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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
天下統一への道

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86 サンティラ家滅亡

 ここから先は狩りだな。

 敵は見事に浮足立っていた。後ろはオオカミの姿をとっているワーウルフの攻撃で壊乱していて、前からはこちらの軍隊が攻めてくる。千だか千五百の部隊では、もう勝ち目などないだろう。


「摂政の大将、オレにはどうしても敵が何をやりたいのかよくわからんのです」

 オルクスがデカい声で言った。戦闘中だから声は大きくないといけないが、それにしても大きすぎる。


「こんな中途半端な数の兵力で野戦を仕掛けて何ができます? そんなの殺されておしまいですぜ。まだ砦を固めてガチガチに守っていれば応援も来るかもしれねえし、そんなのが期待できないにしても、まだヤケクソで逃げるなり、自分に縄でもつけて出頭するなりすればいい」

「つまり、非合理的すぎるというわけか。人間の何割かはこういう何も考えてない生き物だ。命が懸かっていてもそうだ」


 もし、本気で全力で各地の領主たちが生き残るために争えば時代はもっと変わっていたと思う。


 たしかに乱世ではあるが、あらゆる場所で毎日戦乱が起きているわけではない。百年、領地を守っている者も多い。基本的に人間はこの時代においても保守的だし、その中には選択した結果じゃなく、ただ、その状態を続けているだけの奴も含まれる。

 今回のサンティラ家はそういう者たちだ。未来を考えたこともとくにないわけだ。成り上がり者の俺が攻めてきたからとりあえず刃向かって、そして負けて本領を手放して逃げていった。


「こういう連中は徹底して叩きつぶす。やるぞ」

「へいっ! どっちかというと、近頃平和だったんで、ちょうどよいです!」

 たしかにこの五年はその前と比べればマシだった。大戦と言えるようなものは起こらなかったというか、起こさなかったというか。


「多分、それもまた崩れるけどな。もっとヤバい状態になると思うぞ」

「望むところですぜ。戦争がなきゃ、オレとかは商売あがったりだ。そっちのほうがはるかにヤバい。体が動く間はなんか斬ってなきゃな!」


 俺は剣を抜く。三ジャーグ槍は馬に乗ってだと邪魔になる。

 オルクスも分厚い剣で、突っ込んでいく。


「サンティラの残党共、その場でひざまずいていろ! 摂政アルスロッド・ネイヴルみずから、お前らを討ちに来てやったぞ!」


 この声を聞いて、首を取ろうとやってくるかと思ったら逆だった。

「人殺し摂政だ!」「この国最強の人間だ!」「逃げろ、逃げろ!」

 兵士たちが血相を変えて逃げようとしていく。俺の噂はどんどん尾ひれがついているらしい。もはや、戦っても絶対に勝てない悪魔とでもみなされているようだ。


 とはいえ、大きくはずれてもないけどな。


 ――特殊能力【覇王の風格】発動。覇王として多くの者に認識された場合に効果を得る。すべての能力が通常時の三倍に。さらに、目撃した者は畏敬の念か恐怖の念のどちらかを抱く。


 ――特殊能力【覇王の道標】発動。自軍の信頼度と集中力が二倍に。さらに攻撃力と防御力も三割増強される。


 この二つの特殊能力がオダノブナガという職業のおかげで付与されている。

 俺は普通の人間では永久に出せないスペックで戦闘ができる。はっきり言って負ける気はしないというか、負けようがない。


 逃げるといっても、どうせ逃げる場所もろくにないから、敵兵は走ってぶつかって転んだりしていた。面倒だから雑兵まで斬るつもりはないが、大将首もこの調子だとないだろうか。


 すでにオルクスは敵の中に突っ込んで、敵の首をばんばん吹き飛ばしている。


「弱いぞ! 弱っちいぞ! 戦う気もないのに、こんなところにいるんじゃねえぞ!」

 まったくだ。戦場に来たからには殺す気で、せめて死ぬ気でいろと思う。そのどっちでもないなら最初から来なければいいのに、何も考えてないからこんなところまで出てきてしまう。


 俺は敵を探すのに苦労する有様だった。俺の周囲の連中が先に敵を討ってしまうし、そもそもみんな逃げていくので戦いづらい。


 途中で俺は馬を止めた。


「これは、もう無意味だな。勝っちゃってる」

 ほぼ同時に敵左翼のほうから「サンティラ家の当主を捕えました!」「摂政の勝利! 王国の勝利!」という声が響いてきた。


「もう、終わっちゃったんですかい? 戦った気すらしてないんですが」

 オルクスが不満げな顔を隠しもせずにやってきた。少なくとも勝者の顔ではない。

「終わったものは終わったんだ。しょうがないだろ。そのへんの雑兵を捕まえても売り物にもならんぞ」

 これが地方の戦いなら労働力として連れて帰るなんてこともやっているかもしれないが、王都も俺の本拠のマウスト城も人はどんどん入ってくるから労働力には事欠かない。


 そこに犬の耳をした男が歩いてやってきた。黒犬隊のドールボーだ。相変わらず、表情は酷烈だ。ただ、下卑てるというのとも違う。真剣に生きる方法をずっと考えて生きてきた者の目をしている。

 もう、これはこいつの生きた証みたいなものだから、死ぬまで変わらないだろう。


「将と思しき者に噛みついて三人ほど捕えてまいりました。どうしますか?」

「連れて帰る。しかし、王都にまで運ぶ必要もないか」



 俺の前にサンティラ家の者たちが引き出されてきた。後ろ手に縄をかけられて、なんともみじめだ。

 ここまで来ると、何人かが助けてくれと声を出した。どうやら宮廷の誰それと縁戚だから助けてくれなどと言っているらしい。


「レイオン、こいつらは命乞いはしたか?」

「はい。自分からひざまずいておりました。負傷したところを捕えた者はおりません」

「わかった。全員、首を刎ねろ」


 誰もそれを止めようとしなかった。それがふさわしいと判断したんだろう。


「サンティラ家の方々、誠に申し訳ないが、我が軍は有能な者はいくらでも取り立ててきた。しかし、無能な見方を取り立てる空きは永久にない。本当にそういう連中は敵以上に味方に損害をもたらずのでな」


 首を斬る担当のところに連中は連れていかれた。

 これで、サンティラ家は正式に滅亡した。


 五手先、六手先が読めないならともかく、一手先もわからぬのではどうしようもない。


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