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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第四章 楽園編
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無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第17話  「偽り物語」

突然の絶望・・突然の衝突・・突然の・・出来事、

僕は頭が困惑して・・もう、

正常に考えることすらできなかった。


「ぎ、銀君ッ!!」


「銀ッ!」


「銀君ッ!」


「銀殿ッ!!」


「あ、あいつ・・」


「えげつない・・」


ただ・・みんなの必死の呼びかけも・・絶望の声も聞こえた。

それだけだ・・もうそれだけしか聞こえないくらいに体がいうことを聞かなかった。


「今・・あの子は何をしたの?姉さん見えた?」


「わからない・・私でも・・見えなかった・・」


「そ・・それよりも闇裏殿ッ!約束が違うでござるッ!我々はその者たちを殺すなんて言う約束はなかったでござるッ!!」


「は?知るかよ・・俺はそんな約束してねぇっての・・」


「なんだと・・!?」


おいおい・・お仲間もドン引きの作戦指示とか・・もうそれ、

闇裏さんのすっとぼけ加減がやばいですねー・・はは・・、

あー・・やばい・・目の前が真っ白に・・どんどん・・思考が・・、

くっそ・・せめて・・せめて一発・・だけでも・・畜生・・畜生ッ!!


「はー・・やれやれこんなつまらない戦いやっと終わるよ・・俺疲れちゃったなー・・」


「ふざ・・け・・るな・・よ・・」


「あッ!?ふざけるなよ・・だとぉオラッ!!」


ズババババババッ!!ズシャァァァッ!!


こ、こいつぅぅぅァッ!?

僕の動かなくなって苦しんで倒れている体に無数の武器をッ!?

くっそぉぉぉがぁぁッ!?

痛いッ!

くっそいてぇよ・・いや痛いどこらじゃなくてグァァァァッ!!


「ウォァァァァァァッ?!」


「あ・・ああ・・やめて・・やめてよ闇裏ッ!」


「あはははッ!!もうボロボロッ!こーんな情けない姿見せて情けなーッ!!」


「ウガァァァッ!!!グァァァッ!!ウァァァッ!!」


全身に刺さる痛みが・・苦痛が・・

涙を流して俺は地面に縛り付けらた体を必死にもがき苦しんだ。

クソがッ!

クソがァァァッ!!


「ヴぅ゛ぅ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!」


「はははッ!はははッ!!いい気味だ・・しばらく君にはそこでおとなしくしてもらうか・・さて、美華・・約束通りご褒美の時間だ・・お友達を解放してあげよう」


「はい・・闇裏様・・」


「クハァ・・クハァ・・ま・・まて・・」


「・・・(・・・ッ)」


「・・・えっ?」


僕は森の奥へ奥へと遠ざかっていく闇裏と美華を、

ただ見ることしかできなかった。

何もできなかった・・苦しむ体をどうすることもできなかった。

だが・・一つだけ・・苦しみ果てた体にも流れて来たものがあった。

それは・・美華の一瞬だけ止まった時の事だ。


『(ごめんなさい・・銀様・・)』


そう、とても悲しく聞こえた悲痛な声だ。

助けを求めてる声しか聞こえないはずの心の声が、

どうして・・どうして謝罪の気持ちの声まで・・、


「・・くそっ・・それよりも・・まずは・・これをどうにか・・」


「ぎ、銀君ッ!大丈夫かい・・あーもうッ!魔力がなぜか使えないから余計抜け出せないしーッ!」


「くっそッ!しぬんじゃねぇぞッ!」


みんなが必死に僕の事を助けようとしているが、

どうやら二進も三進もいない様子だ。

向こうにいるゼロさんたちも置き土産の様におかれた武器に中々来れない、

灯さんにいたっては絶望の深い闇の中に入り込んでいてそれどころではない、

ダメだ・・このままではもう・・僕は・・


『【創世撤去(キャンセラ)】ッ!!』


パチンッ!シュゥゥゥンッ!!


