無限空想世界の幻想的な物語~狼猫~ 第6話 「再開」
暗い暗い地下の廊下、一足歩く度にギシギシとなり響く木の床、
兄さんだったらおそらく叫び倒れていることだろう、
何と言うか、こんなカンテラの薄暗い明かりだけでは・・、
俺は今、片手にカンテラを持ち、
少し緊張しつつも早々と足を運ばせる。
暗い所が怖いんじゃない、
恐怖を感じるからだ。
何か、嫌な予感を感じ取ったからだ。
「・・薄気味悪いな・・、まだつかないのか・・確か地下の奥だったよな・・」
どんなに歩いてもそんな場所は着きそうに無い、
一体どこにそんな場所が・・と思っていた俺の目の前に現れたのはあからさまにここと、
思わせる札、「進入禁止」といくつも貼られたここだろう、
「分かりやすいな・・ここかッ」
俺は意を決してドアノブをガチャリと回し、
そして中へと入る為にギギィと言う古い木のドアの音を聞きながら、
俺は、地獄の中へと入りこんだッ!
そして、中に入り込み、ドアをバタンと閉める俺、
そしてカンテラを照らした視線の先には・・、
いた、あの少女だ。
間違いない、これが兄さんの言ってたフレアだろう。
だが俺は知っている、こいつの名前がフレアで無い事ぐらい俺は知っている。
少女に光を照らしながら全身の汗が止まらない俺、
ガタガタとビビりなんてしなかったが、内心は恐怖を感じていた。
少女はどこかおびえる眼差しでこちらを見つめていた。
そして、俺に対してこう言葉を述べた。
「だあれ?・・あっ!!ああ!!」
「(しまったッ!?発狂するのか!?)」
やっぱり駄目かと思ったその瞬間ッ!
「あの時のお兄ちゃん!!!」
「・・・へっ?」
拍子抜けになる俺だった。
まさか、まさかだ。
歓迎される声で出迎えられたのは予想外だった。
俺はその瞬間に安心したのか、シャットアウトしていた目の前が、
段々と全貌を明らかにしていった。
改めてみると何とも美しい目でこちらを見てくる赤と青のオッドアイの少女の姿があった。
金髪のロングヘアーをふわふわとさせ、猫耳をピコーンと立たせた少女、
紛れもない小さな子供の様だった。
6枚の虹色の翼広げて凄い嬉しそうにこちらを見てくる。
チェック柄の入った服装が目立つ明るい少女・・、
「(てっなんでこんなポップな子に大変身してるのッ!?なんで!?俺もっと戦闘とか想像してたんだけどッ!?)」
「(あれ・・どうしたのかな・・ポカーンとして・・)」
落ち着け・・落ち着くんだ・・兄さんだったらこう言う時どうするか・・ッ!
『僕はお米になりたい(現実逃避)』
駄目だ、兄の答えは参考にならないッ!
ええい、こうなれば・・今できる精一杯の対処を・・ッ!
俺はごく普通に、平常心を保って話しかけた!
「・・やあ、また会ったね・・何年ぶりかな?」
「何年振りだろう・・覚えてないや!でも、また会えて私、うれしいッ!」
なんとか会話には切り出せた。
だが一歩間違えればあわただしい事件が起きた事だろう。
兄さん俺は今、アンタの自由奔放的な性格を悉く羨ましいと思いました。
それにしても妙だな、
不安と恐怖で来てみたわりに待っていたのはタダの明るい少女だけだが、
こんな明るくて元気な少女はすでに救われているのでは無いかと疑うレベルだ。
先生・・もしかして・・からかった?
でも、結構マジな雰囲気を漂わせていた様な、
それこそ本当に明るい表情に何か裏があるかと思った。
いや、今考えるのは止そう、とりあえずは・・、
この少女を目の前にしてどうすればいいのか、
いや、どんなに考えても一択だったか、今やるべき事は、この少女を救うだったよな・・、
救い方はなんだっていいのだろうか?
