無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第12話 「心からの嫉妬」
人生とは常に辛く・・儚くそして虚しき物だ。
何故人生はそうあってしまうのか?
答えは生きた道が人によって変わるからだ。
もし己が生きるために努力を惜しまなかったものは報われるのか?
もし己が生きていて才能ある人間なら生まれた時から救われるのか?
そんな事ではない。
人生とは運命と等しい。
運命とは定められた道筋、決められた命、逆らえぬルート。
あらゆる法則を持ってしてもそれには逆らえない。
ならどうしたら人生は楽しくて辛くない物になるのか?
私はそれを探し求めて歩いた。
私はただひたすら答えを求め続けた。
答えは出てこない。
何時になっても出てこない、どんなに待っても出てこない。
私は一体あと何日ここにいればいい?
後何回嫉妬すればいい?
後何百回悲しめばいい?
誰か私を楽にしてくれ。
頼むから楽にしてよ。
問いかけに誰も答えてくれない。
この牢獄に私は閉じ込められてから誰も問いかけても答えてはくれない。
奴でさえ私を避けたんだ。
私は全てがどうでもよくなってしまった。
しかし流れ込んでくる見知らぬ記憶が私の妬みと嫉妬を爆発させる。
妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい
私は見知らぬ思い出に「やめろ」と何度も口ずさんだ。
知らない思い出に心はどんどん締め付けられた。
無いはずの心は痛みを味わった。
精神無き私にはとても耐えられない。
耳をふさいでただこの牢獄の中一人悲しみと痛みを味わい私は全てを塞ぎ込む。
私は知りたい あと どれくらい どれくらい 苦しめばいい?
どのくらい どのくらい 泣いていればいい?
この アクム は いつ ま で つづ く?
◆
「さーて・・ここが二つ目か・・今回は早かったな」
あのパフォーマンスバトルから数分後、ようやく二つ目の扉へ到着。
僕とニアはまた一つ上へと上がっていたのだった。
スペードとの闘いの結果は【合格】、無事次の階層への挑戦券を手に入れたのだ。
スペードはどうしたかと言うと「四天王はサブキャラさ!ここで大人しく待ってるよ!」と。
彼女らしい最後の一言を言っていた。
いや、正確には「また会おうぜー!しーゆー!」が最後の一言だったな。
僕もそれに対して「ああ、また会おう!」と元気よくあいさつはしおいた。
かくして第一の層は幕を閉じたのだった。
「と・・ここまで回想・・そしてここからが本編・・果たして何が待ち受けているかな?」
「・・?」
ニアの目がなんだか冷たい。
冷たい視線で僕を見ている気がする。
「ニアちゃん・・心に刺さるからその目は止めて・・」
「・・・ゥ・・ン」
ホッと一息する僕だった。
にしてもしゃべらなかった白のニアがここまでしゃべるなんてすばらしい。
この世界だけとはいえ、きっとここからもっと心を開いてくれると嬉しいな。
「よっし・・もっと心を開いてもらえるように・・僕は次の階層でも頑張りますかな!」
「ガ・・ンバァ・・ルぅ?」
「うん!が・ん・ば・る!こうやって気合を入れるのさ!」
「・・ガァ・・ンバァ・・ルぅ・・ぅぁ・・ぁぁ・・ェェぅ??」
「どうしたの?・・あ・・」
ニアが僕に頑張るという言葉に興味を持って話しかけた。
そこからニアはなにやら何かを言いたそうにしていた。
それに対して僕は気づいてしまった。
そういえばまだこの白ニアには名前を名乗っていなかった。
もう何話も経っているのに一体いつになったらやるんだよと思ったところだ。
ちょうどいいし白ニアに改めて自己紹介だな。
「えっと・・僕はシルバー・ウィルコンティ・・みんなは僕の事を銀と呼ぶ」
「・・ギィ・・ン・・?」
「うん!そうだよ!銀!」
「ぎぃ・・ン!ぎぃん!」
なんだかうれしそうだ。
声から出る明るい声で何度も「銀」と言う。
首を右へ左へとかしげながら嬉しそうに「ぎぃん!「ギィん?」「ギィん!!」と言っている。
「うんうん!よかったよかった・・」
