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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第四章 楽園編
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無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第9話 「偽りか事実か」

あれは、涼しい秋の風が吹いていた頃だろうか、

まだ、冬の風が訪れていなかった。

まだ、凍えるほど寒くはない時の事、

山の神社で僕とアルテミスは楽しく話していた。


「・・そろそろ冬だな」


「ん~そうだね~」


「これから寒くなると下級生は大変だろうな~・・俺は困らないけど」


「アハハ・・アルテミスは常時厚着だからね、黒い衣服が良く似合っているよ、その皮のコートも黒いブーツもね」


「センキュー!私はかっこよく決めたいからね~」


金髪の綺麗なウェーブがかかったロングヘアーの彼女がアルテミス、

笑う時はいつも満面の笑顔で、

怒る時もいつも態度に出る。

わかりやすい性格なのが彼女だ。

彼女と出会ったのは16歳の頃だ。

同じ魔法を使える者として知り合い、

ある日クソ親に毎日心を汚される日々に嫌気がさしたと言った彼女を、

僕が妹事引き取った。

ある意味では駆け落ちなのかもしれない、

別に恋するほど好きと言うわけではないが、

大事な親友と言う事に変わりはない、

そんな大事な親友と今は何をしているか、

冬になる前に見ておきたかったのさ、

秋最後の神社から見える大夜空、

天を綺麗に映し出す星々はとても輝強い、

この冬風の里で一番美しいと言える。


「それにしても、まだかなー・・このままだと凍えちまうよ」


「焦らなくても夜はもう来てるじゃないか、時間までゆっくりしよう」


「のんきだなーお前は・・私が心配じゃないのかよ」


「だってアルテミスは魔術で温度操れるじゃん」


「それは・・そうだが・・わかんねのーかよ」


「何が?」


何かひっかかる言い方をするアルテミス、

言い回しがなんだか雑と言うか、

伝わっていないと言う奴だ。


「だーかーらー・・術とかじゃなくてッ!こうやってだなッ!!」


「ウォッ!?どこからそのふわふわ毛布をッ?!」


「へへ~・・お前とこの星空見る為に準備したんだぜ!感謝しろよッ!」


ふわふわの黒い毛布、男である僕と女であるアルテミスが一緒になって使えるぐらい、

とても大きな毛布なのだが、

異性がこんな事をして大丈夫だろうか、

確かに暖かいのだが、温かすぎると言うか、


「つか・・さりげなく距離近くないか?」


「ん?そうか?私はもうちょっと近づきたいぐらいなんだけど・・」


「恋人かッ!僕らはそういう関係じゃないよね?」


「えー?違うの?なんかショックだなー」


残念そうに見えないのがなんだか彼女らしいと言うか、

心の固さも彼女取り柄だ。

全く、この娘は僕の手に余るね、

余っても困るのだけども、本当に、


「・・ねえ、鏡之介、手・・握ってもいい?」


「良いけど?」


「じゃ、じゃあッ!腕は?腕は掴んで良い?」


「・・まあ、良いけど」


「じゃあ・・その・・」


「だが、恋人にはならん」


「ええーッ!?ここまでしておいてぇ?」


そっちが先にやったのだろうとツッコミたくなる。

全く、困った娘だよ。


「あ~あ・・まーたフラれたー・・」


「当たり前だろ?何度も言ったけど、僕の中では鏡子ちゃん一筋・・のはずだよ、君の様に男勝りでも美しいバラの様に咲き誇るのは確かに良い、だが僕には心に決めた相手がいる以上・・その人に誓いを果たす為日々答えを探す為の努力、全く・・幸せへの道は険しいね~」


「それが恋てっもんだろ?」


アルテミスとの恋愛話はいつも絶えない、

こんな感じに不意打ちに告白をしてきたり、

愛情表現が激しいのが彼女だ。

この学園で過ごしていた時に何回やられた事か、

もう、この毛布を持ってきた事も、

あの微妙な言い回しも、きっと今回も告白だろうと思って、

少しにやにやしながら聞いていた自分がちょっと、

いじわるな人間だなーとは思った。

そういう性格なのは自覚しているけどね。


「・・なあ、突然で悪いんだけど・・これ受け取ってくれるか?」


アルテミスが本当に突然渡したのはリボルバー銃、

これはアルテミスが使う武器だ。

この中に魔法が込められた弾丸を入れて発射するのが彼女の戦い方だ。

詠唱いらずの速効性の高い魔法でなおかつ威力もあるから、

学園では憧れの武器と言われている。

それをどうして渡して来たのだろうか?


