無限空想世界の幻想的な物語~夜桜~ 第17話 「夜に咲きほこる桜の様」
「ハルッ!」
「ハルバード殿ッ!!」
「・・・」
「ハッハッッ!くたばれッ・・アレ?」
「・・?どうした?声が遅れて聞こえてきたか?」
「ち、違う・・体が・・動かんッ!?」
何?
一体、何がどうっなているの?
今この場で一体何が起きているの?
私は今、あの夜桜のお兄さんが刀を振り下ろそうとしているのしか見えないッ!
でも、動きが・・止まった?
「貴殿が時を止めたのか?」
「いえ・・私は時は止めていない・・」
「どうして・・体が動かんのだ!?」
『ゆ~ら~り~ゆ~れ~て・・桜の花を咲かせましょう~』
女性の声?
とても美しい、耳に伝わるここちいこの声はどこから・・?
「この声ッ!?まさかッ!?」
「知っているのですか?秋斗さん?」
「間違いない・・だが・・貴方は・・貴方は・・・っ!!」
秋斗さんが震えている?
一体誰なんだろう、この声は・・。
「クッッ!!クソッ!!まさかこの声・・や、やめろッ!そんな冗談あってたまるかッ!!」
『ひゅ~ひゅるりら~ひりゅるりらり~・・ざわめき鳴らせよ~いよい』
「止めろッ!!その歌を・・やめろォォォオオオオッ!!」
『時は来た・・裁きの時だ、【無間地獄の門】よ、奴を呼び込め・・』
美しい女性の声が一つの呪文らしき言葉を言うと、
突如、夜桜のお兄さんの後ろに巨大な黒き門が現れたッ!?
そしてその扉は力強く開き、
大量の黒い手があの夜桜のお兄さんを引きずり込もうと、
次から次えと夜桜さんを引っ張るッ!
「や、やめろッ!!嫌だッ!そこに行きたくないッ!そこには行きたくないッ!!そこに行きくナァァァァイッ!!」
『無様ね・・貴方の罪は重い、地獄でたっぷり・・裁かられると良いわね・・フフッ』
「やめぇぇぇ・・ろぉぉぉぉ・・」
手は見る見る彼を囲いついに見えなくなった。
彼の抵抗はむなしく終わり、黒い手の塊は門へと消えて、
バタンッ!と大きな音を立てて黒い門は消滅した。
そして、その黒い門が消えた後、
空に静かに輝く桜の様な人物、
髪色も桜色に、振袖の様な空色の着物、
まるであの柘榴を思わせるようなヒラリヒラリしている裾、
その姿はとても美しい、ふわふわとした髪の毛をなびかせて、
静かに空中へ浮いていた所を地上へと降り立った。
「ああ・・間違いないッ!!あの人だッ!!天魔酒様ッ!!」
「えっ!?アレがッ!?」
「(どうしよう、突然の展開でついていけない俺は・・)」
あのお美しい女性が天魔酒様・・、
頭の花簪もとてもお似合いだと思った。
本当に麗しき人物だと言う事が確かにわかる。
「・・ただいま、秋斗」
「天魔酒様ァァァァッ!!お会いしゅうございましたぁぁぁぁ・・・あぁぁ゛ッ!!」
ズンガラガッシャンッ!!
涙をだらだら流しながら盛大に転ぶ夜桜さん・・、
どうしたらそんな大道芸みたいな転び方できるんですか・・、
でもあんな嬉しそうに走って転ぶなんて、よっぽど嬉しかったんですね。
「ヴぃぇあ・・ずびぃ・・私はおろかでした・・貴方の復活を・・貴方にせめて役に立ちたい一心で里の者達を恨んで殺そうとしましたッ!ただでさえ命を奪う事は許される事ではないのにッ!たとえ恨みを持っていなくても・・」
「確かに・・貴方はゆるされない事をしようとしました、けれども・・貴方はこの方達のおかげて悔い改める事ができました、私は・・立派だと思います、よく考えを変えてくれましたね秋斗」
「ヴぉぉぉッ!!ありがたきお言葉ッ!!」
「おいおい、大の大人が女に泣きついてんじゃねェよ・・」
「良いんですよ、貴方も言っていたでしょう・・全てを積み重ねて受け入れてこそ恋愛・・私も長年彼と離れていたから・・久々に甘えさせてください」
「・・そうだな、良かったな、お前の彼女は優しくて」
「ヴぅぅ・・!ヴぅ゛゛!!」
言葉にできないぐらい泣きじゃくる秋斗さん、
あんな優しい顔で言われたら、
そうなってしまいますよね、良かったですね、秋斗さん。
あれ・・でも確かあの人てっ・・死人・・じゃなかったでしたっけ?
