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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第四章 楽園編
64/150

無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第8章  「望まない真実と再会」

前回のあらすじ

とりあえず主人公は精神異常者で・・

嘘です、すいません、違うんですほんの出来心だったんですよ、

まあ、そんなんどうでもええねん、

前回狂いもだれる白狼相手に一歩も揺るがない夜桜は、

争わずして勝利する。

以上、あらすじ終わり


 ◆


「この怪我では・・流石に無理だな」


「そうですね、溝部分からの内出血、頭部からの出血、ほかの怪我合わせてここでしばらく安静にしていた方が良いかと・・」


現在ここは森林のどこか、

夜桜さんをとりあえず先ほどの民家のところまで戻り介護、

なんとか応急処置ができたが、

改めてみると酷い怪我のしかただ。


「・・もうしわけございません、私の・・私のせいで・・」


「そう自分を責めるな、俺はお前が止まってくれただけでも感謝している」


「・・・」


先ほどまで狂い叫んでいたのが嘘の様だ。

またしても目から光を失い、

虚ろな目でとても深刻そうにしゃべるフロル、

彼女はとても反省しているのだが、

まあ、いくら謝っても許されないと思っているのだろう。

夜桜さんの顔見る限りそんな事は無いとは思うが、


「秋斗様の言葉を・・秋斗様の心が読めない私でもわかる、きっと今心の中で私の事を・・」


「むぅ・心外だな、俺がフロルをずっと恨んでいると?」


「はい、だって秋斗様の事を殴り殺そうとしたのです、現にいま助からないかもしれないと言うのに・・あ、もし気が済むのでしたら、どうぞお好きなようにお殴りください」


どこまで荒んでいるんだこの子は、

そんな絶望の眼差しをしながら言われても、

マニアしかやる気にはなれんだろうよ、


「はは・・殴って気が済むなんぞクズ上がやる事だ」


ついに兄上ですらなくなった。

もう、夜桜兄弟から1人省かれたよ、

恐ろしいよこの兄弟、


「でしたら・・切腹ですか?」


「・・ちょっとこっちに来い」


「ああ、やっぱりお殴りに・・」


泣きそうな顔でそんな怯えた声と四つん這いになりながら言ったら、

夜桜さん流石に困惑だよ、

この死にそうな顔に対してそんな発言はやめてあげてください、

ある程度顔を夜桜さんに近づけ、

壁に寄り掛かる夜桜さんに心配そうに見上げる。

すると、夜桜さんはその頭にスッと手を伸ばした。


「うぅ・・ッ!!」


これは殴られると思ったのか、

ビクッとなって耳を抑え込むように頭に手を乗せる。

だが、そのフロルの予想とは逆に、

夜桜さんは優しく頭を撫でた。

体の背中をもう片方の手でさすり、

安心してほしいと言わんばかりの優しい手つきだ。


「大丈夫、大丈夫だ・・」


「(あぁ・・暖かい・・こんなにもご自身はお怪我をなされているのに・・なんて暖かい・・心地よい・・ずっとこの秋斗様の中で・・安らかに・・)」


「体をゆっくり休めるといい・・もう、安心して良いのだから」


「は・・はい・・ありがとう・・ございます・・」


凄まじいゴットハンドだ。

この瞬間わずか数分で寝付かせてしまう究極の手、

実はこれが夜桜さんの能力なんじゃね?

