無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第8話 「ラストエンペラー」
「グッ・・やりますねぇ・・」
「アハハッ!その程度!?その程度でお兄ちゃんを殺そうとしたの?馬鹿だよね!」
シャンッ!キィンッ!ズドォンッ!
時は悪夢の中僕は一体どうしたらいいのかわからない状況です。
今現在・・僕は仮の妹に守られながらこの戦場的状況にいるわけだが。
あの希望星とか言うやつがニアと攻防戦になりながら戦っている。
と言う事だ・・何が起こって何が言いたいかと言うと。
希望星はかなりの実力者・・ニアでは心もとないと思っていた時分だが。
戦況は思わぬ方向へと変わる。
まず最初にニアは自らの能力で【四人の自分】を生み出した。
その自分たちはそれぞれ違う武器を持っている。
一人は両袖から謎の鎌を、もう一人は両袖からバルカン、もう一人は両袖からチェーンソー、そして最後の一人は・・鞭だ・・とげの茨の鞭を両袖から巧みに使っている。
これら四つの攻撃に翻弄されてなすすべて無し・・。
それだけならまだいいが・・何故だ・・不安が止まらないこの気持ちは?
「アハハッ!弱い!弱すぎるよ!これじゃあ・・相手にも・・アレ・・?」
「・・相手にも・・なんです?」
「おかしいな・・少し・・めまいが・・」
「ニアッ!!」
突如パタリと地面に倒れこんで4人も消える。
一体何が起きているんだ。
僕は思わず飛び出してニアの下へと駆け寄る。
「ニアッ!しっかりしろニア!」
「はぁ・・はぁ・・お兄ちゃん・・」
「ふふ・・どうやら少し手間はかかりましたがようやく効果が出ましたね」
「何をした白夜ッ!」
「ああ・・そういえば貴方達は知りませんか・・私の能力」
「能力ッ!?もしかして・・お前の能力は【人に害を与える系統】なのか!?」
「惜しいけど・・惜しくもない・・正確にはその全てです・・私の能力は貴方達の様な生半可な能力ではありません・・しいて言うならその全て・・私の能力はこの世の者と対等に渡り合えるでしょう・・」
誰とでも渡り合える!?
そんなチート級能力があるっていうのかよッ!?
「それが何とまでは言いません・・言ってしまうと今後の楽しみが減りますからね・・」
「ふざけやがって・・」
「ウフフ・・良いですね・・その顔・・貴方の憎悪に捕らわれる顔とても好きです」
「クッ・・お前ら・・・人の憎悪を遊び道具として見れないのか!」
「やめて・・・お兄ちゃんッ!!」
「‥ッ?!ニア?」
僕が怒りに身を任せて物事を語っている時だ。
その時、僕が抱きかかえていたニアが苦しそうにしながらも。
僕の手をギュっと握り声をはり詰めて言う。
「あんなの・・聞かなくていい・・お兄ちゃんがそんな顔・・しないで・・お兄ちゃんだけは・・優しい・・人でいて・・お兄ちゃんの怖い顔・・もう・・見たくない・・」
「ニア・・」
「ハァ・・偽の兄妹愛もいい加減にしてください・・その人は貴方の兄ではありません・・いい加減貴方も言ってあげたらどうです?」
「断る・・僕はニアの兄であり・・」
「ならば・・2度とその戯言言えない様にしてあげます・・【脳直ヘノ記憶】ッ!」
ビィリィィィッ!!
その時強い電流が僕の脳内を襲った。
強い強い・・力強い電流が僕を襲った。
「ヴガァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛ッ゛!!」
「お兄ちゃん!!」
「ざまあ・・ないですね・・」
あまりにも強い力で体がパタリと倒れこんだ。
何も考えられず、何も聞こえない暗闇の中へと入りこんだ。
◆
「ここは・・どこだ?」
どこかの家・・いやこの場所は・・最初の?
「お姉ちゃん・・大丈夫?」
「うん・・心配ないよ・・もう・・大丈夫だから・・」
「そっか・・ごめんね・・ニアが・・ニアがお金沢山あったら・・その目も・・」
ふと気づいて声がする。
ニアと・・ルカ?