だったら一番有効的なのはこれだろう。
「なあ、俺は今、どうすればいいのかわからない、なので君とおしゃべりしたいなー・・なんて・・」
「うんッ!良いよッ!座って喋ろうッ!」
やさしく微笑、こちらへ明るく声をかけてくれる少女、
少し思った事がある、これはほんの今思った感想だ。
この天使の微笑、もしこの微笑で何かを頼まれたら断れるか?
こんな天使の笑顔で言われたら誰が断るッ!!
誰も断れねえよッ!
俺はこの微笑になんの疑いもせず、
純粋で俺も心を躍らせて、
人ならざる者の天使と話す事になった。
腰掛の無い丸いイスに座り、少し落ち着く、
カンテラは彼女が座っているベッドの近くにある机に置いて、
明かりとして使う事にした。
先ほどまで全然ツッコんでいなかったがこの部屋は薄暗すぎる。
こんなところに閉じ込めていたのかあの先生、
カンテラ無かったら何も見えないぞこれ、
それになんだか地下と言う事もあってか、すごい肌寒い、
しっとりとしたこの空気・・
けれども、なんだか雨の日見たいで良い、落ち着いて話せそうだ。
「ところで、何を話してもいいのかい?」
「うんッ!なんでも言って!あたし、なんでも興味あるからッ!」
元気よくハキハキしゃべる少女、
年齢にしてまだ8歳?それとも10歳くらいの女の子だろうか、
こんな健気な少女がこんな可哀想な事になるとは・・、
まあいい、今は話をするのが先決だ。
「君の名前は?なんて言うんだい?」
「あたし?あたしはメリル!メリル・チェッダーブライゾンだよ!」
随分聞いたことの無い苗字だな・・チェッダーブラゾン家なんてあったかな・・、
それにメリル・・、この子の名前はメリルだったか?
確か・・あのデータには「flare234-GGX」と言う名前があったはずだが・・、
そして母は確か最終的に「フレア」と呼んでいたような・・、
兄も「フレア」と言っていたが、誤認だろうか?
まあ、彼女の本名と言う事だろう。
あまり深く考えても仕方がない、今は彼女が教えてくれた通りに話を進めよう。
それにしてもメリルか、かわいらしい名前だ。
親は随分大切に育ててくれた事だろう。
「可愛い名前だね、親が付けてくれたのかい?」
「うんッ!お父さんとお母さんがつけてくれたの!良いでしょ!」
「ああ、似合ってる、とても良い」
「お兄ちゃんは・・なんていう名前?」
そうか、こういう質問は大概自分に跳ね返る事を忘れていた。
だが、問題ない俺は俺の名前を彼女に教えるだけだ。
「俺の名はジン・ウィルコンティ、みんなは俺の事をジンと呼ぶ」
「じん・うぃることぅぃ?じぃ・うぃるこん・・」
「ハハ・・難しいかい?君の呼びたい様に呼んで良いよ?」
「じゃあ・・ジィお兄ちゃん!」
何か胸に突き刺さる呼び名だが・・、
まあこの際どうでもいいッ!
彼女が満足なら受け入れてやるッ!
「わ、わかった!ジィお兄ちゃんだね!!良いよ!」
「うん!ジィお兄ちゃん!・・えへへ・・」
・・純粋にテレテレと喜ぶメリル、
なんだろう、末っ子だったからわからなかったけど・・、
下の存在がいるのって・・良いな、結構照れくさいけど、
なんかつい面倒を見たくなるくらい可愛い存在に見えてしまう。
「嬉しいのかい?こんな大きなお兄さんをお兄ちゃんと呼んで・・」
「うんッ!だって今まで見た中で一番優しくてとってもカッコイイからッ!」
今ので俺の心は撃ち抜かれた。
兄さん俺はロリコンになりそうです。
違う、やめてそういう事じゃない、
お巡りさんは呼ばないで、俺はやってない、
俺は童貞です。
気を取り直して・・、
「・・ありがとう、そんなに褒められたのは初めてだ」
「ジィお兄ちゃんは褒められた事無いの?」
「うん、最近はこんな褒められた事は無いね~メリルが初めて」
「そっかー、じゃあ、頭だして~!」
「へっ!?頭ッ!?」
どういう事だッ!?
これ、ア〇ザーなら死んでない!?※ア〇ザーに失礼
いや、
そもそもア〇ザーじゃなくてもぶっちゃけ、
この後のホラー展開が見えてきそうでアババッ!!
