無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第16話 「最強無限創世者」
静かにざわめく森林、
ここは鏡子さんと鏡之介さんが戦った荒れ果てた戦場、
僕たちはあの戦いから少し話をしていたのだ。
まあ、なにを話していたかというと・・
「・・・という事でね、僕はあの時アルテミスちゃんと団結して、さらにはショコラとメアリーにも・・あとマーガリン先生にも・・それから妹のロゼッタにも・・」
「だーかーらーッ!なんでそこに私は入れてくれないんだよッ!おかしいだろッ!親友、悪友、幼馴染、先生、妹とくれば・・あとはッ!」
「あとは・・ないな、恋人いないし」
「グッ・・そ、そうだよな・・で、でも!ひどいじゃないかッ!俺に一言くれたってよかったろ!そしたらお前の事を・・」
「ばーか、お前に俺の気持ちが分かるかこのギリギリBバスト」
「なんだとこらァァァーッ!!」
まあ、このように二人が痴話喧嘩をするもんだから、
この数時間はもうゆっくり休んでいるわけだ。
にしても、なんだか二人とも裏表がなくなってよかったなと、
安心する僕たちだった、あいかわらず暴力的なのは変わりないけど、
「フフ・・二人も仲直りできてよかったです」
「だろー?やっぱあの子たちはこうでなくては・・」
心なしか灯先生も美華も落ち着いている。
少し休憩をとったのは正解だったな、
そういえばゼロさんたちはどうしたかというと、
生きていたシャオランさんとシャオ・・なんとかさんを運んで、
先ほどから向こうで安静にしている。
かなり深い傷もあったけど、灯先生が能力でなんとかしてくれた。
灯先生の能力は医療もできてすごいと改めて思う場面だった。
こんなに多くの人を救って、こんなに誰からも信頼されているなんて、
きっと前からすごい人だったんだろう。
「やっぱり灯先生はすごいですね・・」
「何がだい?」
灯先生が首をかしげていう。
自覚がないのかあるのかはさておきこの余裕の素振りは流石だ。
「僕と違っ灯先生は万能・・それにくらべて僕は別に主人公だから強いとか、主人公だから恵まれているとか全然ないしさ・・」
「はっはっー・・何を言うかと思えばそんなことかい?君は実に馬鹿だね」
「えっ?」
僕が少し悩みを吐くようにいうと、
灯先生はそれを吹き飛ばすように明るい声で言う。
「いいかい銀君、世界には数万・・数億の命持つ者がいる・・君はその中でもかなり恵まれているじゃないか・・いや、そういう事よりも大事なのはその無限に広がる命の中で君は「どうありたいか」だ・・私はもちろん人々を助ける英雄になりたいとか思っているかそうしているだけさ・・君みは贅沢だね、もうすでに叶っている願いに対してそんなことを言えるなんて・・」
「灯先生・・・」
「恵まれているから幸せとか、強いから俺つえーとか・・それでありたいならそうすればいい・・重要なのは君がそれを望んでいるかだ、君は・・そう望んでいるのかい?」
灯先生の繊細な言葉に僕は心躍った。
僕は微笑んでこう灯先生に言った。
「先生・・僕は・・僕はそうありたいとは思ったことない・・もし僕はみんなと手をつないで歩けるような世界にしたい・・そんな・・夢の様な世界にしてみたい」
「うんうん・・それでいいんだよおとぎの国の王子・・君は主役と思える自覚があるんだ、君は自分の事を主人公の父親だと思っている精神異常者でもなければ、いつまでたってもやる気のないパイロットでもない・・ほかの人なんて関係ない、人は人それぞれ違うのだから、君も違う様に生きればいい、君という存在は一人しかいなのだから・・君のままでいていい」
「はは・・いろいろ危なかったですけど・・ありがとうございます灯先生」
「おやすいごようさ、私はすべての医療ができるからね・・またホームシックでも心の病でも恋の病でも相談しに来なさい~」
「はい、またそうさせてもらいます!」
灯先生のおかげでなんだか心が軽くなった。
僕はなんだか自信が持てるようになった。
これからもっと前を向いて歩いて行こう。
そう何かを誓うように前を向いていると、
なんだか森林あたりが少しだけ明るく感じた。
いったいなぜだろう?