いや、違う・・ルカにしては身長が高い。
白衣も衣装も同じだけど・・それに目に包帯・・。
・・アレは誰だ?
「これはニアの記憶です・・」
「ッ?!白夜ッ!」
「無駄ですよ・・ここでは私の作った理想空間であり記憶の世界・・何しようが勝手ですが何も変わりませんし・・何も触れる事はできません・・」
記憶の世界・・そうか・・
じゃあ・・ここは・・過去のあの家なのか・・。
「ふふ・・理解しましたね?では次・・これはさらにその先の事」
時が進むようなチクタクと時計の針の音を鳴らして場所が変わる。
今度はどこかの研究施設・・。
『ダメ・・これは・・渡せない・・』
『ふさげるな・・ルカ・・盲目の天才と言われたお前なら・・また研究成果の1つや2つできんだろ・・ここは兄に・・俺様にそれをよこせぇッ!』
『キャァァッ!』
『ヒャハハハ!取ったぜ・・【エンゼルG】さえアレば・・俺はもう遊んで暮らせるぜぇぇ!』
『お願い・・それだけは・・それだけは・・』
『うるせぇな・・ちょっと黙ってろよ』
『えっ・・?』
一人の男とルカと言われたルカの様な人の争い。
一体何なんだこれは・・。
「悲しいてでしょう?これはルカ博士が盲目になりながらも頑張って作った【エンゼルG】の話・・かつて世界にはあの【灯先生】はいなかった・・世の中には絶望の難病で多くの人類・・まあ主にこのスマイルタウンだけが苦しんだ難病がありました・・そこに血を吐く思いで完成させた強力な完治の薬こそエンゼルG・・これを量産させればルカ博士はきっとこの国は救われる・・そう信じていたのに・・兄のデトさんに研究成果を取れられてしまった・・博士はその後弱った体の中ついに瀕死になります」
『ああ・・私・・死んじゃうのかな・・まだ・・家には・・ニアが・・』
『そこの人間』
『えっ?』
『お前だ・・お前に話しかけている・・』
『貴方は・・誰?どこにいるの?』
『私に姿は存在しない・・私は誰と言われて名乗れる名前は持ってない』
『じゃあ・・一体・・』
『貴様は私達創成の目から見てもとても素晴らしい存在だ・・どうだ?その記憶と存在・・預けてみる気はあるか?』
『それって・・私が・・貴方になるの?』
『そうだ・・残念だがこれから散る命を救う事はできない・・どのみちこの世界はもうじき滅ぶ・・その前にお前の存在と記憶だけでも・・な』
『なら・・一つだけ・・一つだけでいいの・・お願いは叶えてくれる?』
『良いだろう・・なんだ』
『私になる代わりに・・ニアを・・ニアを助けて・・この世界が無くなって・・私はいなくなるけど・・今度からは・・貴方がルカになって・・あなたなりのルカでいい・・貴方にルカをあげるから・・代わりにニアを救って・・』
『・・分かった・・お前の願いは聞き受けた・・全力を尽くそう』
『ありがとう・・よろしくね・・新しいルカ・・』
『ああ・・さらばだ・・古き・・ルカよ』
なんという事だ・・。
恐ろしい事実を目の当たりにした僕は体の震えが止まらない。
どうしたらいい、今この場をどう言えば震えは止まる?
