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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第四章 楽園編
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無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第6話 「快楽狂人」

前回までの銀の冒険は?

美華が川へダイビングしてしまった悲劇を救うべく、

銀は自らが川へと飛び込み救出を試みるが、

さらに川の流れが激しくなる一方であえなく溺れた。

しかしその後誰かに銀は救助され、

無事、2人とも生存を果たした。

その後エセ忍者との対決で勝利を収める。


 ◆


ここは森林地帯の道、人や獣も通れるくらいのスペースの土道があり、

今は美華の案内でそこを通っている。

にしても本当に森と林続きだな、

さっきまで月が見えていたのにとても暗い、

最近森林を通る事に抵抗は消えたが、

まあ、何はともあれ不安は消えずと言った所か、

でも、目の前を少し嬉しそうに案内する美華の為にも、

大の大人が怖がっているわけにもいくまい、

僕は自身もって歩いていないと、


「うしろのしょーめんだーれだ?」


「ギャァァァッ!?」


「どうされましたかッ!?銀様ッ!?」


急に後ろから聞こえるおどろおどろしい声、

思わず叫び声をあげた僕、

恐る恐る振り返ってみると、

そこにいたのは夜桜さんだった。


「銀!探したぞッ!」


「ああ・・夜桜さんか、幽霊とかじゃなくて」


「びっくりさせないでくださいよ・・また何か来たのかと思いましたよ」


「すまんすまん、つい悪い癖が出てしまってな」


いや、アンタが僕にそれをやったところで喜ぶ人も限られてるからな、

誰得だよ、誰のためのに僕を脅かしに来たの、

本当に最近一番の謎の人物だよ、


「それより、夜桜さん他の人たちは?」


「ああ、それなんだが・・途中から川の流れがあっちこっちにあってな、どの方向に行ったか分からんので、ちょうど四人分あったから四人で手分けした次第だ」


「つまり、現在チームがバラバラなんてすね」


「そう、だが1人1人は強いし、心配はいらないと思った俺は柘榴を含め手分けして探すのを許可したわけだ」


ありがたいんだけど、

結局二度手間の様な気もするんだが、

まあ、元の場所に歩いて行けばいいだけだし、

あまり気にすることでもないか、


「ところで美華殿は無事でござるよな?」


「当然だよ・・と言うかあんたが変な行動取るからさっきから後ろにいるんだよ」


「ハハハ!これは失礼した、しかし俺が獣に嫌われるとは珍しい事もあるものだ、結構好かれやすいんだがな・・」


「じ、ジロジロ見ないでください」


「ほれ、嫌われてんぞ」


「なぜだ・・」


いや、単純に怖いからじゃないかな?

