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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第五章 悪夢編
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無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第11話  「パフォーマンスバトル」

静かに隙間風が耳からヒュルリヒュラと聞こえる階段。

ここはサーカス・タワー・・と言っている。

僕が勝手につけただけで正式名所は分かっていない。

さっき聞いておけばよかったと後悔している。

先ほどからグルリグルリと螺旋階段を上っていく僕と白ニアだが。

一向に部屋が見えないどころか扉すら来ない。

かれこれ10分はもう歩いているはずなんだけど。

これ本当に部屋用意されているのかと疑いたくなる。


「・・まだかなー」


白ニアの手をしっかり握りながら一緒に歩いては少し愚痴をこぼす。

情けない話わりと疲れた。

と言うより同じ場所を上り上り行くのが飽きたと言ったところか。

白ニアは無表情だからわからないけどきっと疲れているだろう。


「ニア・・疲れない?」


「・・・(首をふるふると横に振る)」


「そっかー・・ニアは我慢強い子だねー・・僕も見習わなきゃな・・」


「・・・ッ」


「ん?ニア?」


ニアがまた力強く手を握り左手で前を指さす。

その方角にあったのは扉だ。

ごく普通のどこにでもある四角い扉だ。

ようやく一部屋目と言う事か。


「やっと着いた・・ここまで長すぎだよ・・」


「・・・」


心なしかニアからも力強く持っていた我慢していた心が解放したような感じがした。

ニアにはちょっと苦労させてしまったなと反省。

ともあれこれでようやく一人目とご対面だ。

念のためニアに確認を取っておこう。


「ニア、ここの部屋に入っても大丈夫?」


「・・ッ」


顔を静かにうなずかせる。

こちらを見て少しだけ安心をもたらせる安らかな表情だ。

これなら大丈夫だろう。


「よし・・行こうか・・」


僕はニアの気持ちを確認するとそのまま意を決して扉を開ける。

ガチャリとドアノブを押してギィと開く扉。

そして中へ入るとそこはまるでカジノの様な部屋。

周りにはとにかくいくつもいくつもダーツの的が飾られている。

広い部屋なのになんだかやることはすごい限られている。


「・・こりゃあ・・ある意味スゲェな」


「待ったわよ!チャレンジャー!」


「チャレンジャー?」


突然辺りを見渡していた僕に声をかける謎の少女の声。

その声は前から聞こえて来た。

広い部屋の中央、扉との距離はあるはずなのに響き渡る元気のいい声。

目の前を見るとそこに立っていたのは赤いルビーの様な輝きを放つ目の女性

黒髪はセミロングのように長く前髪を分けて全体的にギザギザとなっている。

小さなシルクハットの様な赤い帽子を付けた黒髪の狼耳の少女明るいチェックの様な衣装を着てフリルのある袖の服。

スカートはパニエのように何枚も重なっているようなミニスカート。

縦線の入ったタイツに右足の靴が短く左足の靴が長いブーツの様な靴。

モフモフとした黒い狼の尻尾をふりふりとして腕を組みながら静かにこちらにポーズを見せつけ来た少女がいた。


「私はトランプガールズの【スペード】!団委員の中でも優れた目を持つと言われてナイフーショーなら負けなしのスーパーアクロバティックちゃんよ!」


「なんだスーパーアクロバティックちゃんって!?」


「説明してあげましょうか?そう・・アレは数年前の冬の日・・私は・・」


「あ、じゃあいいです」


「えー・・ノリ悪い~!」


「むしろあなたのノリが高すぎるんですよ」


「そう?みんなこんな感じだけどね~」


「ホネッルス並みに自由と元気の塊だな・・」


なんとも喜怒哀楽がはっきりした人だ。

ここまで正確に楽しそうにはきはきとした人は他にいないだろう。

いや、探せばいるだろうけど。


「それよりもだ・・ここでなにをどうすればいいのかそろそろ本題に入ってほしいんですけど?」


「おっとー・・私とした事が忘れていたよー・・うっかりうっかり・・ここでは私とイッツパフォーマンスバトルだよ!」


「ぱ・・パフォーマンスバトル?」


「そう!文字通り・・殺し合い無しの健全バトルだよ!どちらが先にあの白ニアちゃんの表情を開花できるかの大勝負・・制限時間は30分・・それまでに決着がつかなかったら君の強制敗退ね」


