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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第五章 悪夢編
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無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第7話  「理論家と努力家」

頭が痛い・・痛い・・

怖い・・体が震える・・

どうして?

どうして体が震えるの?

怖い・・嫌だ・・死にたくない・・助けて・・。


「世界は私の・・私の・・私の救済を・・求めている・・」


『気持ち悪い』『死ねばいいのに』『人の心を読むな』


「うるさい・・天才の私の邪魔をするな・・お前らに・・私の気持ちが・・」


『弱いくせに』『自分一人で助かろうとしているくせに』『誰も助ける気なんてないくせに』


      『偽りの英雄』


「うるさぁぁぁぁぁぁい!!黙ってよ!貴方達こそ・・何一つ私の言う事に耳を傾けなかったくせに・・私は言った・・あの時・・何度も何度も私は言った・・あの時ああしたら・・世界は救えるって・・ちゃんと言ったもん・・言ったのに・・聞かなかったのが・・」


『死んで詫びろ』『死んで地獄におちろ』『地獄でも死に続けろ』


「黙れ・・黙れ・・黙れっ・・黙れ・・」


『死ね』『死ね』『死ね』『永久に・・』


「ううう・・あああ・・ああああああ!」


世界はいつから私を認めなかった。

世界はいつから黒一色に染まった。

世界はいつから私に理不尽になった。


私だって一人の人だった。


望んでこんな力も頭も手に入れてない。


冗談じゃなかった。


毎日毎日理解されない日が冗談ではなかった。


欲望の塊はいつも私下に来た。


一体・・何故だ。

何故みんな私を認めてくれない。

私を・・一人の人だと・・。


「ああ・・もう・・いい・・こんな世界・・コワそう・・いらない・・救えない・・世界は間違ってた・・神は死んだ・・運命は変えられない・・」


絶望の黒に染まる心・・私は心を閉ざした。

本当の私は心の奥底に閉じ込めて。


私は・・永遠に出れない様にした。


 ◆


「・・なんだか・・外の様子がおかしい・・」


「どうした我が弟子ホネッルス君よ」


「いや師匠・・見てください・・なんだか・・夜のパレードから・・まるで混沌に満ちた晴れの日の様に・・」


「そいつはお気の毒に・・アンタらもアビスの悪夢に狙われちまったな」


「り、リペア君ッ!」


「おっす・・元気にしてたか?・・骨だからわかんねぇや」


晴天の空はいずこへとあちらこちらを歩いて迷子になっていた俺はリペア。

ただの機械大好き人間だ。

ゴーグルをかけて右手にレンチ、白衣にジャージを着た金髪こそ俺だ。

現在一緒に入り込んだルカと共にこの悪夢の世界を監視していたつもりが。

まさかのルカが行方不明になった。

まさかの事態に俺さんどうしたらいいものか・・。


「ふー・・ところでおたく誰?」


「私?私はクリアマンよッ!愛と正義のために・・私は来た!」


「えっ?じゃあなに?・・サーカス団からデパートの屋上のヒーローショーやる人に転職したの?」


「違う違う・・理由は分からんが・・俺と銀君の戦いでなぜか生まれたのだ」


「おいなんだその気づいてたら生まれてましたー的なノリは・・できちゃった婚は危険だからあれほどやめとけと・・」


「えっ!?私てっ・・ゲイの子?まさにゲイシャノ子?」


「ちがーうッ!だからッ!原因不明なのッ!師匠がどっから来たかもわからんのだよ!」


「ふーん・・なるほど」


なるほど・・でもバグで生まれた仮想の命ってわけじゃなさそうだ。

これはルカが見たら研究対象にしないわけがないと思うんだが・・。


