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無限空想世界の幻想的な物語  作者: 幻想卿ユバール
第五章 悪夢編
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無限空想世界の幻想的な物語~悪夢~ 第13話  「ルーレットバトル」

悲しみの涙、苦しみの痛み、憎しみの感情。


私は全てを感じ全てを思い募らせていた。


長い長い悪夢の牢獄で全てが感じられていた。


頭がどうにかなりそうだった。


何度も自らの首を絞めて楽になりたかった。


だが悪夢は目覚めない。


一向に目覚めない。


何回痛みを与えても目覚めない。


この悪夢からもう消えたい、消え去りたい、誰かここから出してください。


私はもう嫌です。


私じゃない私の精神が記憶を流し込む。


私ではない私の心が何かを訴えて来る。


こんなの私ではない、私はこんな事しない、私はそんな思いをした事ない。


嘘と偽りを止めろ、いますぐやめろ。


お願いしますやめてください。


私は何度もそういった。


けれども悪夢の残響は止まない。


耳をふさいで右往左往して苦しみ、体が麻痺を起こした。


目はもう枯れ果てるように見開いていた。


私の目はもう涙を流してカラカラの瞳になっていた。


何もない器の私はどうすることもできなかった。


ただこの耐えきれない苦しみにどうすればいいのかわからなかった。


心の扉は閉ざし、精神無き器の私は無き願望と欲望の流れ込む。


この記憶の水攻めの牢獄で今もなお苦しむ。


とっくに息はできないのに。


もう部屋中が水だらけなのに。


私はもう溺れて死んでいるのに。


誰も止めない、やめない、悪夢はただ私をまだ苦しめる。


死体同然の私を苦しめる。


やめて・・ください。


私は言い方を変えながらまるで言葉を知らない子供のように何度も言う。


そんな事言っても誰もやめてくれないは知っている。


でもやめてほしかった。


ただ救いを求めていただけだった。


なんで私がこんな目に合わなければいけないのかわからなかった。


謎だった。


謎で仕方がなかった。


私はいつしかまた考えるのやめて、また記憶の水の中溺れ死ぬのだった。


 ◆


「さあ・・ルーレットスタートです!」


「来いよ!武器なんか捨ててかかって来いよ!」


ガラガラガラガラガラ・・・


時はメルヘンチックなルーレットの舞台の上。

僕とクローバーは一斉一台の大勝負の最中だ。

木製のルーレットの上をデコボコの上を回る回る白い玉。

僕達の周囲をグルリクルリと遠くで回る。

そして、勝負の時は訪れる。


ガタンッ!パンパカパーン!


穴に玉が入り込む音がした。

その時軽快な効果音と共に最初のパフォーマンスの始まりだ。


「さあ!一回目は【ニワトリさんの激昂乱舞】です!」


「ニワトリさん・・激昂?」


クローバーがキリッと表情を変える。

先ほどのたどたどしい感情とは打って変わってとても凛々しい。

彼女・・いや彼ら声や姿は女々しくてもスイッチが入ればキメていけれるという事か。

いや、それよりさっきニワトリがなんとかって・・。


『コケー!コケケー!』


「な、なんだ・・」


「これぞニワトリさんが私達めがけて飛んでつつきに来るハプニング!さあ!どうします!」


なるほど、周りのルーレット台から現れた謎の鳴き声はニワトリたちか。

どおりでバサバサと鳥の翼の音を出していると思ったら・・。

しかもこの大群、ざっと二十羽はいるな。

辺り一面から僕をめがけて飛んでくる。


「えっ?僕をめがけて・・?」


『コケー!ここー!』


「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!なんで全部僕なのぉぉぉ!!」


「す、すいません!ボク・・運少し運が強すぎて・・ハプニングに襲われた事がないんです・・」


「それ早く言えよ!八百長もいいところじゃねぇか!てか手乗りニワトリできる余裕幸運って何!?なんか凄い和むなぁ!おい!」


「す、すいません・・昔らすごい動物に懐かれていて・・」


「たぶん【幸運】だろうな!ギャーッ!イタイ!ちょっ・・止めろー!やめろー!あひぃー!」


「も、申し訳ないです・・」


「同情するなら幸運をくれぇぇぇ!!」


なんという事だ。

こんな戦い彼の圧倒的有利じゃないか。

これじゃあ勝ち目もあるかどうか怪しいぞ。

それどころかニアに笑顔を見せられるかどうかすら怪しい。

今、ニワトリとのボコボコタイムが終わりひっそりとニアの顔を窺うが。

心なしかとても悲しそうな表情な気がする。

残念そうとも取れる。

このままでは敗北が決まる。

あと、十四回で逆転を導き出さなければ。


「よし!次来い!」


「は、はい!ルーレット!スタート!」


ガラガラガラガラガラッ!


