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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
外伝その3
127/150

無限空想世界の幻想的な物語~外伝~ 魔章22 「暁の狼 再び」

時は月光の夜、引き続き盛り上がりを見せ続ける会場。

あの巫女のチームの試合から次々と闘志を燃やして戦いをはじめる者が増える。

そしてなにより、勝利した巫女チームも勝利の余韻に浸っていた。


「ガッツくぅぅぅぅぅん!一回戦突破おめでとぉぉぉぉぉ!!」


「おおおおう!けど近い近い!そんな掴んでスリスリしなくたって‥アダダダダ!!」


思わず私自身もガッツ君を両手で抱いて喜びのあまりに。

ほっぺとほっぺをスリスリとこすってしまう。

それほどまでに私は今猛烈に感激している。


「フフ・・ガッツよ・・ずいぶんな喜ばれようじゃないか」


「アア!歓迎してくれるのはありがたいけどよ!むずがゆいぜ!」


「うう・・だってこんなボロボロになるまで頑張ってぇぇぇ!」


「あ゛あ゛!分かってるならあんま力入れないでおま・・いでぇです!」


「全く・・巫女、少し放してやれ」


「あ、すいません!大丈夫ですか?」


「大丈夫だ、問題ない(ほぼ逝きかけた・・)」


ガッツ君は怪我をしているのに、嬉しさのあまり抱きしめすぎた。

悪い事してましったな・・でも、まんざらでもなさそう・・。


「と、とにかく・・巫女ちゃんも元気になってるし・・あとは俺と桃子の回復次第で二回戦目も参加できるな!」


「あらあら何を勝手な事言っちゃてるのかしらこの頭ペンペラスライムちゃんは・・」


「な、桃子!?」


「あ、桃子さ・・・」


数時間ぶりの再会の桃子さん。

先ほどは試合の勝利のお知らせぐらいしか聞けてなかったから。

実際どうなっていたか気になっていたけれど・・なんというか違う意味で予想外の姿だ。

怪我一つ無しのピンピンに回復していらっしゃる!


「け、怪我はもう治ったんですか!?」


「ええ、月の民があんな程度の怪我、専用の治療さえ受ければあっという間よ、それに自然回復だって人並ではないしね、私達の誇れる部分の1つよ」


「すげえ、魔物より魔物じゃねぇか・・俺っちもそんぐらい自然回復が早かったら・・」


「アンタはスライムでしょうがッ!!」


「ああん!?俺っちでも復活に限度ぐらいあらぁ!!」


「切っても切っても再生して・・聖水が無いと人によっては詰みなのよッ!」


「その割には昔はよく経験値稼ぎの理由で狩られる対象にされやすかったんだぞ!」


「経験値稼ぎイ!?あんたら精々2か1でしょ?私だったら田中ミノタウロスか吉田コカトリスを狙うわよ?」


「ピギィィィィィ!生意気な!お前もそうやってスライムを馬鹿にするかッ!魔王城の行き道に配属されなかったから図にのるなよッ」


「弱かったんらでしょうが、最弱モンスター!」


「やんのか最強種族ゥ!!」


「なんで褒めたんだよッ!?」


「(二人とも仲が良いですね・・魔王様)」


「(なんだかんだ・・互いを支えて生きているからな)」


デットヒートするマシンガントークはまるで痴話げんか。

とっても仲が良くて、二人の関係がちょっぴり羨ましい。

互いにただ喧嘩しているわけじゃなくて、良いとこも悪いところも知った上での口喧嘩。

そりゃあ愛の悪口が絶えないわけだ。


「・・さて、二人が喧嘩している間に巫女、少し違う場所で話をしたいのだが・・かまわないか?」


「えっ?お話・・ですか?」


「ああ、今のうちに叩き込んでおきたい事があってな」


魔王様から私に話しておきたい事があるなんてのは旅が始まってから珍しくはないが。

二人だけで話しておきたい事なんてめずらしい・・。

一体、なんの話なのだろうか・・。

私はガッツ君と桃子ちゃんが話し合っている中から抜け出して。

魔王様の後をついて行くことにした。

そして、その到着した場所こそ、謎の和室・・。


「こ、こんなところに用事があるんですか?」


「ああ、ここは特訓の間、当時人間界に居座っていた俺に教えてくれた場所の1つだ・・もとよりこの中にあることは知っていたが・・一回戦で使う余地すらなかったな」


「へえ・・どうりで平地・・でも今から訓練して間に合うんですか?」


「心配はない、ここで訓練しても体に負担はないし痛みも怪我もしない・・安全な訓練が行えると言うわけだ」


「へ、へえ・・でも当時の魔王様ってお強いのに・・訓練なされていたんですね」


「え、ああ・・まあな(輝夜より当時弱かったなど言えるか・・言ってもいいが)」


「なるほど・・真の強者は一戦を交えて交流を深める・・勉強になります!」


「フハハ!いいぞ巫女!また一つ賢くなったな!・・それはさておきだ巫女ォ、今はお前に伝えるべき事を全部伝えるぞ」


そうだ、ここには別に見学に来たわけじゃない。

この広い間を使って魔王様の話を聞くとともにきっと訓練が始まる。

せっかく魔王様が教えてくれるんだ、しっかりと聞いておかないと。


「はい!なんでも言ってください!」


「まず、お前の戦いのスタイルだが・・これからはコレを使ってもらう」


魔王様がそう言ってマントから取り出した武器は・・小刀?

