無限空想世界の幻想的な物語~外伝~ 魔章3 「巫女と魔物」
「どっせぇぁぁぁぁ!!」
ドゴォォォン!
鬼竜さんが喰煉さんを殴りかかり、
大地を揺るがして、地面を引き裂いて行く、
だが、喰煉さんはそれをもろともせず、
涼やかに空中へ飛び上がり安全地帯へと避けた。
「(避けた・・予定通りッ!)」
「ふむ・・腕を上げたな・・鬼竜・・」
「当然ですよ、私は鬼の四天王の一人であり・・竜の四天王の一人である邪神鬼竜・・同時は元・混沌の四天王ッ!!ハッ!!」
「流石は天下の掛け持ち四天王だ・・惚れどころのあるやつだぜ・・だが俺に攻撃を当てるにはちと・・ぬる過ぎるッ!!オラッ!!」
ドゴドゴドゴッ!!ゴゴゴ!!
あの二人・・・片方の喰煉さんはニヤニヤ笑みを見せながら戦って、
鬼竜ささんは真剣そうな表情で戦っている。
どちらも思いの違いはあれど、互いにおかしい共通点・・、
二人とも戦闘しながら会話している!?
遠いけどかすかにそんな風に見えた。
どんだけ余裕持っていられるんだこの二人・・
殴り蹴る格闘技の技を多発させる鬼竜さん、
槍ですべてを受け流す喰煉さん、
とぢらも巧みな技前だ・・。
「二人とも・・すごい・・」
「当然・・奴らは互いに竜の四天王の一人、同時に鬼竜は鬼の四天王の一人・・さらにどちらも元混沌の有力候補だ・・!」
「にしても・・喰煉さんは竜てっ感じですけど・・片方の鬼竜さんはなんだか少女てっ感じですね」
「それに関しては奴の腕を見よ、奴には包帯がまかれているだろう?奴は自身の力をああやって封印している、アレが両腕にまかれているのは体にまでつながっているからだ」
なるほど、それなのにあんな制限されている中で戦闘できるなんて、
鬼竜さんすごい強いんだなと心の中で感心してしまう。
それになんだか、とっても凛々しくてかっこいい、
同じくらいの女の子に見えるのに、
拳一つで戦えるなんて、私も見習わなきゃな・・
二人の戦いぷりに目が見入りその激しさは増すばかり、
キィン!シャン!ドゴォシャア!ボクシュッ!
凄まじいほど早いストレート、槍による連続的な攻撃、
目場ぐるしいほど激しい動きの戦闘が繰り広げられる。
「どうした・・動きにキレがですぎるじゃねぇか・・俺に本気出してほしいのか?」
「そうね・・そろそろ退屈・・私が我慢できなくて・・包帯を解く前にさっさと本気出してくれないかしら?」
「いいね~・・強い女は嫌いじゃねぇ・・だが同時に好きでもねえな・・」
二人の動きが止まった。
互いに警戒態勢に入り様子をうかがっている?
・・いや違う、喰煉さんが・・槍の構え方を変えて来た!?
赤い2本の槍が一本の鋭い槍に変わった。
それを両手で持ち、この遠い遠い距離からでも伝わる殺気を醸し出す。
「本気・・出すとするかな?」
「(来る・・あの奥義がッ!!)」
『太古破りし神話の三槍・・俺に力を・・貸せッ!!【心臓突破】ッ!』
シュォォォォォン!!
赤い一本の槍が誰の目でも終えぬ速さで彼女の心臓めがけて刺し貫く!
流石に鬼竜さんも一たまりもないと思われた静寂のわずかな間、
だが、その槍はなんと・・避けられていた。
「(ほう・・避けたか・・ならばッ!)」
「(天へ飛び立ったか・・なら次は・・)」
避けられたのに動きに迷いがない!
ほんの数秒で次の攻撃に転じている。
今度は上へ上へと飛び上がり、一体何をしようと言うんだ。
『我が栄光の勝利の灯に付き合え・・【裁鬼】ッ!』
ビィッ!シュォォォアン!!
一つの大きな刃の槍が放たれたすさまじい一直線の槍!
それを空から放ち、地上めがけて突き刺さり、
大地を割って鬼竜さんに攻撃をしかけるッ!
