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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第四章 楽園編
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無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第13話  「黒き翼舞い広げ」

ここは暗い暗い森林の奥地、

川を伝って歩いて早数時間、

私は迷子の子猫ちゃんになってしまった。

そう、私は黒咲柘榴だ。


「に゛ゃぁーッ!!はーぐーれーたーッ!!!」


頭を抱え込んでショックを受けてしまうほど衝撃的な事だ。

やってしまった、やはりあの時夜桜さんに着いて行くべきだった。

くそう、まさかこんな迷子になるほど入り組んでいたなんて、


「もー次はどこを歩けばいいのッ!進めば進むほど林々ッ!どうすればええねんッ!」


私は1人彷徨う可哀想な少女、

ああ、こんな少女に誰か声でもかけてくれないだろうか、

て言うか1人は流石にさびしいんだよう。

せめて、夜桜さんぐらいいても良かったじゃない、

なんであの人の言葉に乗せられて単独行動なんてしちゃったかな、

あたしって、ほんとバカ、

迷子になるぐらいならまず最初っから調子にのるんじゃないよッ!


「クッソー・・せめて歩いてたらどっかの広間とかに出れたりしないかなー」


そんな事をぶつぶつつぶやきながら手当たり次第見渡して前に進む、

そんな事言っていると神様が私のこんな様子を見透かしていたのか、

静かで暗い事態は一転する。

私が前を進んで歩いていた時空を見上げると奇妙な物が見えたのだ。

謎の黒き大樹の様な物が高く高く天を上るように動いていた。

そんな気がしたのだ。


「・・アレは・・なんだ?」


しかし、そんなのが見えたのはほんの一瞬、

その大樹的な何かは黒い影のみが一瞬見えただけで姿を晦ました。

妙だ、あんな物人獣山にあっただろうか、

私は疑問に思って、大樹のある方へと走り出す。


「(間違いなくアレは・・この山の物ではないッ!私にはわかる・・ッ!)」


大急ぎで走り息を荒くして走る私、

しかし、それを止めようと邪魔する者が現れたのだ。

そう、私が走ってようやく広い場所に出たと思ったその時に、

その邪魔する人は私が出てくると同時にクナイを投げつけて来たのだ。

だが、私はとっさの反射神経を使い素早くそれを弾くッ!


「【雷鳴(らいめい)雷電刀(らいでんとう)】ッ!」


カァンッ!キィィィンッ!


右手で素早く腰に差していた雷に染まる黄緑の稲光がバチバチと輝く刀を、

抜いて神速の対応を見せつけた。

そして私はその刀を真っ直ぐそのクナイの投げられた方角へと、

刀を相手に差し向け、鋭くクールな声で私は言う。


「誰だ・・私にこんな物騒な物を投げつける輩は」


「あーらら・・やっぱ一本だけじゃ弾き返されてしまいましたか・・」


「当然だ・・アイツの今の動きを見たか?アレはただの刀マニアじゃないぞ」


私の刀の矛先には何がいたか、

見た目は人そのものだ、人獣山と言うくらいなのだから、

みな人の様な容姿はしているだろう。

だが、彼らは・・いや、私が今見ている男女は人に近かった。

1人の少女は黒髪のセミロングヘアーの様な髪型、

そして服装はとてもわかりやすい姿をしていた。

なんの種族か一目でわかる頭の赤い頭襟、

黒いミニスカートは風をなびかせ鮮やかに舞う。

肩が見えるくらいの振袖の様な白い服、

洋服と和服の中立と言ったところか、

背中には長さの異なる短刀が二つ、

そして腰に差さっているアレは天狗の代表的なうちわ、

間違いない、背中に翼は見えないが隠しているだけだろう。

奴こそ烏天狗の神速切り込み隊長と恐れられていた。

【龍田川 紅葉】に違いない、私は確信したッ!

もう一人は渋く風格のある青年?

いや、歳はそれなりにあるはず、

黒い和服の着物を来たマフラーを風になびかせている男、

髪はぼさぼさとさせたヘアースタイルが特徴的だ。

黒いマントの様な物を肩にかけていて、

背中には大剣の様な大きな刀、

両腰に差しているのはソードオフショットガンの様なライフル銃、

それっぽい形をしている、たぶん違うんだろうけど、

中々に血相も悪いが奴は・・人間か?

