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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
大聖堂との戦い

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74 援軍到着

 大聖堂直属の兵は意気軒昂でかなりてこずった。

 守りを何重にもしているから、潰走するまでには至らなかったが、攻撃を受けたところはかなり死傷者を出している。さすがに著名な将が戦死するほどではないが、俺の側についた領主の中で死んだ者がいた。

 ちゃんと死ぬまでついてきたな。あとで子供でも取り立ててやろう。


 俺は陣を動かずに様子を見守る。報告を受けるにとどまる。うかつに俺が出ていって、逃げ帰ったりすると、取り返しがつかない。


「今回はアルスロッド様も守勢なんですね」

 ラヴィアラが不安げに戦況の確認をしている。消耗の多い部隊に背後の部隊から兵を送るためだ。


「無理に突っ込むのはもっと後でいいからな。防戦のつもりと思えば、大僧正も一気に決着をつけようとはしない」

 あいつの目的は俺を滅ぼすことじゃない。少なくとも、今回の戦いで滅ぼすつもりはない。俺が退けばいい。それで大僧正の名前は上がる。王都周辺に君臨する第一人者は大僧正ということになる。


 うかつに全軍で突っ込んで、もしこちらに策でもあって、自軍が壊滅するとシャレにならない。だから、確実にこちらを追い詰めるような戦略をとる。あいつは必ず堅実な手をとる。


 先が読める奴は怖くはない。

 有能なだけの指揮官なら、俺は負けない。

 本当に怖いのは、強い信念で自分を固めている奴と、感覚だけで行動する天才肌の武人だ。こういうのは戦い方を変えないとやっていけない。

 幸い、王都周辺は理にさといタイプの奴が多い。それなら俺はやれる。


 夕方になり、敵軍はやっと完全に去っていったが、翌日もまた渡河を狙って攻めてきた。こちらは文字通り、水際で止める。もっとも、本当に渡河する意図を持っているかはかなり怪しい。


 相手としてはこっちから撤退するぐらいが、ちょうどいいんだろう。それでこの地域の盟主たる立場を見せつければそれでいい。


 その日のうちに来るだろうと思ってた援軍は来なかった。

 やっぱり、ちんたらやってるな。

 出発が遅いのか? まともに兵を組織できないというのはありうる話だ。まさか、おじけづいたなんてことはないだろうな? あるいは数が少なくて恥ずかしいからまだ出てこないとか。


 一応ヤドリギに確認してみたが、必ず援軍は来ると繰り返しただけだった。たしかにヤドリギまで疑っては作戦を立てること自体ができなくなる。


 ――あ~あ、明智光秀を信じたお前の失敗かもしれんな。光秀だからな~。

 あんただって、そのアケチミツヒデを重臣に使ってたんだろ。人のことばかりバカにするなよ……。


 俺は平気な顔で、必ず援軍が来るから持ちこたえろと繰り返した。

 大丈夫だろうかと思っている顔もちらほら見えたが、赤熊隊のオルクスを筆頭に親衛隊の人間は俺の言葉を信じきってくれていた。ありがたい。


「ただ、できれば三日目には援軍が来てほしいところですけどね。そろそろ向こう側につこうかと思う奴が出てくるかもしれませんぜ」

「ある意味、忠誠心を示すいい機会にはなりそうだけど、あんまり粛清ばかりする奴にはなりたくないし、無難に済んでほしいところだ」


 三日目は俺も兵士を率いて、防備に出た。

「いいか。しのぐだけでいい! 敵の首をとることは考えるな!」

 敵軍の勢いもこれまでより強い。これは勝てると考えたのだろう。あるいは、俺の側にまったく戦意がないことが明らかになったとでも考えたか。


 疑心暗鬼になるのを必死にこらえた。

 何があろうと不安な顔を俺は見せちゃダメだ。俺への信頼がゆらげば、兵士にかかっている職業オダノブナガのボーナスも消える。兵士たちには覇王の下についていると思ってもらわないといけない。


 けど、大軍が来るなら、連中もその動向ぐらいつかみそうなものだ。これだけ平然と攻撃してくるってことは、やはり何も援軍が来てないってことじゃないのか?

 くそ、せめてケララでも来てくれれば……。


 ――そして三日目の正午前。

 ヤドリギが俺のすぐそばに現れた。


「援軍が到着しました」

「到着? いったい、どこにだ?」

 喜び半分、失望半分っていうのが正しい。俺たちのところには来てないのだから、戦場に到着したってわけじゃないはずだ。


「背後です。敵の背後に国王陛下率いる四千五百の援軍が到着いたしました」

「は…………はっはっはっはっは!」

 しばらく間をおいて、俺は大笑した。


「そうか、そうか! わざわざ後背をつくように軍を動かしなさったか! それなら時間もかかるな」

「はい、あまり目立たぬように領主たちにも集合場所も王城ではなく、戦場の裏手に設定したとのこと」


 けれど、さっきの疑心暗鬼がもう一度来た。


「敵の後背か。まさかと思うが、摂政を討つなどと申されてはいないよな?」

 だとしたら、俺は本当に破滅だぞ。後ろ盾がいなくなれば、俺は地元に落ち延びるぐらいの道しかなくなる。それだって無事にすむかはなんとも怪しいものだ。


 表面上はハッセを丁重に扱ってきたが、俺が力を持っているのは事実だったからな。政治システムまではいじらなかったが、気に入らないと思われていても不思議はない。


 それにケララはもともとハッセの臣だ。

 今こそ俺を殺す好機だとでも言ったとしたら……。

 アケチミツヒデというのはオダノブナガを裏切るようにできているのだとしたら……。


 俺はヤドリギの目を見た。

 妙に時間を長く感じた。


 ゆっくりとヤドリギが口を開く。


「百に一の誤りもなく、摂政様へのお味方です。むしろ、もはや王家の御旗を立てて、攻め寄せておられます!」


 万感の思いで俺はうなずいた。


「わかった! 今から反撃に出る! 大聖堂軍を叩きつぶすぞ!」


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