無限空想世界の幻想的な物語~夜桜~ 第3話 「草原道中」
あの激闘・・は無かったけどあの一件から数分後、
無事少女達を救出した後、私と白鶴さんは今度こそ馬車で里へと向かうはずだったのだが、
なんと助けた少女達は白鶴さんの知り合いで、かくかく云々で一緒に同行する事になった。
そして今、私は現在馬車の中でゆらりゆらり静かに早々と草原の道を走る。
ここはロンディニアの門から出てすぐの「ウェンズ草原」、ごく普通の穏やかな場所だ。
青い芝生が沢山あり、とても暖かそうな太陽が日差しを当てる。
「ここはとても穏やかですね、なにより平和です」
私は馬車の荷台の隅から外の光景を除きこう言った。
今までこんな美しい青茂った草原は無いからだ。
「そうだよね~なにしろこの周囲での野宿だの商売だのは禁止されてるからね~賊なんてものは存在しないさ」
「それも貴方が毎日々草原をうろうろしているからでしょ?」
「アハハ!それもある!」
私の言葉に反応する2人、
1人は馬車を動かす鏡之介、
先ほど賊相手に一歩も引かなかった魔導師だ。
もう一人は金髪の令嬢、名は【メアリー・ベルタメットレス】
春風の里付近にある「サファイアフォレスト」と言う森林に住む、
「ベルタメットレス家」の十三代目のお嬢様らしい。
どうりで中々品のある紺のジャンパスカート、肩にはフリルのついた白い高貴なマント、
肩の膨らんだ長袖のブラウス、袖口は絞られてフリルが付いている。
腰にはあからさまに長すぎる白いリボン、頭には花がついてるヘッドを付けている。
言ったら失礼だが、なんだかスカーレット家より常識がありそうな明るい人だ。
「2人ともここの事にお詳しいんですね」
「そりゃあそうさ、僕やメアリー君は長きに渡って【サファイアフォレスト】で育ってるからね、メアリー君は別名【精霊賢者】とも呼ばれるほどの魔法使いさ」
「精霊賢者?」
「精霊を宿した世界に1人しかなれない精霊使いの一種、賢者であり、ありとあらゆる精霊を味方にしている者だ、魔法に必要なマナなどをそれで補うのさ」
「それに私は森の精霊とも草原の精霊ともお友達よ、この大陸で知らない事は全部、精霊達に聴いているから、まず知らない事は殆ど無いわ!」
「なるほど・・」
確かに言われてみれば指にはめている指輪は【フェアリーリング】だ。
あの宝石のようなキラキラ輝く水色の結晶の中にたくさんの精霊を宿していると、
本で読んだ事がある。
宿していると言っても年中指輪の中にいるわけではなく、
外に野放しにして自由に生活させているらしい、
必要な時だけあの指輪から呼び出すとたしか本には書いてあった。
「でも昔精霊と話しすぎて、魔術学校に行ってた頃はみんなが気味悪がって誰一人として友達がいなかったけどね~、僕が可哀想だから良く隣で会話相手になってたの思い出したよ~」
「あれれ~?ちょっと雷の精霊を呼びたくなっちゃったな~?どうしよかな~?」
「ごめんなさい、そんな暗黒のオーラで楽しそうに言わないで」
「全く、すぐにそうやって人の事を悪く言うのだから、貴方も白鶴家の者ならしっかりしなさいな」
「めんぼくねぇです」
なんだかお二人とも仲がよろしくてちょっぴり羨ましいと思う自分がいる。
私もこんな風に異性と仲良くしゃべれたら良いのになぁ・・、
いえ、私はガーネット家に仕えるメイド長、
お嬢様に無礼が無いようにそういう事は極力我慢しなければなりません!
恋愛に集中しすぎて仕事がおろそかになってしまうのは嫌ですからねッ!
ですが、私も一人の乙女ですしそういうのはやはり憧れてしまいます。
「どうしたの?顔に羨ましいと書いてあるけど」
「えっ!?私そんな顔になってました!?」
「ええ、ちなみに内容は2人の仲がそこそこ良くて羨ましい異性関係だ、かしら?」
「す、凄いですね・・何故そこまで・・」
「ああ、この子はね顔を見ただけで大体人の考えがわかっちゃうの、どんな表情でもポーカーフェイスでも見破っちゃう名推理さんよ!」
「いやー照れますなー!仲が良いだなんて~!」
「ちなみにコイツとはそこまで仲良くないから、ただの友達」
「ひどいです(昔は僕の事を大好きッ!とか言ってくれてたのに・・)」
「白鶴、想像を抱くのは自由だけど過去の捏造は止めなさい、メアリーはあなたに大好きともダイスケとも言って無いから」
「最低ねカラフルそうめん」
「カラフルそ☆う☆め☆ン!?」
「フフッ、2人だけではなく3人で仲が良いんですね!」
『良くないから!!』
馬車に乗る前までは暗い表情だった魔法使いの少女、
おまけに先ほどから名前をまだ聞けてなかったから不安だったが、
なんだか交流が取れそうで安心している。
改めて見ると服装がだいぶ違った事に気づく、
中に白いドレスを着ていて外の服装は大分黒のゴスロリな服装だった。
頭には魔女の様な不思議な帽子をしている。
大きな目玉模様があるのが特徴だ。
眼がじっとりとしており声の雰囲気からミスリードなのがわかる。
「あ、ちなみにお名前はなんと言うのですか?」
「私?私は【ショコラ・エーデルアラモーデルス】、ロンディニアで大きな古いお店あるでしょ?あそこの【世界の宝庫】を管理している者よ」
「まあ、あのお店の・・」
【ロンディニア市街地】にある二階建ての古そうな木造のお店、
あそこの管理者もとい店主だったとは、
こんな小柄でか弱そうなのに若いなりに努力をしているのですね・・
きっと代々お店を継いで来たに違いない・・、
あのお店は何年から前もあるらしく、
色んな宝や古代品が眠っているらしい、
またこの世界じゃない物も扱っているらしく、
たまにお店に並べては高値で売っているとかでマニアの間では人気のお店だ。
私はまだ行った事無いのでいつか行ってみたいとは思いましたが、
先にお店の人に会うとは思いませんでした。
「ショコラ君は世界的に有名なはずだけど・・まだマイナーだからね~、一様【万能魔術師】の異名を持っている、一見ゆるそうな引きこもり少女に見えるけど腕は一流だよ?」
「白鶴、貴方の黒歴史全てこの場で暴露してあげても良いけど」
「やめてください死んでしまいます」
賑やかな馬車の中でおもわずクスクスと笑ってしまう私、
1人旅の予定だったが為にこんな賑やかな馬車になるとは思わなかった。
なんだか普段の銀達を見ている様でとても楽しそうな光景だ。
「そういえば何故お二人もこちらの馬車に乗ったんですか?」
「あー、私は春風の里にはちょっと用事があったのは言ったわよね?里にある「便利屋」さんに用事があってね」
「なるほど、便利屋にですか」
「ちなみに私もその店にちょうど用事があったから昨日連絡を取って2人で行くことにしたの」
「お二人は仲良しなんですね」
「そうね、私とメアリーは仲良しよ、メアリーは」
「ちょっとー、僕は?僕様は?」
「貴方は駄目、せいぜい近所の田中さん関係よ」
「ひでぇ話だ・・全国の田中さんが聞いたら泣くぞお前ッ・・」
なんだか可愛そうな感じもあるけど、
きっとあれはあれで仲の良い証拠だと信じたいところだ。
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