「これって・・お前の大事な相棒だろ?」


「そう・・俺の大事な相棒・・MAXハンター」


「(相変わらず頭湧いてる名前だよなー・・)」


アルテミスはそういうと、毛布から出て、

座っていた神社の板から立ち上がる。

僕に背中を向けてこう語りかけた。


「お前も知っている通り・・私の体の中にある【コズミックハート】は父さんが強引な手術で取り付けたマナの源だ、これが体内にあるかぎり私は永久的にマナを使用しつづけられる、でも一回の痛みも増していくんだ、マナで修復する分、神経だって疲労を伴う、回復魔術だってそう簡単に行えるものじゃない」


「そうだな・・その話は何回も聞いたわ・・」


「最後まで聞けって・・俺さ、お前と会えて本当に良かった」


「えっ?」


「ずっとやり合って周りの奴らはすぐあきらめるのに、お前はずっとあきらめない、なんども立ち上がって俺に挑戦する、お前のその燃え尽きない精神・・好きだったんだ」


「そりゃあ・・どうも」


「いつか誰かがこのコズミックハートを手に入れる為に本気で殺しに来るか、または親父がとりもどしに来るかとか話た時にお前は・・「俺が守ってやる」とか言ってたよな?そのわりには弱くてびっくりだったんだぜ」


「ひでぇ話だよな・・」


ああ、とても和む会話だ。

こんな会話をずっとできていて僕は幸せだ。

だが、心が苦しい、


「コズミックハートは奪えば強大な力になる・・だが、悪用する奴は世の中に沢山いる、まわりがいつも挑戦とかふっかけるのはやっぱ力目的だろうな・・と思っていた中でもお前は奇跡だったな」


「当然だろ・・」


「あははッ!・・まあ、でもお前に守られてから数年経つけどさ・・俺、ここに来て良かった、お前にあえて良かった・・お前がいなかったら・・きっと今頃は・・」


「死んでいた・・て言いたいのかい?」


「そうそう、良くわかってんじゃん!」


「当然だろ?その運命を預かっただけなんだから」


パァァンッ!!

山に鳴り響いた発砲音、とても強く鳴り響いた。

この静かに風が吹き始めた神社の山で、

静かに、息の根を引き取った者がいた。

僕が見ていた背中に、油断をしているアルテミスに向けて、

一発銃を向けて弾丸を発射した。

心臓部からどろどろと大量の血が流れ、

ふらっと倒れるアルテミス、

僕はただ死んだ目の眼差しで彼女の最後を見届けた。


「・・きょう・・のすけ?」


「悪いな・・猿芝居なんか続けて・・でも、それも終わりだ」


「・・しんじ・・てたのに・・どうし・・て・・」


薄れゆく意識の中、涙をこぼして完全に意識を失うアルテミス、

彼女は死んだ、僕の手によって、

そうだ、殺したんだ・・僕がッ!

はは・・はははッ!

やったぞ、ついに手に入ったんだッ!

無敵のッ!究極のッ!力がッ!!

これさえ・・あれば・・ッ!!


