無限空想世界の幻想的な物語~狼猫~ 第2話 「血筋」
ともあれ、なんとか自己紹介が終わった。
さて、自己紹介が終わったところでこのまま例の本題へと映るとしよう。
「では灯先生、兄さんについて何かわかった事はありますか?」
「そうね、私から説明できる範囲で説明させていただこうかしら・・まず彼の生態系に何かしら変化が見られるわね、彼元から【能力】は持っていたかしら?それとも魔法は使えた?」
「いえ、兄は若いころ、具体的にはこの屋敷奪還作戦まで戦闘ではほぼ役立たずと言って良いでしょう、魔法は愚かヴァンパイアにすらなれませんでした」
これはいつか語った僕の記憶の話で証明されている。
兄は若いころ確かに同じ血の通った兄弟であるはずなのに、
なぜかヴァンパイアの血のみの形で生まれていた。
それ故に日光の中でも平然に生きていたり、
俺みたいに血を吸わなくても生きていた。
要するに血以外はほぼ人間だったと言える。
しかしあの惨状か察するに何らかの形で兄はあの女帝、
さらにはフレア相手にも勝利を収めた。
それもどちらも死をもたらさずの勝利だ。
兄が言っていた「憎しみで人を殺さない」を確かに実現している。
それどころか生きて和解をする始末だ。
兄のあの言葉はおそらく意味のある戦いをしろと言う事だろうと今では受け取っているが、
まだ完全に理解しているわけではない、けれども、
ああまでして兄が止めてくれたことを俺は忘れてない、
それ故に今後は答えが出るまでは戦闘は控えている事にしている。
こうして考えてみるとなんだかんだでやはり尊敬できる兄だ。
「そのヴァンパイアになれなかったお兄さんだけど・・検査結果を見てみると血が四つ混ざってるのよこの子」
「四つ!?」
「う、うわぁ・・」
「一つはウィルコンティ家のDNA、これはヴァンパイアとしての血ね、二つ目がヴォルフの血、これは狼としての血、三つ目はドラゴン、恐らくそこにいるお嬢様が分け与えて得た血ね」
「ゲッ・・バレてた?」
「なるほど、通りで・・」
「そして四つ目は・・人間の血・・だけどこの血が誰の者かまでは不明ね、結構前からあったみたいだけれど・・」
人間の血?
前から存在した?
つまり生まれた時と言う事か?
確かに兄が生まれた時からなら何かの超常現象が起きても仕方がないな、
それで人間になって生まれてしまったから他の成分が僕に一局集中したと、
理屈はあってそうだがそうなると腹は同じだけど血が違うのか?
いや、どの道兄は兄だ。
どんな真実だろうと今更否定はしまいよ、
「ひとまず人間の血は置いておく、まずはお嬢様の血から説明を求める」
「それじゃあ本人に聴きましょうか、ちょうどいるし」
「マジか・・別に良いけど」
凄いダルそうに話すなこのお嬢様、
兄さんの前では純粋な顔があるのにこのお嬢様彼女面との違いが丸わかりだよ、
「まあ、簡単に話ましょうか、私はあの女帝との戦闘時の時は首の輪と両手の輪のせいで基本的な魔力が封じられていたわ、それ故に敗北したのだけれど・・、苦肉の策かつやりたくなかったけどポチに私の血を分けたわ、私たちデュアルヴァンプは必ず何かの複合ヴァンプなの、さらに誰かの血をもらう事で種族変化、誰かに血を分ける事でその人を吸血鬼にする事も可能とする」
「つまり、結果的に兄は別のヴァンプとして力を宿したと」
「そういう事ね」
大まかな説明をしてもらえたおかげでこちらとしてはもう理解した。
つまり兄の能力の目覚めは「血の統合」で目覚めた。
本来吸血鬼扱いとしない兄はこのデュアルヴァンプの吸血鬼化によって、
改めて吸血鬼になる事になったんだ。
苦肉だったというのはおそらく危険もあったからだろう、
本来そんな無茶苦茶な事をすれば死も良い所だ。
「それでも疑問があるわ、それならあの子はもう本来吸血鬼よ、何故まだ人間の体なのかしら?」
「私が推測するに・・あの子の能力がそれを物語るかもしれないわ・・戦闘中に発動したと思われるあの能力」
「と言うと・・【血の決闘】の事ね」
血の決闘?