激しく台の上をグルリクルリと周り始める白い玉。

今度は先ほどより早く早く回る。

これなら同じ物が来ることは無いと信じたい!


ガコンッ!パンパカパーン!


来た、ルーレットが止まった音だ。

一体次は何が起こるんだ。


「来ました!続いては【四方八方バンバン大砲さん】です!」


「名前的にたぶん砲台がルーレット台に現れて僕にめがけて来るんだろうけど・・そうはいかない!」


僕は大砲の攻めが来る前に勢いよくクローバーへと攻めかかる。

全力の走りで空中へと飛び上がり二丁の剣銃をまっすぐ構えてクローバーへと放つ。


「くらえッ!【花弾(フラワーショット)】ッ!」


パァンッ!パァンッ!


煌びやかな音ともに舞い散り行く風切りの花びらと二発の弾。

ぐるりぐるりと二つの弾がクローバーめがけて放たれる。


「わわッ!・・えっと・・【秘儀!アンブレラさんにお任せ!】です!」


バサッ!シュバァァン!


二つの弾は確かに命中した。

しかしそれはクローバーの傘に命中しただけだった。

かわいらしいフリフリとした傘に命中しなんとそこから綺麗な花が咲き誇る。

一本ではなくまるで草原を作るように綺麗に咲きほこる。


「な・・なんですとー!?」


「あ、アンブレラさんはこの通りボクの攻撃を全てお花に変えてくれます!」


「グッ・・流石はエンターテイ・・なぁぁぁぁッ?!」


ズドォンッ!!


後ろから爆撃が命中する。

そういえば僕は今大砲に狙い撃ちされている事を思い出した。

今更で本当に忘れていた。

そして忘れたころにやってくる痛みはあまりにも多かった。


ズドズドズドズドドドドドドッ!


次から次へとまるでコンボの様に命中。

僕は黒くプスプスとまるでギャグマンガのワンシーンの様に黒焦げだ。


「じょ・・上手に焼けましたー・・」


「ぎ、銀さん!大丈夫ですか!?」


「大丈夫・・心配はいらないよ・・続けて第三回目に入って!」


「で、でも・・」


不安そうにアワアワと慌てるクローバーだが。

僕は余裕の笑顔で返事を返す。


「でーじょーぶだ・・こんなの慣れっこ!むしろピンチこそ勝って真のヒーローだ・・僕って結構勝ち目の見えない試合・・好きなんよ・・君も、もっと煽って来な!」


「銀さん・・分かりました!心を鬼にして・・続けて第三回目!ルーレット・・スタート!」


ガラガラガラガラガラ・・・ゴロゴロ・・


激しく木製のルーレットは何度も僕たちの周りを回った。

ガタガタと白い玉は傷をつけてはでっぱりを超えてゆく。

この止まるまでの緊張感走る緊迫した間がとてもドキドキする。

きっと、後ろで見ているニアもドキドキしながら見ているはずだ。


ガコンッ!パンパカパーン!