えっ・・?

なんだ・・突然僕の体が軽くなった?

体を差していた武器たちが・・なくなった?

どうして?何が起こって・・?


「おっ!?何が起こったわからないけどこれで動けるッ!」


「やったぜ!・・でもなんで?」


「おいッ!お前ら無事か!?」


『えっ!?』


みんなが目を疑った光景だ。

そう、今上空から駆け付けたのは・・風浪・・闇裏ッ!?

そうだッ!

風浪 闇裏だッ!

間違いないッ!

先ほど僕に危害を加えて来たクソ野郎の・・風浪 闇裏ッ!!

でも・・どこかおかしい?

目つきがなんだか生きている・・そうだッ!

さっきのような鋭く人をゴミの様に見る目とはまるで天と地の差のある、

とても生き生きとした目だッ!!

姿かたちはそっくりだ、で・・でもッ!

信じられない・・どうしてここまで裏表の違うような人物がッ!?

しかも僕の前に駆け寄っているのに・・なんだこのさっきの違いは!?

絶望を感じていない・・どこか・・どこか違うッ!

ああくそ・・驚き過ぎて言葉にできないッ!!


「おいッ!あんた無事かッ!?無事ならそれでいいッ!待ってろ・・今すぐ治療してやるッ!【創世(クリエイショナル)治療(キュアー)】ッ!!!」


ヒュァァァンッ!


僕の体が光に包み込まれて体全体がまるで作り直されたかのように軽くなった。

痛みどころか傷一つ感じない、すごい・・一瞬で僕の体は完治したッ!


「す・・すごい・・動くッ!手も・・足も・・ッ!」


「よかった・・間一髪だな・・」


「・・・いやいやいやいやいやッ!!!それよりもお前誰だッ!?双子の風浪ッ!?」


「い・・いや・・私の知ってる風浪は一人だけだ・・ましてや生き別れの弟も聞いたことはないぞッ!」


「じゃ・・じゃあ誰だ?」


「・・僕は偽物でもなければ・・弟でも兄でもない・・正真正銘の・・本物の風浪 闇裏さ」


ほ、本物ぉぉぉぉッ!!

じゃあ、あっちが偽物という事か!?

どういう事だ・・じゃあなに・・あのクソ下衆は風浪闇裏のパチモンなの?


「やばい・・もう頭の整理が追いつかない・・」


「ご・・ごめんッ!突然で困惑するかもしれないが・・これだけは言える・・僕は君たちと交戦するつもりでここに来たわけじゃない・・僕は・・ケジメをつけに来たんだ・・あいつとッ!」


「あいつ?」


「そうだ・・ちょうどいい・・ここにいるみんなに僕が本物である証拠・・そしてここに来た理由を話そう・・時間がないからかいつまんで話すけど・・一度しか言わないからよく聞いてッ!そして何も質問はしないでッ!いいねッ!?」


「お・・おう」


この風浪さんすごいまとめもなんだけど・・

すごい落ち着きがないな・・


「・・僕はね、戦後姉さんのあの戦いがいやになってそのあと先生と暮らすことにしたんだ・・その後はずっと【隠れ里】に姿をくらましていたんだ・・この夏風の里の近くの里にある里にね」


なるほど・・つまりこの闇裏こそが正真正銘の闇裏だ。

ここまで明確な情報を提供してくるのはこの場にいた者すべてが納得しただろう。


「でも・・隠れ里の平和も長くはなかった・・先生の寺子屋はね・・アビスに狙われていたんだよ・・ただでさえ悪い大人や魔物から先生の生徒を守るのだけで精一杯なのに・・アビスの連中は里を人質に・・この里を破壊することに加担しろと言った・・そして・・僕は仕方がなく承諾した・・その時に・・僕の力も・・僕の体もあのアビスの四帝・・被り物(フェィカー)に全部コピーされたんだ・・」


「じゃ、じゃあ・・今までのお前ぽっい事件とか全部・・」


「そう・・僕の仕業じゃない・・全部・・被り物(フェィカー)がやったことだッ!!」


なんてことだ・・それじゃあ僕は強引に力をコピーされた相手に、

恨み怒りを抱いてしまっていたのか・・?

