無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第10話 「能力への可能性」
「・・ここに戻って来て初めて気づいた」
部屋におかしい数値の発見履歴が確認されていた。
なんの発見かと言うと、私が今大画面の電子モニターで見ているのは。
【プログラム:アビリティレコード】だ。
範囲内の者のアビリティを使った数値や記録そして能力を捉える。
そこらなんの能力か見定めるのも私の仕事だ。
本来は部外者の乱入も構えててこれでハッキリさせるつもりだったのだが。
「・・希望星のはやっぱりあんま残ってないわね・・」
希望星の能力はイフニアでは最強をうたわれた力だ。
私でさえいまだに彼女の能力が分からない。
今度こそこれでハッキリさせてやると望んだが、あえなく撃沈。
おそらく洗脳された時にプログラムを切断されたのだろう。
もしくは彼女の力でねじ伏せたか。
「いや・・それはあまり考えたくないわね・・そんな事が可能ならまるで【理想や願い】を叶えている・・」
しかし状況が把握できなくなるほどの野蛮な脳力だ。
ニアとの交戦が奇跡的に記録されている数値を見てもおかしいほど。
ニアの数値が97000の数値をたたき出した事に対して彼女は12000程度。
そこからなぜかコンマ何秒かにわたってグイッと195000になった。
この時能力を使ったのだろう。
「でも彼女の能力に動きは無かった・・それどころか予備動作なし・・」
ここから考えられるとしたらおそらく【理想が現実になる】能力、【願いを叶える】能力、【他人の夢を具現化させる】能力・・その程度ぐらいだ。
だがそうなると彼女なら一瞬で私達を全滅にできたはず。
理想が現実になるのならばそれこそ己の力を使ってだ。
「遊んでいる様にも見えない・・何かあるのか・・」
いずれにせよ不明な事だらけだ。
今はこのことに関しては触れないでおこう。
そして問題は希望星よりもこっちだ。
「数値が桁違い・・何この234050は・・能力解放した赤の巫女か魔王並にあるじゃない・・」
過去に戦争に出ればおそらく大活躍したであろう数値だ。
こんな夢の中ではもったいないぐらいに強い。
しかも発動先が【シルバー・ウィルコンティ】である。
「血の決闘の時はまだ400だったのに・・どうして・・あの子に何があったというの」
私は素早くキーボードを動かしてモニターの画面に次々と探し廻る。
映像だ、悪夢の世界で今何が起きているかを探るんだ。
数秒もかからず彼の戦闘現場の映像が見つかった。
「・・これね・・発言から察するに・・覚醒したのかしら?」
光を放つように武器も力さえも変わった様子が映っている。
彼の今までの能力より光のオーラが増している。
血の決闘の時は赤き怒りのオーラがあったが、こちらはどちらかと言うと笑顔だ。
なんというべきか・・全てが変わった気がしたんだ。
「・・そうか・・怒りから笑顔・・血から記憶・・」
明確にできた分からないがおそらく【能力の覚醒】だ。
簡単に説明すると一緒に戦ってきたパートナーがいるとしよう。
パートナーのレベルが一定に達すると進化する。
そういう感じだ、いうなれば彼は経験値を積み上げた銀だ。
そしてその状態の能力の事を私は【能力Lv覚】と呼ぶことにした。
その名の通りだが覚醒だからその頭文字を取っただけだ。
条件や詳しい内容は分からないがとにかく彼は今そのLv覚に達した。
今後もしかしたらほかの者達も覚醒するかもしれない。
「それはともかくこの能力一体何が秘めているのかしら・・記憶英雄と言うけど・・」
名前通りならおそらく記憶を使って戦う。
いやしかしそれだと私と似ている・・もしくは血を消費させるみたいに。
記憶を消費させる?
ありえないな・・だとすると【記憶】に関する力で他には・・。
「・・思い出・・彼ならもしかしたら思い出を紡いだ数だけ力が上がる能力があるかもしれない」
そうだ紡いだ思い出の数だけ飛躍する能力はありえる。
彼のこの笑顔、そしてこの光り輝く楔はよく見ればフィルムの様。
まさに記憶を描いた進化と言うべきだろう。
「ふふ・・私にしてはかなり真理をついているわ・・」
だとすると彼にこの事を報告せねばなるまい。
だがどう報告するべきか、能力が覚醒したと言っても具体的には分からない。
しかし彼が戦闘中発していた言葉を覚えているのなら可能性はある。
しかし都合よく覚えているだろうか、信じるしかないか。
「あとは・・この覚醒したことについてまとめるだけね・・」
今後彼がサンプルデータになる。
またしても彼を監視する日々が起こりそうだがこれも日々のデータを集めるためだ。
人を監視することに最近抵抗が無くなってきたが。
これでも一様最低限のマナーは守っている。
彼の日常から戦闘まで数多くのデータを取ってきたが。
まさかこれらが覚醒能力へのための分析に使われる日が来ようとは思わなかった。
日々努力することも無駄ではないのだなと自分で褒めてしまう。
「・・にしても妙ね・・このタイミングで彼の能力が変化するなんて・・何かあったのかしら?・・単純に経験が生かされているだけかもしれないけど」
よもや能力に可能性を感じてしまう日が来てしまった。
彼のおかげでこれからのイフニアも監視せねばならない。
彼がいる限り退屈しなくてすみそうだ。
天才であり神であった私をもっと楽しませてくれるとありがたい。
「フフ・・でも私って馬鹿よね・・こんな事に夢中になってやっちゃうんだもん・・・惚れすぎじゃないかしら?」
少し顔をニヤニヤとしながらキーボードをカタカタと動かす。
かくしてこれから長時間にわたりまたモニターとにらめっこだ。
今日も今日とて私の睡眠はまたとれなさそうだ。
この面白いデータ調査のおかげでな。
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