「・・そういえば今何時ですか?」
「んー5時ぴったしかな?みてごらん、美華美華ねちゃってらー」
「ああ・・本当だ・・」
「くぅ・・くぅ・・」
あまりにも僕と灯先生の話が長かったのか、
安らかに僕にしがみついて寝てしまっていた美華、
なんだかこんなにしがみついて悪いことしてしまったなと、
ちょっとだけ反省する僕だ。
美華にはここで誰かと一緒に留守番してもらうかな、
こんなに安らかに寝ているのに今更起こすのもかわいそうだしね、
「・・さて、そろそろ行こうか、こんなところにいつまでもいても暴君とやらのもとにはたどり着けないしさ」
「そうだねー・・そろそろ・・」
と、灯先生が言ったその時だった。
この一瞬ですべての出来事が起きたのだ。
そう、僕は気づかなかった。
この・・薄い薄い・・毒の正体にッ!!
「・・・あれ・・なんだか・・たちくらみが・・」
「銀君?」
僕が美華をそっと置いた時のことだ。
その場を立ち上がった時目の前がとてもくらくらとした。
ドクン・・ドクン・・と心臓の音が激しく、
何故だろう・・とても苦しい・・、
「なんだ・・これ・・」
「銀君ッ!その状態で歩かないでッ!!」
『今だ美華ッ!!そいつをこっちに飛ばせッ!!』
「・・了解」
僕が頭を片手で抑えながら歩いていた時だ。
その油断を見過ごさなかったかの如く、一瞬でこちらに近づいて、
僕の背中を蹴った一人の姿があった。
ドゴォッ!!
僕は突然の出来事で声すら出なかった。
ふと後ろを見てみたら、さらに声は出なくなった。
僕の背中を蹴った美華に・・何も声は出なかった。
「うそ・・だろ?」
「銀様・・あなたは本当に・・おひとよしで・・どうしようもなく・・馬鹿ですね?」
「嘘だといぇぇぇぇぇッ!!美華ぇぇぇぇぇ!!!」
ズザァァァッ!
僕はとても悲しい出来事に涙を流して地面に叩きつけたられた。
突然の裏切り、衝撃の真実、黒く染まったあの目、
僕は・・この悲しい事実に涙を流していた。
「美華ッ!!お前やっぱりッ!!」
「な、何事だいッ!銀君ッ!」
「灯ッ!どうしたッ!!」
シュバババッ!!ドドドドドッ!!シュルルルルッ!!
灯先生や鏡之介さんがこちらに駆けつけようとした時にはもう遅かった。
灯先生は突然の大量の武器にその身を近くの大岩に張り付けられた。
鏡之介さんは謎の大量の大木にその身が動かなくなり、
鏡子さんは大量のチェーンで拘束されてしまった。
「なんで私だけチェーンッ!?」
「予算かサービス要員だろう」
「ふざけんなッ!だったらお前の大木に絡まったのでもいいだろッ!」
「あーもう、今はそんなボケにつっこんでいる場合じゃないッ!鏡子ちゃんアレ見てッ!アレッ!」
「あっ?アレ・・てっアレって・・」
鏡子さんや鏡之介さんが驚くほど衝撃的な光景、
それは僕の周り、僕の目の前の人物に、
視線がいっていたのだ。
「・・そうか・・私をこんな風に壁に貼り付けにできるのは・・お前だけだったな・・こんな風に・・作戦そのものがおとりにできるのも・・こんな・・姑息なやり方をするのも・・お前だけだよな・・」
「おまえ・・だけ?」
僕は灯先生が悲しく見つめるその視線の先に注目した。
僕が地面に倒れこんでいて、
さらに高みにいるように見えた驚異的な人物、
それは空中に存在した大いなる男、
体は小さくても、その強者のオーラはすさまじかった。
僕は・・戦ってもいないのにすでに・・恐怖していた。
その小さな銀髪の男の子にッ!!
