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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第五章 悪夢編
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無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第16話  「夢を与えるために生きていく」

「1・・3・・5ッ!?」


「見事に今度は奇数ばかりだな」


緊迫の漆黒の舞台はまだまだ続く。

今現在は蠟燭に灯る赤き火がゆらりゆらと静かに燃え。

六角の高いこの舞台の上で僕とダイヤは戦う。

それは相手を楽しませるために。

ただの争いではない戦いをする。


そして今回ステージに現れたのは【三つの玉とジャグリング棒】だ。

いままで大量の何かが置かれていたのに急に人数分しか置かれなくなる。

もしやこれはどちらかが成功させなければいけないのでは?


「いや・・でもこれってつまり両方の奴をジャグリングするんだろう?」


「そうよ・・玉とジャグリング棒を同時進行でやる究極的困難な技・・私はこれも苦手としていたわ」


「いやと言うよりできるのか?重さも形状も全く違うボールと棒だぞ」


「夢とロマンはあふれているでしょうよ・・団長様はなんでも無理難題を言うから」


無理難題にもほどがあるだろう。

流石にこれを一人でやる事なんて無理だ。

手に抑えきれないし、僕らではやりきれないであろう。

だが、状況が変われば可能かもしれない。


「・・ダイヤ、これは提案だが・・お前はボールと棒どっちが好きだ?」


「やるなら・・ボールね形状も最高だし・・結構やってて楽しいし決まればなおの事気持ちいわ」


「ほう・・なら三つから六つに増えたらどうなる?」


鋭い眼差しでダイヤに問う僕の視線。

その視線にぶれる事なくにやりと笑い。

いやらしく答えるダイヤだった。


「六つはやった事無いわね・・もし違う位置に行ってしまったらどうしよう・・ミスったらひとたまりもないこの緊張感にハラハラドキドキしながらやるとなると・・興奮するわ!」


「よし、気持ちは分かったから喋んな・・でだ・・こうしよう・・パフォーマンスバトルではなくなるが・・互いに得意とするジャグリングをする」


「わかっているわよ・・そのジャグリングでパフォーマンスすれば・・バトルは続いているわ・・ルールが多少変わっても私は平気よ」


「おーけい・・なんなら問題はないね!」


「ええ・・全然ッ!」


互いに利害が一致して合意する瞬間だった。

初めてじゃないかのように互いにボールと棒を投げ渡しがっちり受け止める。

そして合図もなにも無かったにも関わらず華麗に素早くそれは迅速に始まる。

ダイヤはただ回しているのではなく体を動かしダイナミックに時にはアクロバティックに。

繊細かつ大胆な動きを見せ凄まじいパフォーマンスを見せつける。

六つジャグリングをしているにも関わらずとんでもない動きだ。

僕も負けじと三つの棒のジャグリングを時にはいっぺんに。

時には両手で三本ずつ、そして同時にすべての棒を上に投げて。

そのまま銃を使って飛ばしてすべての棒を一緒の場所に重ね合わす。

しかしただ重ね合わせているだけじゃない。

そこから回転してこちらにブーメランするかの如くもどり行く。

銃弾として放った銃には【能力で戻る様記憶させた棒】として変化させた。

段々能力の使い方も分かってきた。

僕もノリにのっているところだ。


「ふぅーん・・やるじゃない!」


「君に比べたらまだまださ・・もっと・・エグいのが来てもいいんだけれども?」


「強がり言うわね・・お望みどおりになると良いわ?」


「ああ・・まったくだ!」


互いにパフォーマンかが終わろうと油断せず互いに煽りを入れる。

それに見事に対応してみせる二人の意識。

もはや言葉いらぬかのように次の課題へと移る。

パフォーマンスは続く互いに止めたいと思わず次から次へと。

もはや苦手など関係ない、互いに楽しくなってしまい。

互いが気がすむまでやる様に次々にパフォーマンスを見せる。

僕達は気にしていなかったが実はもう勝敗もついていた。

ニアの心から不安さえも消し飛び、心からこの舞台に輝く眼で見ていた。

でもニアには分かってしまったのかもしれない。

互いに楽しむ姿が、僕らが楽しみ舞台を盛り上げる事すら忘れて。

気の赴くままに僕達はショーを続けた。


「はぁ・・はぁ・・楽しいとはいえ・・そろそろ体力が・・」


「そ・・そうね・・かれこれ二十回以上は続けているわね・・」


「そろそろ・・最終幕じゃないかな」


「そう・・ね・・名残惜しいけど・・幕引きは大切だものね」


「なら見せてくれるか?最後のダイスロール」


「ええ・・見せてあげるわよ・・最後の・・正真正銘の・・ラスト・ダイス・ロール!」


僕達の勢いあったショーは終わりを迎える。

その最後のシメとも言わんばかりにダイヤは勢いよくダイスを投げる。

投げられたダイスが宙を舞う、この舞う時間は最後だ。

次はもうない、僕達は研ぎ澄まされる旋律の鼓動にバクバクと打たれる。

緊張が走るの中、楽しみさえも迸る。

僕らは今最高の瞬間に立っている。

そして今、最後の運命の瞬間だッ!!


