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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
外伝その3
148/150

無限空想世界の幻想的な物語~外伝~ 魔章42 「馬鹿だからこそ馬鹿にできない」

『試合・・開始ッ!!』


ファァァァァッ!!


いつものブザーが鳴り響くッ!

始まる・・開幕の準決勝・・もはやここまでくればシャットアウトされた防音会場でも。

それが透き通る様に聞こえる、私には分かる。

今、会場は熱に溢れているッ!


その熱に答えるべくも私はまず前進するッ!

鋭く姿勢を落とし風の様にまっすぐまっすぐ突っ走るッ!

相手の鬼神だってそうだ、無心にただこちらに向かって来るッ!

我慢勝負って奴だ、どちらが先に衝突を避けるか。

はたまたどちらが先に勝負をしかけて来るか。

さあ、どうする鬼神、お前ならいつどのタイミングで勝負をしかけるッ!


「(まあ・・最も・・この距離なら・・ッ!!)」


「(この距離なら・・行けるッ!!)」


ダァァァァンッ!!


その距離はぶつかる寸前という所で動きが変わる。

互いにこのまま衝突するのかと思いきや、自体は全く別の展開へと移る。

私は右手を大きく引いてそのまま殴り込みに行く。

対する鬼神も同じ姿勢、私の勢いある拳にぶつけて行くかのように殴り込みに行く。

そう、この感じ、動き、迷いのないこの一瞬。

間違いなく、これは・・拳と拳のぶつかり合いッ!!


もはやその威力はぶつかっただけでも下への地面への損害は計り知れなかった。

周りには風と衝撃波が満ち、大きな破壊をもたらした事が分かる。


「やるじゃん・・そうじゃなくちゃな・・」


「ええ・・貴方のその覚悟から・・私は決めていました・・」


そうだ・・相手は正真正銘の格闘を極めし武闘の達人。

なら、その敬意を払って私も一つの挨拶をしてやったまで。

そして、今戦闘準備共に挨拶は済んだ・・ここからは【拳】ではなく。

こちらの【剣】でいかせてもらうッ!


「【画竜点睛の剣】・・来たか・・ならばこちらも・・全力を出さざるをえまい・・ッ!」


ダンッ・・スォォォッ!!


両手の拳を合わせ・・角を表し姿を変えるか‥ッ!

なるほど、鬼神となりて私とやり合うっていうんだな・・。

おもしろい・・どこまで続くかッ!!


「風神・・【旋風剣(せんぷうけん)】ッ!!」


風の様に舞い踊る神の様に、旋風と風来を表すこの技。

一見ただの竜巻作りの技となんら変わりないようで。

そこは月下の師匠から教わった技の1つ。

真っ直ぐ進む竜巻の様なだけでは終わらない、この技にも第二手が備わっているッ!


「(甘いッ!確かに貴方の攻撃は早い・・しかし・・あの地獄・・あの攻防を見た後なら・・この程度の神風・・大した速さではないッ!!)」


「雷神・・ッ!」


「ち、違う・・近づいた上での・・特攻ッ!?」


稲光を輝かせ、両手持ちに切り替え鋭く果敢に攻めた上での・・ッ!

相手の懐へ切り裂く構えッ!


「【爆雷剣(ばくらいけん)】ッ!!」


「【熱風(ねっぷう)雷々拳(らいらいけん)】ッ!!」


ビリィィィッ!ドゥドァンッ!!


わ、私の渾身の特攻を即座に技で防いだッ?!

しかも、この感覚、この迸るエナジーといい、エネルギーといい・・。

間違いなく、【魔法】を組みわせた魔術拳ッ?!

恐ろしい奴だ・・この準決勝までコイツの活躍は見て無かったわけじゃないッ!

それでも幻華戦い方しか知らないと思っていたが。

本当は隠していただけか?

はたまたこの短期間で覚えたと言うのか!?

しかし、炎と雷の同時混合魔術・・いや魔道・・それも上級者レベルの魔法なんて。

一体どこの誰に教わればそんな事ができるッ!?


いや・・可能性は無くはない。

サギー氏、彼の実力なら師範の資格も十分あったはず。

なら、彼から教えてもらったに違いないッ!

その大きな決定打として・・殴り来た右手と違い左手は鋭い手刀ッ!

その手刀からも何か繰り出そうと言うならまさしくサギー氏の流儀ッ!

野郎、勝つ為にまた一つ戦いを学んだかッ!