55cmぐらいの大きさはあろう小刀だ、黒と金で飾り付けされている。


「すごい・・とっても綺麗ですね・・」


「ああ、なにせ・・我が親友の小刀だ」


「親友・・ですか?」


「過去に刀を打てる鍛冶師は一人、【土御門 武蔵】のみだ・・そいつは戦後も体の中のアビスを抑え込む為、人々を脅かさない為に混沌側についていてくれた・・条件として武器を作ると言うのを提示して、ずっと俺達に良い武器を作ってくれた・・良い奴だった」


その方が打ってくれた刀・・それがこの武器なんだ。

当時、魔物は良い目で見てくれない人間ばかりだった中に。

そんなにも親身になって協力してくれる人間がいたなんて・・。

やはりいつの時代も歴史が深い・・。


「それと、そいつの刃だが・・魔術と黒鉄で出来ている・・よっぽどの事がない限りダメになるなんて事はないだろう」


「なんと・・こんな貴重な武器を私なんが貰っていいんですか?」


「ハァ・・お前だから渡すんだ馬鹿者」


「ふえ?」


なんでそんなため息つくほどに?

い、嫌な渡さなければいいんじゃ・・っと言ったらたぶんダメだろう。

まあ、魔王様の気まぐれかもしれないけど、ここは素直に受け取っておこう。


「ありがとうございます!魔王様!これは素直に受け取っておきますね!」


「ああ、受け取っといてくれ・・それと」


「それと?」


「もう一つ・・渡しておくものがある・・コイツだ」


魔王様がまたマントから取り出したのは・・今度はなんだろう?

光り輝く・・透明なナイフ?

なんだかとっても綺麗・・思わず見惚れてしまいそう。


「それはなんですか?」


「太古より眠りし聖なるクリスタルで作られた【クリスタル・グラディウス】だ、お前の様な巫女が持っていればきっと神性並の力はあるだろう」


「で、でも私まだ半人前ですし・・」


「こいつは使う奴次第で大きく異なる、特に魔物や我の様な者ではその真の力すら発揮できずに終わるだろう、だからお前が持って、いつか巫女になった時でもいいし、護身用として持っててくれてもいい」


「はあ・・ありがとうございます」


なんだかとってもサービス精神が強い魔王様だ。

きっと裏はないのだろうけど、どうしてここまで私に全力を・・。

なにか、私をそこまで強くさせる事に意味があるのだろうか?

強くなっているかも分からないし、まだまだ謎が深いなあ・・。

いつか、分かるのかな、なら・・今はその時を待って強くなるだけだ。

頑張ろう、きっと魔王様や色んな人が応援してくれているのなら。

私は強くなれるはずだ!


 ◆


『さあさあ!続いてBブロック第一試合です!対戦カードはチーム暁VSチームサギー!』


『どちらも初参加のチームで異質なメンバーの勢ぞろい・・これはある意味期待です』


『対戦順番の発表です!チーム暁 ジン・ウィルコンティ 恋鈴蘭 メリル・チェッダーブライゾン チームサギー リンドヴルム カムイ サギー・ヴァンタイア でお送りします!』


『ここで互いのリーダー格が出てきましたね、出る順番は全く異なりますが』


『はい!先ほどフラッグレースで圧勝を取ったメア選手をあえて温存する作戦ですね!これが果たして吉と出るか凶と出るか!あるいは大凶か!いざ!決戦の一回戦スタートです!』


何が決戦の一回戦だ、まだ終わるわけじゃない。

これは始まり・・いや、そういう意味なら終わりの始まり?

ええい、分かんなくなってきたぞ・・落ち着け!


「(大丈夫だ・・今は何も考えず前に出ろ・・そして・・目の前の相手に・・)」


「ふぁ~・・」


「(目の前の相手に・・集中・・していいのかこれ?!)」


忘れてた・・相手俺より小さい子供だった。

大丈夫かな・・ていうかサギーさんは一体なぜこんな子供を・・?


「(サギー・・初戦でいきなりアイツを出していいのか?)」


「(でぇじょうぶだ・・ここで倒れたらそれまでだ)」


「(お手並み拝見というやつか・・)」


くそう・・サギーさんがやっぱりどういう人か詠めない。

初戦は互いの流れをつかむ大事な試合だ、そんな試合にこんなか弱そうな子を・・。


『それでは・・二人とも位置に着いたところでいざ尋常に・・バトル・スタート!』


ファァァァァァァァァァァァン!


