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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
外伝その3
111/150

無限空想世界の幻想的な物語~外伝~ 魔章7 「巫女と月里」

あれからどれだけ歩いた事だろう。

あれからどれだけ旅を続けて来たのだろう。


私は今、とてつもないその開放感と達成感に歓喜しているところだった。


「・・くぅ~ッ!疲れた~!」


「何を寝言を言っている・・これは一度の休息だ・・時期にまた戦う事になるぞ」


「で・・ですよね~・・あはは・・」


まあ、達成感と言っても・・ここまで来た行路に疲れていただけだ。

とても長く、とても辛く、それでもとっても楽しい旅に疲れていた。


「見ろ・・ガッツを・・この部屋の中でも落ち着きの無さをッ!」


「うひょーッ!これが月の民が作った部屋の心地よさだ~!うはは!すげぇ!」


「なんだか見ていると和みますよね、外の世界の部屋を見た事ないから・・ちょっと嬉しいのかもしれません」


「俺はこの手の部屋見飽きたがな」


「こらッ!魔王様ッ!」


「すまんな・・いやな・・俺も人間と月の民とは一度は交流を結んだのでな・・」


だからって見飽きたなんて・・。

これだからデリカシーの無い魔王様には困ってしまいますね。

もうちょっと他の人に言っても傷つかない言葉を選んでほしいものです。


・・そういえば、何故私達が今このような場所にいるのか・・。

それはさかのぼる事・・アレは里を出る朝だった。


 ◆


「・・月杯大会?」


「知らないのですか?月の里で開かれる決闘祭ですよ!ただの戦いではなく・・その戦い一つ一つに敬意と意味を示すための戦い・・優勝者には特別な物がもらえるそうですよ!」


「へえ・・物騒ですけど特別はなんだか気になりますね・・私も参加できたら・・ってまさか・・」


「そう!あなたに誘いの手紙が来ていたわ!」


「う、嘘ッ!?」


「嘘ではありません!見てください・・ほら!ちゃーんと輝夜様の印鑑が!」


朝早くこのレトロチックな宿に泊まっていた私が起こされて目撃したのは紛れもなく。

それは月の姫様からの手紙だった。


黒く輝く印鑑と共に白い手紙。

中にはきっちりこう書かれていた。


                【出雲 翡翠様へ】

            このたびは姫様の気まぐれに選ばれて

             まことにおめでとうございます

           つきましては月杯大会への参加を許可します

             

               ぜひ、月の里へ来てください。

                  お待ちしております。

               PS.部屋はもう取ってあります


「・・最後おかしくない?」


「いえ・・月姫様はアレが日常ですから・・」


「あー・・林さんはお知り合いなんですね」


「ええ・・とても・・変わったお方ですよ・・ええ」


「そんなに変わったお方なんですか?」


「なんというか・・近づいてはいけない・・そんな雰囲気です」


「へえ・・そんなに・・」


「ええ・・ある意味・・ね」


「えっ?」


「いえ・・なんでもないです」


「は・・はあ・・」


なんだか説明がとても意味深な雰囲気が出ていたが。

なんだろう、昔何かあったのかな?