「ぎぃン・・ガァ・・ンバァ・・ル?」
「アハハ・・改めて言われると・・やっぱり恥ずかしいね・・ありがとう!頑張るよ!」
「ガァン・・バァ・・る!ギィん・・・ガぁン・・バァ・・ぅ!」
「うん!頑張る!」
腕をグッとしてガッツポーズを決めてニアに意思を見せる。
するニアも見よう見まねで小さな小さなガッツポーズを決めてくれる。
「ガァ・・ンァ・・ウ!」
「(すごく可愛いです本当にありがとうございます)」
僕はとても心が和んでしまう。
この気持ちを大切にしながらニアと再び手をつないで次の扉へと入る。
ガチャリと言う音から部屋の扉を開けるとそこから見えた物は。
中央にメルヘンチックな大きな大きなルーレット台。
辺り一面まるでおとぎの国、ここは一体何の部屋なんだ・・。
そう思っていたら僕の目の先のルーレット台の上には一人の少女がいた。
その少女は兎の耳が生えた白い小さなシルクハットをかぶった少女。
ブロンドのように美しい後ろ髪を二つ結びにしてじっとりした赤い目。
フリルのある赤いチェック柄のミニスカートにチェック柄のノースリーブ衣装。
表は青く裏は赤いマントを羽織っており、靴下は黒いニーソックスの様な柄のある物を履いて靴ははいいろの様な物を履いていた。
モジモジとしたその少女が静かにこちらに話しかけて来た。
「こ・・こん・・ばん・・わ?」
「お・・おう」
「えっと・・その・・わた・・ぼ、ボクは・・ボクは・・ク・・【クローバー】・・です」
「よろしく・・」
「その・・えと・・・い、いまから・・してくれましぇんか!・・ああ!かんじゃった~!」
何だろうすごいおずおずしているというかたどたどしいと言うか。
見た目がまるでアイドル衣装のわりにすごい性格があってない。
と言うよりギャップと言うやつか?
それに声も小さい・・なんとか聞き取れたが。
あまりにも小さいし・・ここはちょっと近づいてみよう。
「ニア、少し待っててね?」
「ぅ・・ン」
「よし、ありがとう」
僕はニアの頭をそっと撫でてお礼を言う。
ニアの安心を見て、僕はガタガタしているこのルーレット台を軽々飛んで渡る。
あのクローバーと言う少女に近づいて手を差し伸べ声をかける。
「な・・なあ、大丈夫か?」
「大丈夫れす・・ボク・・いつもこうなんです・・・緊張して・・えっと・・あれ?」
「どうした?」
「こ・・声が近い・・様な?」
「そりゃそうさ、今君の近くにいるもん」
「ヘッエッ!?」
両こぶしを口元にとても驚いて声を上げる。
そしてなんともまあワンパターンな声の上げかただ。
「ふぇぇぇ!み、見ないでください!ボク・・じゃない!私・・ええと!顔見られるのすごい嫌なんです!絶対今真っ赤ですもん!見ないでください!見ないでくださいぃぃ!」
「いや、そんなに丸まってたら見えないから・・大丈夫だから落ち着こう?」
「無理ですぅぅ!やっぱり私・・ボク女の子怖いですぅぅ!」
「ヴッ・・ッ?!」
心に刺さる一言だ。
久々にその手のネタを僕は聞いたよ。
女の子・・か・・懐かしい、前まで確かに女面と言われていたな。
今はみんな異性として接していたからすっかり忘れていたよ。
「ああ・・大丈夫・・僕は男さ・・よく女のように美人だと言われるけど」
「ふぇ?じゃ・・・じゃあ・・男の人ですか?・・よ、良かった・・」
「アハハ・・安心してもらえたね」
「はい・・ボク・・その・・【男の子】なんで・・僕もよく女の人と勘違いされるんです」
「あー・・君も男だった・・ハァ?!」
今、なんて言ったコイツ!?
男・・・ッ?!
その見た目で男!?
今コイツ男と言っていたのか確かに?!
いやでもありえないぞ!?
こんなガッチガッチの女性服を着て似合うほっそい体の男の娘おるのか!?
きっと胸がまな板の女の子に違いない!
こんな可愛い子が男なわけないだろ!
「うぉぉぉぉッ!!嘘をつくなぁぁぁぁ!」
「ひぇぇぇぇぇ!ふぁぁぁ!や・・やめてくださいぃぃぃ!!」
「君が泣くまで抱くのを止めないィィィ!!」
「も、もう泣いてます!許してください!許してくださいぃぃ!!」
「・・・ッ」
バシッ!
