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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
外伝その3
133/150

無限空想世界の幻想的な物語~外伝~ 魔章27 「時には楽になれ」

ついに来てしまった、この時が。

まだ、心の中では不安が隠せていない。

体全体から震えが止まらない、緊張が収まらない。

どうすれば、どうすれば・・この緊張をほぐすことができるだろうか。

分からない、けれども迷っている暇はない。

たとえ、体の緊張が取れなくても今は歩き出さなくては・・。


「ねえ」


「ふぁいッ!?」


私が一人で考えているところに後ろから声をかけられた?

一体、誰なのか・・と言っても一人だけだけど。

メアちゃんだ、涼しい顔で足を組んでベンチに座り、こちらに話しかけて来た。

これから出場だと言うのに、また何か言われちゃうのかな?

それだけはちょっと・・、私の不安はさらに増して汗が止まらない。

心臓のバクバクと鳴る音がさらに加速する。


「あう・・・あうあ・・」


「何に怯えているのよ・・一様仲間なんだから怖がることはないでしょう?」


「そ、そうだけどー・・・わ、私・・」


「ハァ・・しっかりしなさい、別に死に物狂いで勝って来いとは言われてないんでしょ?」


「う、うん・・だけど・・だけど・・怖い・・負けた時の事も・・もしやりすぎて相手の人が死んじゃったりしたら・・」


「典型的なおバカね、大会側の規制でどんな強力な攻撃でも弱くなるから安心して行ってきなさい、そして負けなんて考えなくていい」


確かにこういうお祭りだからこそ、そういう規制があるのは知ってる。

それでもやっぱりみんながあんな風に戦っているのを見ると不安だよ。

負けても勝っても恐怖を覚えるかもしれない。

戦いの辛さがもうやらなくても伝わってくる。


「うう・・」


「どうしてそこまで弱気になるの?」


「だって・・私はジンお兄ちゃんに言われたんだもん・・必ず戻って来て・・だったら・・死にたくないし・・傷ついて倒れこむ事もしたくない・・」


「それが戦わないなんて理由にもならないわよ?」


「そうだけど・・」


「誰だって恐怖はあるわよ、戦いに対しての恐怖なんて人それぞれ、けれどもそれを乗り越えなくては何も始まらないの、貴方もしっかり乗り越えなさい」


メアちゃん・・私と同じくらいの女の子なのに強いな~・・。

どうしたらそんなに強くあられるのか気になる。

けれどもなんとなく勇気が湧いて来た、行ける気がする。

私にも支えてくれる仲間がいるんだ、ジンお兄ちゃんもきっとそう。

医務室では鈴蘭ちゃんが運ばれて治療を受けている。

ならやらなくちゃ、戦わなくちゃ、私一人ここで怯えている場合じゃなかった。

みんなが私の帰りを待っている、みんなが私の生還を待っている。

それは、戦ってこその生還を待っているッ!

行こう、今はまだ恐怖にも怯えているけれども、この足を一歩前進させるッ!


「メアちゃん・・ありがとう!行ってくるよ!」


しっかりとお礼も言わないと、一緒に支えになってくれたメアちゃん。

ちょっと謎な雰囲気があるし、近寄りがたいっていうのもあったけど。

やっぱり、話せばちゃんと通じる子だよね、メアちゃんは。


「ええ、精々死なない様にね」


「(きっと・・良い子!いい子なんだよ、うんッ!!)」


泣きそうになる一言だけど耐えよう、今は耐えよう。

今は泣いてはダメだ、進め、前を向いて戦いの場に立つんだ。

私だって、戦場に立てる事を証明してやるんだからッ!


「ほう、若いのにこの俺の戦場に出た事は褒めてやる」


風で砂煙が舞う中、一歩一歩を踏み出していざ中央へ来たらそこにいたのは・・。

サギーさん、サギーさんだ、対戦相手のサギーさんが目の前にいるッ!

距離はまだ離れているけれども、この距離がきっと縮まる。

戦闘になれば、きっと縮まる。


「逃げるわけにはいかないので」


「威勢が良いのは良い事だ、だがそれも戦闘が始まって保ってられるか、それが重要だ」


「保って見せます、絶対にッ!」


「良いね、いい目だ」


静かに吹きすさぶ土煙、多い舞う風、月明りの試合会場。

いよいよ三試合目、これで負けた方が脱落のチームとなり下がる。

ここで負けるわけにはいかない、たとえ相手が私よりずっと体格差があっても。

負けるわけにはいかないッ!

構えよう、私の自慢のこの弓をッ!

ずっと背中に背負ってたから中々使う機会は無かったけど、今ようやくその時が来た。

黒く光り輝く黒色の弓、マナから魔力変換を行い、そこから弓矢を作成する。

ジンお兄ちゃん秘伝の魔術弓兵の戦い方ッ!

私はこれをずっと練習して来た、だから戦いにはもう不慣れじゃない。

たとえ相手が銃弾を使う相手でも・・きっといけるッ!