もし、同じ烏天狗の仲間ならおそらく伝説の鬼竜天狗の八咫烏、

名は【八咫之 桜井】だろう。

だが、そんなはずあるものか、

彼は確かに男性だが、じつに数年前裏切りの名を施して、

どこかへ消えたと言っていた。

そんな男が生きているはずがあるまいよ、


「今の物騒な一撃は貴方達ですね、どうしてこんな事するんですか?」


「フッ・・先に攻めて来たのはそちらであろう・・これに対して何されても文句はあるまい、ならば多少の不意打ちは覚悟の上でここまで進むべきだったな」


「よく喋る烏な事で・・そのまま今日は焼き鳥か親子丼でも良いんだよ?」


「それは困りますね~・・私達ももう数少ない種族、山を守るだけでも多くの仲間たちを失って生きて来たのにこれ以上失ってたまるものか」


互いの腹の探り合いが激しい心理戦と言った所か、

私達の会話は言葉が激しくなる一方だ。

口なら達者な烏め、


「・・それで、貴方は私と戦いますよね?よもや私と戦わないなんて選択しあるとおもってはあるまいよ?」


「当然、私は貴様と戦う覚悟はできている」


今度はにらみ合いがさらに火花散らすほど互いに目をそらさない、

激しい視線のぶつかり合いに変わる。

あの烏、一見御託だけ並べていると思えば私から視線をそらそうとしてやがる。

背中をよく見たらもう刀を抜く構えだ、やりやがる。

なら私ももう一本の刀を抜く構えだ。


「ヤタさん・・この勝負に勝ったら、戻ってもらいますよ」


「ああ、もちろんだとも・・勝ったらな」


「・・?何をぶつぶつ話している、まさかこの期におよんで立てか?」


向こうでぶつぶつと小声で話している。

まさか、今になって私の実力に恐れをなして、

やっぱ怖いから2人で戦います的なオチじゃないよな?

やめろよ、冗談でもそんな真似は良くないぞ、

2体1とかマジやめろ、CPUがどんなに強くってもまず、

一方的に殴られる痛さと怖さを考えなさい、

いかん、こんな事考える間に私の決意が鈍ってしまう。

早い所勝負に持ち込まないと、


「さあ・・戦うんだよな?」


「ええ、受けて立ちますよ・・私は負けるわけには・・いかないんですッ!」


「良い心構えですねッ!私を前にしてよく言いましたよッ!その心構えに免じて私も全力を尽くしましょうッ!雷鳴雷電刀ッ!疾風疾走刀ッ!この黒咲柘榴に力をッ!」


シャキィンッ!スバッ!

風を舞って緑色に輝きを示しだす大いなる力放つ1本の刀、

もう一つは黄金に輝き稲光バチバチと鳴らして輝く刀、

2つの刀を十字に重ねて鋭い目つきで私は相手に強者としての風格を見せつける。


「人間はやはり口だけは達者・・でも、所詮それも私の神速を見てからでは・・行くぞッ【雷鳥】ッ!【千鳥】ッ!」


シャキィッ!スパァァンッ!

紅葉が目にもとらえられない速さで後ろ腰の2本の刀を取り出して、

あちらはクロスするように構え、私ほどではないが鋭いまなざしで、

戦闘に対する覚悟を見せる。


「いざ・・まいるッ!」


「ええッ!まいりましょうッ!」


『ウォォォォォッ!!』


フォォォンッ!!ギィィンッ!!!

遠く離れていて間合いがあった2人だが、

その間合いは一瞬にして縮まる。

お互いの気迫と共に一瞬にして互いの両刀が鍔競り合いに入る。

この二人はさきほどの攻め上がる中で、

たったわずかな時間で考えていたのだ。

しかし、その考える事すら無駄と言わざる負えないくらいの力のぶつかり合い、

両者一歩も引かない、激しい攻防を繰り広げる。


「風を操りッ!雷鳴をとどろかせるッ!【月光風雷(げっこうふうらい)】ッ!」


「そんな技通じるものかッ!【彩華(いろは)の道しるべ】ッ!」


キィンッ!スシャッ!ドゴォォォッ!

雷鳴と突風が鳴り響き、吹き荒れる戦地、

激しく両帆の刀を鮮やかに美しく切り上げ切り裂く私、

それに負けまいと神速の動きを見せる紅葉、

私の攻撃を避けるとは流石だ。

切ったと思ったら残像、そして背後から奇襲、

まさにパーフェクトとい言える。

だが、その背後からの蹴りも私は防いで見せた。

たとえ、いかなる方角から奇襲が来ようとも私は避け続ける。


「ハッ・・烏天狗やるじゃないか・・貴様らなんぞとっくに地に落ちた鳥風情だとおもっていたよ・・この柘榴、容赦せんッ!」


「私もこれほどまでに戦える人間は初めてです、改めて人間も捨てた物ではないと思いました・・ですが私にも譲れない物があります・・絶対に・・絶対にだ」


「譲れない物?」


譲れな物・・私が気になって疑問に不思議に首をかしげた。

すると、紅葉は両方の刀を下に向けて静かに語り始めた。


「・・そう、私には譲れない物がある、私には・・古くから守って来た物がある・・それは誇り、気高さ、心強さ・・全ての強い部分を守って来た・・だがそれは違う、守るべきもののほんの一部・・真に守るべきなのはその強さの秘訣・・【仲間】だ」