大きく起こる爆風と変わりゆく大地にすら惑わされない鬼竜さん、
そのまま俊敏に足を動かし大地をうごめく一人の少女!
「(大丈夫・・たとえ大地が変わろうと・・私はどこだって戦える!)」
「(次で最後だ・・てめぇの連勝にもこれで終わりだ!)」
互いにこのわずかな間でにらみ合いをはじめ、
そのにらみ合いすら一瞬で終わり、いよいよ最後の攻撃が繰り出される!
「三槍目・・【寄生木】!!」
シュパァァァァァン!
天から放たられる緑の槍!
アレがおそらく喰煉さんの最後の一撃!
これに対して鬼竜さんはどうするか!
「封印されたこの右腕だけ・・今だけ・・解放するッ!!」
その時、シュルリと鬼竜さんが右腕の包帯のみを解き、
禍々しい赤き手を目の当たりにする。
そして鬼竜さんはその後足に全力で力を入れて飛び上がる!
落ちてくる槍すら追い抜くスピードで気づいた時には喰煉さんの背後にいた。
喰煉さんは突然の背後からの奇襲をどうする事も出来ず、
振り向いた時にはすでに決着がついていた。
「終わりだ・・【神滅覇拳】ッ!!」
スドボォシャァァァァ!!
体をグルンと一回転させて右手にすべての力を込めた一撃!
見事に喰煉さんの体に命中し、そのまま喰煉さんは地上へと落下する!
スドォォォン!!
落下すら見る暇すらなく一瞬で落ちる。
あんなに両者一歩も譲らなかったのに
喰煉さんがこんなにもあっさりと落ちていくなんて、
そして、世界にこんな強い人達の戦いの場があったなんて!
私は・・何か心から燃え上がるモノを感じ取れてしまった。
私が見惚れていると鬼竜さんが包帯をまた巻き戻し、
手をグーと平手を合わせて喰煉さんにあの挨拶をした。
「ありがとう・・ございました」
『うぉぉぉぉ!!』
「す・・すごい・・これが鬼と竜の戦い・・」
「(両方とも竜ではあるけどな)」
私は思わず感動した。
手を合わせて目を輝かせてしまうほどの戦い、
本来ならこんな野蛮な事は私は嫌ってしまうはずなのに、
何故か私は感動してしまっている。
これが・・戦いという事なのだろうか、
私は熱く燃える魂がまだ収まらなかった。
しばらくすると鬼竜さんが試合を終えた喰煉さんを肩を背負って運ぶ、
声援の中でも二人とも手を振って挨拶を忘れないのはファンサービスというやつだろう。
と言うより喰煉さんまだそんな余裕があるなんて・・さすがだ。
「・・にしても私感動しました!なんかこう・・言葉にできないくらいにすごい心が燃え上がりました!」
「ふっ・・奴らは常に一緒に戦いの美を磨いた者・・人に感動されるのは当たり前だ」
「ああッ!だからこんなにも何か美しい戦いだと思えたんですね!」
「ああ、我も奴ら戦いには毎回楽しませてもらっている・・今回も見ても実にいい試合だった」
「お二人とも満足のいく試合が見れてよかったですね!私もあの試合にはいつも得れるものがあってとても歓喜しています!」
「林さんもなんですね!わかりますよー!」
なんだか一試合見ただけでとても輪がとても賑やかに、
私達の話は盛り上がるばかりだ。
そんな話にも上がっていると闘技場のアナウンスが流れ始めた。
『続きまして・・ガッツVS侘助~ガッツVS侘助~』
「むっ・・ガッツ?」
「魔王様?どうかされたんですか?」
「いや・・すごい聞き覚えのある名前でな・・」
先ほどまでニヤニヤと笑っていた魔王様が悩み始めてしまうほどの人物、
一体ライムとはどんな人物なんだ。
もしかして・・混沌の四天王とかッ!?
はたまた魔王様右腕!?
私はドキドキしながら右の出場入口を見つめる。
そして私は・・出て来た者に驚愕してしまうのだった。
「な・・なな!!」
「ほう・・やはり・・奴か・・」
「カオスさんご存じなのですか?」
「ああ・・奴は・・印象深く覚えていたとも・・一族最後の生き残り・・魔物の中の魔物」
「ええ・・彼は・・とても印象的ですよね・・」
林さんや魔王様が落ち着いて見ていられるのはおそらく何度も見ているから、
だが私は初めて目にした。
この世界に・・こんな世界に・・まさか・・まさか・・、
スライムがいるなんてッ!!!