「そうだよ・・姉さん・・僕だよ・・闇裏だよ・・」
「やっぱりね・・はは・・まんまとやられたわけだ」
「姉さんッ!?どういう事ですか灯先生ッ!!」
このいかつい男の子が今言った言葉から察するに、
もう検討はついているが、
あの悲しい灯先生の眼差し、そしてあの時の行動、
間違いない・・
「・・闇裏は私の弟だ・・血は繋がっていないが・・大昔捨てられていた小さな小さな子を引き取ったんだ・・私が病院でずっと介護をしていくうちにあいつは私をまるで姉の様にしたってくれた・・そうしていつしか私はあいつに苗字と名前を与えたんだ」
「【風の様に強く気高い狼】に【どんな闇にも光と言う裏は存在する】・・その意味を込めて風浪・・闇裏・・俺はあんたのつけてくれた名前が大好きだった・・俺はあんたの微笑んだ顔も好きだった・・俺は姉さんが好きだった・・あの戦争が始まるまではッ!!」
「・・・」
どういう事だ・・いったい何がどういう事なんだ?
灯先生のあんな暗い顔見たことないぞッ!!
「どういう・・ことなんですか・・?」
「あーそうかそうか・・お前みたいな戦争もしらねぇー夢のお国の馬鹿はしらねぇからな・・教えてやるよ・・」
「・・ッ」
「姉さんはな・・俺を裏切ったんだ・・昔嘘をついて捨てた母親の様に」
「な、なんだってッ!?」
裏切った・・ッ!?
昔捨てた母親の様に?
一体何がどういう事なんだ・・。
あのいかつい目つきから察するに、
灯先生の苦しそうに歯を食いしばる姿を見るに、
これは・・そうとうやばい案件なんじゃないのか?
「昔・・それは何百年と昔・・俺は姉さんが病院の忙しさを増すようになってからは姉さんに迷惑をかけないように里の外を歩いた・・時には寺子屋の先生に勉強を教えてもらった・・時には花畑の主にいろんなことを教わった・・時には強さを求めてジャリュウに格闘も教わった・・俺はそうして外を歩いてまわった・・」
「・・そ、そうか・・でもそれって別に悪いことじゃないよな?」
「そうだな・・先生も瑛里華もジャリュウも・・ましてや姉さんも誰も不満はしていなかった・・むしろ成長する俺に微笑んでいた・・だがッ!!俺のこの浅はかな行動が悲劇を招いたんだッ!俺が多くの者に育てられたことによって・・先生を除く3人は争ったッ!あの戦争が決まってからッ!」
「争った・・?」
言葉を強く強く嘆きを交わす闇裏、
次第に怒りの涙をボロボロと見せた。
その表情から、その言葉から、僕はすべての事に察しがついてしまった。
「俺は・・俺はみんなで仲良くしたかったッ!なのに・・なのにッ!秩序だの混沌だの・・中立だのッ!あいつらは俺をどっちかの道にしか選ばさせてくれなかったッ!いくら声をかけても止めても争いはとまらなかったッ!!ジャリュウは大きな傷を負って倒れるし・・挙句の果てに・・姉さんはッ!!姉さんは瑛里華を‥瑛里華を殺しんだッ!!!!」
「・・ッ!?ころ・・した?」
僕は震える体を後ろに振り向かせて灯先生を見た。
灯先生は唇をかんで血を流していた。
これは・・本当なんだ>
本当に・・あの灯先生が?
「・・・正確には・・エンチャントで作った【悪夢仮死の矢】をあの瑛里華にめがけて放った・・心臓をつらぬいたせいで・・私の医療ではどうすることもできなかった・・」
「そうだ・・悪夢を目覚めさせるには・・自身能力じゃあれはどうすることもできない・・悪夢を殺すには悪夢に入るしかない・・そんな方法・・ないけどなッ!」
「そう・・だから・・事実上では彼女は死んでしまった・・私の・・私の愚かな行動のせいで・・」
「今更悔い改めてもおせぇんだよッ!今更姉弟面してここに来るんなてなッ!おせぇんだよッ!」
「・・ごめん・・なさい・・ごめんなさい・・ダメな・・お姉ちゃんで・・」
「けっ・・まったく・・反吐が出る過去だぜ」
こ、こいつ・・、
こいつときたら・・ッ!!
僕は苦しく震えていた体に力を入れて立ち上がった。
流石の僕もキレたぞッ!
泣いて苦しみながら・・必死の思いで・・
きっとお前に謝罪の意を込めてここに来たのに、
お前はそんな態度をッ!!
どんなに体苦しくっても立ち上がらせて、
あいつにガツンと一発・・ッ!?
「ガハッ!?」
嘘だろ・・突然なんで・・
吐血なんて・・こんな口からドバドバ出るくらい大量の・・ッ!