後ろの後頭部にとても強い衝撃が走る。
思わず「アイテッ!」と言ってしまうほどの叩く強さ・・まさか?
まさかまさかと恐る恐る後ろを振り返るとニアがイライラとしていそうなくらい。
手をプルプルと震わせて僕を睨みつけていた。
「ギィ・・ン!!」
「に、ニアー!ちゃ、ちゃうねん!別にこれには特別な意味はないんです!」
「ぅ・・ぅぅ!!」
必死に笑顔で微笑みごまかすもだんだん泣き顔になり。
ぷくーと顔を膨らませて僕の体に体当たりを仕掛ける。
「グベーッ!」
「ひゃっ!!」
「うぅぅ!!」
ポカポカとグーで僕の体を何度も何度も叩く。
涙を少しづつこぼしながら何か起こりつつも。
どこか悔しげな表情だった。
こんなにハッキリ感情をあらわにしたのは初めてかもしれない。
ムスッとしてまるで嫉妬している様だった。
「・・ニア、ごめ・・ごめんね?」
「ぅぅ・・ぅぅ・・」
そっと抱きしめてまた頭を優しく撫でてご機嫌をうかがう。
何度も撫でるうちに服にしがみついていく。
力はどんどん強くなったが最終的には落ち着いてくれた。
「よーしよし・・ニアはいい子ー・・ニアはいい子ー・・」
「イィ・・子・・イィ・・子」
「うん・・僕の変態的気持ち悪すぎた行動は謝るからとにかく落ち着いてー・・」
「・・・ゥ・・ン」
「ありがとう・・よし、じゃあ・・戻れる?」
「ゥ・・ン・・」
僕はニアのご機嫌が良くなった事を確認してすぐさまニアをそっと立ち上がらせて。
元の場所へと戻っていくニアを見守る。
ピョンとピョンと軽々ニアもこのルーレット台を飛び跳ねてゆく。
怒っていた時はもっと早かったんだろうな・・。
「と、そういえばクローバー・・大丈夫?」
「えっと・・は、はい!大丈夫・・です!」
「良かった・・さっきは悪い・・信じられない事実にどう反応すればいいのか壊れた」
「大丈夫ですか?!」
「心配するな・・もう平気さ・・」
「よ、良かったです・・・」
おどおどしていたクローバーだったがどうやらほっと一息着く。
一時はどうなるかと思ったけどこれで安心できそうだ。
僕は手をそっと差し伸べて微笑み握手を求めた。
「まあ・・とりあえず改めて・・僕はシルバー・・シルバー・ウィルコンティ・・よろしく!」
「はい!ボクは・・クローバーです!君でも・・ちゃんでも構いません・・呼び捨てでも!」
「おーけー!とりあえず挨拶はできたと・・」
「えへへ・・なんだか安心すると・・心地よいです!」
「全くだな・・さっきまで慌てていたのが嘘の様だよ」
「本当ですよね~・・フフ!」
楽し気に会話が続けられるほど仲良くなれたかも。
これで心置きなく喋れる。
一時はどうなる事かと思ったがこれで一安心だ。
クローバーが不安がる表情や素振りも特にない。
段々ハキハキとしっかり喋っている。
「と・・ここまでハプニング続きで僕は君の部屋で何をすればいいのかまだ分からんのだけど?」
「あ・・そういえば話していませんでした・・えっと・・ここの層ではボクとルーレットバトルをしてもらいます!」
「ルーレットバトル?」
「はい!このバトルをする舞台の周りの台が回転しますと・・玉の止まった絵に合わせてハプニングが起きます!何が起こるかはルーレット次第です!」
「へえーちなみに勝敗はなんだい?」
「そうですね・・ルーレットが15回、回るので・・回りきってあの子にどちらのパフォーマンスが良かったか聞いてみましょう!もちろん危険な戦いは無しでおねがいします!」
さっきの戦いに加えて今度はルーレットか。
これまた特殊な戦いになりそうだ。
パフォーマンスをしつつクローバーと対等に戦うというのは難しいと思うが。
まあ、やるだけやるとしよう。
「よし・・やろうか!クローバー!」
「は・・はい!よろしくお願いします!」
おしとやかにお辞儀をするクローバーと意を決する僕。
果たしてニアの心はどちらに動くだろうか。
勝敗の行方は運命の神のみぞ知る。
今、ルーレットの戦いが幕を開けるのだった。
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