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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第一章 真紅編
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無限空想世界の幻想的な物語~真紅~ 第11話 「たとえそれが大罪でも」

ガッ!

力強い衝撃の走る音、

何かを止める様な感覚でそれは鳴り響いた。


「やめろッ!」


「グッ・・兄さんッ!?」


僕はナイフが見えた一瞬にして弟へと近づき両腕を抑える。

なんて危ない奴だ、全く話を聞いちゃいねぇ、


「そんな事しても無意味だッ!殺すんじゃねぇッ!」


「離せッ!こいつは殺さないと駄目だッ!無期懲役なんて生ぬるいッ!悪人は所詮悪人ッ!どんなに努力した


ところで一度殺した奴はまた誰かを殺すッ!一度悪の手に伸ばしたら絶対に善に帰る事は無いッ!ここで殺すッ!」


「それにッなんの意味があんだよッ!それならてめぇも悪とやらの仲間入りだぞッ!」


「・・ッ!?」


弟の動きが止まった、自分のやろうとした事にやっと気づいたか、

こんな単純な答えだけど、それでもいい、思いとどまれ弟よッ!


「殺す事が・・復讐が全てじゃねぇんだジンッ!人を恨み、人を憎み、人を・・妬んで行っても生まれるのは繰り返しの憎悪、例え相手が人殺しでもそいつを殺す事で解決なんてすんじゃねぇッ!」


「・・兄さん、でも兄さんッ!あんただって恨んで来たんじゃねぇのかよ・・コイツやあの施設を壊し、あんたの笑顔まで奪った人間をッ!」


「とんでもねぇ、泣きはしたが殺そうとか恨み倒すとかこれっぽっちも思わなかったぜ、だってそれをしたら先生の言いつけに反する」


「・・・ッ」


「言ったろ、笑顔で前を向け、後ろ向きになるなって、お前にだって教えたはずだ」


「無茶言うなのよ・・あんたにだって分かるはずだろッ・・宝に手を出された時の怒りぐらいッ!」


僕は両肩を掴まれて力づよく握りしめられる。

伝わる悲しみ、怒り、恨み、きっとずっと辛い思いをして生きて来たんだろう、

きっと凄い苦しみながら生きたんだろう、

だって、顔を見れば分かる。

お前はすぐに表情に出るからすぐに分かる。

今の顔は爽やかなあの笑顔でもなく、

怒りを露にした顔でも無く、

涙がポロポロと落ちて、解放されそうな苦しみから必死に我慢して、

とても辛そうな顔をしている。

ああ、悪い兄だな、こんな弟の姿にも、

弟の心も読んでやれなかった。

最低だ、僕は、

そんな最低な兄は最低な兄らしく、

ガツンと決めてやらないとな、


「じゃかぁしいッ!!」


「ヴオ゛ォ゛ッ!?」


ジンの胸倉を両手で掴んでジンのおでこを俺のおでこへとぶつけさせる。

脳が死にそうなぐらいてっ感じでめっちゃ響いた。

頭の中すげぇ痛くて、

自分でやっておいて、

凄い痛いと思った。


「いてぇ・・なにしやがる・・」


「てめぇが苦しそうにしてたから一発やってやった」


「意味がわからねぇよッ!」


「それもまた人生てっ奴だな」


「もっと意味がわからねぇよッ!!」


「まあ、なんだ、気持ちはすげぇわかる、だけどジン・・お前の宝はお前のままでいてほしいてっ思った

はずだぜ、だったら悪なんかなるな、ならなくていい、お前が悪になって悲しむ人がいる」


「勝手な事ばかり言いやがって・・どこにいんだよッ!」


「ここにいる」


僕は胸を張って手でグッと親指を胸に向けて言う、

そうだ、お前には僕がいる、


「・・兄さんッ」


「それにジャックさん、リアリナさんだって少なからずお前の事は悪に染まってほしくないてっ思ってるはずだぜ」


「・・・」


「まあ、最初の方にも言ったかもしれねぇけど宝さんとやらも悲しむんじゃねぇのか?いや、きっと悲しむ」


「そんなわけないだろ、きっと宝は逃げるさ、僕を見損なってね」


『ジン様ーッ!』


後ろの方から声が聞こえる。

これは聞き覚えのある声だ。

優しくて、とても響き渡る元気で明るい声、


「・・鈴蘭」


「ほれ、来よったぞ」


鈴蘭の姿だ、ふり返るとジンを探していた様に、

息を荒くしてこちらへ急いで駆け寄る、


「探しましたよッ!どこ行っていたんですかッ!」


「鈴蘭どうして・・部屋で待ってろてッ言ったろッ!」


「待ってられませんよ・・だって、大きな物音は聞こえるし、廊下は使用人さん達が倒れこんでいて、ジンさんの身に何かあったら嫌だと思い、ここまでやっとたどり着きました!」