グッ・・
しかしここで断れば機嫌を損ねてヤンデレ恋愛ゲームなら、
オニイチャッ!てっなって終わるッ!
それだけは避けなければ・・、
俺は大人しく頭を恐る恐るすこーし低くしてメリルに向ける。
「(神様どうかパージだけはご勘弁をッ!!)」
だが、俺の予想をはるかに上回る展開がこの後待っていようとは、
俺は思いもしなかった。
なんとメリルは小さな手を俺の頭にのせて、
そのままやさしく的確になでなでと頭を撫でてそして一言、
「よしよーし!ジィお兄ちゃんは良い子だよ~ッ!」
こ れ は 良 い、
とても心が解放された。
一瞬でもホラー展開だと疑った自分を殴りたい、
「ああ・・幸せ・・」
「本当?良かった!」
「ああ・・救うのは構わんのだが・・別にメリルに撫でられても構わんのじゃろ?」
「お、お兄ちゃん!?なんたが魂が抜けかけているよッ!危ないよッ!それ「しぼうふらぐ」だよ!」
体は愛で出来ていた・・心は安らぎで血潮はトマト・・、
そろそろ怒られそうだから止めておこう。
「あー、ごめんねッ!こんなに・・優しくされたの鈴蘭以来だからッ!」
「そうなんだ~!でも良かったよ、ジィお兄ちゃんが幸せなら撫でた回あった!」
「いやいや、こちらこそ・・代わりに俺も何かできないかな?」
「そうだな~・・ああッ!じゃあ・・あたしの事も撫でてッ!」
恩返しと言うよりむしろご褒美ですねわかります。
ああ、こうやって兄さんも俺もロリコンへと生まれ変わるのだろう。
「それでよければ・・・ぜひ撫でてあげよう」
「わーい!!・・じゃ、じゃあ・・ちょっと恥ずかしいけど・・ッ」
ああ、こんな純粋に頭撫でてと言ってるような頭は見た事ないぞ、
なんだこれ最高じゃないか、
俺は手を小さな頭にポンッと乗せて、
そのまま優しくなでなでとスラーとスラーと優しく、
まるで愛しい人を褒める様に、
「・・・ッ」
「(んっ?どうしたのかな?)」
何かいまビクッ!てっなったような、
変だな・・どこか変なところ触ったかな?
と、俺は不思議に思いながら撫でるが、
事の重大さに気づくのはこの数秒後だという事になろうとは思うまい、
「んっ・・ッ!!(耳・・くすぐったい・・)」
「・・ああッ!?無意識に手がッ!?ごめんッ!猫は・・耳が・・ああえととうをぺしぺしへぺぺぺッ!!!」
思わず手を放して、あたふたあたふたと慌てる俺、
なんと情けない、これは嫌われたかな・・、
「ごめんね・・辛い思いをさせてなんと切腹したらいいのかわからないからとりあえず爆弾が乗った電車に突っ込んで来るね」
「あわわッ!ち、違うのッ!違うのッ!全然平気だからッ!そんなシン・なんとかみたいな事しなくていいから!煎じすぎてもうネタが通用しないよッ!」
「ううっ・・つい・・うれしくて・・」
「気にしないでッ!あたしはその・・全然・・ちょっと・・くすぐったかだけだからッ!」
なんて健気な・・もうお兄ちゃんなんて嫌いッ!
と言われても仕方がないくらい俺は最低な事をしたのに、
この子は・・、
ああ、この子に失礼の無いように笑顔で明るく・・そして爽やかに言わなければッ!
「ありがとう・・そんなに・・俺の事を気を使わなくていいよ?」
「気なんて使ってないよ!お兄ちゃんだから・・良いんだよ?」
天使、メリル・マイ・エンジェル、
ああ、心の中でこんな癒されたのは初めてだ・・特に今年はッ!!