「・・あ、目的がズレた・・貴様ら・・ルカを見てないか?俺と同じチンチクリンの女・・結構あれはアレでファンは好きなモテモテ女だった気がするんだが・・」


「ルカさん?誰それ?アンドロイド?」


「ルカちゃんは見てないなー・・ごめんなー」


むう・・ここにも来てないか・・・。

しかし、残りの場所は誰かの妨害工作のせいで通れないし。

他に行く当てもないし・・。


「やれやれ・・ここに来ていよいよ詰みか?」


「見つけた・・」


「・・?」


ふと声がした・・後ろの方からだ。

俺は後ろを振り返ると・・。

そこにはなんだか体が弱ってよたよたと歩くルカの姿があった。


「はぁ・・・・ハァ・・見つけた・・ぞ・・愚かな・・民」


「おいおい・・こいつはどういう事だ?」


「ルカちゃん!どうしたんだ!そんな体に鞭を打って・・」


「アレが‥ルカ・・なんだかただの少女に見えるけど・・」


「若い姿しているだけだ・・本当はあいつ那由多を生きている」


「ほへー・・人間って不思議ね」


ただ不思議なら苦労はしない。

アイツの場合は不思議を通り越してそこに摩訶不思議が入る。


「滅ぼす・・全ての命を根絶やしにする・・」


「・・ルカ・・お前はいつからアビスになったんだ?」


「うるさい・・っ!私は最初っから・・人間が・・生命が全て嫌いだ・・見ろ・・心を読み取れば・・全ての者達の・・はは・・はは・・っ!」


「ダメだ・・完全に正気をやられてる・・一度ショックを与えるか?」


「いや・・それではルカちゃんがさらに苦しむだけだ」


「だよな・・どうすれば・・」


「そんなもの・・一つだ!」


俺が迷っている時にその場にいたたった一人の女は迷いすらしなかった。

この絶望の状況下・・普通ならまず迷いが出るはず。

なのに・・迷いすら感じさせない一言。

マントを雄々しくなびかせて翼を広げて腕を組んで仁王立ちをする勇敢な戦士。

クリアマン・・・っ!


「誰かの助けを呼ぶ声が聞こえる・・天を裂いて私が今ここにいる・・」


「クリアマン・・お前・・」


「リペア君・・だったな・・お姉さんにまっかせなさい!私は誰かの困った顔・・ましてや恋する男女を汚い手で汚すものを・・私は許さん!」


「いや恋してるかは別として・・確かに許せないな・・俺のルカに手を出す奴が・・」


「はっはっはっはっは・・決意は最初っから一つ!」


『ルカを助ける一択ッ!』


今まさにその熱き言葉と共に全て者たちの決意が固まった。

答えも全てが一緒になった時だった。


「感謝するぜMs.クリアマン・・その勇気に免じて・・俺も本気だ・・っ!」


「おお・・リペア君がマジに・・」


「行くぜっ!カモンッ!・・【ライトニング3号】ッ!」


パチンッ!


俺は指を鳴らして天に命じる様に鳴らす。

すると・・


シュゴォォォンッ!


猛スピードで現れた五メートルのSD型ロボット。

光り輝く白い閃光の中上空に現れて地上に降り立つ。

これぞ・・ライトニング3号!

動力源はマナ粒子を使ったなんやかんやでできた超代物だ!

俺はこれに乗って戦う。


「よし・・全機能動作チェック・・オールグリーンッ!絶好調であーる!2度とオ・ノーレと言うパイロットが出ない様にしてやるぜ!」


「いや、なんの話かねッ!」


「うむ!リペア君も巨大ロボに乗ってなんだかずるいなー!」


「はは!これは俺専用機だ・・いずれは量産するが・・今は俺だけの次元!」


いつかド派手に相棒と共に暴れたいと思っていたが。

まさかこんな夢の世界で披露する羽目になるとは・・。


「まあ良い・・相棒もきっと喜ぶはずだ!」


「だ・・だが!相手はルカちゃんだぞ!そんな近代兵器で大丈夫かね?」


「問題ない・・と言うより・・」


「うう・・うがぁぁぁッ!!【記憶再生:死線閃光(デスビーム)】」


ビュガァァンッ!