そう、入口から出て来たのはまあるいぷよぷよしたスライム!
くりくりとしたおめめがとても可愛い緑色の青色のスライム!
そのスライムがポヨンポヨンとすごい可愛い動作で闘技場へと赴いている!!
「あ・・アレ・・アレって・・スライムですよねッ?!絶滅していたと言われている世界の伝説上の生き物!!」
「そう・・奴こそ・・魔王軍最高の誇り高き生物【ガッツ】・・見た目こそ可愛いがそれに反して情熱あふれる闘志は誰にも負けんぞ!」
「そ・・そうなんですか・・?」
「ええ・・そろそろ彼の宣言タイムが始まりますよ」
宣言タイム・・確かにスライムの表情が心なしかすごい勇ましい、
まるで少年漫画の主人公の様だ。
そして・・そのスライムは大きく口を開けて、
この会場に響き渡るくらいの少年声をあげる。
「きけぇぇぇぇ!!!」
『おおおーッ!!』
「俺っちは現在連敗中だが・・今回はお前らに目にもの見せてやると修行してきたぞーッ!」
『おーッ!!』『流石だ!』『いいぞーッ!』
「そこでお前らに今日の勝利宣言をする!一打目!敵に果敢に突っ込み相手を翻弄する!二打目!相手の攻撃がからぶったところをすかさず一撃を決める!そして三打目で相手の体に強い一撃を当てえて一撃で仕留める!」
『うぉぉぉーッ!』
「はっはっー!この完璧な作戦の前に誰も文句は言えまい・・さあ!始めようぜ!!」
『おーッ!ウィーアーホット!ウィーアーホット!イェェェェイ!!』
なんだこの大歓声ッ!?
すげぇ人気だな、ガッツ・・と言う事は実はすごい強かったり?
「魔王様・・彼は・・強いんですか?」
「そんなものこれから見ればわかるさ・・まあ、焦るな」
魔王様がにやりと笑うほどの者、
あんな可愛い見た目なのに・・実は能力がすごいとかッ!?
実は身体能力が優れているとかッ!?
なんだかワクワクしてきた!
『それでは試合・・開始です!』
「いくぞぉぉぉぉッ!!」
『いっけぇぇぇ!!』
果敢に攻め込むガッツ!
予定通りすごいスピードでまっすぐとびかかるッ!
すごいッ!体格をもろともしない素早い動きッ!
これは間違いなく強者の予感ッ!
「いいか・・巫女・・奴は・・」
私がワクワクしながら魔王様がつぶやいたその一瞬、
相手の選手がキリッと刀を振り払いその時は訪れた。
そう・・彼の実力がわかるその時がッ!!
「奴は・・もの凄く弱いッ!!」
ドォォンッ!!
そう、それは魔王様が隣でその一言を言ったと同時に訪れた音、
そして目の前の光景に私は目が死んでしまう。
と言うより、唖然としてしまう。
そう、ガッツが飛び上がると同時に、
刀の鞘だけを振り払ってガッツが殴り飛ばされてしまう光景だったのだ。
「あれ・・」
「あ~れ~ッ!!」
ヒューンとそのままガッツはこちらめがけて飛んで来た。
それはまっすぐにそれは一直線に、
そして目の前の信じられない光景に驚いて、
もはやガッツを避ける事すら忘れていた私はそのまま・・
ヌチャァァ!!
ガッツが私の顔面にヒットしてしまったのだった。
そして私はそのままガッツに押し倒されて、
勢いよくぶつかってしまったがために、気絶・・してしまった。
「あう~・・」
「ああ・・今回もダメだったよ・・」
「うぉぉぉい!!巫女ォッ!ガッツ!!」
「し、しっかりしてくださいィィィ!!」
意識遠のいていく中二人に心配される私、
ああ・・私はどうなってしまうのだろうか、
そして・・この試合の運命はいかに・・
『ピンポンパンポーン・・え・・えっと・・勝者・・侘助選手・・』
『うわぁぁぁッ!!嘘だぁぁ!!今日はガッツいけると思ったのにぃぃ!!』
アレ・・これ試合終わってない?
と、ついにそんな放送を最後に目の前が真っ暗になった私だった。
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