私は目を逸らす林さんに話を聞こうとしたが。

人には聞かれたくない事はあるだろうし、ここは聞かない事にした。


かくして私達は新たにその月の里を目指してまた旅を始めた。

これと言って変わったことはなく、降りるときはとても平和だった。

賑やかな会話と雑談をしながら降りていき、見えて来た緑の大地に大きな穴。


そう、あの巨大な穴にある都市こそ・・【アンダームーンシティ】だ。


月の民たちが暮らす事が多いそうで、その月の民が次々と引っ越して。

地上に落ちて来たことから、落ちた月の町と言う名前で付けられたそうだ。


私達はその里へ入ろうとするのだが、どこが入口だか分からなかった。

そう、穴はあるが入口がない、一体どうすればいいのか。


と、小一時間悩む事になるかと思ったその時だった。


「貴方達・・誰ですか?」


「ひえッ!魔王様!今日はやけに少女ボイスですね!」


「アホか貴様!巫女ォッ!俺がそんな可愛い声出せると思うか!?俺が出せる声は・・これ以外にないわ!クハーッ!!」


「何、ちょっと意識しているんですかッ?!アニメ化された時の事考えてCVもう予想してんじゃないですよ!」


「いや、そもそもお前ら話が脱線してんぞ!?」


「あ・・あの~・・」


あ、そうだ・・ボケていてすっかり忘れていたと思い私は一度後ろを振り返る。

すると、そこに立っていたのは小さな和服を着ていた少女だ。

明るく華やかな着物、清楚な感じを意識しているのだろう。

花簪をしてとても凛々しいそうな少女だ。

優しい虹の様に輝かしい瞳でこちらを見ていた。


「どうされましたか?・・もしかして・・この里に様ですか?」


「あ、はい!私達一人前の巫女の旅の途中なんです!・・私は出雲翡翠!」


「魔王の・・カオスだ!・・ん?」


「スライムのガッツだぜ・・俺っちは覚えんでも覚えてもよろしいすよ・・そいで魔王はん・・なにしとる?何きょとんとなっている?」


「本当ですね・・何をそんなにジロジロ見ているんですか?魔王様?」


「いや・・なんとなく・・どこかで・・」


魔王様がこんなにじっとりと見ているのは珍しい。

いつもなら興味なしで、女の子を見続ける事なんてありえないのに。

どうしたんだ・・魔王・・ついにロリコンに目覚めたか。


「・・思い出したッ!・・貴様・・書物神【延時(のぶとき) (あずさ)】だろ!」


「あ~・・!私も思い出しました・・月に来た魔王様ですね・・あの時の」


「フハハッ!あの時はずいぶん世話になったな!」


「ええ・・知ってたんですか?!」


あの、梓さんと言う人が手を合わせて歓喜するほどとは。

この二人、結構仲がいいのだろうか・・。


「知ってるもなにも・・俺はこいつからあらゆる人の知識を得た・・俺はコイツがいたからこそ・・混沌の代表者としてさらなる高みへ行くことができのだ!」


「ええ、覚えていますよ・・突然月に押し寄せて何を言うかと思えば【人の知識を教えろ】だのなんだの言って私の貴重な貴重な睡眠時間を奪った畜生ですね」


「いや・・あの時はだな・・」


「それに私が散々何度も教えた知識をすぐに忘れては問題を起こして人々と全く仲良くなれずだは、挙句の果てに喧嘩するだわもー私超絶有頂天でした」


「・・すまない」


やっぱり前言撤回だ。

この人達とても仲が悪いぞ、あの優しい笑顔と早い口調はとても怒っている。

と言うより、話の内容的にも怒っている。


「・・それより、そんな魔王様と・・巫女様がなにを・・?」


「ああ・・輝夜に呼ばれていた・・月の里に来いと」


「ああ・・そうですかそうですか・・では貴方達ですね・・【特別な来客】とは」


「特別な・・来客?」


「ええ・・誰とは言ってませんでしたが・・愉快な人達がここに来るから・・迎えに行ってと言ってたので・・」


「ほお・・ずいぶん気が利くじゃないか」


確かに、すごい気が利いている配慮だが。

なんだか、こんなに気が利いているととても疑いたくなる。


「ええ・・ちなみに・・【月の殿方】と言うお方は・・?」


「なんだそいつ?」


「よくわかりませんが・・輝夜様がその人もいたら連れて来いいうてまして・・でもいないならまあ・・良いんです」


「ふむ・・いないやつは仕方がないな」


「ええ・・ですので・・とりあえず・・お三方・・こちらへ」


そういわれながら私達はこのまま月の里へと案内された。

話してみるととてもゆったりとしていて凛々しい人だ。

冷静でとても話しやすい、怖い人だったらどうしようかと思ったが。


そんな心配せずで大丈夫そうだ。


こうして私は月の里へと降り立ったのだった。


 ◆


「で、改めて・・月の里のこの旅館に泊められたことまでは良いんでよ」


「問題は・・この部屋には・・もう一人来る事だ」


「あー・・そいや俺っちもそれ気になってたぜ・・何者だろうな?」


そう、ここまで私たちは実に達成感に駆られていたのだが。

問題は達成した後だ、この部屋にはもう一人泊まる人物がいる。


それはなぜか?

実は今回呼ばれている月杯大会の参加条件は【1チーム4人】が原則。

つまり、私達ではあと一人足りないと言う事。


しかし、輝夜様がそれを考慮したうえで誘ったわけだ。

梓さん曰く、【特別に一人助っ人を用意してる】と言われた。


その助っ人さんとも寝泊りするわけだが。

どうしよう、これ以上男の人とか増えたらちょっと気まずいな・・。


女の子でもちょっと気まずいけど。


今はその緊張的なムードどドキドキの瞬間だ。


「あー・・心臓に悪いな・・もう」


「心配せんでも・・どうせロクな奴では・・」


ドォンッ!


その時突然ふすまは開けられた。

そう、助っ人が来たのだ。

こんなにも礼儀なく開ける者はもう男ではないかと思ったその時だ。


私が見た先にいた人物は・・女性だった。


青い髪の毛、不思議な帽子、桃のバッジ。

ロングスカートと半袖の見た事のない全体的に白い服装だが。

スカートのすそは虹色の飾りが付けられていた衣装。

元気そうな明るい赤い目で、とても元気よくこちらにこう言った。


「私が・・来た!」


これが、月の勇者との出会いの瞬間だったのだ。


この時、誰も・・長い長い仲間になるとは・・知る由もなかった。


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