無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第17話 「最後の砦」
「・・いよいよ四層目・・一体どんな人が待ち受けているのだろう?」
「・・くぁい?」
「ううん、怖くないよ」
「おかった!・・いこ!にぃあがついてる!」
「うん!そうだね!」
安心の笑みと勇気が出て来る会話。
明るく楽しく来たこの階段道ももう四回目。
そしてもう、これで終わりだ。
これが終われば・・僕はどうなるだろう。
また、あの下の層にもどされるのかな?
そんな恐怖は押し殺し。
いざ、白ニアの手をつないでまっすぐ進む。
ドアをギィと開け、もう何が出ようと驚かないぞと。
そんな覚悟で僕は扉を開門する。
パチパチパチパチ!
突然の拍手ッ!?
いや、それよりも・・なんだこの真っ白な何も用意されていない部屋は。
目の前にいるおそらく最後の一人しかおらんぞ。
それもまたおそらく少女だ。
桃色の長いポニーテール、派手に薄く煌びやかな薄い肩マフラー。
前髪は分けて両方に横髪が長くぶら下がる。
赤いゴスロリチックな服装で、光り輝く赤い眼でこちらを見ていた。
「よーうーこーそー!ここは最後の層・・ハートちゃんの部屋です!あ、【ハート】は私ね!」
「なるほど・・トランプガールだからか・・」
「イエス!イグザクトリー!むふふ・・君が来るの待ってたよー!」
「そりゃあ・・どうも」
なんだかすごいまともそうな子だ。
今までイッツア頭湧いちゃってるよー的な子が多かった反面。
この子はとてもわかりやすい。
表裏がとてもなさそうだ。
「・・それはさておき・・最後のショーはなんだい?」
「ん?最後のショーはね・・私とドキドキ数字当てバトルだよ!」
「数字当てバトル?」
「そう!今からトランプを投げるから・・空中に浮いてる間に指定された数字を投てき物でバシッ!そこをシュパッと取って・・デーンと見せて正解だったら・・」
「待て待て・・擬音だけでしゃべんなや・・」
「あ・・ごめん・・まあまあ!細かいことはさておき・・おけ?」
「よくないよ!?わかんないの!僕には擬音でしゅびぃー!とかごぉぉぉ!とか言われてもわかんないの!」
「えー・・地元ではこれだけで通じるのに・・」
「お前の地元は関○かッ!!」
※関○出身が必ずしも擬音だけの県とは限りません
あーもうまともだと思ったのが間違いだったかな?
ツッコみが疲れる女だったわ。
「クス・・クスクス・・!」
「ん?ニア?・・どうしたんだい?」
「んー?にぃあね・・ぎぃん・・が・・おおいろい!!」
「えっ?僕が・・面白い?」
「確かにー!チャレンジャーちゃんおもろいよねー!!」
「ねー!!」
「(な、なんだこの二人、意気投合!?)」
なんだか男一人置いてけぼりで泣きたい。
お願いだからのけものにしないでくれ。
頼むから、どういう事なのか説明したくれよ。
「な・・なあ・・お兄ちゃんとっても悲しいから・・説明してくれ・・」
「中二病の事?中二病って何か知りたいの?」
「自分の言葉で言わせてあげればいいだろッ!!君のバトルルール!!」
「超エキサイティングッ!」
「それはドームだぁぁぁぁ!!」
「説明をどっかに放棄してシューッ!超rk」
「あははー!おおいろいー!!」
「・・もう好きにして」
「で、ルールの説明なんだけど」
「うぉぉぉぉぃ!!するんかぁぁぁぃ!!」
こんなグダグダの中ゆるやかーにバトルショーが始まるのだった。
なんやかんやあってとりあえずはルールを把握。
要するに散らばるトランプの中からニアの言う数字を当ててあげればいいらしい。
先に三回取った方の勝ちだ、なんだか急に超シンプルだな。
どうした、ネタ切れか?
「さーて・・はじめようか!別に本気出さなくても出しても・・どっぢでもいいよ!」
「やる時は大真面目・・なんでも間でもクソ真面目にやるのが僕さ!」
「うんうん!いいねいいね!その意気やよし!んじゃあ始めるよー!!ニアちゃんよろしくー!」
「あーい!!ういじゃー・・はーあのいひー!!」
ニアの元気で明るい声によって始まる旋律のバトルショー。
いっぺんに空中にばら撒かれた無数のトランプ。
空中へ放り投げただけなのにこの綺麗な飛び散りかた。
流石は本業と言ったところだ、だがついつい見とれて勝負を忘れてはいけない。
まずはハートの1を・・ハートのエースを見つけて能力でいつもの様に・・。
「はいッ!そこッ!」
バシュッ!
