無限空想世界の幻想的な物語~真紅~ 第7話 「血の決闘」
「・・・ごめ・・ん・ね・・やっぱり・・だめだっ・・たよ・・」
「良いんですよ・・お嬢様は・・良く・・頑張りました・・」
「・・えへ・・・そう・・?でも・・そのわりには・・・ひどい・・顔で・・私を・・見るのね・・」
「・・これは・・これは・・うれし泣きてっ奴ですよッ!さっき言ったばっかじゃん!暗いが嫌いだから・・笑顔でいるって・・だからッ!」
「もう・・いい・・よ、無理しないで・・、本当は辛いんだよね?苦しいんだよね?」
「・・・ッ!」
「最初からわかってた・・きっと、あの話の中で辛い思いをしてたって、きっとその先生はもういないて言うのも・・だけどポチは・・それをずっと守って来たんだよね?たとえいなくてもいる風にごまかして・・たとえ辛くても笑顔で・・」
「・・・やっぱ・・わかりますよね・・普通っ・・!」
「うん、バレバレ・・でも、とても・・心の温まる思いが詰まった・・話だったよ・・だから私もその思いに答えたの・・えらい・・でしょ?」
「ええ、えらいですよ・・ッ!えらくてっ・・当然だよッ!」
「・・・ありが・・とうッ・・」
お嬢様の手は段々冷たくなる、
あの暖かった手は段々冷たくなっていく、
何もできないまま、
何も恩を返せないまま、
「茶番は終わりか?そろそろおとぎの国へ帰ってほしいのだが」
「なんだと・・!」
この悲しみの中、あの冷徹無慈悲の女王が話しかける。
なんともまあ、空気の読めないボスキャラだ。
「このさい諦めろ、貴様などに我は倒せん、青臭い童貞はさっさと逃げ帰れば良い、今なら見逃してやる」
「お前・・ッ!」
「童貞・・ねッ・・」
「ええ、そうですよッ!保険も体育も高校卒業してもどうせ0点でしたよ、非リアだよ畜生ッ!」
この女帝絶対ゆるさんぞ、お嬢様の目の前で品質の無い
極めて汚い言葉使いやがって、性の喜び知りやがってッ!お前許さんぞッ!
「・・・ねぇ・・ポチ・・お願いがあるの・・」
「・・・ッ!?お嬢様ッ!?」
この遠くむなしく響く声を頼り、聞けばそれはお嬢様、
もう、しゃべることが精いっぱいと言わんばかりの声でこちらに問いかける。
「・・お願い・・私の初めてを・・奪ってッ!」
「はあッ!?こんなときに何言ってん!?ついに頭おかしくなったか!チョコミントヘッドッ!!」
「良いからッ・・!はいッ・・てっ!言いなさい!ポチッ!」
このお嬢様ときたら・・とことんメルヘンチック脳でどこまでも脳みそ吹き飛びやがって・・ッ!
「あ゛あ゛ぁ゛ーッ!もうどうにでもなーれッ!僕はここでお嬢様の初めてをッ!奪いまッーす!」
「・・あーあ・・言っちゃた~・・責任・・取ってね?」
僕は一瞬にして、
先ほどまで握っていた手に力を入れられて、
彼女の口元に僕の首元が吸い寄せられる。
「えっと・・これは・・」
「がまん・・なさいッ!!」
次の瞬間、ガブリッ!と噛みつくお嬢様、
僕の全身に伝わる驚異の痛み、
「おごぁ・・」
「・・フフッ」
「なにしてんすか・・」
「ちょっと・・ねっ・・」
「あれ・・体が熱い・・全身が・・つか・・アツゥゥゥイイッ!!」
「な、何が起きているッ!」
僕の前身は一気に焼きこげるように熱く燃える。
痺れ渡る激痛、
燃え上がる闘士、
何故だろう、とても力が入るッ!
「なんだ・・このにじみ出る・・力ッ!とても・・とても強い力を感じるッ!」
「なんだというだ・・貴様・・小娘ッ!なにをしたッ!?」
「なん・・にもッ!ちょっと血を拝借したついでに・・分け与えただけよ・・私の血をねッ!」
「何という事を・・よりにもよって吸血鬼風情が・・ッ!!」
「ウォォォォッ!」
全身で感じる力を雄叫びを上げて伝える。
僕は今燃え上がっているぞと、今、戦えるぞとッ!
僕は今、番犬であるとッ!
吠えきった体を静かに整わせ、
持っていた銃をあの女王へと向ける。
そして僕は赤くも輝く真紅の瞳で奴に告げる。
「我が名はシルバー・ウィルコンティ・・その邪悪なる血、貰い受けるッ!」
これが、守れぬ者を卒業した、
僕の言葉だった。