「来た・・6・・4・・2ッ!!」


「つまり最初で始まって最後で終わる・・【十二の塔】ッ!」


「運命は・・私に味方してくれていわッ!!」


とっさに現れる椅子に瞬時に行動するダイヤ。

素早く体を動かしそれは華麗に前へとハンドスプリング。

足を使い手を使い飛ばして椅子を次々と積み上げる。

にやりにやりと余裕の笑みを浮かべながら次々と塔を作るダイヤだった。


「これは勝負あったッ!」


「確かに・・君の得意分野だ・・僕には当然勝ち目はないだろう」


「ええそうよ・・これだけは・・偶数の項目だけは死ぬほど練習した・・だから私は負けることはないッ!どんなに努力をしようと私を超える事なんて不可能なのよッ!」


「得意項目でそうやって慢心した時こそ・・真の敗北だよダイヤッ!!」


「なっッ?!」


バンッ!バンッ!バンッ!


素早く次から次へと銃弾を発射し椅子を飛ばす。

回転しながら飛んでいく椅子は僕の後ろへと行く。

そして後ろを振り返った僕の背後に立っていたのは反転ずつ積みあがった。

綺麗なまっすぐしっかり立つ塔だった。


「そ・・そんな・・私より・・早く・・積みあがった?」


「僕はね・・記憶させこの椅子に自ら立つ事を念じたんだ」


「それは貴方の能力でッ!?だとしたら・・」


「反則だろうな・・」


「分かっててやるんだッ?!」


「反則は・・カッコ悪いからね・・でもバレなかったら勝因にはつながるんじゃない?夢を無くしたいのならだけど・・」


「あ・・・そっ・・そっか・・夢を・・」


僕の静かに問いかける言葉に何かを感づくダイヤ。

最後の戦いは儚くも切ない終わりだ。

だが、どこか何かを感じた勝負だった。

そう、思うだろう・・そう思ってくれただろう。


「・・夢を・・失う・・」


「ダイヤ・・この勝負は僕の負けだ・・ニアがああして笑って微笑む姿を見せているのは君のおかげであり君の努力の報われだ、その努力を踏みにじる様な行為をした僕に勝利をもらう資格はない」


悔しくも思ってなくその言葉は心無しか嬉しそうに言う。

だがダイヤも嬉しそうに一言述べてくれた。


「嬉しいけど・・勝利はもらえないわ・・ここは引き分けよ・・この勝負も勝利もお預け」


「と言うと?」


「また・・こんな勝負をするため・・そしてこの引き分けを永遠に心に刻むため・・私はここからまた修行するわ・・その時は・・たとえ奇数でも戦ってやるわよ!」


「夢を失わないために・・だな」


「そう・・私は・・誰かに夢を与えるために生きている・・なら・・こんな卑怯なマネ・・もうしない・・もう絶対に・・」


ダイヤの目がキリッとし光り輝く目の色へと変わった。

あんな性格で態度もああだったダイヤが変わった。

ダメ元でも思ったことを言ってみるものだ。


「・・それはそうと・・僕はこれだとまた一階に戻る感じ?」


「いえ・・引き分けなら・・というより勝敗は関係ないわよ・・貴方は次へ進めるわよ?」


「ふへー・・若干それに関しては焦っていたよ・・これでまた逆戻りしたどうしようかと・・」


「ふふ・・貴方も案外臆病なのね」


「ああ・・僕は臆病だよ・・案外ではなく・・そのまんまね」


「(果たして・・本当に臆病なのかどうかだけどね・・)」


終わってみればあっという間。

僕達の勝負は引き分けと言う形で幕を下ろす。

静かに舞台を去ることに僕は切なさよりまた勝負すると言う熱い風を感じた。

きっとダイヤも互いに背中を見せた時に感じだろう。


またいつか勝負する日が来ることを願っていると。


まるでライバルの様な互いの熱い意志を感じた時また一つ。

僕の記憶の力は強くなっていた。

この黒き部屋を後にしてまたニアと手をつなぎ新たな一歩へと進む。


「また・・会いましょうね!シーユーッ!」


「ああ・・また会おう!」


「まぁ・・ねーッ!!」


ニアと僕・・そしてダイヤは部屋の去り際に挨拶を交わした。

最初は怯えていたニアも、暗かったダイヤも明るくなり。

次会う時がまた楽しみだった。

こうして一つまた舞台は閉会する。

いよいよ次が最後の幕だ。

果たして僕の最後の幕は一体どんな舞台なのだろう。

ワクワクとドキドキの中階段を上っていく。


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