僕も急にあんな行動に出られたら流石にビビるわ、

誰だってビビるわ、


「まあ、いい・・とりあえず先を急ぐぞ、銀」


「はいはい、わかりましたよ」


不安要素が帰って来たとはいえ、

少しだけ安心する僕だった。

不安はあるけど、不安はな、

その不安をよそに、僕達は一つの事件を目の当たりにすることになる。


「・・レかッ!!だ・・・れかッ!!」


その場にいた三人が感づいた。

人の助けを求めているような声がした。

そう思いその声の方向へと静かに近づき見てみると、

そこにいたのは一人の獣の少女、

怪我をしてところどころ傷を負っている。

真っ白な白銀の長い髪の毛、狼の様な耳、

赤い目はとても苦しそうに絶望におびえている。

白い袖が大きい服装、下は真っ赤なスカートの様に長い変わった服装だった。

足の肌は黒いタイツで隠れている、かなり露出が少ない服装だ。

手には何も持っておらず、がたがたと震える体を後ろ後ろへと下がっている。

そして彼女の見つめる方向には5人ほどの密猟者だろうか、

さきほどのガスマスクとは変わってまた変わった服装の密猟者だ。

これを見るにおそらくあの少女はあの密猟者にけがをさせられたに違いない、

これは助けなくてはと、夜桜さんと静かにアイコンタクトを取り、

一気に攻め込もうとした瞬間だった。

なにかにグイッと引っ張られるようにその特攻を止められたのだ。

それは美華の手が僕達の服の袖を引っ張り止めたのだ。

なにか美華

は嫌な予感を察しているかの様に、こちらも恐怖におびえる目をしていた。

何か気になった僕は、こそこそと話を聞いてみた。


「ど、どうしたの?」


「に、逃げましょう・・ここにいては危険です」


「いや、だが男児が女1人おいて見捨てて行くなんて・・」


「夜桜さんの言うとおりだよ、それにあんな密猟者に僕達が負けるわけないし・・」


「いえ・・そうじゃ・・なくて・・」


『?』


思わず疑問に思ってしまうほどの怯え方だった。

美華は耳を塞いで、まるで何も聞きたくない、何も見たくないの如く、

全てを塞ぎこんでいる。

一体美華は何におびえていたのか、

その答えは次の瞬間すべてが明らかになった。


「ああ・・ぁぁ・・」


「へっへっへっ・・嬢ちゃんさっさとこっちに来てもらおうか・・へへ」


「心配すんなよ・・大人しくくれば痛い事はもうしないぞ~?」


「ああ・・ぁ・・だめ・・」


「あぁん?何がダメなんだよ?言ってみろよ?」


1人の男と少女の距離が無くなり、

男が顔を少女の顔に近づけたその時だった。

それは一瞬で起きた狂気のオーラ、

僕と夜桜さんも直前まで感じる事が出来なかった。

誰も、感じる事のできなかったオーラ、

そう、少女の傷はあの男によるものではないと初めて気づくまでには、

もう、遅かった。

ガシッと強い掴まれる音を聞いた時、

同時にブシャァァッと血しぶきの音までもが聞こえた。

僕と夜桜さんは一度美華から視線をそらし再び少女の方へと向いた。

その時の光景は、驚くべき光景だった。


「あ・・あはッ・・あはははッ!!アハハハハッ!!近づいたら駄目てっ言ったのに・・面白い人間さんだねッ!!」


「エ・・アッ・・エッ?」


「なんだ・・あれ・・」


「おかしいだろ・・どうして・・どうしてだよ・・・」


その驚くべき光景に僕達は声すら出なかった。

密猟者たちは目の前にいちからこそ声が出たのだろう。

僕達は、その恐怖に怯えていたのだから、

当然、声が出るはずもない、

左手に太くも正六角形の形をした太く長い鉄棍棒が男の太い腹を貫き、

体のいたるところをあの長い髪の毛が数本のトゲの様に鋭くなり、

それを突き刺している。

ありえない、絶対にあり得るはずのない光景だ。

さきほどまで襲われていた少女が襲いかえすなど、

奇跡でも起きない限り絶対にありえない光景だ。

だが、その奇跡は不運にも起きた。

起きてしまったのだった。


「アハハッ!そんなに嬉しそうな顔して・・わかりますよッ!今感じてらっしゃるんですよねッ!?死ぬかもしれない恐怖、これからどうなってしまうのかという不安、ああ・・怖い、痛い・・苦しい・・助けてと・・アハハハハッ!!」


「ガハッ・・ううぐるじい・・よお・・」


「そう・・やっぱり貴方はここがよろしかったのですよね?私はですねッ!!わかるんですよッ!貴方達の痛み、苦しみ、恐怖、わかりますよッ!ええ、わかりますとも・・」


「ぐ・・が・・」


「うふふ・・気持ちよさそうですね・・今ごろ心臓はドクン・・ドクンと止まりかけるぐらいドンドン鼓動を小さくしていくのでしょうね・・クハハッ!良い・・実に最高ですッ!」


狂っている、発想から何から何まで少女は正常では無かった。

トップクラスの狂人だった。

眼からは恐怖では無くもはや狂人の目つきへと変化していた。

口の動きさえも、顔さえも、もはや先ほどの姿はどこにもない、

一切震える事無い、完全なる狂人へと変わっていた。


「あ~・・それにしてもコレ、ビクビク・・ああッ!ドクドクもしてますねッ!頸動脈ッ!さっき首つかんで正解でしたッ!アハハ!こんなに・・こんなにビクビクしてる頸動脈は・・ああ・・うっとりしてしまいそうです・・」


「ゴハッ・・グッ・・て、てめぇ・・」


「・・でももう見るのも触るのももう飽きました、私飽きました、ええ飽きました、だから・・もう、いりませんね」


「ひぇっ?!」


少女は首を掴んだ片手を放して、

次は男の頭を鷲掴みにした。

そして、無言でドンドンその力は強くなっていく、


「あ・・あが・・やめ・・」


「アハ・・死んじゃえ」


ブシャァァッ!