「(魔術弓兵ってやつか・・噂には聞いていたが本物は初めてだ)嬢ちゃん、そろそろだな」


「手加減無しでお願いしますッ!」


サギーさんとの睨めっこもここまで、もうすぐ試合が始まる。

そうしたらもうデッドヒート、暑き熱烈とした戦いの始まりッ!


覚悟を決めろ私、もう後戻りはできない、目の前の戦いに集中。

私なら、できる、やれる、絶対に勝てる、敗北なんて考えない。

自信を持て、足をしっかりと大地に踏み立たせろッ!

私は弱くない、恐怖にも怯えない、心の芯をしっかりと保ち、戦えるッ!


『それではッ!第三試合ッ!メリルVSサギーですッ!レディ・ファイトッ!』


ファァァァァァァ


試合開始のブザー音、始まったッ!

緊迫の胸の高鳴り、まだ収まってない鼓動、不安要素は沢山あるけど。

大丈夫、私ならきっと・・やれるッ!


「嬢ちゃん・・試合はもう始まってんだぜェッ!」


バァンッ!


早いッ!

と言うかマズイッ!

いきなり先手を打たれてこちらに銃弾を放たれたッ!

右手のショットガンから放たれた二つの弾がこちらに向かってくるッ!

このままだと、確実に・・必中するッ!


パァァァンッ!


「へぇ?」


今、なんかコミカルなクラッカー音の様なものが聞こえたような。

気のせいかな、いや気のせいじゃないッ!

実際のあの二つの弾がクラッカーのゴミをまき散らした跡があるッ!

じゃあ、さっきの弾はクラッカー弾ってところなのかな・・。

一体、何のために・・。


「にっへへ、驚いたろ嬢ちゃん・・だが次はそうはいかねぇぜッ!」


「つ、次こそ本物が来るッ!構えなきゃッ!」


「遅いッ!」


早いッ!

まるで神業だ、今私の眼から完全には見れなかったけど。

すらりとあのソードオフショットガンの挿入口を開け。

二つの巨大な弾を瞬間的に入れた、慣れている、アレは完全に戦場に慣れているッ!

私はとんでもない、相手と戦っているのかもしれないッ!


「くらいやがれッッ!!」


バァァァンッ!


また二つの銃弾、だけど今度は違うッ!

私にだって・・それぐらいは撃ち落とせるッ!

右手で素早く三本の弓矢を作成、姿勢を低く落として弓矢を構えるッ!

これぞ三方向へ放つ必殺の構えッ!


「【トレイス・シュート】ッ!」


シュパァンッ!


弓矢の速度ならあの巨大な銃弾とも張り合えるッ!

そして、私の肉眼の視力は25.0、どんな得物も人間スコープで捕らえるッ!


パァァァンッ!


予想通りの的中、練習した甲斐があったッ!

・・でもなんか今銃弾が破裂する時水が出てたような・・。


「俺の銃弾を相殺するとはやるじゃねぇか・・だが・・コイツはどうだァッ!」


バンバンバン・・バァァァァンッ!


素早いリロード展開による総合六段撃ちッ!

なんて素早いリロードさばき、私だってそんなに放つことはできない。

かすり傷・・いや、ダメージ覚悟で放つしかないッ!

五本・・先ほどと同じ様にに一斉射撃で仕留めるッ!


「【シィンコ・バニッシュ】ッ!」


スパパッパァァァンッッ!!


五本同時射撃、確実に銃弾に命中させたはずだッ!

これで相殺に失敗したら私は多くの傷を負ってしまうッ!


けれども、そんな心配は必要ない、確実に発射共に相殺に成功しているッ!


「フッ・・気を抜いてるとやばいぜ?」


「えっ?」


サギーさんの言葉に思わず反応して目の前の相殺したはずの銃弾に注目すると。

なんとそこには相殺したはずの銃弾が再びこちらに向かっていたッ?!

どういう事なのッ?!


「ブラインド、銃弾の後ろにさらに銃弾を放つ、相殺された時の手段の一つだ」


しまった・・完全に手をよまれていたッ!

こ、このままだと私にこの大量の銃弾が・・ッ!

ダメだッ!

もう両手で目の前を防いでしまいたいッ!

こんな大量の銃弾を浴びたら私は確実に死んじゃうッ!

しかもこんなおっきい銃弾、体に当たったら危険すぎるッ!

ああ、ごめん・・ジンお兄ちゃんッ!

もう考えられないッ!


パァァァン・・ビチャビチャッ!


「に゛ャ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ゛!!」


「フッハッハッハッ!どうだ!見たかッ!アハハハハッ!」


大量の銃弾が全部破裂したと思ったら大量の水がかかったッ!?

色々意味不明だよ、思考が追い付かないよッ!

ていうかちゃんと戦ってよッ!


「もうッ!さっきから馬鹿にしてるでしょッ!!」


「ヴぇ?俺は真面目にやってるぜ」


「嘘つかないでッ!私が女の子だから手を抜いて戦ってんるでしょ!いらないよッ!そんな哀れみを見るような同情いらないよッ!やるなら全力で来てよッ!」


「それじゃあ、嬢ちゃん楽しくねぇだろ」


「えっ・・楽しい?」


な、何を言っているのサギーさん?

