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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
大聖堂との戦い

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69 軍人摂政アルスロッド

「これを力攻めで落とすのは難しいです」

 従軍していたケララは俺に臆することなく、そう言った。俺の空気を読んで、攻めましょうと言われるよりこちらのほうがよほどありがたい。


「背後は切り立った崖になっていますので、攻められるのは正面からのみ。そこから弓矢を射かけられると、砦の大きさからしても短時間での攻略は常識的にはつらいかと思います」


「ケララ、常識をを守るなら、そもそも俺はここまで攻めていない」

「心得ております。摂政のそばで仕えておりますから」

 ケララは胸に手を置いてうなずいた。


「ですので、常識はずれの武功を見せていただくしかないかと。それが無理であるならば、早々と撤退するべきです」


「摂政が武功を立ててはならないという法はないからな」

 俺は、ゆっくりと馬を兵たちのほうに返す。


「いいか、お前たち。今から俺はこの砦を一時間で落とす。今、この国を動かしているのが誰なのか、はっきりと思い知らせてやる!」


 この声は自分を味方を鼓舞するだけじゃない。自分を盛り上げるためだ。


「これは俺のためへの奉仕にあらず。王国のための戦いだ! いたずらに前王や大聖堂におもねる小童こわっぱどもをすべて打ちのめす!」


 戦争中は将として冷静に、同時に兵を熱狂させねばならない。でなければ兵は強者にはならない。


「命を懸けられる者は声を上げろ!」

 オオカミを土地という土地から集めたようなものすごい声が轟いた。


 ――特殊能力【覇王の風格】発動。覇王として多くの者に認識された場合に効果を得る。すべての能力が通常時の三倍に。さらに、目撃した者は畏敬の念か恐怖の念のどちらかを抱く。


 ――特殊能力【覇王の道標】発動。自軍の信頼度と集中力が二倍に。さらに攻撃力と防御力も三割増強される。


 これで兵の運用を誤らない限り、勝てる。


「では、策を決めたいと思う。将たちは集まってくれ」

 俺は陣を仮に置いた村の屋敷で簡潔に策を話した。


「ラヴィアラ、お前の職業は射手だな」

「はい! アルスロッド様と一緒なら百発百中です!」

「自分の部隊に職業が射手の者は何人いる?」

「王都に入ってから、増強しましたので三十人はいます」

 それだけいれば問題ない。


「わかった。ラヴィアラはこちらに矢を射かける砦の連中を順番に射殺しろ。下から見上げる攻撃は難しいが、お前の技術ならやれるはずだ。一射一殺のつもりでやれ」

「承知しました」

 ラヴィアラの顔から笑みが消える。ただし悲観的なものじゃない。冷たい炎が胸に灯っているのを俺は感じる。


「その間に俺はみずから突っ込んでいって、砦に侵入する。お前がはずしまくれば、俺も死ぬ。この命、お前に託す」

「はぁ。もうちょっと安全な橋を渡ってほしいですけど、アルスロッド様はこういうお方ですからね」


 その横でケララは黙って、聞いている。

「ケララ、お前は部隊を率いて、裏に回りこめ。崖になっているといっても、砦の連中は逃げ道を用意はしてるはずだ。前から攻められれば逃げ出そうとする奴が出てくる」

「それを殲滅すればよろしいのですね?」

「話が早い。それでこの戦、完勝できる」


 さあ、勝負に出るか。オダノブナガ、俺なりの天下の取り方を見せてやる。


 精鋭を率いて、俺は砦の正面の坂に立つ。

 折りになった坂の上に城門がある。何度も折りを作っているのは、上から弓矢で狙いやすくするためだ。

 けど、向こうがこちらを射れるなら、その逆ができるのも道理のはず。


 ふっと、兄に命じられてナグラード砦に入った時のことを思い出した。

 あの時は逆に砦を落とされかけたから、命懸けで一人で敵を追い払うしかなかったな。


 それと比べれば、こんなに味方がいる。ずいぶんと難易度は下がっているじゃないか。


「よーし、行くぞ! 摂政の力を見せつけてやるからな!」

 俺は馬を駆る。坂を突き進む。


「我こそはサーウィル王国摂政、アルスロッド・ネイヴル! 賊軍を討ち果たしに来た!」

 その言葉に城兵が表情を失っているのがわずかに見えた。俺が直接来るということが理解できなかったに違いない。


 自分が安全であると思い込むことは今にも沈む船に乗っていると同じ――これは何の兵法書に書いてある言葉だったか。

 砦に詰めているからしばらくは持つだろう、そう信じきっているなら、そこを突き崩す。


 城兵が弓矢を構える。

 ラヴィアラ、やれ。やってくれ。


 弓矢を放とうとしていた城兵の顔面に長い矢が刺さった。

 城兵はゆっくりと後ろに倒れる。隣にいた兵士の顔がこわばる。


「これが摂政の射手の実力です! 次に射抜かれたい人は誰ですか?」


「よくやった、ラヴィアラ!」

 続けざまに弓矢が飛ぶ。こっちはなかば決死隊だから、弓矢を受けて落馬する者もいるが――それよりさらに多く、敵の城兵が射られている。


「もっと弓兵を用意しろ!」「こちらのくるわの弓兵が足りません!」


 狼狽の声が砦から響く。弓兵がいなければ、こちらは容易に城門までたどり着くからな。


 もたついているうちに、こちらの先駆けの兵士たちが城門にたどり着く。

 魔法を使えるものが火球で城門に火をつける。その横から、脚立を置いて中に侵入する者が出てくる。


 今の俺の部隊は、オダノブナガの特殊能力で大幅に強化されている。

 そうだな、十五人も入ってしまえば、俺たちの勝ちだ。


 しばらく身を守りながら待っていると、内側から城門が開いた。

 味方が開いたのか、敵が俺を殺しに出てくるのか。どっちにしろ、好機には違いない。


 開いたのは、自軍のほうだった。


「摂政様! どうぞ、お進みください!」

「わかった! 俺が政治家ではなく、軍人であること、とくと見ていろ! 全軍突き進め! 壊せるものはすべて壊せ!」

 俺に続いて兵士が雪崩れ込む。


 ――やりおったな。賭けに勝ちおったわ。

 オダノブナガ、賭けっていうほどのことじゃないさ。あんたの世界には職業なんて概念はなかったんだろ。

 自分の能力と味方の士気がおおかたわかれば、算段はつく。


 この時点で勝負自体はあった。本当に一時間で城も落ちるだろう。

 あとは、俺個人がどれだけ武勇を見せられるかだな。


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