無限空想世界の幻想的な物語~夜桜~ 第15話 「束ねる者」
「ナイフ一本持ったぐらいで調子に乗るなよッ!!」
ハルと夜桜さんが戦闘を開始したッ!!
切りかかる夜桜さんッ!
全く動く素振りを見せないハルッ!
「もらったッ!!【月光の抱き】ッ!」
「あめぇッ!!」
ガァァンッッ!!
鋭い攻撃をいともたやすく止めるハルッ!
ナイフ一本でわずかギリギリのところで止めたッ!
「な、なんだとッ!?」
「その攻撃は月光に身をひそめて戦う攻撃、ほんのわずかだが直前に攻撃を防ぐ事はできるッ!」
「そ、それを所見で見破ったのかッ!?」
「悪いが俺とお前では場数がちげぇんでねッ!!」
ナイフを強く力を入れて押しのけるハル、
やっぱりハルは強いッ!
「小癪なッ!!【大地の茨道】ッ!」
「ハルッ!!」
「心配すんなッ!」
ドゴォォオッ!
またしても大地を揺らがせて土で作られた棘を飛び出させる攻撃をッ!!
「流石の貴様もこれは避けられまいッ!!気高き紳士男よッ!!」
「それはどうかな?」
夜桜さんの言葉にフッとニヤけて笑い飛ばすハル、
まさか、あの攻撃すらあなたには余裕だと言うの?
「俺は騎士でもねぇしましてやカッコイイ仮面をかぶったタキシード男でもねぇからちょっとクールに紳士するのは無理だな、俺は俺のやり方で戦うッ!守るためならッ!クールじゃなくても紳士じゃなくてもいいッ!右手に力をッ!!【爆裂の右手】ッ!!!」
シュギィィィィンッ!!
あの右手の義手が大きく蒸気を噴き上げて強く突風を吹かせるッ!
なんだこの力強いパワーッ!?
あの義手はただの義手じゃないッ!?
「な、なんだこのただ者ではない感じを露にするようなオーラはッ!?」
「砕けチレェェェッ!!」
ゴッシュッボォォォォッ!!
義手から力強いブーストをかけて、
火を上げてまるでロケットブースターの様に、
力強く早く真っ直ぐに殴りかかって行ったッ!!
原理無視だッ!もうどうやって体が保たれてるとか聞いちゃいけないッ!
それでもいいッ!!
ハルが勝てるならもうなんでもかまわないッ!!
「いっけェェェェッ!!!!」
グシャアァァァゴォォンンンッ!!
目の前にそびえたつ大量のトゲをバラバラに粉砕して散り散りにしてましったッ!
ああ、無茶苦茶だけど・・かっこいいよッ!!ハルッ!
「う、ウガァァァァッ!!!?」
「どうした、突然カラオケでも行きたくなったか?」
「違うッ!貴様はァァアッ!武士道は無いのかッ!?騎士道は無いのかッ!?何か道を持って戦いをしないのかッ貴様はッ!?」
「ハッ・・道を歩いているだけじゃ強くなれねぇぜ、お前はそうやって作られた道を歩いて来たかもしれない、俺は、道を作って遅れながらも歩いてきたッ!積み上げた経験がちげぇだよッ!」
「意味が分からないッ!理解不能だッ!魔術ごときにッ!!!機械ごときッ!!我らが剣術を愚弄されて・・たまるかッ!!!」
まずい・・また我を忘れて刀で切りかかりにッ!
「ハル・・ッ!!お願い彼をッ!」
「・・チッ、しゃーねぇな、ありがたく思え・・特別版だ」
「滅べッ!!愚か者ッ!!」
「一を束ねて十に、十を束ねて百に、百を束ねて・・・千にッ!!【千槍剣の雨】ッ!!!」
バッバッバッバッッ!!
詠唱をして吹き荒れる風、
そして手を天にかざして現れる大量の武器ッ!
剣、槍、斧、それだけじゃない、ほかにも沢山ッ!!
凄い・・これが本来の彼の実力ッ!!
「ちょいと頭冷しな・・ッ」
パチンッ!!
