現実の夢
「よし、みんな準備はいいか?今から行くのは魔王のところだ」
広い部屋だ。そこには国王の城にありそうな大きなテーブル。そして五人の男女がいる。
その言葉は一人の少年によって近所のコンビニにでも行くような感じで言い放たれた。
澄み通った黒髪に黒い瞳。背は低く、顔も童顔の少年。
いわゆるショタだ。
「まったく、お前は軽いな。行くのは魔王の城だぞ」
と、さきほどのショタと比べて歳上のようで、背も高い青年のような者が言った。
しかし、その者にはさきほどの少年とは決定的な違いがある。それは、角があることだ。
──オーガ。
見た目は人と変わらないが、額に角があることが違いだが、それ以上にオーガは、人の約三倍の力を持っている。故にオーガは戦闘を得意としており、この世界では最強の部類に入るだろう。
「口を慎みなさい、ビャキ。レン様に無礼よ。ねー、レン様」
そう言うとレンの事が好きなのだろう女性、マリア・クロードは、レンの左腕に抱きついた。
魔法使いだろうか、紫色のローブに身を包み、手には杖を持っている。 整った顔立ちに、長い髪。さらには、その大胆なローブの隙間から覗かせる弾力性のありそうな胸。それらを兼ね備えた彼女は、まさに才色兼備と言う言葉が、一番合っているだろう。
「しっかしな、魔王のところに行くったって、どうやって行くんだよ」
「大丈夫だ。準備はしてある。そうだよな、クリナ、クレナ」
「……うん」
「……してある」
ぱっと見、同じ顔がふたつある様に思ってしまう。つまり、双子だ。
レンよりは背が低く、マリアとは対照的だ。だが、二人共、綺麗な顔立ちをしており、将来、綺麗になるのだろうと思われる。
「……レン、もう少しで出発出来るわ」
クリナがそう言った直後、壁に描かれた魔法陣から強烈な光が放たれ、壁に黒い穴の様な物ができた。それはきっと魔王城に繋がっているだろう。
「んじゃま、魔王のとこに、レッツゴー」
そう言うと、レンは穴の中に入って行った。その瞬間、強烈な光と共に消えて行った。レンに続いて次々と、ビャキ達は穴の中に入って行った。
強い光だったため、レンは目がチカチカしている。そのためまだ穴の先を見れてはいなかった。
しかし、オーガだからか、ビャキは見えているのか、「スゲー、コレが魔王の城かー」と呑気な事を言っていた。
だんだん目がなおってきたのだろう、見える様になってきた。そこにあったのは──見慣れた天井だった。
また、同じ夢を見た。いつも通りの夢。もう何十回と見てきた。
昨夜も三時近くまで起きて勉強をしていたからだろうか、まだ眠たい。というか、今はまだ朝の五時だ。
「いやいや、なんも寝れてないじゃんかよ」
夜ふかしをしていた自分を恨みつつ、少年、梶沢蓮は再び眠りについた。