飛び散る大量の血、大量の何か、

もはや言葉では表せないほどのグロテスクな物となった。

終いにはもっていた鉄棍棒で何回も何回もその死んだ体に叩きこんだ。


「あはははッ!飛び散りゅッ!まだこんなに体内から赤い花咲かせてくれりゅッ!ねぇッ!これ生きて感じたらッ!いったいどんな気持ちになりますかねッ!痛いどころではないでしょうッ!死んだ方がマシだとッ!でもご安心くださいッ!貴方には今安らかに眠ってもらいましたからッ!つぶされたら・・痛みなど一瞬ですよ・・キャハハハハハッ!!!」


「こ、こいつ狂ってやがる・・」


「こ、こなくそぉぉぉッ!」


「おい、馬鹿止めろッ!かないっこねぇよッ!」


「うるせぇ仲間やられて黙ってられる奴がいるかッ!!」


その光景に怯えて手が出せぬ者、

その光景を見て胸糞悪くなり我を忘れて反撃に打って出る者、

この光景はあの紅白の獣のただ錯乱させるための作戦と言う事すらも、

もはや彼らにはわからないのだろう。

少女は襲い掛かる相手から一瞬にして目の前から消え、

次に現れたのその男の後ろ、

あまりにも一瞬の出来事で男は硬直してしまった。

その一瞬で全てが固まってしまったのだ。

そして少女は彼の耳元で何かをつぶやいた。

両手をゆらりくらり、

ゆっくりと恐怖を与えるように男の顔に手を持ってくる。


「ハァ・・ハァ・・アハハ・・ねぇ、どうして止めちゃうんですか?もっと見せてくださいよ怒りを・・その程度の怒りなんですか・・?アハハッ?その程度なんですねッ?」


「こ、こいつゥゥゥッ!」


もう1人の男が少女の背後を狙い刀を突き刺そうと突進をしかける。

だが、その刀が命中したのはなんと先ほど硬直した男ッ!

この行動すらも彼女の作戦ッ!

もはや何もかもが彼女の手に取るように遊び道具になっいる。

そして少女はどこへ消えたのか、それはその刀を刺した男の真上、

その真上からすかさず髪の毛で抑えて鉄棍棒で全身をスクラップしたッ!

えげつない行動になすすべなくやられる密猟者たち、

この圧倒的状況に、静かに僕は恐怖していた。


「こ、こいつかないっこねぇぇぇよぉぉッ!!逃げるんだよッ!」


「アハハッ!逃げるッ?先ほどまでのあの威勢はどこへ消えたぁんですかぁ?」


「ヒェェェッ!!早くしろッ!逃げ遅れるぞ侘助ッ!」


突然の侘助ェッ!?

いや、侘助いたのかよッ!?

侘助密猟者だったよ、あの子職業広すぎるだろッ!?

いや、いまそういう場合じゃねェッ!

・・どうする、このまま怖気づいてあの人達を見殺しにしてしまうのかッ!?

冷静に考えろ、

相手が密猟者だからと言ってあんな恐怖に怯えた者を見過ごして良い物かッ!

だが、勇気があっても中々体が動かないのが現状だ。


「・・クソッ」


「どうした、銀・・怖いか」


「怖いに決まってるだろ、血は見慣れたがこんなサイコパスキラー見た事ねぇよ」


「・・そうだな、お前の様にまだ血の花を咲かせたことの無い者ほどこの光景は実に惨たらしい、だが・・俺はこの光景になるくらいの恐怖も、絶望ももう散々見て来た」


「夜桜さん・・ならどうするんですか」


「決まっているだろう」


その言葉だけ告げると夜桜さんは立ち上がり、

あの少女が侘助だろうと思われる人物に棍棒の一撃を加えようとしたその時だ。

キィンッ!

突然の何かと何かがぶつかり合う音、

それは武器と武器、と言う事は・・。

僕は今ある光景を唖然としながら見ている。

あの棍棒を前に屈しすらせず黒く輝く刀一つで抑える夜桜さん、

しかも片手持ちだ、

常人ならほぼ不可能であろう行動を夜桜さんは可能にしたッ!