「嘘だろ・・俺なんか探すためにリスクを背負って・・」


「嘘なんかじゃないですッ!ジン様の為だったらたとえ火の中水の中でも探し出して見せますッ!」


「ちなみに悪に染まって殺人鬼になってたら?」


「止めますッ!何度切られようと、何度刺されようと、我に返るまでジンさんの前に立ちふさがります!ジンさんがもし闇の中で彷徨ってしまったのなら、私が探しだしますッ!」


「だってさ、ジン」


「・・わけ・・わかんねぇ・・」


ジンは片手で顔を抑えて涙声で言う、

膝が地面に足をついて、

もう、これ以上に無いくらい悲しみを抱いている。

今の話できっと心が完全に解放されたんだろうな、

すると鈴蘭が優しく微笑んで、

泣いて落ち込むジンを屈んでやさしく慰めようと鈴蘭が言う、


「ジン様、顔をあげてください」


「んだよ・・」


「辛かったんですか?」


「あたりまえだろ・・ずっと辛かったよ・・お前の事が心配で心配で、今度もまた汚れ傷ついたらどうし

ようかと・・」


「ありがとうございます・・でも大丈夫です、私はジン様を守る身、昔からそうでしたよね?」


「ああ・・けど辛そうな顔をしていた事に途中で気づいたから・・それで・・」


「本当にありがとうございます、そこまでしてくれて、守るどころか、守られてしまいましたね・・なんだか恥ずかしいです」


「良いんだよ・・もう、良いから・・休めよ・・休んで・・くれよ・・」


「ええ、たっぷり休ませてもらいました・・だから今度はジン様が休む番ですよ?貴方は頑張りました、

貴方は辛い思いをして傷つきました、だから、休んでください」


鈴蘭がジンの頬を優しくさわり、

温まる様な優しい声でジンに話しかける。

ジンはとても安らかな表情をしていた。

今までにないくらい、とても安らかな表情を、


「・・ああ、ありが・・・とうッ・・」


そう言うとジンは笑顔を残し、

目を閉じて安らかに眠った。

きっと疲れていたのだろう、

けど、今はなんだか安心した表情をしている。

微かにだが、ジンから憎悪が消えた気がする。

僕はそう信じたい、


「と、こいつ寝ちまったわけだ、鈴蘭、頼む」


「はいッ!私にお任せくださいッ!」


僕は鈴蘭にジンを抱っこさせて運ばせた。

普段なら煽りを入れたいところだが、

今はいい、そんな事しなくても、

僕は今、満足しているからだ。


「あ、そうだ、重要な事を忘れていた」


「私の事か・・」


「そうそう、すいませんね~おばあちゃん」


「フンッ・・」


「今、解放するよ」


「待てッ!?何故解放するッ!?私はお前を殺そうとした奴だぞッ!」


「えっ?それがどうかした?別にそんなちっせぇ事で怒りなんてしてねぇよ、強いて言うならお嬢様に暴

力振るった事は怒ってる」


「だったら普通は殺すだろッ!」


「それって普通か?お前の中では普通かもしれないけど、僕の中ではそれって異常てっ言うんだぜ、諦めて生きて償え」


こんな答えは実は僕の中では非常識、そして僕だけしか思わない答えかもしれない、

誰かの絶望かもしれない、誰かの怒りに触れるかもしれない、

けれど僕は、それでも「憎む」より「許し」を全力で答えたい、

だから、こんなバカみたいな答えが出てしまう。


「本当に、申し訳ないな自分勝手で」


「馬鹿な奴だ・・」


女帝もすっかり押し負けた様で、

観念した表情をしていた。

僕はその顔を見て、ササッとナイフを数本抜いて呪縛を解いた。


「さーて、じゃあ行くぞ~」


「待て、これを渡しておく」


女帝が僕の手に2つ金属の音がなるような物を手の平においた。

それは黒い鍵だ。


「ああ、あざっす、えらいじゃんわざわざ返すなんて」


「ああ、もうどうでも良いからな、それよりさっさと私を牢獄でもなんなり好きな場所へと連れていけ」


「やだ、これからあんたを冥途の土産代わりにメイドになってもらう!」


「強情な上にかなりやることが変態だなッ!!」


「それが地上最低最悪のマナーの悪くて答えも馬鹿で何もできない兄の答えだからな」


「・・アホか・・それとも・・いや、何も言うまい」


この呆れ顔は本当になんだかうんざりしているぽいな、

なんだか顔に力が入っていない、もうすっかりこっちも恨みや妬みが無くなったらしい、