「勝負が健全なのに敗北条件がずいぶん厳しいな」


「ゲームってそんなもんだよー、主人公は常に不利な状況でも戦うのです!」


大丈夫かこの戦いは・・下手に負けてられないし勝負内容もただの戦いじゃない。

でもここで引き下がるわけにもいかないし。

やってやろう、ここは久々に真面目にやるとしますか。

ともあれバトルにニアは参加できないし、一度ここで待っててもらおう。


「ニア、僕は今から彼女と戦ってくる・・ただの戦いじゃなくてパフォーマンスバトルだけど・・ここで待っててくれる?」


「・・?」


「ニア・・?」


ニアの表情は無表情だったが、袖をギュっと握りしめてとても何かを訴えていた。

心の底では実はちょっと不安なんじゃないかと思った僕だが。

ここは微笑んでニアの不安を和らげた。


「大丈夫ニア・・僕は別に危険な目にあいに行くわけじゃない・・だから安心して

・・もしこれが分かってくれたなら【うん】とうなずいてくれるかな?それとも横に首をふって【ヤダ】でも構わない」


「ぅ・・ぅぁン」


彼女は本来心だけの存在、しゃべることなんてとてもとても難しいはずだ。

それをこんな体の底から頑張って出してくれた返事は。

僕の心にとても温かく響いた。

ニアにはとても救われる気持ちになった。


「・・ニア・・ありがとう!」


「・・・!」


ニアの表情が変わらないがきっとニアも喜んでいる。

良かった、これで安心してバトルに集中できる。

僕はニアと離れて中央の舞台へと上がるのだった。


「いい面構えじゃない~・・ちょっとは期待できそうね」


「当然!不安要素は消し飛んだからね」


「ふふ・・でもうちょっとね~・・別にこれから苦しむわけじゃないんだし・・楽しむ事はもうちょっと楽しみの顔になりなさいな」


「はは・・そうだね!・・なんなら勢いでもっと盛り上げてやるさ!」


体をかがまさせて戦闘の体制になる。

両手をついもの武器が出現して受け取れるように開かせ。

相手のあの真剣な表情を見る。


「ムフフ~!いい調子じゃない・・それでいいのよそれで・・んじゃあこっちも・・それにこたえるようにね!」


大きく回転して指のすべての間にダーツを挟み両腕をクロスさせ構える。

笑顔でこれから盛り上げてやると言う表情だ。

黒髪をなびかせてプロの風格をあらわにする。


「流石本職・・面構えが違うね・・なら・・僕も能力(アビリティ)を使うよ!」


シュパァァァンッ!


体全体が光の風に覆い隠されて一瞬でその場を去る。

僕の手にはあの二丁剣銃を持って少し光のオーラをまとい僕は覚悟を決する。


「わーお!君の能力は実に頼もしいね~!」


「当然・・最近僕の知ってる能力って感じではなくなってきたけど・・まあいつも通り戦えば問題はないね!」


「アハハ!いいねいいね!その覚悟の決め方は実に最高!人生はギャンブルでありゲームさ、その調子で重く考えず・・ノーリセットでよろしく!」


無茶ぶりなお願いもされるが本調子は崩れない。

言葉の一つ一つの意味を正確にとらえればこんなもの楽勝さ。


「んじゃあこの調子でまず僕が先攻させてもらう!行くよッ!」


「カモン~!お手並み拝見ね~!」


手をクイックイッとあおるように挑発の構え。

それ応えるようにまっすぐ走り飛び上がる。

この飛び上がりはただの飛び上がりじゃない。

後ろにバックするようにアクロバティックに決める。

そしてそのアクロバティック中に彼女が視覚に入った時。

僕は二丁の拳銃から弾丸を放つッ!