「悲しいですよね?ルカさん・・実はだいぶ前にお亡くなりになってるんですよ・・今のルカさんさへも偽物・・ニアちゃんは実は前の世界から来た子だったんですよ・・」
「ふ・・ふざけるなよ・・前の世界って・・じゃあ・・今の世界は?」
「えっ?この世界は今の世界なんですか?・・貴方は脳みそが本当にトロトロでドロドロなんですね」
「はっ?何言ってるんだよ」
「この世界こそ滅びゆく【第一創成世界】から逃げるために作らたれ仮想の世界・・【イフのワールド】・・つまりこの世界は存在していない同然なんですよ」
「・・存在・・していない?」
「そう・・創成の神々・・アビス達は前回の世界で大喧嘩・・ルイカと言う大きな存在を失った創成様達はありとあらゆる手段を使ってこの世界を作り一時的に避難したんです」
「何言ってんだ・・お前?」
「ですがそれも一時的手段・・いずれこの世界もまた滅びます・・【ワールドコア】の無い世界は滅ぶしかありませんからね・・」
ダメだ・・もう何言ってんのかさっぱりだ。
絶望に絶望の声が重なって何言ってんのかサッパリだ。
「あ・・銀さんはワールドコアご存じですよね?だってご存じじゃなきゃここまでこんなマネできませんもんね!」
「な・・なんの話?」
「あなたが世界を殺した話ですけど?」
凍り付く眼差しでその絶望の声を聞いた。
なんの話か分からなかった。
けれどもその話に何故か心辺りがあった。
「世界を・・殺した?僕が?」
「そうです!あなたは絶望の王でもあるにも関わらず・・今は誰かの希望となってみんなをまるで主人公だと言い聞かせて希望の王へとなろうとしている・・多くの命を奪ったくせに!裏切者ですねぇッ!」
「裏切者?・・はは・・裏切者だって?」
「その通りです!裏切者!あはは・・裏切者なんですよ貴方はッ!?」
「ふざけるなよッ!なんの話だよッ!さっきから意味の分からない単語ばかり並べやがって・・」
「わからない・・ああ・・ご存じじゃない・・と言うより忘れているだけですよね・・都合良く・・まあ・・そう都合よく【前世の記憶】は待ち合わせて無いですもんね!」
「前世の記憶ッ?!」
「ウフフッ!いいですね!そうです!その食いつき最高です!貴方は銀なんかじゃんない!あなたはすべてを絶望させる為に生まれて来た・・ディ・・」
シュパァァァンッ!!
絶望の黒き世界に飲まれようとしていたその時だ。
一筋の光が僕の目の前を裂いた。
世界を分離させるかのように。
「クッ・・何者ッ?!」
「それ以上・・我が孫に手を出すのは止めていただこうか」
「ば・・婆ちゃんッ?!」
「エミリア・ウィルコンティ・・現世で死んだ魂がまだ生きていたか・・」
光で闇を裂いて現れたのはおばあちゃんだった。
杖を持って、あの白く美しい肌をしたあの時のおばあちゃん・・。
「シルバー・・お前は・・お前は私の孫だ・・たとえ前世があろうと関係ない・・お前はお前だッ!」
「婆ちゃん・・」
「違いますぅぅぅッ!あなたは前世で全ての人達を脅かした絶望の化身・・」
「シルバー・・お前がもし絶望の王ならば・・お前は・・ここまで救って来た人達すべての者が絶望させていた・・そうだと思うか?」
「婆ちゃん・・いや・・思わない・・僕は・・全ての人達を・・己の答え持ってして・・全てを・・希望に・・救って来た!」
そうだ・・何が絶望の王だ・・前世の記憶だ・・。
僕はシルバー・ウィルコンティ!
僕は僕であり・・そいつはそいつだッ!
「フッ・・それでいい・・たとえ言葉でもなく・・理論にすらなってなくても・・私が認めよう・・」
「ありがとう・・婆ちゃん!」
「・・ああ・・だが・・もうお前を救えるのはこれが最後だ・・」
「えっ?」
「シルバー・・忘れるな・・もう私がいなくても・・お前は・・憎悪になるな・・ずっと・・お前の本当の自分でいるんだ・・復讐なんかじゃない・・お前ならきっと・・戦う意味を・・きっと・・理解して生きられる」
「・・・うん・・ありがとう」
婆ちゃんは最後に笑顔で微笑んで前を向いて歩いた。
それは瑛里華の闇の世界へと行っても恐れないためだったのだろう。
そして、その時僕は・・最後の婆ちゃんの背中を見届けたのだった。
「おのれ・・古株が・・つけあがってんじゃねぇぞッ!」
「お前にとって古株でも・・私はまだやれる・・もっとも・・もうそれもこれで終わりだがな」
「なんだと・・何ができる・・お前程度の人種・・」
「シルバー!」
「!!」
「元気・・でな・・強く・・生きろ!【解放の言葉:リバースワールド】ッ!!」
「・・なっ・・なんだとッ?!貴様ッ!?こんな仮想空間ごときにそれを放つと・・貴様・・愚かな・・・」
「最後くらい・・カッコつけさせてもらおうかッ!」
「ふはは・・はは!馬鹿・・が・・せいぜい・・無限地獄で死に絶えるが良いッ!」
シュパァァァァァンッ!