ルーレットの玉が穴に落ちた音だ。

いつもの軽快な効果音と共に何が来る。


「三回目は【透明で見えないトランポリン!】です!」


「な・・なんだと・・ふにゃッ?!」


僕が足を一歩後ずさりするとぐにゃりと地面がめり込む。

そのままなんと空へと跳ね上がる。


「あ゛ーッ!!そういう事かよ畜生!」


「そうです!まんま見えないトランポリン・・ですが・・!」


「なっ?!」


ダッシュで地面へと飛び込むクローバー、一見自殺行為に見えるが。

なんとそのままトランポリンを上手く使い跳ね上がる。

続けざまに次から次へとパフォーマンス。

なんともアクロバティックだ、クルリクルリと体操選手の様に技を決める。


「よっと・・!これぞ・・私の世界!!」


「すごい十点十点十点・・三十点だぁー!ゴベァっ!?」


「チャレンジャーさん!時間切れですよ~?」


綺麗な芸当に僕は思わず見とれてしまうほど煌びやかに輝かしい演技だ。

見えないはずのトランポリンの床を次から次へと移り行く。

この残像さえも美しく見えてしまう芸に思わず見惚れてあえなく地面へ落下。

ビターンッ!とまたしてもギャグシーンの様に地面に衝突。


「・・あいたー・・めちゃくちゃいてーです・・」


「このまま私のリードで展開しちゃうとちょっと困っちゃいますねー?む


「そうだなー・・そろそろ逆転のチャンスが巡ってくるはず・・まだまだいける!」


「うん!がんばれ!がんばれ!」


クローバーの煽りが僕の燃え尽きない熱き闘士へと変え行く。

本来ならこの状況に怒りを見せるのが常人の反応だろう。

だが僕は決して怒りを見せなかった。

それどこかろか微笑み笑いそして辛さを出さなかった。

この光景をニアは不思議に思っていただろう、ニアはこの光景に驚いていただろう。

そんな視線を感じた。

そんな視線を感じながらも次から次へと起こるハプニングに僕は必死にこらえる。


「七回目!【針千本のドームへようこそ!】です!」


「この舞台から降りるつもりもないのに針で囲むのかい?」


「いえいえ・・僕はこうやって針を応用します!【バルーン・ザ・マジック】ッ!」


「ギャーッ!大量の小麦粉がぁぁ!」


いくつもの苦難と悲劇を乗り越えて。

それでも笑顔で対応する。


「十回目ッ!【ベトベトのネチョネチョスライム】です!」


「小麦がぁぁ!小麦が付いてるから余計くっつくよぉぉぉ!!」


「チャレンジャーさんも流石に耐えられないんじゃないですかねー?」


「いーやいや!こうすれば・・ッ!!」


「ッ?!(ブレイクダンスッ?!この状況でッ?!)」


「(あえて上から降り注ぐスライムのネチョりで危険かもしれないこの状況を楽しむッ!)」


その苦難がだんだん楽しみへと変わる時。

僕も一人のエンターテイナーとして盛り上げを見せる。


「十三回目ッ!【鞭撃ちビシバシの獄門】です!」


「ふぁーッ!そぉー!らぁー!どうよ!慣れればこうやってアクロバティック避けれるのさ!」


「流石ですけどッ!そこにバルーン追加させていただきますね!」


「それさえも・・僕の敵じゃないねッ!!」


バァァンッ!


突然の攻撃も難なく撃ち落とす。

いくつもの鞭が僕を襲おうともその場で発砲。

そして割れたバルーンは綺麗に輝く銀色の粉へと変化する。


「フフ・・やりますね!」


「当然よ!さあ・・あと二回・・どんどん行こうか!」


「はい!行きましょう!ルーレット・・イッツ!スタートッ!」


段々波乱のルーレットバトルへと変化する。

この光景にニアも胸がドキドキしているのではないかと思った。

僕はニアのひそかに楽しむ視線をなんとなくだが感じ取れた。

僕の笑顔の姿に疑問を持ちながらもワクワクと湧き上がる感情。

苦しみしかないと思われるショーに余裕の素振りを見せる僕に。

もはや疑問を抱かずただ次は何が来るのかという楽しみがあったはずだ。

時は流れてついにラスト十五回目。

どちらもまだまだ行けると余裕の表情をしつつも息を荒くする。

だが、この楽しい楽しいショーを途中でやめさせる者はいない。

だから、僕たちはクレイジーにクールに踊り舞う。

ただひたすら周りの人達を盛り上げるためだけに僕たちは見せつける。


「さあ・・幕はついに十五回目・・ラストは・・」


ガコンッ!

今最後のルーレットが止まった音がした。

さあここから最後のバトルだ。

泣いても笑ってももう時は戻らない。

運命の15回目・・いざ!