そ、そうだ・・あの人はすでに死んでいる!
「ま、待ってくださいッ!貴方は一体どうやってこの世界のルールを超越してここに来れたんですか!?」
慌て走り出して私はみんなの下へとあたふたと駆け寄り、
てんやわんやしながらも思った事を口にだす。
そうだ、あの時彼女は死んでいると言っていたのになぜ・・、
「ああ、それはね、私の能力は【全ての扉】でさらに私は冥府の神として生きている。事実上は神霊みたいなものよ」
「つ、つまりどういう事なんですか?」
「要するに私は冥府・・何と言ったらいいのかしら?魔界?そんな感じの場所からここまでゲートで来たの!」
「へー、そうなん!(諦めた)」
「(ハルが考えるのをあきらめた顔してるッ!!)で、ですがどうやって神にまで・・人が神になるなんて相当大変だったはず・・」
「私は秋斗を死んだ後も幽霊となってみていました、とても辛そうに毎日を過ごす彼の力になれないかと思って・・そんな時、混沌の魔王さまと言うお方が私に冥府の神として生きる事を受け入れるなら今後は神霊としてこの世界に居させてくれると言う事だったの、愛を信じて神を続けて数十年、続けた甲斐がありました!」
「色々良く分からない単語と良くわからない話が出て来たけど要するに冥府の神になってここに来たと・・そして冥府の神として今裁いたと・・なるほど、わからん」
「まあ、細かい事はどうでも良いのよ、私はどの道死んでいるのだから」
それでいいのか天魔酒さん・・、
なんか思った以上におっとりしてる人だ。
もっとキビキビした人かと思ったけどそうでもなかったんですね。
なんだか拍子抜けです。
「ともあれ、これで無事解決ですね・・良かった・・貴方やハルがいなければどうなっていた事か・・」
「フフッ・・本当はもっと前から助けようと思っていたのだけどね・・滅多な事ではここには来れないし、貴方のぼーいふれんどさんが来るのは予想外だったからね」
「ぼ、ぼーいふれ「あ、全然違います、ただの親友」
「グッ・・」
「本当に面白い人達ね~」
長かった戦いもこれで終わりだ。
ようやく、ようやく終わる。
辛く厳しい長い戦いが、ようやく幕を閉じる。
そう思ったのはこの桜の木のざわめきが鳴りやむまでの話だった。
それは突然、なんの前触れも無く怒った出来事だ。
「・・あれ、なんだか・・周りの雰囲気が・・」
私はその異変に気付いた。
そう、周りに咲き誇った綺麗な桜がみるみる枯れて行き、
風が止んだのだ。
「変だ・・こんな急に桜が止む?」
「確かにおかしい、こんな急に・・」
私だけじゃない、ハルもこの急変に気付いた。
「・・やっぱり、貴方だけは人を憎み生きるのね」
「どうかしたんですかッ?まさかこの異変に何か心当たりが?」
優しい顔をしていた天魔酒さんの態度が一変した。
とても辛い顔して顔を青ざめる。
「・・ごめんなさい、貴方達には・・何で冥府の神である私がわざわざこの日に来たのか、真実を語る必要があるわ」
「真実ッ?!」
「まだ・・何かあるのかッ?この異変に関係する事が・・」
「ええ、おそらく・・全ての真実、この里の事件、魔法使いの洗脳、復活した夜桜冬木、私は・・この全ての真相を・・貴方たちに教えなければならない」
全ての真相、戦いは終わったかと思っていた。
だが終わらなかった。
まだだ、そうだ。
まだ何も解決していない、まだ何も語られていない、
ここまでの真実、ここまでの真相、
私の長い長い旅は、ついに・・最終局面へと向かう事になった。




