かんかい。お前さんは死んだ。じゃが、生き返ることができるんじゃよ」
生き返ることができる。蓮は、「神ってすごいな。こんな簡単に生き返ることができる、なんて言うんだからな」なんて思いながら神から出された紅茶を飲んだ。
「じゃがな、生き返ることができるのは別の世界なんじゃ」
「え、別の世界ってことは、異世界ってことか?」
蓮の目はその話を聞いた時、キラキラとしていた。そう、異世界に生まれ変わることができる。それは蓮が今まで積み重ねてきたものが、功を成すときがきたということ。蓮が今まで夢見てきたものがすぐそばまで来ている。
「お前さん、異世界でもいいのか。そうかそうかそういうことか。なら問題ないな」
「ああじいちゃん、問題無いぜ。あ、ちなみにそこって、魔法とかあるんだろ」
蓮がそう質問すると、待っていたかの様に
神は、「あるよ。ちなみに、お前さんの好きな異世界ファンタジーの世界じゃ」
なんて言ったが、なんでその事を知っているか分からなかった。
「なんでその事をって顔をしておるのう。まあ、わし神じゃからな。お前さんが死ぬこともわかっておったわい。なにせ、久しぶりの転生者じゃからな。神の間では有名じゃよ」
そう言うと神はまた、ぐゎっはっはっはと笑った。
――なにが面白いんだよ。
なんて蓮は思っていたが、「神だからいっか」と流すことにした。
「そうだ、じいちゃん、俺って魔法とか使えるのか?」
異世界ファンタジーといえば剣と魔法の世界。自分が魔法を使えなければ意味がない。つまり、俺TUEEEを蓮は望んでいる。
「使える様にしてやるよ。わしがお前さんの事が気に入った。それから、能力を一つ与えよう。仲間を増やして頑張るのじゃよ」
そして神は蓮に魔法と能力を与えた。 これらを手に入れたため、少しの間は困らずに済むだろう(魔法と能力が使えるものであればだが)。
「あのな、その世界の金ってどうなるんだ。貰えないのか?」
そう、異世界転生で一番困るのは金銭問題だ。異世界転生でお約束なのが、主人公が無一文という事だ。金が無けりゃ、メシは食えないし、寝床を確保できないし、せっかくの異世界転生が貧乏生活になってしまう。
「大丈夫じゃ。これを持って行け。これを向こうの銀行へ持っていけば金が引き出せる。ちなみに、言葉はお前さんなら話せるじゃろうよ」
そう言って神は、蓮に通帳(の様なもの)を渡した。向こうの金銭感覚は蓮には分からないが神は「これだけあれば大丈夫じゃ」と言っていたので心配ないのだろう。言葉も、多言語を話せるため大丈夫と思っている。
「そうじゃったそうじゃった、お前さんに行っておく事があったわい」
そう言うと神は、険しい顔をして話し始めた。
「お前さんが今から行く世界、ユースティクスは今荒れておるんじゃよ。その原因は、悪龍、ファフニールの出現じゃ」