早いいッ!!
ハートの神速の対応、まだ始まって1分も経ってなかったよ!?
ナニコレもう一本取られたの?
早すぎて何もできなかったよ、強すぎて語彙力低下中です。
「語彙力が低下するのは仕方がない・・小説的には問題だけど!」
「はっはっはー!見た!私の神速のタカのように翻弄する攻撃」
「流石は最後の砦だな・・一体どんな能力なんだ?」
「私の能力は【博打札の倍風】・・この黒いトランプが見えるかしら?」
ハートがにやりと笑い。
指で挟みいくつものトランプを僕に見せる。
そのトランプは黒く、全てが青と赤で文字が濡れていた。
「この、トランプを投げるとね・・一本の針のように細くなり加速する武器となるの・・そして武器となったトランプが・・よっと・・この様になる!どうよ?」
「しゅ、しゅごい!」
「・・確かに・・」
このドヤ顔よ。
差し詰めみんなの頂点に立つためのハートと言うべき存在だろう。
僕の近くに打ち抜いたトランプを拾いに来てわざわざ見せに来る。
こういう自信に満ち溢れたところがリーダー的立ち位置なのだろうな。
「・・あとは数字さえ合っていれば」
「ん?アレ?・・あレレッ?!」
「それ2だぞ」
「おっかしいーな・・確かに正確にやったはずだったんだけど・・」
いや、まったく正確と言うより。
もう、さっきのは勘で答えていたような気もするけど。
もしかして今回はそういうタイプの子なの?
「おちい・・もーいっかい・・があんあってー!」
「ありがとー!お姉さん頑張るからねー!!」
「やれやれ・・応援が持っていかれるねー」
「ぎぃんも・・がんあれー!!」
「ああ!お兄さんも頑張るぞー!!」
心優しい応援が両方へ募る。
誰かを励まそうと言う心からの温かい応援だ。
この応援がどれだけ嬉しい事か。
そして、そんな応援が続いて早い事勝負3回目の事だ。
「三勝・・」
「3敗・・」
弱い、先ほどの自信はどこへやら。
とても弱かった。
と言うより自爆行為が多すぎる。
どこをどうしたら3回も自爆に走れるのか。
そう思う僕だった。
「・・なあ、やる気は認める・・何故適当に当てる?」
「えっと・・その・・実は・・スランプでして・・」
「本当かよ・・」
「嘘です、本当は何も考えてなくて今思いついた新ルールです」
「なるほど自分で作ったルールで自分ができなかったと」
「はい・・まことにすいません」
「いや、素直で結構」
ニアもそりゃあ疑問の顔になるわな。
向こうですごいきょとーんってなってるよ。
そしてハートの本当に申し訳なさそうな土下座は素晴らしい。
綺麗な角度だ、しかもダイナミック土下座だよ。
「いや・・そういう事じゃないんだ・・土下座はもういい顔をあげて」
「こ、この顔をあげるのですかッ?!」
「いや、そうじゃなくてな・・ハートさん・・ニアを喜ばせたいと言う気持ちはよく分かる・・今まで観覧側だったニアが参加できた初めての企画だ・・だがアンタが弱くてどうする・・そしてアンタがあらぶってどうする・・もう少し落ち着いたらどうだ?」
「貴方は・・神かッ!?」
「めどくせぇなぁ・・もう」
一々人の顔を拝んだり喜んだり忙しい人だ。
でもまあ、そんなテンションも嫌いじゃない。
「よし・・再戦・・このままだと僕の気が済まない・・いいよね?」
「うにゅぃ!があんあってーッ!」
「ほら、立って?立てないなら手を貸すぞ?」
「おお・・神よ・・」
「ダメだコイツ・・完全にやられている・・(心が)」
こんな調子で大丈夫だろうか。
最後にしてある意味最難関の四層目。
一体ちゃんとした勝負はいつできるのだろうか。
そしていつ頂上に上る事ができるのだろうか。
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