「仲間・・確かにな・・お前たち烏は独立しているようで実は群れの生き物・・そんなお前たちが単独で戦うなんて自殺行為のはず・・にもかかわらずなぜこんな強い?」


「決まっている・・」


紅葉の刀の持つ力加減がどんどん強くなる。

そこからまるで握りしめる力が強くなり、

とても顔が悔しそうに苦い顔をしていた。


「私達は・・負けたんだ・・あの戦争に・・あの戦に・・」


「負けた?・・それはもしかして・・」


「そうだ【夏風川の戦】・その大昔烏と鼬のいちみが争っていた・・鼬はな・・常に新世代の武器で相手を圧倒していた・・戦争になったきっかけはその新世代の物を山にも取り入れると言う事で猛反対した私達は必死に戦った・・多くの仲間を犠牲に・・多くの命が奪われ・・私とヤタさん・・そしてユキも戦った・・だが、戦いの最中私は敵に捕虜にされてしまったッ!カマの野郎が助けてほしくば山のアジトで決着をつけると・・そう言ってヤタさんは私を助ける為にわざわざアジトまで来てくれたんだ・・」


とてもよくある話だ、私にも全く違うがこういう生い立ちは聞いたことがある。

「必死の戦いの末にヤタさんとカマの野郎がついに決着をつけたんだ・・リーダー格であるカマをヤタさんが仕留めた事によって戦いは終わった・・」


「それなら・・お前たちが独立する必要なんて・・」


「・・問題はそこからだ、私を解放しようと駆け寄ったヤタさんの背後を狙うように切り裂いてきたカマが後ろに立ちあがったんだ・・ヤタさんはその刃を避ける事はできなかった・・でも、その時・」


 ◆


『ヤタさん危ないッ!!』


ズシャァァッ!!

そのカマの攻撃を受け止めるためになんと隠れてついてきていた、

白狼の1人であるユキがヤタさんに対する攻撃をかばったんだ。

ヤタさんは無事だったけど、ユキは背中に大きな傷を負ったんだ。

しかもかなり凶悪な毒を仕込まれていた。


『ユキィィィッ!!』


ヤタさんはその時涙していた。

自分の慢心していた行動に、自分の間違った行動に、

それでも・・泣き悲しむヤタさんの手の中でユキはこう言った。


『ごめんなさい・・やっぱり僕は無能でした・・ヤタさんの様に男でもないし・・紅葉様の様に女として強くもない・・必死に頑張って強くなったと思っていただけでした・・』


『そんな事ねぇッ!お前は強くなったッ!あんなに敵を葬ってこれたッ!お前が俺の背中を守ってくれなかったら・・俺は・・俺はッ!だが・・背中を預けるてっそういう事じゃねぇんだよ・・ッ!俺の背中を預けたなら・・お前の背中は俺が守る・・はずだったんだよッ!!この大馬鹿野郎ッ!!』


『ごめんなさい・・最期まで・・最期まで命令も・・言いつけも守れなくって・・でも・・ヤタさんが生きてて・・本当に良かった・・後は・・よろしく・・お願いします・・』


『ユキィィィィッ!!』


こうして、ユキは・・長い・・長い・・とても長くて深い眠りについた。

幸い毒を今もなお応急処置でしのいでいるが、それもそろそろ限界、

脈拍も落ちて、病態も悪化してきた。

このままではまずいのに、世界は私達を見放す。

最悪の事態なのはこの現状だ。

ヤタさんはこれがきっかけでリーダーを止めた。

強く強く燃え上がっていた闘士は何処かへ消えた。

あの光り輝いていた瞳はどこか黒く染まった。

絶望の凍りつく声でみんなにこう言ったのだ。


『俺は・・仲間を殺した・・俺にリーダーをやる資格はない』


そうして多くの仲間は独立を選んだ。

私は独立と残った仲間たちと山を暮していたが、

密猟にあった仲間、餓死で飢えた仲間、高ストレスで自殺した仲間、

みんなみんな・・私より先に死んでいった。

残ったのは私とヤタさんだけだった。

長い時の中ヤタさんと二人で暮らした。

私はその間も戦いの日々だった。

ヤタさんが動かない以上は私が頑張らなくては、

そしてこの闘士を見てまた戻ってきてもらうんだ。

沢山の密猟を追い払い、ヤタさんにもう一度・・もう一度戦場へ戻ってもらうために、

あの日見たヤタさんを取り戻す日々が・・始まっていたのだ。

そして長い時を得てついにその日はやってきたッ!

貴様らと言う部外者を追い払う事に成功したら、

ヤタさんにもう一度戦ってもらう事を約束してもらった。

理由はどうあれ条件をのんでくれたヤタさんのためにも、

負けるわけにはいかないんです。

絶対に、負けるわけにはいかないんです。



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