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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
天下統一への道

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87 妻に疑われる

 簡単な戦後処理を終えて、王の側に属している町まで戻ってきた。本日はここに泊まる。王都からもかなり離れているので、ゆっくりと戻るつもりだ。


 部屋に入ると、ソファに倒れ込んだ。なんだかんだで戦場は疲労がたまる。命のやりとりをしているわけだからな。じゃあ、前線に出なければいいという話だが、前に出たほうが軍隊全体の士気が上がるので、出ないわけにもいかないのだ。


 オダノブナガはそんなに前線に出るタイプじゃなかったはずなのに、少しおかしいだろという気もするが、戦うのは楽しいから別にかまわない。宮廷でずっと暮らすのも息が詰まる。


 同じ感想の人間はほかにもいるようだ。

「アルスロッド様、お疲れ様でした!」

 ラヴィアラが威勢よく部屋に入ってきた。今回はラヴィアラは最前線には出なかったが、従軍はしていた。


「久々の戦争でほっとしましたよ。どうもお城の中でおしとやかにするのは性に合わないんで……」

「そう言うと思ってたよ。俺も同意見だ。最近はあまり戦争もないしな」

「もっとどんどん攻めに出るわけにはいかないんですか、アルスロッド様?」


 ラヴィアラは不服そうに口をとがらせた。

 俺が小領主にすらなれていなかった時代から、ラヴィアラとの関係は何も変わってない。


「攻めなきゃいけない時もあれば、固めなきゃいけない時もあるんだ。摂政としてのつとめも果たさないといけないからな。ずっと戦争してると陛下に何をしてるんだと思われる」


 摂政に就任し、オルセント大聖堂を打ち破ってからは、静謐が王都周辺におとずれた。というよりも、王都近辺で俺に逆らう勢力がそれで消滅してしまったわけだ。

 もちろん、ずっと外に出ていけば俺の勢力を気に入らない奴もいるだろうけど、ずっと外に出続けていたら、態勢を整えられなくなる。


 なので、オルセント大聖堂を叩いて屈服させてからは、こちらから遠征するようなことも避けていた。むしろ、王都付近に勢力を扶植するほうが重要だった。


 俺はラヴィアラをソファに座らせて、その髪を撫でた。

「アルスロッド様、まだ政務の時間ではないんですか?」

 まんざらでもない顔でラヴィアラは言う。

「遠征に出ている時はその限りじゃない。出張っている間の政務もヤーンハーンに任せている。あいつが上手くやってくれるだろ」


 俺がこの五年で一番の成果を上げたのが、役人の入れ替えだ。試験をやって新規に人材を大量に集めた。


「新しい方々は本当にお仕事熱心ですよね。役人の質が上がったという話はよく聞きます」

 新しいという表現にはちょっと語弊があるけどな。第一期の者はもう五年やっている。


「単純に俺が集めた連中は頭がいいんだ。ヤーンハーンもやり手の薬商だからな。既得権益だけで跡を継いだ愚か者どもとはわけが違う」

 ラヴィアラは俺のほうに顔をうずめてきた。長い付き合いでも飽きないものだと思う。

「ずいぶんと古い人たちを追放なされましたね」


 新人が活躍できる場を開けるために、じわじわと邪魔者を取り除いていった。

「罪状はこれまでの職務怠慢だ」

 もし、大聖堂と戦っているところで罷免を繰り返したら危なかったかもしれないが、基盤ができてからならどうということはない。


「陛下に不審に思われないようにはしてくださいね」

「わかってるさ。これは俺と陛下の権力の奪い合いじゃない。陛下の権力自体にはほとんど手をつけてない。実際、統治機構自体の改変なんて全然してないからな。人がすげ代わってる分にはなんとも思ってないさ」


 どうせ、現在の王――ハッセ一世に忠実な人間は役人として残ってはいなかったはずだから、王の権力には影響がない。誰が王になろうと、事務処理をするためだけに残っている出来損ないの官僚みたいなのが王都付近にはたくさんいた。


 俺はそういうのを一人ずつ、丹念に自分の手駒に置き換えていった。

 おかげでそうそう権力が揺らぐことはないし、ちょっと王都を留守にしても仕事が滞ることもない。


「このままアルスロッド様の権力が安定したまま、国土を統一できたらいいんですが」

 ラヴィアラの髪からは香水の香りがする。遠方由来のかなり高い品だ。王都には奢侈しゃし品もずいぶんと入ってくる。

 まさしく、俺たちにとってはこの世の春ってことだろうな。


「でも、まだまだ戦いは続くぞ。それは間違いない」

「それはそれでかまいません。ラヴィアラ、命に代えてもアルスロッド様をお守りいたしますから」

 ラヴィアラは俺の体に腕を絡めてくる。これはその気になってるな……。


「ラヴィアラだけにできることとなると、そういうことしかありませんからね。ライバルはどんどん増えていくでしょうし……」

 少し、ぎくりとした。

 ラヴィアラはそういうことをかなり気にするからな。


「ここ最近は色恋は控えているはずだが。陛下から妹君を妻に迎えた手前、どんどん側室を増やすなんてこともできないし」

 それは本当だ。ルーミーが正室になってからは、表向きは妻の数は増やしてない。五年そうやって平穏を守ってるんだから、問題ないはずだ。


「ヤーンハーンさんが二年前に産んだ男の子は、アルスロッド様との子だという噂ですが」

 うっ……。それはそうだな……。

 ヤーンハーンとは完全に愛人関係にある。茶式を二人でやっている間に、俺のほうが惹かれていった。それに商売を一人で仕切っている女というのにも興味があった。ほかの領主の娘たちとは違った価値観を持っていて、率直に言って、面白い。


 こちらで引き取るという話もしたが、ヤーンハ-ンは自分の跡継ぎにすると言っていた。単身、こちらの国に渡ってきて、結婚もしてなかったようだから、それはそれでちょうどよかった。


「きっと、側室にはしてなくても愛人は作っているんじゃないかなとラヴィアラは疑っています」

 ラヴィアラの疑惑の声が刺さってくる。

 これは、ちゃんと気をつけよう……。

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