「【演出(フェイク)射出ショット】ッ!」


バン!バン!バン!バン!


勢いよく発射された弾が四発。

そのまままるでスローモーションににでもなったかのようにグルリグルリと。

彼女めがけて発射される。


「悪くはないね~・・けどイマイチッ!【完全(パーフェクト)博打(ゲーム)】!」


シュシュシュシュッ!


ぐるりぐるりとスペードも負けじと腕を瞬間的にしならせダーツを放つ。

そのダーツは弾丸よりも早く早く目にもとまることすら無く進み。

気づいた時には四つの弾丸にピタリと全てが同じ位置になっていた。


「はーいッ!まずはスペードちゃん第一幕!【水芸(ウォーターショー)】ッ!」


パァァァァァァンッ!


弾丸が全てはじけてそこから噴水のようにきれいに飛び散る水。

虹を描いて美しい芸当を見せつけたスペードだ。

僕は着陸するまでにそれを見て。

着陸後にはにやりと笑う表情で負けん気を見せ言う。


「やるじゃん・・・スぺ子!」


「す、スぺ子って言うな!・・ふふーん!私はこう見えて手品大得意だからね・・とはいっても今のは能力・・【(スーパー)変化チェンジ】よ・・元の質とは完全に異なる物質に変えちゃうの・・しかも私が触れたこのダーツにどういう風に変えちゃうか念じれるから・・ダーツが触れた物も変わっちゃうのよ・・今のは【水風船】に変えてあげちゃった!」


「なーるほど・・ご丁寧にありがとう」


これは厄介だ。

ダーツで触れた物が全て変わると来れば僕の攻撃が通るか怪しい。

弾丸での攻撃が不可能かもしれない。

けどそこで諦めるわけにもいかない。


「ここは・・一か八かだ」


「おやおや~?チャレンジャー君何か秘策かな?」


「ああ!とっておきの秘策中の秘策・・」


僕自身これが成功するか分かってない。

けれども今はただ前に走って行く。


「行くぜ・・ここからは・・第二幕!」


「おっ?第二幕とは良いね・・その展開の速さ・・嫌いじゃない!」


僕は彼女の周りを目ではとらえきれない速度で回りを周り始める。

そのまま途中でアクロバティックに彼女の上をジャンプする。

早すぎて僕の残像で隠されるスペードだった。


「お・・おお!」


「どうだ!これぞ僕の今考えた技・・えーと・・【クロスドーム】ッ!」


「まんまだけどいいね~!逃げ場なくてちょっと興奮する」


「なんならもっと追い詰められて見るか!くらえッ!【乱れ(サウザンド)撃ち(ショット)】」


ババババババババババババッッッバァァンッ!


スペードの周囲からありとあらゆる場所かせ放たれた銃弾。

隙間なく発射されてもう逃げ場ない。

もはや避ける事は不可能だった。

だが僕の考えは予想の斜め上を超える!


「最ッ高!・・アンタ超好みだよ!私をここまで追い詰めてくれる人・・ッ!」


「な・・なんだッ?!」


突然両足を広げて何かを構えるようにポーズを取るスペード。

そして次の瞬間僕は驚愕の防御方法を目にした!

本来なら逃げ場はなく誰もが諦める光景に対して彼女はなんとブレイクダンスを始める。

そしてそのブレイクダンスをしながらダーツを正確に飛ばしながら。

なんと足の勢いある蹴りを使ってすべての弾丸を相殺する!

あろうことか弾丸同士をぶつける事をもしてくるッ!