試合開始を告げる轟音が鳴り響く、さあ、改めて気合を入れなおそうか。

大丈夫、いつも通りやってれば大丈夫なはず・・。


「(それよりなんか・・寒い・・様な・・)」


おかしいな・・こここんな気温低かったかな?

いや・・・違うッ!

これは・・周り一面が雪に染まっている!?

真っ白に・・あの茶色の大地が雪の大地へと変わっている!?

それどころではない・・これは・・雪すら降っている!?

まさか、あの少女かッ!!

俺が鋭い眼光を向ける先は間違っていなかった!

あのリンドヴルムとか言う少女は間違いなく静かに天へ上るほどの吐息を放っている!

気づかなかった・・あまりにも静寂なスタートで気づく暇すらなかった!


「(嘘だろ・・マジか!!天空に届くほどの吐息なんか聞いた事がねぇぞ!!)」


「ふぁ~・・これくらいで十分だよね?」


「中々やるじゃん・・少しはやりがいがあ゛ぁ゛ッ?!」


ドゴォンッ!


危ない!

直前で気づいてかわせた・・。


この幼女容赦ないッ!!

いきなり人様に向かってスプーン叩きつけて来やがった!

とんでもねぇ奴だよ!


「今の俺じゃなかったら死んでたぜ!」


「むぅ・・早く倒してお昼ねしたいのに!倒れてよ!」


「あいにく・・そういうわけにいかないんでね!こっちも全力だ!【血の(ブラッド)舞踏会(ダンス)】ッ!」


サッ・サンッ!・・サンッ!

両手を合わせた十本指から針によって出る血の糸による華麗な舞の攻撃だ。

この糸はただの糸じゃない・・その温度500ッ!

触れれば高温で全てを溶かし尽くしてやるッ!

大会だから多少補正はかかっているだろうが・・それでも十分ッ!

さあ、俺の舞に引っかかれッ!


「やっかいだなー・・でもワタシならできる・・せいやッ!」


シュバッ!


五本線の糸の間から今何か通さなかったかアイツ!?

アレはナイフッ!?

間違いない・・ステーキとか食器のナイフだ!

銀のナイフを投げつけやがったコイツ!!

そんなもんが俺に通じるかッ!

地面から華麗に手足使って飛び上がればなんら問題ない・・。


ズシャア!


うっそだ・・ッ!

コイツ・・空中にも飛ばしていやがった!

最初から飛び上がる事も予想済みだったのかよ!!


「あは!大当たりだね!」


「こんなもんまだ当たっただけだ!」


「そうかな?私にとってこれが地獄のフルコース・・前菜だよ」


「なんだと・・・ッ!?」



ズシャズシャズシャア!!


あ、ありえねぇ・・気づいたときには後ろから下から前からナイフが飛んで来やがる。

どうなっていやがる・・ッ!?

着地してとりあえず深呼吸・・いや、そんな事している暇はねぇッ!!


ズシャアッ!


なんでだッ?!

アイツが投げた動作はないはずなのに・・ッ!!

どうしてさっきからナイフが俺を追跡して刺してくるッ!!


「どうして追跡されているか分かる?私の吐息のせいだよ・・風の炎・・一見ただの吐息かもしれないけど・・その実態は神風同然・・私が思った通りの風に乗ってどこまでもおいかけるよ」


「そういう事かッ!ならふりおとすまでッ!」


サッ・・ズシャアッ!


避けたッ!?

直前でコイツ俺の攻撃を・・ッ!


ズサズサズサズサァァァァ!!


体中にナイフが・・糞ッ!!

やばい・・そろそろ本気でやばいッ!!


「お兄ちゃんは確かに強いけど・・私が戦うに値しないね、もう眠くてしょうがないよ」


「はは・・それは遊び相手にならないと?」


「うん、だって鬼さんずっと鬼さんのままなんだもん」


なーるほど・・そりゃあそうだ戦いを遊びと思っている奴に敵うはずがない。

最初っから遊んでない俺が・・相手にされるはずがない・・なッ!


「じゃあさあ・・遊ぼうよ・・」


「ん?なにして?どんな遊び?」


「決まっているさ・・とっても楽しい・・狩りの遊び・・【狩りごっこ】だよッ!」


「あは!それは楽しそうだね~!」


「暁に狼は言った・・肉を裂いて心臓をよこせと」


そうだ、俺も同胞に返ろう。


「暁に吸血鬼は言った・・全てをさらけ出して血を流せと」


「ああ・・ちょっとだけワクワクしちゃうな・・その黒いオーラ・・カッコイイ!」


求められるのなら・・俺は喜んでこの姿になろう!


「今宵、この地を統べる最強最悪の種族【ヴァンパイアヴォルフ】ッ!!」


wooooooooooooooooooooooooooooN!!


さあ、行こう。

この半獣の姿さらけ出してすべてを狩りつくそう!


「やろうぜ・・狩りの(あそび)時間(のじかん)だ」


「うん!思う存分楽しもうよ!」


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