それが兄の能力なのか?
血の決闘か・・、兄には似合わない言葉だがなんだかそれはそれで良いと思う能力だ。
だが効果がまだわからない以上は完全に良いとは言い切れないな、
しばらく黙って聞いていよう。
「この血の決闘は【相手の血を奪って戦う】【自らの血も流して戦う】と言う事が検査結果で出たわ」
「ちなみにその検査はどうやって・・」
「彼が大人しくなった時に血をちょこっとね、そしてそれをこの小型検査機に入れてなんの能力かを確かめたの」
「へえ、他に何かわからなかった?」
「後は彼が大事そうにしていた剣と銃、片方は黒と赤の禍々しい剣だったわね刃こぼれ一つも無い、もう一つは蝶の羽が後部に付いていた幻想的な見た目の銃」
兄が剣と銃を・・、そんな物騒な物持って戦えるだろうか?
だが事実そんなものを持ってないと戦えないからな・・
しかし、どうしても言える事が一つ、
「二つとも見た事ないな、兄は戦闘すらまともにできないから今までこんな質の良い武器なんて見た事も無い」
「でしょ?これはきっと能力に関係しているわと思って調べてみたんだけど、分かったのは【無限剣・吸】と【幻想銃・狼】と言う名前」
「それはどうしてわかったんですか?」
「小型検査機には物の読み取りもできるの、それで可能な範囲は読み取ったのだけれどね、名前だけが出て来ただけで他には特に・・」
機械が有能すぎて笑ってしまうな、名前までわかってしまうとは、
少しあの機械にもツッコミたいが、気になる名前だ。
狼と吸・・、二つとも家系の血だ。
狼はヴォルフ、吸はおそらく吸血鬼の頭でヴァンパイア、
ふむ、これはそういう事か、
何故「能力」が「血の決闘」なのかわかった気がする。
「・・そういう事か」
「え、何かわかったの?」
「何かわかったのジン?」
2人とも聞きたそうな顔している。
これは素直に答えた方が良いだろう。
「ええ、重要な事が、まずこの剣と銃ですが恐らく兄の血が分けられた物です。」
「ええ?これが?」
「はい、吸はおそらく吸血鬼の吸、狼は言うまでも無くヴォルフ、それぞれに別の血が分かれて注ぎ込まれて剣と銃です」
「そんな摩訶不思議な事が起きるの!?」
灯先生もびっくりの仕様とは・・、
おそらくは初回時の持っていた武器を己がスタイルに変化させてしまうのも、
この能力の特徴なのだろう。
「血を分け与える事によりそれぞれですが武器に代表となる血の名前が刻まれています、だから吸と狼です」
「確かにこの銃は人の腕を食いちぎったわ、大きな狼になってね」
「と言う事は大方正解ですね、たぶん、吸はおそらく吸収をするでしょう。」
「私、なんだかチンプンカンプンだわ・・・」
灯先生がチンプンカンプンなら俺もチンプンカンプンだよ、
自分でも正直なんでそんな事になったかわからないが、
とにかく今はこれを受け入れる努力でもしなくてはならない、
「ちなみにドラゴンの血はどこに・・?」
「それについてはわかりません、兄が正気に戻らない限りは話せることがあまり・・」
「おれは・・しょうきにもどった!!」
「兄さんッ!?」
馬鹿な・・一度気絶したらほぼ一日は起きない兄さんが起き上がった!!