何てことを・・前に弟には恨み妬みで殺すなと・・そんなことを言っていた僕は・・ッ!!


「グッ・・アビスッ!」


「本当にすまない・・みんなには迷惑をかけた・・」


「いや・・こちらこそすまないッ!一度は君の事を恨んでいたッ!もし君の事で憎悪がいっぱいだったら・・今頃どうなっていたか・・」


「いいんだ・・その時は大人しく殺されてやる・・それが償いになるのならな」


やべーよこの闇裏さん同じ少年顔なのに、

なにこの偉大な心を持った聖人は、


「そ・・それよりも本当に貴方は本物の闇裏よねッ!?」


「ね・・姉さん・・そうだよ・・僕は・・闇裏だよ」


「ああ・・よかったぁぁぁぁッ!!」


「ダァァァァッ!!姉さんッ!くるじぃッ!!くるしいからぁぁぁがぼぼぼべぇぇッ!!」



すごい圧力だ、僕なら死んでるね、

流石のうれしさで灯先生泣いちゃってるよ、

闇裏が苦しんでヘルプの手をあげているのにも気づかずに・・


「と・・それよりも闇裏君ッ!要件は分かったし銀君や僕たちを助けてくれたのはありがたいッ!だがケジメをつけるとは?」


「そうだッ!まだ肝心のお前のここに来た理由を聞いてねえぞッ!」


「ブハッ!・・そうだったね、ここに来た理由・・それはあいつと戦うためだ!あいつは僕との約束を破った・・だから僕はあいつと戦うためにここに来たッ!」


「闇裏・・」


「姉さん・・僕は戦いは嫌いだ・・だけど時には根絶させなければならない種族と生命はどの世界にも存在する・・このままあいつらを生かしても・・何も変わりはしないッ!」


僕は闇裏のいうことはとても心に伝わった。

そうだ・・今回ばかりは恨み妬みなんかじゃない・・、

僕は・・僕は多くの命を救うためにッ!

アビスを倒しに来たんだッ!

奴らに・・明日を与えてはいけないッ!


「闇裏ッ!行こうッ!僕も協力するッ!」


「銀さん・・ありがとう・・だけど・・」


「いいんだ・・僕にも救いたい人がいる・・それに・・まだ認めるには早いんだ・・あの子の・・あの行動をッ!」


「もしかして銀君・・まだ美華ちゃんを?」


「ぎ、銀ッ!さすがにあきらめわるいぜッ!?」


確かにみんなが困惑するのも無理はない、

だけど僕には感じたんだ。


「銀様・・お気持ちは分かりますが・・美華はあのように人間を恨んでいるのは確かです・・もうお認めになっても・・神は貴方を恨みません・・」


「そ、そうだよッ!銀君ッ!あの子結構腹黒ちゃんだよー?」


「いやみんな・・銀殿はきっと・・」


「うん・・みんながそんなに心配しなくても大丈夫・・銀には・・そんなこと言っても無駄さ」


そう、僕の心の中はもう決まっている。

美華のいう様に僕はお人よしだ。

馬鹿でどうしようもないけど・・これだけは・・、

この覚悟だけはもう誰に言われても揺るがないッ!


「・・美華は・・僕と去る時に・・ごめんなさいてっなぜか心の中で言っていたんだ・・・その時・・もしかしたら・・アレは今思えばどう謝罪すればいいのかという助けの声だったのかもしれないッ!」


「そ・・そんな馬鹿な・・」


「まじかよ・・」


「マジもマジ・・大マジさ・・美華ちゃんはね・・銀君にだけは絶対的忠誠を誓っていた・・それなのに・・そんなことまで言うなんてやっぱり何かあるとはおもわないかい?」


『・・・』


この場いるみんなが考え込むくらいの話だ。

それもそのはずだ・・あんなことしておいて今更信用するほうがむずかしい、

だけど・・みんなに信用してほしいんだ。

美華の事をッ!


