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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
大聖堂との戦い

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73 反摂政連合軍

 すでに敵の兵力の中身は割れている。

 大聖堂が直接指揮する兵士は半分程度。

 そのほかは俺を快く思ってなかった王都周縁部の小領主と、軍隊を持っている都市の集まりだ。


 中には俺が来たことで所領を追われた者たちも復権をかけて、かなり戻ってきているらしい。そういう連中はおそらく大聖堂で匿われたりしていて、その時を待ちわびていたんだろう。

 あるいは、そういう連中が摂政と戦えと大聖堂を煽った面もあるかもしれない。王都近辺の連中にとって、この土地の支配者は、表になったり裏になったり、くるくるひっくり返っているという意識があるからだ。それだけ王統が移ろいやすかったし、摂政なんてものはもっと早く没落した。


 一時的に摂政が出てきても、どうせすぐに別の奴に交代する。そう考えていたって、なんらおかしくない。過去の歴史に学べばそういうことになる。今回も王ではなくて、摂政に対する戦いということになっているはずだ。


 そんな連中がそう深くもないソレト側の対岸にいる。


「一言で申し上げますと、反摂政派の連合軍ということですね」


 白鷲隊の隊長レイオンは敵将の布陣図を見ながら言った。

 俺たちの足下には、大きな地図が置いてある。中央には川の図。着色の暇がないから、青や緑にはなっていない。

 その図を見下ろしながら、将が全員立って、話をする。俺も同じように立っている。全員立って、地図を囲めば身分差も気にしなくていいという側面もある。


「へん、たいしたことないですぜ。相手は大半民衆の連中でしょう? こっちはそれなりの数、職業軍人で固めてるんです」

 赤熊隊のオルクスが八重歯を見せて笑う。それをすぐにレイオンがにらみつけた。


「民衆といっても、大聖堂の信者たちは武芸を好むような連中ばかりだ。弱兵であれば、ほかの領主を圧倒することなどできん。それにこちらだって全体の七割や八割が純粋な兵士というわけでもない。お前のようなおごる者が最初に滅ぶのだ!」


「いいんだぜ、強いなら強いほうが。強い奴とでなきゃ武功も挙げられねえからな。それにどんだけ強くたって、連中には武人の覚悟ってもんがねえ。長いもんに巻かれてるだけだ」

 抽象的な表現だったからレイオンがまた否定するかと思ったけど、レイオンはまだ口をはさまない。


「武人としての意地って言ってもいいかな。これを持ってるのは、うちの摂政様ぐらいのものなんだ。これがあるかぎり、敵の数が多かろうが、勇猛だろうがこっちが勝つ。オレもそこを信じてずっと戦ってきてんだ」

「持ち上げてくれたところ悪いが、俺も闇雲に戦ってるわけじゃないからな……。意地だけじゃなくて合理的にやってるんだ」


 武勇だけで勝てたら苦労しないぞ。まあ、オルクスみたいな豪傑がそう信じてくれる分には問題ないけど。


 地図には大聖堂軍という大きなくくりがあるが、それの布陣があいまいになっている。敵軍の細かな配置まで確認できてないところがある。大聖堂軍は半数以上を占めるから、これは少々困る。


 まあ、これもそろそろわかるが。


 作戦会議の中に、ヤドリギがぬっと入ってきた。足音もしないので、気づいてなかった将がびくっとしていた。今回はオオカミにならずに最初からライカンスロープの姿だ。


「例の軍は問題なく動きそうです」

 ヤドリギの報告に俺は少し表情をゆるめた。

「わかった。だったら、俺も思い切りやれる」

「それと、こちらに戻る途中に大聖堂軍の部隊指揮官も確認しました」

 さらさらとヤドリギは名前を書き連ねていく。


 案の定、大聖堂軍の中にも領主の名と思しきものが並んでいる。

 敵は混成部隊だな。落ち延びてきた奴をそのまま登用しているわけだ。


「よし、お前たち、今から布陣の最終確認をするが、大聖堂軍の中でも大物だけを狙え。外様は放っておいていい。こいつらが一番強い」

「それは普通は逆なんじゃないですかい?」


 オルクスが腑に落ちないという顔をした。

「通例はザコを攻撃して、敵陣を乱すのが自然なやり方ですぜ。わざわざ強いのにぶつかっちゃ、苦戦するだけだ」

「苦戦ならいい。負けなければいいんだ。援軍がここに来るからな」


「援軍? アルティア様が嫁いだブランド・ナーハムでも来るんですかい? 向こうのほうの土地からじゃ遠すぎる気が」

「まさに遠すぎる。マウスト城から軍を出すのも、今回みたいなのだと間に合わないしな」

「だったら、このあたりはもう何も残ってないと思うんですが」


「そんなことはないさ。とっておきのが来る。とにかく守れ。援軍が来た途端、こっちが優勢になるから、そこで攻めるだけ攻める」


 どうせ、援軍の行軍はゆっくりだろうから、それなりにしのがないときついだろうな。ここはケララにすべてをゆだねるか。


 ――明智光秀を職業にしている女にこんな重大事を託すお前はうつけだ。


 オダノブナガにまた、うつけ呼ばわりされた。うつけってこいつの口癖なのか。


 そこに急ぎの使いが入ってきた。


「申し上げます! 敵軍が攻撃の準備に入っております! 川を渡って、こちらを叩くのが目的かと!」

 兵糧ももったいないだろうし、向こうは先に動く。俺が逃げ帰れば、カミト大僧正としたら勝ちなのだ。それで政治的地位で俺より上に立つ。都市からの信頼も損なわずにすむ。


「わかった。みんな、よく守れ。とにかく足止めしてくれれば、それでいい」

 さて、正念場だ。

 収穫のために、とことん種をまいておこう。

「断言してやる。この勝負、守り抜けば、こちらの勝ちだ」



 やがて大聖堂が指揮する精強な部隊が突っ込んできた。

 これを俺たちの軍は長い槍で防ぐ。おおかた、川の中心よりわずかにこちらというあたり。川の流れはせいぜい膝下。


 槍を固めれば、そうそう突破はできない。とにかく、敵が退くまで守る。

 どうせ撤退してもすぐに次の部隊が攻めてくるが、これも守る。


 死者だけなら、攻め込む敵軍のほうが多いが、それでも攻撃はやまない。

 好きなだけ来い。むしろ、主力は疲弊してくれたほうがありがたいんだ。


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