まばゆい光に包まれて何も見えなくなった。
僕はその時一人の婆ちゃんの背中だけ見ていた。
一瞬だけど見えた気がした・・笑顔の振り返る姿を・・。
◆
「ハッ!・・ここは・・悪夢の世界・・戻って来てないけど・・戻って来たのか」
目覚めて体を起こす僕。
ハッとなって目にした光景は元の状態だ。
ニアが倒れて・・希望星が目に映る地獄の光景・・。
「・・あと少しで・・絶望の王が・・帰還できたのに・・クソッ!」
「悪いな・・お前らの王は・・もういないさ・・どこにも」
「黙れ・・こうなれば予定より早いですが・・銀さんあなたをここで・・殺す!」
「僕をここで殺す・・・・そんな事は・・」
僕はただ無我夢中になって立ち上がった。
体を立ち上がらせて目の前にいる絶望の聖邪に立ち向かう様に言った。
「そんな事はさせない・・ニアももう傷つけさせない・・誰かを絶望へ導くお前を許さない・・僕は・・お前の様な者を許さない!」
「お兄ちゃん・・っ!!」
「ふざけるなよ・・お前なんぞに何ができるッ!」
「確かに・・お前にとって僕はちっぽけな存在かもしれない!けれども・・それでも・・誰にも認められなくても・・誰にも頼られなくても・・僕は・・存在し続けたいんだ!」
「なんの希望も無しにかッ?!」
「希望はあるんじゃない!作るんだよ!0から作られた希望がどんどん強くなる・・そして希望が作られるにはいったい何が必要か・・【記憶】さ・・僕らはつないで来た絆の記憶の数だけ強くなれる・・スカしてるだろ?くっさいセリフだろ?笑うなら笑えよ・・その覚悟があるならな・・!」
「絆・・記憶・・記憶‥記憶ぅぅぅ!所詮は傷のなめ合いだ・・そんなのに価値は・・ナイ!」
「そうだとしても・・僕は信じてる・・【真の絆】をッ!」
その時、一つの旋律の記憶が流れ出した。
まるで今までの思い出が流れ出るように脳裏に映る。
僕の周りが突風で覆い隠すように風が吹き荒れる。
「な・・なんだ・・」
「お兄ちゃんが・・笑っている?」
「記憶を・・力に・・思い出の灯よ今・・ッ!【能力:覚醒】ッ!!!」
『【能力:記憶英雄】』
シュバァァァァンッ!
僕は吹き荒れる風を振り払い。
今縛られた心を解放するようにあの時の二丁の拳銃を取り出し。
片方を瑛里華に向ける。
僕は光り輝く目で瑛里華に言った。
「さあ・・その闇を払ってやるッ!」
「(なんだ・・なんなんだ・・何が起きている・・)」
「どうした?来ないならこちらから・・」
「(・・未知数の敵と戦うほど馬鹿ではない・・ここは逃げるが策だ!)」
シュゥゥゥ・・
突如姿を消した希望聖 白夜・・。
安心と同時にやるせない感情になった。
だけど・・これでよかった。
自分でも何が起きたかわかんないけど・・・
良かった・・本当に。
「あはは・・でも・・もう・・体・・持たない・・」
パタリとまた倒れこむ僕。
多くの出来事と謎が深まるばかりでこの先どうなる事か。
まだまだ・・安らげない人生だ。
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