「・・貴方、誰ですか?」


「悪いが残虐非道行為はそこまでだ、ここからはこの夜桜が相手してやろう」


「あ、あんた・・なんで」


「グズグズするなッ!早く逃げろッ!」


「す、すまねぇ・・行くぞッ!侘助ッ!」


夜桜さんがギシギシィと音を立てながらもこの場をしのぎ、

なんとかあの二人だけは逃す事に成功した。

夜桜さんが支える中少女の狂気の目は静かに荒み、

真顔とまで言えるほどの光無き眼をしていた。

あんな冷たい表情をしながら鉄棍棒を振り回すなんてとんでもない少女だ。

しかもあの鉄棍棒よく見たら双刃刀の様に上にも下にも棍棒が付いているッ!?

あんな重いもん軽々と扱うのかよッ!

しかも片手だ、もう片方の手は腕にくっつけるような細デカイ盾、

特に固い武装でもないのに、

特に特別な体つきをしているわけでもないのに、

どうしてこれほどまであの少女は強いッ!?

本来なら細く美しい手だろう。

本来ならあの美脚とまで言われるぐらいの足もそざ美しいだろう。

だが、この血に塗られた戦場ではもはやそれすらも感じられないッ!

夜桜さんが恐怖せず前に立っている事が不思議だ。


「ふーん・・」


グァァンッ!

一度互いの距離を離す謎の狂人少女、

夜桜さんがズザァと両足を這いつくばさせるのも無理はない・・。


「貴方・・中々やりますねぇ・・ちょっと感心・・しちゃいます」


「お褒めに預かりいただいて誠に感謝、だがなぜだ、何故こんな惨い事をする」


「決まっているじゃないですかぁ・・私は自身に痛みを受けるのが・・好き、だからもし誰かが痛みをくれた時は恩返しするんです・・それ以上の痛みを持ってしてッ!」


「お前にとっての快楽がみなの快楽だと言うのか?」


「ええッ!そうですッ!わかりませんか?あの生きるか死ぬかのギリギリの味わい・・鞭で体を打たれ、石で腹を責められ、縄で首をしめられ、そして全身を貫かれても・・私は生きた・・その時・・その時から私は痛みに対して快楽を得たッ!あ・・ああ・・気持ちいとッ!」


「そ、そんな馬鹿な・・本来そんな事すれば貴様は死んでいるはずだぞッ!」


「ところが死なないのが現実ッ!私達白狼の民は永久不滅の不老肉体ッ!己の定めた血で生きて己の定めた体で生き続けるのですッ!肉体の再生なんて安いんですよッ!神経がいくら奪われようと関係ありません、むしろ神経全てを殺すつもりで来てもらいたいッ!」


この世界の白浪がいかに恐ろしい存在なのかよくわかったよ畜生、

通りであんなトチ狂った成長を遂げるわけだ。

不老不死の肉体だからこそ拷問、DV、イジメ、ありとあらゆるものを食らっちまった狼、

その末路はドMを越えた天性のサイコパスのドS、

いじめられるのも快感であり、

いじめられた事がそのまま快楽として返す、

まさにサイコキラーッ!

そんなのこの世のどこにもいねぇよッ!

飼いならす事すら不可能の狂人てっわか、

とんでもねぇなッ!


「アハハッ!私にとって傷つけられる事こそ快楽ッ!快感ッ!愉悦ッ!愉楽ッ!フヒャハハッ!」


「良い子にはお見せできねぇなこりゃあ、もうR18指定モノだッ!」


「いえいえ・・全国に知っていただきますよ、この快感をッ!」


やめろッ!

作品的にも個人的にもNGだっつうのッ!


「決めた、俺はあんたに教えてやる・・あんたの快楽も快感も間違ってるてなッ!」


「面白いですね・・一度腐り果てた執念も感覚ももう戻らないと貴方に教えてあげましょう・・大丈夫、最初は痛いかもしれませんが・・なれればきっと・・ウフフッ」


不気味な笑顔をさらして今ここに夜桜さん対狂人少女の一対一の対決が始まる。

一体どちらが勝つのか、

はたして正しき道はどっちにあるのか、

勝敗の行方は・・どちらにッ!

僕はただ夜桜さんの勝利を祈る事しかできなかった。


「では・・白狼の民その最後の一匹・・【魔豪天寺(まごうてんじ)フロル】がお相手してあげましょぉうッ!」


「では、夜桜家最後にして最強の柱・・夜桜 秋斗ッ!参るッ!」


互いの力ぶつけ鳴り響く戦場の火蓋が今、

切って落とされたッ!



とぅびぃーこんてぃにゅうッ!


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