もう、俺ロリコンでいいや、良いよもう。
お巡りさん俺だ。
「・・本当にありがとう、なんかメリルと話していると・・暗かった物が全部明るくなった気がする」
「・・本当に?良かった!まだ暗い所ある?」
「無いな、君のおかげで完全に消えた、感謝してるよ、メリル」
「えへへ~・・ありがとうッ!」
天使の様な微笑、明るいまなざし、笑顔満点の素敵な顔、
とても、あんな顔をしていた子だなんて・・思えない・・、
救えと言うのはこういう事だったのかな?
メリルと喋れ、と言う事だったのかな?
なんだ、最初っからそういえば良かったのに・・、
先生もいじわるだな、全く、
後で少し怒ってやらなければ、
俺の気がすまんよ、ええ、すまんとも、
・・そういえば、メリルの部屋に入る時に・・あの時のお兄ちゃんと言っていたな・・、
もしかしてメリルは俺のことを・・覚えていた?
・・覚えていたか、覚えているのだろうか?
「なあ、メリル・・あの実験の日の事は覚えているのかい?」
「ふえ?あの時の事・・?もちろん!だって・・あの時からお兄ちゃん事・・ずっと好きだったんだよ!」
「ハハッ・・何もしてなかった俺がかい?」
「何言ってるのもう!あの時お兄ちゃんが・・ッ!!!!」
その時、楽しかったムードが一転・・、
メリルに笑顔が消えた。
メリルが俺の事を喋ろうとしたその時・・、
目に苦しみを見せた。
ただガタガタと震え始める挙動、
胸のあたりを両手でギュッと掴み心臓が苦しんでいるのが一目瞭然だった。
メリルは段々呼吸を苦しみ始めた。
「メリルッ!!どうしたッ!!」
「駄目・・ッ!おにいちゃ・・来ちゃ・・駄目ッ!!」
「メリルッ!!しっかりしろッ!どうしたッ!!」
「来るなッ・・今・・なんで・・目覚めないで・・お願いッ・・大人しくッ・・アァッ!?」
「メリルッ!?」
ガシャンと音を立てて大きく机や物を倒しこむメリル、
どうしてしまったんだメリルさっきまであんなに笑顔だったじゃないか・・、
何故だ、何故なんだメリルッ!!
俺はただ倒れこんだメリルを抱え、必死に呼びかける事しかできないッ!
なんて無様なッ!
俺に医療の知恵さえあれば・・天才に癖にッ!!クソッ!!
「どうして・・いつも余計な・・クソがッ!」
「はぁ・・ハァ・・だめ・・ッああ!来ちゃうッ・・ヴァレ・・がッ!!」
「どうしたメリ・・ルッ!?」
メリルの目に光が消えそうなぐらい苦しみ始める。
そして今、一瞬片手が僕の首目掛けて締めて来ようとしたじゃないかッ!
それをサッと避け、強引にもう片方の手で止めるメリル・・まさかこれはッ!?
「・・二重人格、そうか!思い出した・・フレア・・兄さんが戦ったフレアは・・多重人格ッ!!」
「・・そう・・あたしの中に・・は・・ヴァレッタ・・がいる・・のッ!!」
「メリルッ!!しっかりしろッ!」
駄目だ、もう自我が崩壊しかけてる・・、
自身の腕を止めるのでさえ一苦労と言った状態だッ!!
「・・お願い・・最期の・・お願い・・ヴァレッタに変わったらヴァレッタを救って・・彼女は悪い子じゃないの・・純粋に・・だれかを・・遊び相手を・・ッ」
「メリルッ!!」
「・・じか・・んが・・ない・・もうすぐ・・わたしは・・ねむ・・ヴァレ・・タを・・おね・・がい」
「・・・ッ」
「・・なる・・べ・・く・・そと・・へ・・そし・たら・・きっ・・と・・」
「・・・」
メリルは最後に何かを言いかけて、
力を失った。
いや、衰弱したのだろう、おそらく次の悪魔へ目覚める為に、
そりゃそうか・・天使が救えても・・まだ悪魔がいたか、
先生の言っていた事は・・こういう事か・・、
俺に救えるのか、悪魔も天使も・・、
「・・やるしか・・ないッ!!」
俺はすべての覚悟を決めて、悪魔と戦う覚悟を決めた。
暗いカンテラが照らす薄暗い部屋の中、
俺は意を決して、戦いの覚悟を決める。
NEXT