「お願いだッ!みんな力を貸してくれッ!美華を・・美華をもう一度信用してくれッ!」


「銀君・・そんな頭を下げないで・・下げたって・・僕の心は最初っから決まってるさ・・」


「は・・白鶴さん・・」


「はは・・僕は行くよ・・ここまで来たんだ・・しっかりと野良猫に説教しないとね」


「私も・・ここまで来たら協力しないなんて・・言えないよな?」


「うん・・銀君・・この場にいるみんなは大丈夫そうだよ?」


みんな・・・やっぱり最後まで仲間だッ!

こんなに頼れる人たちはいないッ!


「な、なら我らは他に戦える者がいないか呼んで来ようッ!」


「そうだシャオランちゃんッ!確か向こうのほうに八咫ちゃんいたよねッ!?」


「し、しかし八咫殿では・・」


「こうなったら私たちで強引に連れてこうようッ!いいね!?」


「あ、はい」


「あ、ありがとうございますッ!」


「いいってことッ!困ったときはお互い様でしょ?私たち本当は人間好きだしねーッ!」


「ああ、さっきはあんなことになってしまったが・・本当にすまない・・お前たちを試していただけだ」


その割にはわりとガチギレの様な雰囲気はあったけど・・

まあ、突っ込まないでおこう。


「では・・時間がないでござる・・皆の者・・もう各自分担は決まったッ!ここからは迅速に行動するでござるッ!」


「はいッ!」「おっけーッ!」「まかせろッ!」「招致之介ッ!」「まかせなッ!」「承諾ッ!」「うんッ!」


この場にいるみんなが意を消して全員がまとまった瞬間だ。

掛け声はバラバラでも・・みんなの気持ちは一つだッ!

これならばきっと・・あのアビスにも対抗できるッ!

僕たちはそれぞれ・・目的への場所へと走り出したッ!

待っていろよアビスッ!待っていてくれ・・美華ッ!!


 ◆


だが・・僕の思いとは裏腹に・・美華のほうでは・・

とてもとても恐ろしいことが起きていたのだった。


「う・・うそですよね・・闇裏様!?」


「なに寝ぼけてんだ?言ったろ?ちゃーんと・・お友達と一緒にしてやるって?」


「ち・・・違うッ!!こんな化け物が・・こんなのが私のお友達なんかじゃないッ!!」


その化け物とはいったいなんなのか、

僕にはまだ知る由もなかった。


「いいから・・こっちこいよッ!!」


「いやぁぁぁぁ!!誰が助けてッ!お願いッ!!助けて!いやだッ!行きたくないッ!死にたくないッ!!やめてぇぇぇッ!!」


「うるせぇッ!!」


美華は強引に偽物の闇裏に得体のしれない化け物のブヨブヨとした肉体にひっけられた。

そしてぐちゃぐちゃと動く化け物に取り込まれていく美華、


ぬちゃぬちゃ・・ぐちゃぐちゃり・・


「イヤァァァァァッ!!!やめてぇぇぇぇッ!!死にたくないッ!!死にたくないよぉぉぉぉッ!!」


「はははッ!!!ははッ!!!!アッハッハッハッ!!!!最高ッ!最高たぜッ!その顔ッ!!!絶望の目、おびえる顔ッ!アハハハハッ!そんなバカみたいに叫んでも・・もうだれも助けてくれないぜ~?」


「いやぁ・・やだ・・まだ・・しにたくない・・しにたくない・・」


少女は必死に抵抗することもなくその化け物に飲み込まれていく、

そしてどれだけ叫んでも聞こえることはなかった。


そのむなしく響く助けを呼ぶ声は・・誰にも聞こえることはなかった。



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