しかし、それにしてもスヤスヤと寝ている。

さきほどまでの狂気が嘘の様だ。

モフモフとした尻尾を静かに床に寝かせる。

フロルは夜桜さんの体に倒れこむように寝てしまった。


「ところで、夜桜さんその体勢きつくない?」


「何というか・・痛みが・・無い?」


「どういう事なの・・」


「わからん、その辺に関しては何ともいないが・・にしてもフロルは髪も尻尾もふわふわのモフモフだな・・寄りかかっていりだけなのにかなりの体温を感じるぞ」


「・・夜桜さん、浮気・・ですか?」


「ヴェェェッ?!滅相も無いッ?!」


「いやいや、血は争えないと言いますし・・第一見てくださいよこの安らかな顔、これ完全に・・」


うん、これはやらかした後、

事後と言う奴じゃないだろうか、


「違うッ!それは断じて違うッ!と言うよりその理論で行くと美華殿を撫でまわしていたお主にも血は争えんだろがッ!あの判断は完全におかしいわッ!」


「違うしィッ!弟はただのロリコンなんですゥゥウッ!」


「お前弟に対して扱い厳しすぎだろッ!」


「黙れッ!この人たらしがッ!」


「お前が言うかァァッ!!」


※どちらも人の事言えません

こんなどんぐりの背比べな会話が続いて数分、

暗い森林の中の民家、凶暴な獣がいるかもしれないと言う中で、

賑やかな会話が繰り広げられた。


『ぜい・・ぜい・・』


「このままだとフロルちゃんが目覚めてしまう、静かにしよう」


「半端途中から目覚めてそうだが、賛成だ」


こんな大茶番な会話をしながらも夜桜さんはこの後安静にするため、

この民家に残る事にした。

後のことは任せろと一様夜桜に告げて、僕は民家を後にする。

この民家は一様安全だと思うから変に狙われることはないとは思うが、

ともかく、一つ心配をしながらも僕はこの民家の戸を開き閉めて後にする。


「・・民家が明るく感じたのはやっぱりこの森林の暗さだよな」


一歩外を出ただけで雰囲気が一転するこの森林、

もう、何時かも忘れてしまったよ、

しかし、僕にもこの不安を感じさせないための癒しはある。


「あ、銀様~ッ!」


「やあ、美華」


そう、美華だ。

先ほどは完全に何も聞いてはおらず、

耳を塞ぎこんで全てをシャットアウトしていたが、

今はすっかり元通り、

本人も何も出来なくてごめんと言っていたが、

まあ、気にすることではあるまい、


「お、銀殿ッ!拙者、拙者もいるでござるよッ!」


「不審者だなッ!警察に突き出してやるッ!ちょっと110に連絡しろッ!」


「アイエーッ!?なんでッ!110なんでッ!しかも自分でかけるとかマゾじゃんでざるよッ!」


て言うかマジでなんでいるこのござるござる忍者ゼロよ、

お前やられたんじゃないんかい、

なんで平然とそんなにこやかーな笑顔で人前にノコノコと出て来てやがる。

お前敵だろ。


「なんで、復活しているわけ?」


「ああ、それはほら佐々木パワーで」


「マジカよッ!もう佐々木ブーストなんでもありかッ!!」


「言ったはずでござるよ、佐々木は最強の苗字だと・・」


最強すぎて困るわ、僕今でもこいつに勝てた事が奇跡だよ、

もう二度と相手したくないよ、


「ま、まあまあッ!ゼロ様はもう戦意はありませんから・・」


「そうなの?戦意ゼロなの?」


「その通りッ!あ、ゼロだけに・・戦意ゼロッ!なんつってッ!」


「そのイケメン面二度と拝ませてやれなくしてやろうか」


「もういいません、すいません」


感情の変わり方が激しいなこの忍者、

畜生美味しい立ち位置にいやがって、


「それで、グダグダと話すつもりもないけど・・どうした?」


「ふむ、先ほど復活した時にすぐさま周りを散策したのでござるのだが・・途中変な白髪ロング娘と、虹色素麺の様な方を見つけてな、もしやと思いお主に知らせに来たんだ」


あー、だとすると白髪は鏡子さんで素麺が鏡之介さんか、

なんともわかりやすい髪型しているな、


「はは・・まあ、何はともあれ・・それは僕の仲間なので案内してほしいんですが・・」


「構わんでござるが・・」


「どうした?」


「いや・・なんと説明したらいいものか・・」


「なんと説明したらいいものか?」


なんだ、そんな小難しそうにして、

何か問題でもあるのか?