ルカがついに大きく動きを見せて複数のレーザー攻撃を放ってきた。

一体どこから現れたのかと言う話だろう。

これはルカの能力【記憶再現(メモリアル)】だ。

あらゆる過去から攻撃から行動まで全てを再現させる。

そしてそれは現実に現れて現在の攻撃へとも変化できる。

その他にも奴には特殊な体でできている。

千里眼・・悟りの心眼・・知性温厚な頭脳。

まさに天才と奇跡の体で生まれた存在。


「って・・言っている場合じゃねぇ!避けるぞ!」


「うおっ!この攻撃隙間が少ししかないぞ!」


「はっはっ!私は飛べるから関係なしだ!」


普通こんな攻撃食らったら絶望する奴の方が多いのに・・。

こいつら楽しそうだな。


「いやまあ・・俺もそのうちの一人なんだけどな!」


「リペア君・・君はなんてロマンの男なんだ・・よかばってん!私も全力を尽くそう!」


「師匠の全力・・ッ!!」


「うぉぉぉぉッ!【残滅剣劇】ッ!」


シュババババッ!


クリアマンは羽を雄々しく広げてルカに切りかかる。

連続的に肉眼では負えない速度での切りかかりだった。

だがルカは心を読んで戦う者。

その程度はお見通しのように避けた。


「うぐぅぁ・・・あ゛ぁ゛・・」


「避けたね・・でもコレはフェイクさ!」


「ぬぅッ?!」


シュパァンッ!


突如謎の攻撃がルカを拘束した。

飛び上がったルカを拘束したこの大量のトゲトゲした縄の様なホネ・・・

思わずモニターでその出て来た先を見たがやっぱホネッルスっ!

の口からかよッ!?


「にょっほぉほへッ!(やったぜ!)にょれほぞにょれのにょうにょ(これぞ俺の能力!)にょーにょるむ(骨異空間(ボーンホール))にょっほれひ・・」


「いや何言ってるかわかんねぇけどッ!?」


※口を四次元に変えて謎の大量の骨を作り出す能力。

実は口に固定しなくても途中で途切れさせる事ができた。


「うぉぉぉぉッ!!ハナぜぇぇぇぇぇッ!!」


「ともあれ・・チャンスだ!」


「よし・・あとは任せろ・・今私のこの【スーパーキャノン】で・・」


「へっ?スーパー・・キャノンッ?!」


「行くぜ・・核さえも超えた・・究極(ガションガション!)・・超絶・・(ガシュイン!プッビガーンッ!)パワァぁァァァァッ!【バーサーカークリアバスタァァァァァァ】ッ!!!」


チドォォォォォォォォン!!!