「ふふ・・銀様無茶ですよ・・私の能力をくらっておいて・・」
「美華の能力ッ!?」
「そう・・言い忘れていました銀様・・私の能力は【復讐神の加護】・・文字通り復讐のための能力・・この能力は日の出る場所でしか使えない・・もっともこんなちっぽけな日の出で効果があるかわかりませんでしたが・・まさかあんな油断して接触する機会があったとは・・あなたの体内に私の愛の特性ブレスをしみこませました・・もうこれで貴方はずっと不治の病に侵されていきますよ・・」
「どうして・・どうして・・そんなことを・・」
こんなあくどくニタニタ笑う美華は見たことない、
まるであの天使のような笑顔が悪魔に急変したかのようだ。
急変・・もしかして、最初からあの笑顔も・・あの苦しそうな顔も全部?
じゃあまさか・・偽り・・偽りだとしたら・・!?
「そうか・・お前は最初っから・・あの時からすでに・・」
見破れなかった・・美華の本性に・・美華のそのすさまじい嘘の顔に・・、
くそっ・・僕としたことが・・ッ!
「・・じゃあ・・君はやってきたことも・・言ってきたことも全部・・嘘なんだね?」
「そうです・・私は仲間のためなら平気で貴方のような馬鹿でお人よしの銀様程度のゴミ人間はだまして利用します・・私は・・仲間を守るのだから・・」
「グッ・・そんな・・」
「ふふ・・もしかして・・恨んでますか?ねたんでますか?・・ふざけないでください」
「!?」
ニタニタ笑っていた美華の表情が冷たくあしらう顔に?
ど、どうしたんだ美華ッ!
「散々お前ら人間は私の事を殴って蹴って利用して痛い目に合わせて来たくせに・・虫がいいとは思わないんですか・・?」
「み・・美華?」
「その名で呼ぶなッ!汚らわしいッ!不敬だッ!私を神だとあがめていたあの頃のお前たちも・・疫病神だと追い払ったあの日も・・私は忘れていないッ!忘れていないぞッ!!」
「・・・」
「ふん・・だんまりですか・・そうやって黙っていれば何も起こらないと・・いいですよ、銀様・・あなたはお人よしで単純な単細胞ですが・・特別に貴方だけは私の奴隷にしてあげますよ・・」
「グッ・・そんなの絶対いやだよッ!いくら美華の頼みでも・・そんなのは嫌だッ!美華!そんなに心にないことばっか言わないでよ」
「・・ッ!うっとおしい・・すこしお仕置きが必要のようですね・・闇裏様」
「そうだな・・こんなゴミとっとと片付けたいが・・特別にお前の遊び道具としてつけるのも悪くない・・」
好き放題言いやがってッ!!
この下衆がッ!
言いたいことはそれだけかッ!
銀髪この野郎ッ!
「てめぇだけはもうゆるさないッ!流石の僕でも我慢ならないッ!」
「へえー・・じゃあお前俺と戦うのか?」
「ああ・・戦ってやる・・ガハッ!!」
くっそ・・血が・・、
今は不治の病で・・体思う様に動かない・・ッ!
「無茶だッ!銀君ッ!闇裏は世界最強だッ!もはや今の君では手も足も出ないのが現実だッ!」
「そんなことない・・僕は今までどんなピンチも乗り越えてきた・・だから・・だから今回・・もぽぁぁぁッ?!」
「ぎ・・銀君ッ?!」
「ほーら・・やっぱ勝てるわけないんだよ・・俺の前で・・減らず口叩くなよ三下が・・」
ズドォォォンッ!!
僕は戦う覚悟を決意するその瞬間だった。
その一瞬でその最悪の出来事に僕は気づいしまった。
その一瞬で僕は体にとても大きな一撃を決められた。
まるで体の骨を砕いて心臓に刺さりつけるような、
そう、そんな一撃を今この一瞬で目の前に現れた闇裏という少年が、
今、どうやって僕の目の前に来たのかすらわからなかった。
今どうやって僕に何発も体に強烈な強打を与えられたのか分からなかった。
それすら理解する時間がなく、
僕の体は強く地面に叩きつけられた。
血反吐を吐き散らして、もう・・何も考えられないくらいの絶望を浴びて、
僕は・・目の前が真っ暗になった。




