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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
大聖堂との戦い

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72 大戦の布石

 会議の終わったあと、俺はケララを呼び出した。人払いはしている。

「いったい、どういったご用件でしょうか? なにやら密命のたぐいであるかのような気がしますが」


「ご明察。これは一言で言えば、ケララの立場でしかやれないことだ」

「それはあまりにも私を買いかぶりすぎかとは思いますが、そう言っていただけたことはうれしいですね」

 うれしいとは言っても、ケララはそれで笑みを漏らしたりはしない。ケララは徹底して無事人であり、政治家だ。稚気のようなものを見せることは本当にない。それこそ同衾した時ですら、ほんの微妙な違いが見えたぐらいだ。


「少し勘違いしているな。ただの世辞でこういう表現を使ったわけじゃないぞ。仮にここにお前とまったく同じ能力の人間がもう一人いたとしても、この仕事はお前にしか頼めなかった。お前がこれまで生きてきた人生に深い意味がある」


「私は愚鈍ですので、もっと具体的に教えていただきたいのですが」

 わずかにケララが頭を下げた。

「悪かった。少々、名案と思ったので、もったいぶりすぎた。では、話をたっぷりと聞いてくれ」


 ケララは俺の話を聞いている間もやはり表情は変えなかった。口をはさむのは無礼であると教育されてきた結果もあるのかもしれない。


「そのような大役、私に果たせるでしょうか? これは謙遜ではなく、あくまでも自覚なのですが、私は交渉力があるほうとは思えません。このように面白みのない性格ですので。そういう反省もあって、教養は身につけたのですがあまり変わりませんでした」


 俺としては、そうやって朴訥に自己評価を下すケララこそ面白いんだがな。


「お前の懸念もわからなくはない。ならば、こういう言い方を陛下に対してしてくれていい」


 俺は自分がいただく王のことを想像しながら想像しながらしゃべる。


「まず、陛下の武勇を示すことにより、民の信望が集まります。本格的に鎧に身を固めて戦場に出た王は長らく出ていないので、みな陛下をこれまで以上に偉大な存在と考えることでしょう」


 とはいえ、こんなことは賢いケララなら、どのみち話しただろう。王を持ち上げることに何者の許可もいらない。なので、大切なのはもう一つ目だ。


「これが上手くいけば、摂政に対して貸しが作れます。摂政も陛下に頭は上がらなくなります。これまで摂政が王都を支配していると思っていた者も、そんなものは思い違いであったと気づかれることでしょう。それこそ、陛下の価値を高める一手です――と、こういうことを伝えてくれ。足りないなら俺をもっと悪く言ってくれてかまわない」


 ケララの口元がわずかに動いた。俺の提案に多少なりとも動揺しているらしい。


「そのように摂政様を貶めるのは気が引けますが……そのように話せば陛下が乗り気になるとは思いますね……」

「だろう? 実際、俺も今はむしろ王に借りがほしいのだ。俺が檻の外の虎だと思われたくない。疑念を持った王がほかの勢力と結びつかれると厄介だからな」


「うけたまわりました。摂政様のお覚悟、よく理解いたしました」

「王に頭を下げるだけで、目下、最も危ない勢力に打撃を与えることができるなら安いものだ」


 計画は伝え終わった。


「悪いが明朝にでも、変装したうえで、王都に戻ってくれ。成功すればこちらの完勝になる」

「最善を尽くします。けれど、どうか上手くゆかなかった場合の策もお考えいただければと思います。私に摂政様の人生すべてをゆだねられては、その重さにつぶれてしまいますから」


 俺はケララに近づいて、左腕だけで軽くケララの肩を抱いた。


「むしろ、お前たちの未来は俺が支えてやる。だから、今は俺を信じてくれ。絶対に立派な国家を作ってやる」

 それをやろうと考えてるのも、できるのも俺だけだ。



 一夜明けて、俺は全軍をソレト川が作る平野のほうに進めた。王都からは一日程度の距離のところだ。


 ――いいな、ぬかるみのある土地だけは気をつけろよ。石山も攻める時に地面が悪くてずいぶん苦労したし、戦死者も出した。

 けど、それは城攻めだろ? 今度は会戦だ。攻めあぐねるなんてことにはならないさ。


 ――馬鹿者。その分、敵の半数ぐらいの兵しか今は用意しておらんではないか。こんなことなら、最初からもっと動員して遠征に出るべきだったのだ。覇王も桶狭間を除けば、大半は大軍で確実に圧倒する戦い方をしてきたものだ。

 そのやり方が正しいのはわかってる。安全に、安全に事を運ぶほうがいいだろうさ。けど、それだと手に入らないものがあるだろ。


 ――伝説を作りたいとでも言うんだろう。呆けた奴め。こっち以上のうつけ者だ。

 オダノブナガもだいぶ俺のことを理解してくれてきているじゃないか。


 数で圧倒して、今回ばかりは手も足も出ないだろうと見えたアルスロッドが敵を叩きつぶせば、多くの者が俺を軍神疑いなしと思う。

 この男に従うのも致し方なし、そう強く認識させる。それには善政を敷くとか言った、地道なことだけじゃダメだ。幸か不幸か、戦乱だらけの世の中だからな。


 ――神格化の大切さはわかっているが、せめてそういうのは鉄砲が大量生産できてからにすればいいのに……。

 愚痴りながらもオダノブナガは折れてくれたらしい。


 俺はゆっくりと兵を進めた。途中、俺に属している領主たちからだんだんと兵士を徴集した。ここで、拒否するのは危険と判断した連中は俺が負けるのではと恐怖しつつも、ちゃんと参加してくれた。

 ここで忠誠心を確認することもできるから悪いことじゃない。


 おそらく大聖堂の側、カミト大僧正はこちらが勝つ見込みがないから、のんびりやってきていると話しているだろうな。そう見えたっておかしくはない。


 結局、四日もかけて俺はソレト川の岸辺に布陣した。

 俺たちの川の向こう岸には大聖堂側の軍が集まっている。

 途中で兵を集めてきたけど、それでも数は敵が一万ほど多いらしい。


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