「鬼神・・てめぇのその力・・サギー氏によるものか?!」


「そうです!この力は・・メリルさんとサギーさんの修行の合間をわざわざ時間を引き裂いてまで教えてもらった代物・・しかし!魔術拳は決して先代者の者達だけのモノではない・・わが師もまた魔術拳の使い手・・ならば当然、私も魔術拳はもとより使えていた!」


「ならば・・何故サギー氏にッ!?」


「私は過去の記憶・戦いの記憶を閉ざしていたからな・・当然だが・・私の体が追い付かずエルフにボロボロに負けるのも無理はない・・ならば・・一度全ての基礎を思い出した上で・・今この時・・鬼神の時の記憶を蘇らせるッ!そうすれば・・私は再びこの戦地に返り咲く花となろうッ!」


「なーるほど・・通りでね・・こんな・・力があるわけだよッ!」


「おしゃべりはその辺にして・・そろそろいいかッ?」


「何ィッ!?」



ドゥォンッ!!


鋭く突き刺しに行った剣を弾いて、私の腹を蹴りに・・ッ!!

油断した・・まさかあの手全てがフェイク・・。

本当の目的は大ダメージを与える為の蹴りを入れる為のつば競り合い。

よもやこの私が吹き飛ばされるとは・・だがッ!!


シュバァンッ!!


何もお前の動きがよめて無かったわけじゃないッ!

蹴られる直前に放った隠し小刀は確かにアンタの腹に刺さったのを確認した。

しかも、電流迸る雷神の力を交えた状態でね。


「(グッ・・安易に蹴り飛ばすだけではくたばらないか・・月の民めッ!!)」


「せいやぁぁぁぁぁッ!!」


「(蹴り飛ばした方向からいきなりの奇襲ッ!?あの砂煙からよくもノコノコとッ!)」


「(確かに・・今お前の目の前に出るのは得策ではない・・剣があるとはいえ、接近戦の武術においては鬼神の方がはるかに強い・・ましてや今コイツは戦いの中で成長しているッ!)」


「(急に飛び上がり攻めて来たのがの尽き・・貴方はここで終わりだッ!)」


右手拳を深く落とし、こちらへめがけて殴りかかるッ!

まるで打ち上げられた巨大隕石に突進するかのような気分だ。

本来、隕石とは空の彼方よりやってくる彗星。

しかし、今、この落ちた月の舞台ではそれが逆転している。

今の地上は空であり、空はこの大地である。

しかし、いくら場所が変わろうとも・・相手は所詮・・鬼ッ!

本当に空に住んでいた者に敵うモノかッ!

見せてやる・・これが・・空に住み、月で育った者の力の差だッ!


ヒュォラァァンッ!


いくら鋭い突き上げの拳でも、魔道も何もかかっていないのならスピードは見える。

その速さは光をも超えているだろう、ならば一般の目からは見えていない。

しかし、私には見える・・その光共に全てを得て来たからなッ!

突き上げられた大技に対してもブリッジの様に体をしならせ避けるッ!

そしてそこから両手で地面に華麗について一回転ッ!

鋭く屈ませ神速に走る準備ができればもう何も迷いはないッ!

もう一度行くぞ、あの懐にッ!


ダンッ!!


今の私はお前の様なとろい鬼では捕らえ切れないほど早いッ!

そして、この腹に刺した小刀を斜めに切り下ろすッ!!


ビリィズバァッ!!


これぞ・・奥義その一つ【光雷鳥(こうらいちょう)】ッ!!

稲妻の様に腹を引き裂く、体壊しの殺人奥義。

普段は滅多なことじゃ使わないけど。

これはダメージ共に全てを制限された戦い、何より生命に対する死は訪れない。

どんなダメージも痛みはそれなりに伴うが、死が存在しないならよりやりやすいッ!

今、この場で決める以外何もあるまいッ!

流石にこれだけ凄まじいほどの腸狩りを行ったのなら鬼とはいえ・・。


「鋭い一撃・・見事・・ッ!」


「へっ!?」


ガッ・・ギィィッ!!


な、何故まだ息をしているッ!!

気絶するほどの痛みを今コイツは伴っているはずだぞッ!!

何故コイツは・・私を掴み頭を引いているッ!!


「私に痛みで精神を乱すなど・・百億早いッ!!!【爆天撃(ばくてんげき)】ッ!!」


ゴゴゴゴ・・ッゴッシャァァァッ!!


す、鋭い頭突きガァッ!!

