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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
天下統一への道

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94 新しい側室と北方侵攻

 俺はすぐにソルティス・ニストニアに娘のユッカを側室としたいと伝えた。

 それでも彼は信用できない部分があったらしく、わざわざ俺に確認にやってきた。


「あんな娘でよろしいのでしょうか……? もし、ニストニア家に釘を刺すためだけであれば、無理に娶らなくてもけっこうです。断られたからといって、こちらはなんとも思いませんので……」


「いや、俺は彼女に心底惚れたのだ。どうか、ご心配なきよう。それと、俺は義理で妻を選ぶつもりはない。唯一の不安は彼女の体がそう強くはないことだが、それはどうにもなるまい。神官に祈祷でもさせるぐらいなら、俺が全力で祈ろうか」


 今なら、ソルティスが不安な理由もおおかたわかる。

 薄幸に見える娘がただの政略結婚で愛もないところで消費されるのがかわいそうなのだろう。それなら、あまり力はない男でも、いい家庭を築かせてやりたいと思っているのだ。


「伯爵殿、俺は彼女を本当に好いている。俺なりに幸せにしてみせる。決して形式的なものだと思わないでほしい」

 俺は真面目な顔で、はっきり宣言した。


 ただ、俺のところに来たユッカはユッカで、まだ信じられないという顔をして、「こんな私でよろしいのでしょうか……?」と親と同じようなことを聞いてきたが。

「あなたは自分の魅力に気づいてないのです。それ以上謙遜なされては、あなたを選んだこちらにも失礼になりますよ」

「あうぅ……ごめんなさい……。私なんかが摂政様の側室になるだなんて……」


 しばらくユッカは緊張していたので、俺が何度も強張っている体を撫でて安心させないといけなかった。


 なお、セラフィーナは、後で俺にこう漏らした。

「男は、自分の知らないタイプの女に興味を持つものよ。まるで美食家のようにね」

 ずいぶんな言い方だけど、そう間違ってはないかもしれない。


「よくわかってるじゃないか。仮にセラフィーナによく似た女がいても、セラフィーナにはかなわないだろうからな」

「それは口の悪さではわたしに勝てるものがないということかしら」

 ユッカとこんなやりとりをすることは一生ないだろうけど、それはそれでいいだろう。


「それじゃ、新しい側室に二度目のマウスト城をじっくり見せてあげるといいわ」

「とはいえ、さすがに今回は俺も忙しいから、その暇はないな。子供と遊ぶ時間も取れないぐらいだ」


 そう、ニストニア家とのつながりも太くなったし、ついに北方作戦を具体的に進める。

 これが成功すれば国の半分は俺のものになる。


 その後で、西側の前王の籠もる有力領主をつぶせば、俺の天下だ。



 俺はマウスト城に軍隊を集めていき、初夏の頃、ついに軍を北へ発遣した。


 マウスト城の留守居役は老将のシヴィークにやらせている。口は達者でもうろくはまったくしていないが、さすがに足腰はガタが来ている。ヒゲも髪も真っ白でどこか神殿で祀っている神格のようですらある。


「シヴィークが死んだら大々的に葬ってやろうと思っているんだが、なかなか死なないからな」

「アルスルッド様、失礼ですよ」

 ラヴィアラに咎められた。


「しかし、たしかにあまり長生きされすぎると、もう孫が活躍する世代になってしまって、お子さんの小シヴィークさんも大変かもですね」

「お前の言ってることだって似たようなものだろ」


 長らく俺の功業を助けてくれたシヴィークも、さすがにもう戦場の最前線には出せない年になってきた。俺が最初に王都に入った時に先頭を任せたのが大きなものでゃ最後の仕事だろうか。本人はまだまだやるつもりみたいだから、今回の仕事を任せた。


「そのあたり、どうなんだ、小シヴィーク」

 俺は行軍中の小シヴィークに尋ねた。小と言っても、俺より年上だ。もう四十歳近いだろう。

「早く私が武功を挙げて、親父を安心させないといけませんね」


 小シヴィークはシヴィークと比べると常識人で、武人という雰囲気もない。ただ、地味ながら父親同様、長らく俺に仕えてきてくれた。仕えた期間を考えれば、シヴィーク一家はラヴィアラに次ぐはずだ。


「心配するな。お前が 武功を挙げたところで、シヴィークは隠居しようとかは思わない。生涯、戦場を駆け巡らないと納得せんさ」

「そうだとは思いますが、それでは最期は必ず戦場で骨をさらすことになります」

「しかし、すでに七十年以上は生きたのだろう。なら、好きなように死なせてやるべきかもなという気もしている。それであいつが恨むこともないだろうしな」


「陛下、一族からすると冗談では――」

 小シヴィークの言葉はそこで止まった。俺の表情が冗談に見えたかったからだろう。


「小シヴィーク、俺は親父の足腰が弱っているとは思っているが、指揮の能力が落ちているとまでは言っていない」

 そのことは小シヴィークにはっきり理解させておく必要がある。

「留守居役をつまらない人間に任せるか? 留守居役がただの名誉職だと考えているのか?」


「いえ、決してそのようなことは……。まして、今回の留守居役は最悪、戦闘になる可能性もありますから……」

「そういうことだ。体の動きが悪いならそれが必要ない重職をやっているまで。お前も自分の仕事に励んでくれ」

 小シヴィークは恥じ入ったように「はっ!」と叫んだ。


 シヴィークほどの力はないが、この男も年の割には若い。もう一度伸びる時もあるかもしれない。今後の功績次第ならシヴィーク家全体がネイヴル家を守る一翼を担ってくれるかもな。


「それと、お前の息子は何歳だ」

「嫡子は十三になります」

「戦場に出れるかどうかという歳だな」

「どうにも臆病者なもので……」


 俺の横にいたラヴィアラが「少しばかり臆病なぐらいのほうが安心できます」と俺に忠告するように言った。

 俺はたしかに前線に出すぎだな……。


 俗に北方と言われる地域は東西で一セットずつ県が縦に並んでいる形をとっている。もともと、異民族がほかの大陸から移り住んできていたとも言われ、県の割り振りも中央ほど錯綜してはいない。

 そのうち、まず、北方の入口と言われるマチャール県のマチャール辺境伯家を攻める。


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