理由はともあれ、争いをする理由が無くなって良かった良かった。


「・・・なあ、一つ聞かせてくれ」


「なんだい、ばあちゃん」


ばあちゃんから質問とは珍しい、

一体なんの質問だろう、こんな純粋に恥ずかしそうな顔をして、


「お前はこの先、困った奴の声を聴いたら、例えどんな場合でも助けに行くのか?」


「不思議な質問だね~、どうしてだい?」


「私の能力・・、【救難の声(ヘルプボイス)】があってな、昔は良く人の助けを呼ぶ声を聴いては助

けてあげたいと思った、だができなかった・・、何度も何度もそれで辛い思いをした、特に・・アイツの最後の声は・・とても辛かった物だろうよ・・お前は絶対絶命のピンチの場所にもし大事な奴が・・」


「いたら、助ける絶対に、それがたとえ救えないのなら常識ぶっ壊して救う」


「できないのにか?」


「違う、やるんだよ、やれないんじゃない、やるんだ、それが死ぬかもしれない難病でも僕は救う、馬鹿なりに救うんだよ、別に頭の中ではもうすでに答えがあるんだ、それが思いだせないだけだ、バカなめんなッ!」


「フフッ・・なんだか・・な(コイツに負けた理由がわかった気がするよ・・)」


「どうしたの?(急に笑顔になってどうしたこのおばあちゃん)」


「いや、良い・・さていこうか・・」


最後の一言が気になったが気にしない事にした。

きっとおばあちゃんにも知られたくない事あると思うと僕の中で思い。

心の中で閉めこんだ。

おばあちゃんの笑顔はとてもきれいな物だった。

白いウェーブのかかった白髪の様な髪が綺麗になびき、

白い肌がとても美しくにっこりとほほ笑み、

割れた仮面の半分の目からも十分確認できた。

黒い禍々しいドレスなのに、なんだか、

女帝から悪い夢から覚めた王女になったみたいに感じた。

こうして全てが終わり、めでたくボスにも良心が宿り、

どす黒いオーラが無くなって、戦いが終わったなと感じたのだった。

実にハッピーエンドな終わり方だ。


「これでやっと終わるよー、めでたしめでたし!」


「ええー、もう終わっちゃうの?」


「そう、もう復讐ごっこはおしまい・・」


えっ?今あからさまに聴いた事の無い声が・・、

だ、誰だ?

少女な声だったが・・一体誰だ?


「今、お嬢様僕になんか言った?」


「言ってないわよ?どうしたの急に」


「おい、そっちで何があったかしらんが早く貴様もこっちに来い!」


「そ、そうですよね~・・それじゃあさっそく・・」


「さっそく・・鬼ごっこしよっか!」


「えっ?」


その声はとても明るかった。

とても幼く、とても元気のある声だった。

だが声と似合わない光景が今ここで起きている。


「どう・・して・・」


「アハハ!!つまんないのォ~!!」


「女帝!?おめぇ腹からケチャップブシャーしてんぞッ!?てかどういう事なの!?なんで腹から手が出て来てるのッ!?」


「ンな事言ってる場合じゃねえッ!!逃げろッ!!」


「クッソッ!!」


僕は鍵をジャックさんの方へと投げて、

スタントもさながらの飛び込みを見せ、受け身で地上へ着陸する。

猛ダッシュでジャックさんの元へと戻り、

状況を再確認する僕達、


「一体どういう事なんだ・・これはッ!?」


「わからねぇ・・けど・・」


「とてつもなく不穏な展開なのは理解します・・」


「嘘よね・・ここまで来て・・」


「あ、ああッ!女帝様の後ろに・・ッ!」


命尽きて床へ倒れこむ女帝、

そして姿を表す謎の存在、

僕達が見たその影の正体とは・・、

赤と青の宝石の様な目、

それはまるでお嬢様の様なきらびやかな目だった。

だが配色は真逆、そして金髪が全体的にふわふわとしているロングヘアー、

頭には猫の耳、衣装は全体的にはチェック柄で明るいが血が染まりホラーな物へと変わっている。

後ろには虹色に輝く6つの繊細な羽、

手にはチェンソーの様な物騒な物を持ってブォォォンブォォォンと物騒な音を立てて持っている。

見た目こそホラーな彼女、

そして極め付けはあのニタリと見る狂気な笑顔、

この瞬間全員が悟った。

まだ戦いは、終わっていなかったと・・


とぅーびぃーこんてぃにゅー・・

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