そしてそれらは全て天を飛び散り花びらとなって咲きほこる。

ひらりひらりと一枚一枚がはかない花の様だ。


「・・ふぅ・・第二幕・・【花芸(フラワーショー)】」


「流石だね・・でも三幕はやらせないよ・・すでに最終幕まで入ったからね!」


「な・・はったりだね!今までの行動からして何も用意できてるわけが・・」


「驚きが隠せてないなー・・ご覧!夜空をッ!」


「・・・ッ?!」


僕が天に銃口を突き刺すその先にあった物はなんと輝く夜空。

少しの幻影範囲だが映し出される偽装の空だ。

そう、あの銃弾が相殺で天へ飛び散る事も想定内だった。

だからそれを狙って銃弾にはいくつか空へ行っても目立つ。

演出(フェイク)射出ショット】に変えておいたのさ。


「そして・・こっからが大玉!」


「な・・なんだって!?」


僕は勢いよくアクロバティックにジャンプする。

そのまま二丁の剣銃をクロスさせ銃弾を発射させるッ!


バンバンバンバンバンバンッ!


何発もあの架空の夜空へと放たれた。

静かに地面へと着陸するがその時横を振り向くとスペードがいない。

まさかと思い天を再び見上げるとそこにスペードがいた!


「悪いけどその銃弾の位置からして答えは星座だろう・・だけどさせないよ!このまま花火らなってもらって私の芸の1つになってもらうよ!」


「ま・・マズいッ!」


シュパッッ!


気づいた時には遅かった。

銃弾が夜空へと着弾しと共にダーツも銃弾に接触。


バーンッ!バババーンッ!!


綺麗に輝かしい花火へと変化してしまった。

音もまるで祭りを思わせる轟音だ。


「フッ・・勝負あったかな・・」


「ああ・・スぺ子の敗北がねッ!」


「えっ!?」


そう、これは全て計算通り。

花火なる事を見透かしてあえて銃弾を飛ばした。

そしてさっきの花びらになった銃さえも予定どおりだった。

ここまで事がうまく運ぶとはおもわなかったけど。

僕は今とてもうれしいッ!

片手をあげてパチンッと指を鳴らしついにフィナーレの瞬間だッ!


シュバァァァァンッ!


辺りが一目の白い白い花畑へと変わる。

そう、これは今の今まで僕の銃弾だった物が全て白い花へと変わったのだ。

それは変化されて物も変化したものも含めて全てが花へと移り変わる。

そして輝く夜空のステージの白い花はよく輝いていた。

まさにフィナーレにふさわしい舞台だ。


「ハァ・・アハハ・・こりゃあ参ったよ・・」


「そりゃあどうも!」


ドッと疲れたように舞台に座り込むスペード。

これだけ頑張ったのにまさか最後最後で逆転されるとは思うまい。


「にしても・・よく考えたね」


「考えてはないよ・・ただ信じていただけさ・・自分の勝利への道筋を」


「ハハ・・いい言葉・・素敵だね」


「あたりまえさ、僕が言った言葉だからね」


今まで暗く考えていた事が嘘のように明るく心も開かせる。

まるでたまっていた物が晴れるように放たれる。

僕は今なんだかすっきりした。


「・・と、そうだ・・ニアは・・」


ふと思って一度ステージを降りてニアの下へと駆け寄る。

降りてすぐそこの元々の位置にニアはいた。

ずっと約束を守ってこの場所にいてくれたんだ。


「ニア!どうだった?僕の戦い・・なんというか・・綺麗だった?」


「・・キィ・・レェ ィ?」


今この光景に驚いているのか。

声が輝かしいくらいに響く美しい美声。

ゆっくりと聞こえるこの声は耳にとても心地よかった。


「うん!綺麗って・・なんというか・・ほら・・キラキラしてるとか・・その・・素敵とか!」


語源力なしか僕よ。

でもニアは僕の必死の表現に答えるように優しくこういってくれた。


「キィ・・レィ・・!ス・・ティ・・キ!・・ダタ!」


「ニア・・ああもう可愛いな!畜生!・・本当にありがとう!」


「・・・?」


必死に必死に心から嬉しそうに声を出した白ニア。

たとえ笑顔じゃなくてもその声はとても喜んでいたように聞こえた。

まるでどんどん成長していくようにとても喜ばしい事だった。

僕は微笑んで笑顔で彼女の頭を撫でた。

ニアはそれでも無表情だったけど、きっと喜んでいた事だろう。

僕は幸せな心でとても安心してしまったのだった。


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