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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
大聖堂との戦い

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67 進軍続行

 俺の言葉に将たちの目の色も変わっていた。

 この戦いで負けたらどうなるだろうと危惧している者ももちろんいる。

 けれど、祭りの前日のように、やる気に満ちている者も多い。


 ラヴィアラなんかはわくわくしている側だ。今にも弓矢をどこかに打ち込みそうなぐらいだった。


 俺たちは謀略でのし上がったというより、眼前の敵を一つずつ打ち倒して、ここまで来た。戦場でしか咲けない花みたいなものだ。


「アルスロッド様、ラヴィアラは弓の部隊を率いて、存分に活躍してみせますからね! 戦場に出ないと腕がなまりますから」

「ああ、もちろん、大将首をとってきてくれ。でもな――」


 俺はラヴィアラの前に行くと、ぽんぽんと軽く肩をかき抱くようにした。


「絶対に生きて戻ってこい。お前は母親だからな」

 ラヴィアラの顔が途端に神妙なものになる。

 娘のことを想ったんだろう。それが親として自然な反応だ。政務中は毅然とした姿勢でいるが、時間があれば娘のそばにいてやっていることを俺は知っている。


「子供には両親がいたほうがいい。とくに俺たちの子はどうしたって権力争いに巻き込まれるからな」

「はい。セラフィーナさんの男の子ともども立派に育ててみせますからね」


「あと、ラヴィアラには、もっと子供を産んでほしいし……」

「アルスロッド様、そういうことはこの場で言わないでもいいじゃないですか!」


 ラヴィアラが顔を赤らめて抗議する。その後ろで、諸将の大きな笑い声が響く。

 すまんな、ラヴィアラ。戦の中で、下卑たことを言って場を盛り上げるのも、常套手段だからな。ここは大目に見てくれ。


「では、せっかくですので、ラヴィアラからも一つアルスロッド様に要求があります」

 ここで、こんなことを言えるのが乳母子のラヴィアラらしい。俺が成長したのと偉くなったのとで、ラヴィアラの姉の立ち位置は薄れつつあるけど、まだたまに姉らしさが顔を出す時がある。


「アルスロッド様はもっとお子さんとの時間をとってください。激務なのはわかりますが、お願いします。近頃は、『パパはどこ?』とお子様がお尋ねになったりする時もあるんですよ」


「うっ……。今、それを持ち出すか……」

 自覚はないことはなかった。ただ、どうしても政務を優先してしまっているところがあった。


「今、道を誤ればお前たちもみんな路頭に迷いかねないだろ。これは摂政としてやるべきことをやっていただけで……」

「はい、そうですね。ですが、母親だけに任せていると、父親の言うことをまったく聞かない子に育ってしまいますよ。そうなった時に文句を言われてもラヴィアラは一切関知しませんからね」


 また大きな笑い声があがる。ラヴィアラに俺まで生贄に巻き込まれてしまった。


「じゃあ、この戦が終わったら、考えることにする」

「はい。約束を違えないでくださいね?」

「摂政に二言はない。俺の後継者になっていく者たちだからな」


 大聖堂を叩けば、多少の余裕は生まれるはずだ。そうだな、三年ぐらいは平和が来るだろう。それぐらい持ってもらわないと困る。


 息子と娘が物心つく頃には前王の勢力は別として、国の東側はある程度平定しておきたいところだ。さて、どうなるかな。


「よし、俺と共に進む者たちは徹底して戦え。進軍するぞ!」

 ときの声をあげて、俺たちは大聖堂から背を向けて動いた。



 大聖堂の情報収集ももちろん怠ってはいない。移動中、ラッパから小刻みに連絡を受けていた。

 俺の予想どおり、大聖堂は俺の悪政を指弾して、俺が攻め入っている領主と挟撃する手筈らしい。

 王都には王のハッセがいるが、それには弓を引きづらいだろう。連中が倒したいのは王じゃなくて俺だからもちろんそうなる。


 反乱軍が王都を長く占拠すれば、間違いなく王都の市民から不平不満の声が上がる。これは歴史の必然だ。どうしたって、力で王都を制圧するしかないから、市民の自由は抑圧される。

 それがゆきすぎると、市民は反乱軍の追討部隊を熱望する。その土地の住人を敵にまわしたら、戦局は大幅に不利になる。

 カミトとかいう大僧正はその程度のことは絶対にわかっているはずだ。なので、俺をつぶすことしか考えてない。


 といっても、滅ぼせるとまでは思ってないだろう。自分たちに有利な講和条件を引き出せれば、大聖堂側の勝ちだし、彼らに味方する都市も納得させられる。


 俺はそんな単純な手打ち式をやるつもりはない。

 反抗的な大聖堂派の都市に攻撃を仕掛けて、大聖堂が戦うしかないようにする。


 徹底した争いになれば、俺は勝つ自信はある。


 ――お前はうつけ者だ。お前はうつけ者だ。もう一回言ってやるぞ。お前は覇王が若い時以上のうつけ者だ。

 行軍中、やたらとオダノブナガに言われた。頭に語りかけてこられるので、なかなかうるさい。


 あんただって、宗教勢力には手を焼いたんだろ? あいつらは領主と違う論理で動いてるところもあるし、変な結束力も経済力もある。


 ――わかっている! 一向宗のほうが武田よりもよっぽど面倒だった。あいつらは民を一丸にして向かってくるからな。領主はそこまで民を純粋に戦に向かわせるほどの力は持っておらん。なにせ、死を恐れんようにしておるんだから、無茶苦茶だ。戦争というのは死を恐れる者同士でやることであるのに、その法を連中は破っておる。


 やっぱりよくわかってるじゃないか。

 敵は強い。だからこそ、先手を打つ。


 都市というほどの規模もない、周囲を環濠で覆った町が俺たちの前に立ちふさがった。

 木の橋もすべて上げて、守りに入っているが、濠自体は狭い。ほとんど溝のようなものだ。


「さて、先駆けは誰がやる? 完全に俺たちに歯向かうつもりだから、容赦はしなくていい」

「ここはやらせてください!」


 真っ先に声を上げたのは、親衛隊の一つ、黒犬隊の隊長ドールボーだ。

 ワーウルフの男で顔には無数の傷跡がついている。もともとブランタール県出身のゴロツキ同然の身だったが、そこから仲間を集めて傭兵稼業をやるうちに実力をつけてきた。


 その傭兵たちが途中から俺に仕えるようになり、直属の部隊になった。そこに兵士の補充をして黒犬隊にした。そんな経緯から、親衛隊の中でも自立性が高いと言えば高い。もっとも、俺を見限るメリットなんてまずないだろうが。


「その代わり、金品のほうも奪えるだけ奪わせてほしいんですが。長らく礼儀正しくしないといけない戦いが多かったもんで」

 まともな軍人というよりは悪党の顔だな。出自からして、そりゃそうか。


「ああ。今までよく我慢してたな。ここは好きなだけ暴れていい」

 俺としても、こいつらの本領を一度目にしておきたかった。


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