痛い・・脳が腐る・・連続的に体を押さえつけられてこんな頭突きされた流石にヤバいッ!

痛い・・痛い痛い・・痛い痛い痛い痛いッ!!

ああ・・意識が・・とお・・のい・・って・・。


「クッソ・・」


「終わりだ・・これで全てッ!」


「んなわけ・・・あるかぁぁぁぁッ!!!」


「チィッ!?」


グシャァァァッ!!


左手の手刀をトドメの一撃と言わんばかりに鋭く私の肩刺し行く。

しかし、それと同時に私の小刀への一撃も相手の肩に刺さるッ!

互いの攻撃は奇しくも同じ闘志、同じ思いのままにその攻撃が当たるッ!

とはいえ・・被害は最悪・・脳が痛い・・とにかくイタイ・・。

目にが・・赤いかな・・今視界がめっちゃ赤い・・脳みその血管から溢れ出てんだろうな。

ヤバい・・ヤバい・・色々考えができなくなってきた・・。

怖い・・このまま・・だと・・いやでも・・ッ!!


「ハァ・・ハァ・・(月の勇者よ・・もう終わりだ・・お前と私の戦いもこれで決着が着く・・)」


「く・・糞が・・ッ!!」


視界が赤い、怖い、何も見えない。


真っ赤な黒き赤きどす黒い混沌の絶望の色だ。

私は今絶望に染まっている。

そ、そんな・・ここまでしたのに・・もう・・。


やだ・・負けたくない・・こんなところで終わりたくない。

でももう何も・・感じ取れない・・。


何も感じ取れない、何も・・聞こえ・・


『頑張ってくださぁぁぁぁぁぁぁいッ!!!桃子さぁぁぁぁんッ!!』


「・・・ッ!!巫女ちゃんッ!?どうして!?」


絶望の赤黒からいっきに私の視界は色を取り戻した。

そう、七色の虹の大声によって。


 ◆


「出雲ちゃんッ!?なにしてやがるッ!?お前は特訓を・・」


「特訓ならもういい」


「ま、マオッ!だけど・・」


「それよりも・・仲間だ・・今は仲間の闘志を見届けねぱなるまい」


「・・マオ」


「(と、言い出したのは巫女なんだがな・・)」


「(飽きれてしまったのならごめんなさい魔王様・・私にとっても仲間はかけがえのない大切な人なんです・・それが今必死に戦っているのであれば・・修行なんかどうでもいい・・仲間の闘志を・・最後まで見届けたい・・だって・・この瞬間はもう・・二度と訪れない・・二度と見届ける事ができない・・たった一度の時間なんですッ!!)」


「・・巫女ちゃんの目つき・・変わったな」


「そうだろう・・コイツは最初本当に女々しい顔つきだった・・けど今は違う・・聖女や巫女・・美しくも凛々しい女の面になった・・どこに出ても恥ずかしくない・・そんな顔だ」


「ハハッ・・ならいいじゃねぇか・・大声で応援されちまったなら・・喜んで戦うぜッ!」


「そうだとも!それが・・我々の巫女ならなおさらだッ!!」


「もう!二人とも変な事言ってないで・・応援しましょうッ!」


「せやなッ!ファイトォォォォッ!!桃ォォオッ!!」


「月の勇者ぁぁッ!!」


「頑張れぇぇぇッ!!!」


 ◆


「な、なんか来て早々向こうの陣営凄い応援気合入っている?!」


「あらら・・これは気合負けしそうね・・」


「言ったとおりだろ?見ろ、あのボロクソの状態を・・どっちも頭から出血、足はボロボロ、体はゴミクズになるまでボロンボロンよ・・それでもよジン、向こうの人達のあの声の張り・・聞きなさい、アレが背中を押す人の声よッ!」


「・・アレが・・人を押す・・声」


「そう、たとえ仲間がどんな最悪に立たされても・・お前は一人じゃない、私達がいる、一人で戦っているわけじゃない、お前の闘志最後まで見届けるッ!その気合いの入りなのよッ!」


「・・・そうか・・そういう事か・・ッ!!」


「ようやく理解したか・・馬鹿ジン」


「ジンお兄ちゃん!」


「ジン!やろ!私達も!!応援!!」


「・・うん!精一杯やろう!俺達だって・・アレ以上の声・・出せるはずだよな!!」


『うん!!』


「(ふう・・これだから無能の相手は疲れるわ・・ティータイムとしゃれこむかしら)」


『せーの・・鈴蘭ンンンっ!!ガンバレェェェェッ!!』


「負けても良いッ!俺が見守ってやるッ!お前の戦い・・お前の真の戦い見届けてやるッ!!」


 ◆


ハハッ・・なんだこれ・・。

感じ取れる、聞こえるぞ、何もかもが・・分かって来るッ!