巨大な極太レーザーが全てを破壊するようにまっすぐ解き放たれ。

あんな細い腕に装着されたランチチャーからそんな高火力出るのかとドン引き。


「ふひゅ~・・・」


「な・・破壊された建物が一つもない・・だとッ!?」


「この技は自体は彼女を正気に戻すだけさ・・込められた憎悪・・全てを消化させるのさ」


「それはどうやって?」


「彼女の記憶の底に眠る最も大切な思い出を呼び戻した・・彼女が生きていた中で最も心に残った記憶・・」


・・それはいいんだが・・。

この状況だけ傍から見たらただのリンチなんだが・・。

ルカ飛ばされすぎてどっかの壁にめり込んでるし・・。

このままだとどうなっているか分らんので。

俺は少しだけその飛ばされた位置まで行くことにした。

煉瓦の崩れたうえでぐったりしていたルカを見て。

心配になったのでとりあえず出番のなかったライトニング3号から降りた。

そしてルカの近くに駆け寄った。


「おい・・ルカ・・大丈夫か?」


「う・・うう・・リペア・・?」


「良かったぜ・・心配かけさせやがって・・」


やつれた表情だが優しい眼差し。

全てを忘れて暴れていた奴が嘘みたいに落ち着いている。


「リペア・・ごめんなさい・・貴方に・・また助けられたわね」


「また?」


「うん・・また・・忘れたの?」


 ◆


「どうせ嫌われているのなら・・もう私がこの世にいる理由なんて無い!」


「やめろォッ!」


「来ないで・・来たら・・来たら私・・」


「この場で死んでやるってか?やってみろよ」


「う・・うぅぅ・・」


クリアマンが思い出せていた記憶がなんとなくわかった。

何十年前のあの事件の事だ。

ニアも部屋からでなくなってルカも人々から嫌われたあの日。

自暴自棄になってついに自殺を図った時の事。

最初はルカの持っていたナイフに脅されて俺は殺されかけた。

そしてルカはついにおかしくなったのか自分を刺そうと首にナイフを向けた。

そしてそれを自分の首に刺そうとした時だ。


俺はそのナイフを片手で力強く握りしめて止めた。

手からは大量の血が出ていたが・・まあさほど痛くはなかった。


「・・っ」


「り、リペア・・っ?!」


「馬鹿野郎・・ここで人生諦めて・・一人で楽になろうてか?冗談言うのなよ・・それで悲しむ奴がここにいんのに・・てめぇは誰も悲しまないと思って死のうとしてんだろ?」


「(なに・・これ・・私今・・リペアに・・抱きしめられて・・)」


「こんな状況でこんな事言うのもすげぇ気持ち悪いとは思うかもしれねぇけど・・俺はお前に死んでほしくねぇんだ・・こう・・お前みたいに理論なんかたてれねぇ・・しっかりした理由も作れねえ・・こんな事するにはそれ相応の覚悟と理由をそれえるのも知ってる!」


「(暖かい・・なんで・・どうして・・リペアの・・心も・・全部・・心地よいのは・・なんで?)」


「絶望を・・(こんな思い届かないの分かってる・・)希望に変えて来たのはお前だ・・(お前にとって人間がどれだけちっぽけな存在かも分かってる・・ッ!)何億何千年も生きて・・ここでその命捨てちまったら・・(それでも・・)」


それでも・・


「一体この先誰が未来を創るんだよッ!!」


お前の事が・・大好きだ・・っ!!


「リペア・・っ!?(あなたは・・どうして・・)」


「・・だから頼む・・せめて・・一人の情けない人間のために・・生きて・・くれよ!」


「・・・うん・・ごめんなさい・・ありがとう・・」


涙が流れる一人の男の姿。

小さな小さな体の者同士がその時冷たかった部屋で暖かく抱き合った。


その時の記憶を・・思い出させていたんだ。


 ◆


「・・思い出した?」


「思い出した・・ああ・・思い出したよ・・懐かしい事思い出せやがって」


何故だかわからない。

けれども・・涙が止まらない。


「リペア・・私・・貴方のその必死になれる思い・・すごく好き」


「・・そりゃどうも」


「でもまだ・・貴方は純粋で・・確かに私が最も信頼できる者よ・・貴方は・・」


「分かってる・・言うんじゃねぇよ・・俺なんて所詮は科学馬鹿だ・・恋だの愛だのわかんねぇよ・・けど・・いつか・・いつか・・馬鹿にできないくらい・・お前の心の中も頭の中も俺だけしか考えられない思考回路にしてんやんよ・・」


指さす一人の男の涙こぼれた一言。

その指先に移る少女は優しい微笑みで言った。


「それは・・楽しみね?」


一人の理論家と技術者による物語。

結末の先は絶望か希望か・・

誰にも予想できない物語がここにある。


「・・ハッピーエンドだな・・少年」


「ああ・・リペア君・・祝福だ!」


ただ・・二人の間に何か・・強い強い絆が結ばれた。

そんな気がした気がしたのだった。


NEXT・・・


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