闘いは楽しいモノとかそういうモノじゃないでしょ?

ジンお兄ちゃんだって結局はあんなに死に物狂いで血を流して戦った。

鈴蘭だってとっても怖い顔で殴って蹴ってこの大地を血で染めた。

みんな、戦ってるときは真剣にやってる、だから私もそういう覚悟で立っているのに。

サギーさんがまるで馬鹿にする様に戦うし、これじゃあ試合にならない・・。


「貴方は・・みんなを見て、自分も真面目にやろうって気はないんですかッ!」


「逆に、みんなを見て、俺は違う事をするんだ嬢ちゃん」


「えっ?」


「確かに、嬢ちゃんの言う通り、試合は真面目にやる、手は抜かない、手加減は禁止、これは戦いにおいてのマナーだ、だけどな、嬢ちゃん、お前さんは不安を抱えすぎてる、これからの試合もそんなプレッシャーに呑まれて戦ってたら体持たないぜ、相手が殺しに来てる、じゃあ、私も殺しに行く、それじゃあダメだ」


「・・・」


「真剣に戦えば、確かにこの先の戦いにはつながるかもしれない、けれども俺は教えてやりたい、時にはみんな楽しみ、笑顔になれる戦いだってあってもいい、力と力のぶつかり合いで血を流し、熱くなるのもまた一つだろう、しかしだ、たった一回だけでもいい、嬢ちゃんに知ってほしいんだ、こういう戦いもあってのをな」


「サギー・・さん」


「傷つき倒れるまで戦う、それが普通だろう、それだけじゃあダメだ、俺は時には誰もが安心して戦うって言うのを待っているんだ、どんなくだらない事でもいい、それで熱くなって夢を見れたもん勝ちなんだよ、嬢ちゃん」


凄い、心に響く言葉だ。

どうしてこんなにも、不安が心から消えていくのだろう。

きっと、サギーさんの言っていることは実現なて不可能に近い。

それは自分の中でも分かっているはず。

誰しもが、そんな遊び気分で戦える、命を奪わない戦いは存在しない。

どちらかが果てるまで永遠に争う、それが戦い。

でも、そうでもない気がしてしまう。

戦いには本当に命しか奪う戦いのみしかないのかな?

今、心の中で揺れ動いてしまう、わたしの心の中でゆらりくらり。

心臓の鼓動が鎮まる、冷静になって考えてしまう。

サギーさんのたったその言葉で、考えてしまう。

そして、考えた先に見えたものはそれは・・暖かな答えだ。

思わずその答えに、私は微笑んでしまう。


「フフ・・」


「(ん?笑った?)」


だって、とってもおかしいから、とっても笑ってしまうから。

そんな事実現するのかな?

そんな夢の様な事が実現するのかなと。

頭の中で一人想像して笑ってしまった。


なんだか、真剣に考えていた自分が馬鹿らしくなって来た。

もうやめよう、血とか物騒だし、考えなくてもいいんだ。

サギーさんはきっと、そういう風に言ってくれたんだよね。

一度だけでも、何も考えずに戦い、自分の思う戦いをする。

サギーさんは本当に、お人よしなんだから・・。


「あー・・スッキリした、もうどうでもいいや」


「フッ、吹っ切れたか?」


「うん、ありがとうサギーおじ様、私決めた、これからも私の戦いをする、そして信じるよ、こういう・・誰も傷つかない戦いがあるって事」


「ああ、そのうえであいつらの様な戦いもあるって事でいい、今を見て、今と戦え、そうすれば・・お前の戦いが見えて来るはずだぜ」


「うん・・ありがとう・・私・・今と戦うよッ!!」


シュアァァァンッ!!!


とても今体が暖かい、まるでどんな闇も打ち払えそう。

とっても、心地よい気分だよッ!


「(聖なる輝き・・メリルの嬢ちゃんから放たれているッ!)ついに来たか・・」


メアちゃん私、戦いって怖いモノだと思ってた。

けど違う、この戦いは怖く思っちゃだめなんだね。

もっと強く、たとえそれが負けでも勝ちでも関係ない、楽しめばいい。


「(光り輝きを放っている・・ていうのッ!?あの輝きはまさか・・ッ!?)」


もし観客の人達を不快にさせていたのなら私は謝ろう。

迷いながら戦ってごめんなさいと、だからもう迷わない。

恐れない、何に対しても私はまっすぐ進もうッ!


『な、なんの光ッ!?これは一体ッ!?』


『メリル選手を包む・・謎の光・・これはまさか・・』


行こう、私の新たな世界、過去の弱い自分を捨てよう。

自信をもって、歩き出そう、私の道をッ!


「【能力解放ッ!光愛天使(ラブリエル)】ッ!!」


「上出来だ、嬢ちゃん・・能力解放だぜッ!」


「さあ、楽しい戦いの続きをしましょうッ!」


私はここから、もっと強くなるッ!

もっと、前に進もうッ!

私の戦いはこれから始まるッ!


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