死んでいた熱き魂がまた燃え上がって来る。

ヤバい・・今超体熱い・・ッ!!

全く、どいつもこいつも・・馬鹿ばっかり・・本当に馬鹿ばっかッ!!

自分勝手に生きて、自分のやりたい事やって、本当にかっこよすぎて・・ッ!!


「糞が・・血が止まらねぇな・・ッ!!」


「(ジン様・・メリルさん・・メアさん・・それにアレはきっと・・ありがとう・・ジン様・・心からそり応援・・受け取りました・・もうこの鈴蘭・・無礼な真似は絶対しません・・ですから・・貴方がそうおっしゃるのなら・・)」


「・・ッ!!鬼神ッ!?」


私が目から涙が止まらない一方でコイツは・・ッ。

大いなるあの黒い姿からまた元の状態へ戻ろうとしているッ!?

いや、違う・・これは今姿と元の姿が混じり合っているッ!?

どうなっている・・今、コイツに・・鬼神に何が起きているッ!?


「言葉はいりません・・いざ・・勝負ッ!!!」


「ッ!!!」


・・そうだ。

戦おう、私とコイツならそれだけで十分。

姿形が変われども、コイツから迸る黄金の闘志。

私から溢れ出る勇気のオーラ。

それらをぶつければ、もう何も語る事はあるまいッ!

全力をぶつければ、全てが分かるッ!


語るよりも先にやってやるやるぜッ!!


「始めようか・・最後の戦いッ!」


「終わらせます・・【鬼神】としての私は・・もういませんッ!!」


生きた輝きの中、にらみ合う二人。

今、最後大勝負の戦いが始まるッ!!


『覚悟ォォォォォッ!!』


ドォォォォォォォォッ!!


剣と拳の差なのにこの遠くても近く感じてしまうほどの力。

流石は鬼の力ッ!!

だが、私も何もできないわけじゃないッ!


「喰らえぇぇぇぇッ!!」


ズザァンッ!!


もはや死に物狂いッ!

渾身の小刀投げをもう一度食らわせ、拳のバランスを崩すッ!

そこから一気に形成を変えるッ!

神速の突進は私の優勢で納め、一気に壁へとめがけて・・激突ッ!


ドォォンッ!!


「ヴォォォッ!!!」


「まだまだ・・・まだぁぁぁッ!!」


「私だってぇぇぇッッ!!」


ズジャァッ!!


コイツ・・首の肉を食いちぎったり頭をぶつけて来たり。

壁に抑え込んでもやられる可能性があるッ!!

ダメだ、何か最後の一打をくれてやらないとこのままだと可能性に殺されるッ!

コイツの果てしない諦めない闘志に殺されるッ!


一か八か・・もうすべてをコイツに‥賭けるッ!!!


剣を引き抜いた瞬間が‥全ての勝負ッ!!


「ヴォォオッ!!【月下ルーン断罪剣・ザ・ルナヴレイカー】ァァァッ!!」


「負けるかァァッ!!奥義・・ッ!!【大炎華(だいえんか)】ッ!!」


鬼神も剣が抜かれたと同時に赤き炎の一撃の構えッ!

もはや後には引けない、互いの全てをぶつけて今・・勝負ッ!!


ズバシャァァァァァッ!!!


その時、その私の一撃で会場を光に包み上げた。

大きな空をの雲全てを散らした大柱の様な光。

その大いなる一撃は、まさに天から地へと鉄槌を下した。

私の渾身の一撃、しかしそれが当たったかどうかは別の問題だ。

流石に体全体のマナを使ったせいで体が大きく吹き飛んだ。

煙の量も半端ではない。

しかし・・何故だろうな。

今、この時ならば・・安心して・・いられる気がするのは・・何故か・・。

け、煙が晴れて来た・・ならもう・・そうか・・。

だからだろう・・な。

安心してしまう理由は・・。


「(・・悔いは無い・・)」


『リミットライフッ!鈴蘭さんが限界値に達しました!よって桃子さんの勝利です!!』


「・・やった・・ぁッ!!」


勝利したから・・・安心していたんだッ!

この右手を月に向けて・・ッ!


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