指を鳴らして響き渡る綺麗な音、
そして一斉に発射される無数の武器、
夜桜さん目掛けて刺さる武器は一つ一つ地面へと着弾すると爆発を放った。
無数の武器が爆発してついに夜桜さんが見えなくなる。
響き渡る爆破音、揺らぐ地面、
私は少し不安だったけど、表情一つ変えないハルを見て、
ただ信じた、夜桜さんは無事だと言う事を、
しばらくして爆発が終わり煙が晴れる。
そして大の字で倒れこんでいる夜桜さんが見えた。
大量の武器に囲まれながらも、無事だった。
そこに静かにザッザッと歩いていくハル、
大丈夫、きっともう戦意は無いはずだ。
「よう、立てるか?」
「なぜ殺さなかった?さっきの攻撃ならば貴様の力で一網打尽だったろう」
「あいにく・・命を奪う戦いはしないいのが俺ら紅の六人衆のやり方だ、俺より年下の銀て言うガキがいてな、アイツが言うんだ、恨み妬みで人を殺すなてっ、だから俺もそうした、けどまあ結局のところこれって俺の負けかもしれないな・・だって力使ってお前の事倒しちまったし」
「俺の完敗だ・・俺は未熟だった・・貴様の様にそんなに強くなれなかった・・どうして貴様はそんな強いんだ・・」
「決まってんだろ、明日も明後日も生きて頑張る為だ、クッセェ台詞かもしれないけど言わせろ、俺には好きな奴の為に一生を尽くせる、時には泣かせるかもしれない、時には辛い思いさせるかもしれない、そんな失敗積み重ねてる中でも笑って楽しく過ごすために俺は強くありたい、いや強くある」
「もし、そいつが・・自分の手で殺すことになったらお前はどうする?」
「殺さない、殺させない、例えルールだろうと破ってやる、世界を敵に回して守る、悪いけど俺は生き恥さらすぜ、他人の不幸は考えられないからな、けど、ソイツのどうしても希だったのならソイツを殺すさ、生きろと言われたら力強く生き抜いて見せる、たとえなんと言われようと」
「・・貴様は、愚か者なんだな」
「ああ、愚かな者だ、それがどうした・・人は愚かな者だろ?醜い者だろう?善人面して決められた正義をするぐらいなら悪人面で自由に生きてやるさ」
「どうしようもない・・貴様に勝てるはずがない・・今の私では」
ハル、貴方は強い、
二年前再開した時は私の方が強いと思ったのは手を抜かれていたからでしょう。
貴方は私に気付いていたから、私のことを知っていたから、
本当に、バカで不器用なんですから・・、
「ハルッ!」
私は駆け足でハルの下へと向かった。
足がすくんでいたのに今はとても軽い、
心の締め付けが消えてとても軽い、
体の重りが消えたように軽い、
私が近づくとハルがこちらに気付いて振り向いてくれた。
私は思いっきりノーガードの体に飛び込んだ。
「ハルッ!!」
「おいッ!!急に飛びついてくんな気持ち悪いッ!!!」
「良かった・・無事だ・・ハルッ!!」
「たりめぇだ、天下のハル様が女一つ守れないで何が執事だ」
「・・ハルッ・・馬鹿ッ!!」
私は体に抱き着いた手を握り締めて強く固い体にぽこッいた。
「な、なんだよッ!!情緒不安定かよッ!!」
「心配したんだからねッ!!急に家から出て行く事になって、それ以来ずっと貴方に会えなくてさびしくて・・ずっと探していたんだからねッ!!ずっとずっとッ!!貴方事ばかり考えていた・・彼方の様になりたい、貴方にいつか会えるように私もメイドになって・・ずっと・・そしたらまるで昔のあなたの様な馬鹿に出会って、でもすっごく似ても似つかない弱さで・・、きっとこの人でもないてっおもっちゃって・・私、貴方にありがとうとも言いたいッ!!ごめんなさいてっ言いたいッ!!」
彼の体にしがみついて力強く服をつかむ、
泣いて言葉にならないくらい叫ぶ私に彼は軽く答えてくれた。
「好きに言えよ、ガキじゃあるめぇし」
「ごめありがとぅぅぅぅッ!!」
「どっちだよッ!!どっちかにしろよッ!!」
「・・・ありがとう」
「おう、それでいい」
長かった、ここまで長かった。
貴方に会うまでどれだけの時間が経っただろう。
気づかないままずっとあの屋敷にいた。
移動もできないままお嬢様を守り働いてた私を、
恨みもせず、何も動揺もせず許してくれた。
こんな事なら、早く気づきたかったな・・、
ずっと側にいた時の事を思い出すと、
なんだか恥ずかしくなっちゃうな、
色んな事があったから、
◆
そう、たとえばあの時とか、
「お嬢様はとても高貴で上品でカリスマ~な方なんですッ!貴方も少しは紳士になさいッ!」
「なんだそりゃッ!!それてめぇがカリスマ(笑)吸血鬼野郎が返って来た時にこの屋敷の雰囲気に合わせたいだけだろッ!!」
「お嬢様の屋敷なんだから当然ですッ!」
「意味が分からねェよッ!」
あの時、まるで友人の様になんでも聞いてくれたあなたはハルだったんですよね、
あんな私の我儘に付き合ってくれてありがとう。
「紅茶、掃除、世話係、何から何まで私完璧ですッ!」
「グッ・・なぜ勝てないッ!!」
あの時もきっとわざと負けてくれていたのでしょう。
だって貴方が私に負けるはずがない。
「料理は一流ですね、これだけ美味しければきっとお嬢様も満足でしょうッ!」
「そいつはどうも・・」
きっとアレは陰ながら私に気付いてほしいと言う事だったんでしょう。
私はその時何も思わずあなたの料理を食べていました。
本当にごめんなさい。
どこかハルに似ていて、どこかほっとけなくて、
どこか・・心配してしまうのは、ハルだったからんですね。
もう、会えないと思っていたのに、
実はもう、再開していたんですね。
それを気づいたうえで、貴方はずっと隠していたんですね。
きっと何か事情があって、言いたかったでしょう。
昔世話したハルだって、言いたかったでしょう。
ごめんなさい、気づけなくって、
哀れな私を許してください。
◆
貴方の中で静かに涙流している私を許してください。
今更再開に喜んでいる私をどうか・・許してください。
「ハル・・ありがとう、大好きですッ!!」
「・・ああ、ありがとう」
私の苦しく絞められた胸は解放されたかのように軽い。
もう、何にも縛られていない。
私は救われたんだ。
ハルに・・ずっと思い続けた人にッ!
私は月光の月の下、温かいハルの中で幸せに心を躍らせた。