「15回目・・出ました!【牢獄大脱出チャレンジ】ッ!」


「な、なんだそりゃあ?!」


「こればっかりは運では乗り切れません・・今から互いに檻の中へと閉じ込められます・・そこから私達は脱出せねばなりません!制限時間は1分!さあスタートです!」


ガシャコンッ!


突如僕を囲う鉄の檻。

ここに来てどう見せ場を作ればいいのか分からない物が来たかッ?!

流石に本職相手に脱出劇を盛り上げる勝負では・・。


「いや弱音を吐いてどうする・・男なら・・ビシッとしなけばね!」


「ふーんふふーん・・以外と手間がかかりませんねコレ・・」


「えーと1分だからたぶんあと30秒・・いやこの間にもう何秒か過ぎている!」


「よし・・脱出の準備完了・・さーてチャレンジャーは・・?」」


「一か八かだ・・やるしかない!」


「ムフフ・・見せてくださいよ~・・それでは5・・4・・3・・2・・1・・0ッ!!」


チュドォォォォォンッ!!


クローバーの合図と共に互いの檻は大爆発する。

黒い煙が舞い散り流石に苦悶の表情で見守るニアだろう。

先にこの煙から出て来たのはクローバーだから余計不安になっただろう。


「はーいッ!私はちゃーんといますよー!!ですが・・チャレンジャーさんはどうやら・・」


「いや・・いるぜ・・ここになッ!」


「えっ!?」


クローバーは周りをキョロキョロと見渡すがどこにも僕の姿は見えない。

ふとクローバーはまだ爆風で見えない隣の方を見た。

そしてその煙が晴れた時・・驚くべき光景になっていたのだ。


「・・どうよ・・これぞッ!」


その一言にパチンッ!と指を鳴らし辺りの一帯の煙を取っ払う。

そして吹き荒れる美しき風と共に舞い散るキラキラと降り散る銀色の羽。

まるで冬の雪を思わせるかのような美しさだった。


「わぁ・・綺麗・・まるで・・銀の鳥が飛び立つように儚き舞い・・」


「そっ・・爆発をとっさのアイディアだったけど・・銃弾に強く強く祈ったんだよ・・僕を爆発から守れる・・そんな美しい銀色の壁をね」


「思い・・願い・・それだけで今の状況を・・しかも最後のフィナーレまで・・」


「やってみるまでそれが失敗か成功かなんてわからないのもまた楽しいだろ?」


僕はこの一幕を下した舞台のクローバーに笑顔で微笑みそういった。

僕はここまでとても楽しませてもらった事に感謝し。

波乱のショーを盛り上げられた事に感謝した。

クローバーもそれに対して笑顔でこう答えてくれた。


「はい!私もまだまだ・・知らない事があると・・そしてまだチャレンジする側だという事・・色々教えてもらいました!」


「ああ、またこんなショーができるといいな」


「そうですね・・そしたらあそこにいるあの子もまたあんな風になるのかもしれませんね」


「あそこにいるあの子?」


クローバーが目を向ける方向に立っていたのは舞台から輝かしい眼差しでこちらを見る。

ニアが輝かしい眼でこちらを見ていた。


「ギィ・・ん!!きれぇ・・イ!!」


「ニア・・ありがとう!」


精一杯の誉め言葉、心からの感謝で僕の胸は一杯だ。

ニアの暖かな気持ちにとても幸せな僕だ。

だんだん心を開いてくれたニアにとてもうれしく思う。

ここからもっと表情が変わっていくのを見守ってあげたいと思ったのだった。


今はいないが・・もう一人のニアもこんな風にまた笑ってくれるだろうか。

僕が白のニアに浮気したとか・・嫉妬していないだろうか。

会ったらちゃんと迎えてあげなければな。

彼女のおかげでここまで頑張れた事もしっかり忘れてはいなさ。

僕は黒のニアの事もきちんと心に刻み忘れない様に胸に刻んだ。


かくして第2層の勝利を無事に取った。

いよいよ残りは2つ。

まだまだ塔の上へと昇る覚悟を決めなればならない僕だった。

けれどもめげずにこれからもニアを喜ばせたい。

そんな思いで進む僕だ。


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