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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第一章 真紅編
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無限空想世界の幻想的な物語~真紅~ 第8話  「悲劇の天才」

ある日、俺と兄さんは生まれた。

母さんと父さんが俺達を生んだ。

命をくれた、力をくれた、知識をくれた、

だからこそ、俺達は今も生きている。

だが、実際は違った。


兄さんには命こそはあった、けれど力は無かった。

知識も常人程度、とてもじゃないが俺達の一緒の種族とは思えなかった。

俺達は古来より伝われし混沌の魔物、その一つの名「ヴァンパイア」に属する

血を食らい長きにわたり生きながらえる不老の種族、

不死までとはいかないが、

血を食らい続ける事により長寿命と化す。


簡略に話すと、これは俺たちの世界の吸血鬼と言う奴だ、

俺達は今まで一つの種族として生きてきた、誇り高い一族だ。

しかし、奇妙な事に異なる血を交えたヴァンパイアは更なる強さを秘めた子を宿す。

たとえばそれは竜と交わった究極のヴァンパイアと言った感じだ、

そして俺達は「ヴォルフ」と言う狼の一族の王「デビット」と言う父を持つ、

要するに狼と吸血鬼のハーフと言うわけだ。


その力は地上、空中ならばほぼ敵なし、

先ほどの竜のハーフとも互角の勝負をできる可能性を見いだせる。


俺は誇りに思う、こんなにも恵まれた血で生んでくれた事を、

こんなにも光ある人生をくれた事を、

俺はこの人生を歩ませてくれる神に感謝した、

だが簡単にも俺の人生は闇へと落ちて行った、

それは突然に、それはむなしく、儚く、

俺の夢は夢で終わった。


兄はなぜか吸血鬼としての血はあったにも関わらず、

ヴァンパイアとしてもヴォルフとしての戦いもできない、

それどころか力は一般の人間よりも非力、

何をやっても平均の下と言うありさまだ、

ひどい、酷過ぎる。


こんな理不尽があってたまるかと思ったが、

どんなに嘆いても現実は変わらなかった。

あの時俺はただ絶望する兄を横に、

何もしてやれなかった。

あんなにも自由を掲げていた憧れの兄を前に、

何も、してあげられなかった。

悔しかった、とても悔しかった。

心の中であの光景がいつも突き刺さった。

鋭い刃物がいくつもズサズサと俺を刺す。

心はボロボロになるまで痛み続けた。


そして、ついに兄を出来損ないだと言い、

父と母は兄を知り合いの施設に送りつけた。


ここから俺の人生は凄まじい勢いで堕ちる。

母は何があったのか同じ仲間や人を使って人体実験を始めた。

見るだけで恐ろしい光景、

多くの者が混沌と化したキメラとなった。

後に何があったか不明だが、母は風銀の殺し屋に殺されたと言われた。

地下のもっとも危険だったと言われていた『キャットヴァンプ』と言う、

キメラは遠い仲間の下へと封印した。

残りは苦しい思いもしながら全て殺処分をした。


父のデビットは妻との上手くいかない家庭に嫌気をさし、

毎晩毎晩違う女を食らう様になった。

他にも理論崩壊も良い所の王としての判断、

まさにやりたい放題の暴君だった。

こんなにも親に裏切れたと思ったのは無い、

ついには先代までもが人類の敵と言われていた事に気づく、

もはやここは自分だけでもこの誇りを守ろうと決意をした。

ヴァンパイアヴォルフの名を汚さぬようにと、

だから俺はあの父を見捨てる事にした。

全てをくだらない出来事だと思い、

父の暴動に目をつぶった。

しかし、ついにそうも言ってられなくなった。

奴はついに禁忌を犯す。


そう、俺の宝に触れた事だ。

俺の大事な、大事な者までもを奴は汚した。

血を汚し、誇りを汚し、俺の宝までもを汚した。

憎い、あの時が憎い、

どれだけあの時、憎悪を露にしたか、

どれだけあの時力が完璧だったら殺したいと思ったか、

とても、憎い、とてもだ。

もう、見たくないと俺は思い、

宝を持って、遠い遠い国へ行くことにした。

そう、それこそがロンディニアへ行く事になった理由だ。

すぐに知り合いに頼んで船を手配し、

父へ別れの手切れ金を差し出して家を後にした。


「これで腐った父とお別れだ」と思った。

しかし、そうさせまいと運命が問いかける。

それは船に行く途中の話だ。

兄を家の近くで見つけたのだ。

施設に行った後もちょくちょく会いに行っていたから生存は知っていたものの、

何故今になって兄が来たのか、

それは「施設が父によって破壊された」と言う知らせを持ってきたからだ。

俺は、その一瞬だけで「ああ、いつか殺す」と心の中で決めた。

その日から、俺は兄と宝をずっとこの手で守り続けると誓った。

絶対にもう、悲しませないと心を壊させないと、

絶望を断ち切ると、そう心に誓ったのだ。


時は戻って現在、鈴蘭とゆっくり部屋で休んでいた時だ。

何かがおかしい、何故か屋敷が騒がしい、

飲んでいる紅茶がまずくなるくらい何かがおかしい、

ざわめく声、鳴り響く雑音、これはどういう事態か早急に調べる必要がありそうだ。


「・・鈴蘭」


「なんですか?」


俺は静かにティーカップと皿を机に置いて、

鈴蘭に静かに語りかける。


「俺は少しここを離れる。」


「えッ!じゃあ私も・・」


「いや、鈴蘭はここにいて、何しろ外は財宝を狙う賊が多い」


「財宝を狙う賊・・まさか空き巣!?それとも盗賊!?それとも有名な三世!?」


「いや、最後の一人は紛れもなく財宝荒しじゃないから、貴方の心も取らないから」


「アハハ・・ですよね!」


このメイド本当にわかっているのだろうか、

俺は不安で仕方がない、

ともあれ俺はこの場を鈴蘭に任せるようにドアへとスタスタと歩く、


「とにかく、鈴蘭、何があってもここを動かない事、良いね?」


「はいッ!ジン様の財宝は私が守ります!」


「うん、ありがとう」


俺はふり返って告げた後、

笑顔で鈴蘭を見て、ドアを開ける。

そして俺は屋敷の廊下へと出ていくのだった。

静かにドアはバタンッと閉じる音を聞き、

雨が強く窓ガラスをたたく音を聞きながら、

俺は廊下を歩く、

にしても、鈴蘭にも言えないが、

本当は腹の中で恨み妬みを抱いているから、

ちょっぴり腹いせに仕留めて来るなんて、

言えないよな、言えるわけがない、

だって、今から向かうのはやつの場所なのだから・・、

鈴蘭にはどうか気づいてほしくない所だ。


「(ジン様・・笑顔の一つ一つに何か狂気を感じる・・何だろうこの不安)」



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