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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第一章 真紅編
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無限空想世界の幻想的な物語~真紅~第3話 「騒めく屋敷」



雨、それはシトシト振りつもる一つの自然現象、

風、それはヒュルリヒュラと風なびく、窓ガラスを強く強くたたく、

この二つはいつも一緒だ。

一緒にいるからこそ、いい音を奏でる。

俺は雨が好きだ。

時に傷ついた心を癒し、時に荒んだ目を黒く黒く闇の中へと閉じさせてくれる。

現実と向き合うのが嫌になった時こそ、雨はとても俺の癒しになる。

個室で机に座りながら本を読む、これが俺の休息、

毎日毎日新米メイドと男性使用人の面倒を見なければいけない僕にとってこの休暇はとてもいやしだ。

仕事中も実は兄さんやみんなと話している時がいやしなのだが、毎回そうするわけにもいかない、

流石に毎回「兄さん流石!かっちょえ!」とか言ってたら、

おだててるのがバレバレだからね、

それでは駄目だ。

兄さんから見ても褒められてると思える時にこそ褒めて調子に乗らせてあげたい、

そして願わくばジョーカーさんあたりにしばかれるのが見たい、

そこにリアリナさんがいつものようにナイフを全て受け止めて、

またジョーカーさんが敗北するのを見たい、

ああ、これ想像するだけで心が癒される。

俺はなんて嫌な人なんだろう、人の不幸、人の嫌なところを見て自分の幸せにしている。

とても嫌な人だ。


「・・て言うかこの本前にも読んだな」


何故ここまで気が付かなかった。

なにか作者による因果的な方法で強制的に読まされていた様な、

俺はそう思わざる負えなかった。


「疑問には思うがまあ、いいだろう」


こんな事をいつまでも気にするわけにはいかない、

そんな終始くだらない事をいつまでも引きずるのはだいたい兄さんぐらいだ。

僕は本をパタンッと両手で閉じて、机の近くの本棚にスッと戻した。


「あー、本が大体読み終わってしまったな、この前読んだ「一から始めて0になる」と言う本も読み終わったし」


最近この様だ、ろくに町に出歩けないせいでここに持ってきた本は全て読み終わった。

個人的にもうちょい本が読みたいところだがはてさてどうしたものか、

コンッコンッ

そんな僕の悩みを消し飛ばすかのように部屋のドアから小さなノックの音が一回二回と聞こえた。


「誰だい?」


『あっ!ジン様いらっしゃったんですね!お茶をお持ちしまた!』


「あー、鈴蘭か、良いよ入って」


この屋敷のメイドの一人だ。

いつもなら屋敷の外で庭の手入れなどを担当しているのだが、

あいにく今日は雨、

彼女の仕事も無いというわけだ、

迷った挙句に俺のお茶入れとはなんと健気、


『では、失礼いします』


ガチャリとドアが開き、ドアの向こうにはやはり鈴蘭、

緑のメイド服、はち切れんばかりの豊満なバスト、長い後ろ髪の赤毛、

今日もやや短い前髪は斜め分けが綺麗にできている。

左腰の部分に長い切り込みがあって相変わらず動きやすそうな服だなー、

後は緑の瞳がまるでエメラルド原石の様にキラキラてしている。

鈴蘭は僕がまだ若い頃にこことは別で違う場所で僕の担当メイド、

もといメイド長をしていた。

わけあってここに連れて来たわけだが、

まあ、今となってはどうでも良い事だろう、

話すのも思い出すのもめんどくさい、


「お勤めご苦労」


「いえ!これはその・・ジン様への普段へのお返しで・・えへへ」


俺への普段へのお返し?

ああ、庭の係に回された時に時折に鈴蘭の面倒を見ていたからな、

そのお返しだろう、


「君もずいぶん暇なんだね~、俺ごときにお茶とは」


「ええッ!そ、そんな事・・ありますけど・・」


ああ、この頑張って入れたのにちょっと予想との反応が違うと思っている感じたまらない、

普段から鈴蘭はいじりやすいしもう見慣れていたと思っていたが、

久々にいじるのもまた一興、


「冗談、君には時々話し相手になってもらってたからね、そんな君にお茶を入れてもらえるなんて感謝感激だよ」


「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」


分かりやすいなー、マジでわかりやすい、

ティーカップ片手にお皿を持って、

持ってきてもらった紅茶を飲む余裕がある。


「そうだ、鈴蘭、暇なら話さないかい?俺は暇で暇で仕方がない」


「えっ?良いんですか?」


「ああ、君と久々にお話がしたい」


「全然良いですよ!・・なんだか懐かしいですね!前もこうやってお話してましたよね!」


「・・ああ、確かにね、俺がここに来れてようやく再開できたからね、それまでろくに連絡もできなかった」


「あーそうですね・・でもびっくりしましたよ、まさかジン様自らここに来るなんて・・」


「兄さんは心配なかったんだけど、鈴蘭が心配でどうしてもと思ってね」


「えっ!私そんなに信用されていないんですか!?」


半べそにになりながらそんな事を聞いて来るな、

全く、これだからこの子との会話は止められない、


「違うさ、俺は単純に鈴蘭が心配だっただけだ、大事な大事な鈴蘭に何かあったら困るからね」


「だ、大事な!うへへ~なんだか光栄です~・・」


この純粋無垢なところが良い、普通に可愛い、

テレテレとして私そんな事思われていたなんて~と純粋になれるところが可愛い、

真っ直ぐしている子はやっぱり一番いいわ、


「そういえば、気になったんですけど、ジン様の一番大好きな人てっ銀様なんですか?」


「どうしてそんな事聞くんだい?」


急にストレートな質問だな、どうしたこの子


「いえ、なんだか昔からいつも側にいて、いつもお話しの中で尊敬していらっしゃったので・・」


「あ~それでか、でも別に兄さんは好きだけど、一番ではないよ」


「えっ?違うん・・ですか?」


「うん、全然違う、だって俺の大事で大好きな人物はさ・・」


雨滴る少し肌寒い部屋の中、

ポツポツと今も雨は窓ガラスをたたく、

部屋の中は楽しい会話で満たされ、

肌寒さも忘れていた。

俺はこの軽い感情の中、イスから立ち上がり、

鈴蘭へと一歩ずつ近づく、

鈴蘭は先ほどまで俺のベットで座って話を聞いていてくれた。

その座っていた鈴蘭が先ほどまでニコニコした表情が一瞬にして、

ドキッとしたと思われる表情へと変わった。

俺は右手を鈴蘭の肩へポンと乗せ、顔を近づけて次の言葉を告げた。


「それは・・君だよ?」


「ふぇっ!?」


目はおどおどと細くなり、頬を染めてとても恥ずかしそうにしている。

俺の鋭くも小悪魔のような表情に対して、この反応だ。

君はやっぱり純粋なんだね、


「えっと・・それはその・・」


「あはは、冗談だよ」


「えっ?ああ!ですよね!私なんかがジン様の好きな人だなんて!やだ私たら!」


慌ててるなーこの子、絵に描いたような慌てぶりだ。

お顔をリンゴみたいに真っ赤に実らせている。

それにしても僕とした事が一歩足を退いてしまった。

兄さん、僕もなんだかんだまだまだ兄さんの自由ぷりには敵わない様です。



続く

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