「鏡之介?」


「えっ!?」


僕が輝く青いひし形の石、コズミックハートを見惚れていると、

神社の入り口から現れたのは鏡子ちゃんだった。


「なに・・してるの?」


「ど、どうして鏡子ちゃんがここにいるんだよッ!?」


「そ・・その子・・アルテミスよね?どうして血を流してるの?」


「・・・」


「ねえ・・何か言ってよ・・言わなきゃわかんないよ?」


「ごめん、鏡子ちゃん」


「ごめんじゃないよね?・・ねぇ・・嘘だよね?約束したよね?みんなで守るってッ!!」


最初の震えながら問いかけたあの優しい言葉が嘘の様だ。

どんどん怒りのつもる強い言葉に変化していく、

泣きながら強く強く言葉が変わりゆく、

駄目だ、鏡子ちゃんを完全に怒らせてしまった。


「・・鏡子ちゃん・・人は、自分の欲に正直に生きているんだ・・だから・・ごめん」


「ごめんじゃないよね?力の為だったらあなたもそうやって騙してアルテミスを殺すのッ!?」


「・・そうだ、力の為なら手段は択ばない、たとえお面の笑顔でも笑ってアルテミスを騙してやる、力の為なら・・アルテミスの心も・・弄んでやる」


「・・最低ッ!・・・最ッ低だよッ!じゃあ私達とも遊びだったんだッ!?あの日の事も、ここまでの事もッ!全部全部偽りだったんだッ!?」


僕は涼しい顔をしていたが、

気が動転してしまったのか、それとも単純に壊れたのか、

狂気の笑顔を見せてこう言った。


「ああ・・遊びだよ、君たちとの思い出なんてさ」


「ッ?!くっ・・クソがァァァッ!!」


あの日、一人の少女はその神社周辺の森林すべてを燃やし尽くした。

両手を握りしめて、全てを根絶やしにした。

怒り狂い、たった一人の道化師に向かって、

泣き叫んだ、嘆きをかわした。

だが、その悲鳴は道化師には届かず。

道化師はこのむなしく吹く風に流れて去って行った。


 ◆



「それがしんじられねぇんだろうがッ!!」


「落ち着きなよ鏡子ちゃん・・百年戦争の時に散々殴られたんだからさ・・もういいでしょ?」


「いいわけあるかよ・・アイツはなッ!お前の事をずっと好きだ好きだてっ言ってたんだぞッ!それなのにお前はッ!」


「それがどうした・・今更僕を殺したって無駄だ・・不老不死となった僕を殺す事なんてね・・」


「クッ・・クソがッ!」


なんともまあ、悲しい生い立ちだ。

あの鏡子さんが地面に殴ってわざと拳を外したのは、

おそらくもはや殴ってはいけない者としても認識が始まったのだろう。


「・・本当に・・そんな事があったんですね」


「あはは~ごめんね~・・嫌いになったかい?」


「いえ、全く」


「へっ?」


僕が即答の回答を述べて答えると、

鏡之介はきょとんと少しだが確実に驚いている表情を見せた。

鏡之介さんだけじゃない、驚いたのは周りもだ。

今の話で嫌いにならないのがおかしいのだろうが、

僕からしてみれば今の話では嫌いになれない、

まだ、そういう風な話だからだ。


「鏡之介さん・・僕はあの回想は信じられません、矛盾点が多すぎます」


「む、矛盾点?」


「そうです、まず銃で貴方が撃ち抜いたと言う話、そして・・貴方がずっと側にいたのになぜそんな遠い遠い先の未来で今更殺したのか・・客観的に見れば他にもおかしい点しかないじゃないすかッ!」


「・・へえ~・・言うじゃん、僕の話をそういう風に取られえるなんて・・」


鏡之介さんの表情が変わった。

ニヤリと笑ってこちらをあざ笑う。


「でもね・・どんなに矛盾点が多かろうと・・これが事実だ、例えどんなに認めたくなくってもこの最悪の事実からは逃れられない、逃れていいはずがない」


「・・チッ」


「あははッ!それでいいのさ鏡子ちゃん、嫌いならそう嫌いになれば良い、いつまでも受け入れたくない事実と戦っていればいいさッ!アハハッ!」


何か引っかかる。

鏡子さんをまるでわざと遠ざけるような言い方、

変だ、あの話が確かなら鏡子さんの事が好きなのが確かなら、

おそらく猿芝居では無かった。

謎が深いな・・今はこれ以上触れてももう鏡之介さんからは聞き出せないだろう。

悔しいな・・鏡之介さんと鏡子さんの仲を直せないなんて・・、

いや、部外者の僕が言う事でもないけどな、

大人しく、今は心の奥にしまっておこう。


「・・とにかく喧嘩の原因はわかりました、けれどもこんなところでおっぱじめないでくださいッ!やるなら終わった後でもいいでしょうッ!」


「・・そうだね、鏡子ちゃんいい加減どいてくれない?」


「いいだろう、ただし終わった時覚えておけよッ!」


「うひ~怖い怖い・・」


不安だ、これからこんな仲の悪いまま進んで行くのか?

これじゃあ、きまづいたっらありゃしないよ、


「・・この気配は・・」


「どうかしたのかい?美華?」


美華が耳をぴくぴくと動かして何かを察知する。

美華の第六感は凄いな、といつも思うが・・今度はなんだろう。


「ッ!?いけないッ!!銀様こっちですッ!!」


「ふぇぇッ!?」


「ま、まさか・・シャオラン殿ッ!?」


その美華の一瞬の判断で僕は美華に強引に弾き飛ばされる。

飛び込むように押し倒したからなんとか美華は受け止められたが、

その飛び込んだときに衝撃は放たれた。

ズドォォォンッ!

地を揺らがせた天より放たれた一つの衝撃波の様に鋭い光、

一瞬なんだったのか見当つかなかったが、

その正体は巨大な結界を張るための・・柱ッ!?

いま透明な壁が僕の前にそびえたっている。

少し遠くに見えるあの柱が作り出したのだろう。

そして中では瞬間的に起き上がっている鏡之介さんと鏡子さんの姿、

そしてもう二人、銀色と金色に輝く狐の姿があった。

長いロングヘアー、狐の耳をピクピクとさせ、

笑顔を見せる袖とスカートの長いゆったりとした衣装の銀狐の娘、

もう片方も衣装は似ているが格が何か違う。

セミロングの金髪の狐耳の娘、

鋭い表情でこちらにいる者全てを睨んでいた。

そして、その金髪の狐はこちらに鋭い言葉でこう言った。


「ここは・・お前の墓場だ、名を示せ」


その狐の声は美しいものではあったが、

同時に心に響く恐怖は尋常ではなかった。

僕を含め、ここにいる全ての人達が恐怖していた。



とぅーびぃーこんてぃにゅう?


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