「いや・・とりあえず・・来てくれでござる」


「・・ああ、わかった、いくぞ美華」


「は、はいッ!」


「(あんな光景を銀殿は見たら・・なんと言うだろうか・・)」

なんだか不安そうに案内をするゼロ、

猫背になりながらどよーんとして森林の中を案内する。

川の音やざわめく自然の音を聞きながら、

しばらくするとあの見覚えのある2人がいた。

・・なぜか白鶴さんがマウントを取られている状態で。


「いい加減にしろよ・・そんなわけあるかよッ!」


「はは・・この顔が冗談言ってるように見えるかい?」


「(どうしよう、凄い気まずい)」


この状況はどうしたものか、

もうすでに殴られている後か、

殴り合った後かは分からないが凄い仲悪そうにしている。

一体何があったのだろうか、


「ふ、2人とも喧嘩は止めてくださいッ!」


「あー、銀君~ちょうどいい、この発狂子ちゃんどうにかして~」


「あ゛ぁ?誰が発狂子だッ!」


「あ゛あ゛ーッ!!痛い痛いッ!そこは掴むなァァッ!!」


本当に一体何があったんだよ・・、

ここまでなる状態になるには相当の事が無ければ、

ならない状況だろうよ、


「一体何があったんですか?」


「あー・・まあ、簡略して話すとね・・話してたんだよね~・・」


「そう、こいつがアルテミスを殺した話だ・・」


「アルテミス?」


「銀君知らない?【世界最高最強の魔女 星空 アルテミス】魔術学園トップ、世界で敵う者なし、いろんな異名を持った魔女様さ」


世界最高最強・・それを鏡之介さんが殺した。

だから鏡子さんは怒って殴ったり首絞めたりとかしているわけなのか?

でも、ただそれだけならまだ意味は分からない、

と言うより、それだけじゃ理解できない・・、


「・・せっかくだから、一か話す必要があるね、アルテミスの事も、僕の事も、そして・・君には知る権利がある、いや、知らなくてはならない、【あの事】を」


「あの・・事を?」


「そう、あれは・・百年前になる、まだイフニア大戦争もしてなかったあの大昔、僕達は・・魔術学園に通っていた時の話だ」


鏡之介さんは静かに語り出した。

その百年前の事を、

マウントを取られた状態で本来なら焦るはずなのに、

そんな状況でも冷静に語り出した。


 ◆


それは百年前、僕らがまだ若いとまで言える20歳の頃だ。

魔術学園で平和な日常を過ごしていたあの頃、

あの時間、僕は忘れもしない、

まだ鏡子が優しい笑顔で僕に接してくれた日々、

アルテミスがいつも僕と競い合って戦ってくれた事、

ショコラやメアリーが楽しい話を持ってきてくれた事、

僕は忘れもしなかった。

その時見せた笑顔は作り物なんかじゃない、

その時の笑顔は・・本物だ。

僕達はそんな楽しい日々を過ごして早数年で僕達は卒業する。

人間の過ごす時間なんてあっという間だと言うが、

本当にここまであっという間とは思わないな、

まるで、彼女が消える瞬間の様に、

時はあっという間、

アルテミスと過ごした時間も、

鏡子が笑顔の時間も、

まるで、あっという間に消えた。

時間は、一瞬でしかない事に気付いたのは、ほんの一瞬だ。

本当に一瞬で、その時は流れ終えたのだ。

そう、冬風の里で・・事件は訪れた。


「・・お願い、これはお前にしか頼めない、お前以外には言えない」


「冗談は止せよ・・またクソ親の卑劣な行為に嫌気がさしたのか?」


「・・頼む、分かってくれ・・私を・・殺せ」


目の前にいる彼女は山の神社でそう言った。

秋の風がむなしく吹いたこの季節にそう言った。

それが最後のアルテミスの笑顔だ。

手汗握る中僕は決断した。

そうだ、アルテミスは俺が・・僕が殺した。



続く


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