信じられない事だ。
頭は包帯巻いているけど、
どうやらこの生きた輝かしい目は健在だし、
なんとも無さそうだ。
「フフッ・・どうやら諸君らはあの事件の僕の話を聞きたいのだろ?」
「ポチ・・彼方あなたずいぶん自信まんまんね・・」
「頭でも打った?大丈夫?お医者さん呼ぶ?」
「それは貴方ですよね?まあ、いいさ、とにかく僕の話を聞いてくれよッ!」
随分自信満々に語ろうとする兄の姿は初めて見た。
今まで根拠のない自信家はいくつも見て来たが、
ここまで不安を感じさせる人も始めた。
だが、ここは兄の話を大人しく聴くことにする俺達だった。
「まず、ドラゴン血はどこに注ぎ込まれたのか・・僕にもわからないッ!」
・・期待した俺が間違っていた。
なぜこんな年中無休頭芸術品の兄に答えなんて求めてしまったのか、
「兄さん、真面目に答えてる?」
「うん、僕はいたって真面目だ」
「お菓子好きかい?」
「うん!大好きサ!」
嘘をついてるようには思えないけど本当にわからないという奴だろうか、
それにしたって悪ふざけがすぎる。
「困ったわね・・本人にも分からないとなるともう他に思い当たるふしが無いわよ?」
「・・事故再生・・」
「事故再生?どういう事ですかお嬢様」
「いえ、私の能力なんだけど、もしかしたらそれを受け継いでたりしないかなーと・・後はドラゴンヴァンプ時の私みたいに能力が飛躍しているんじゃ・・」
「それよッ!ローゼリッテ!」
「えっ合ってた!?」
なるほど、血を分け与えて出来た能力でもあるから血の決闘か、
そして使用はしていないけど多少は受け継いでるお嬢様の能力、
この二つが実質ドラゴンの血と言っても良いという事か、
「まあ、要するに兄の能力によって具体的に生まれたのがこの銃と剣、追加で身体のサポートをするのが竜の血と言う事ですね・・あ、だから体の回復が早かったのか・・、」
「僕の体デーモンに・・」
「デーモンはまた別だよサタンでもないからね」
「う、ういっす」
なんだかよくわからない事ばかりだが、
兄さんに能力が出来て本当に良かった。
これからはより自慢の兄になるかもしれない、
それに、兄さんと俺の血筋はやはり一緒だという事がこれで判明されたわけだ。
昔は疑いはしたが、もうこれで疑う事は無い、
残りの人間が気になったが、
あまり気にしなくても良い事だろう。
今はこの件だけで精一杯だ。
「と、いう事で以上が彼の全体的な生体検査結果ね」
「おおよその事が分かって安心した、流石は国一の医師だな」
「それほどでもないわ、私に出来ない治療も検査も無いからね」
自信満々にウィンクをかます灯先生、
こりゃあ相当な自信家なんだろうよ、
「さて、先生は次の部屋に行くけど・・あなた達はどうするの?」
「次の部屋?」
「ジャック君ね、今はリアリナちゃんが介護しているわ」
「・・一様・・行かせていただきたい」
「私はここでポチを介護するわ、1人じゃさみしいもんね~」
確かに兄は何かあるとすぐ抜け出すからな、
案外しっかり者のお嬢様が入れば心配ないだろう。
「いや、しかしさっき言ってた事故再生を使って・・」
「灯先生、銃と剣はそっちで預かってて頂戴」
「かしこまりッ!」
「ふじゃけるなぁぁぁッ!」
お嬢様がテンポ良く灯先生にポンと渡して、そのまま手に持っている革の鞄の中へと突っ込まれた。
一見入らなそうな中くらいの鞄だが、なぜかススッとスムーズに入った。
四次元なのか?あれ・・
まあ気にしないでおこう、
兄が武器を取り上げられるのは当然だろう。
能力発動条件が血の決闘必須ならそうなるわ、
なんだか可哀想な気もするが、心を鬼にしてここは何も言わなかった。
かくしてお嬢様と兄は病室で仲良く2人きりにして、病室を後にする。
俺と灯先生はジャックさんがいる病室へ足を運ばせるのだった。
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