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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
新王擁立と摂政就任

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62 妻たちのサロン

 ヤーンハーンの顔を見るに、たしかに俺に対して一目置いているという顔になっていた。


 それは摂政だからおそれ敬うという態度とは、また異なっていると思う。

 もっと真理を知っている者に対する敬意を感じさせる。


 芸術家は古今、相手が権力者というだけでは本当に屈することがない。美を解さない権力者は美の前では使用人程度の意味しか持たないからだ。


 だからこそ、真の覇王になるには美の本質も知らなければならない。偉大な王たちは、審美眼も備わっていて、相当なコレクションを持っていたはずだ。

 その予行演習にはからずもなったかもな。


「ところで、ヤーンハーン、このお茶の中に薬を入れたりはしていないか?」

「いえ、そんなことは決してありません。たしかに薬商をやっているとはいえ、麻薬を入れるようなことは茶式への冒涜に当たりますので!」


「そうか。疑ったわけではないんだ。それならそれでいい」

 薬の力だけであんな体験ができるとも思えないしな。もしも薬にそのような効果があったとしても、俺が特殊な職業を持っているという事実はどちらにしろ奇跡の領分だ。


「また、大きな決断をしなければならない時など、この茶式とやらをやらせてくれ」

「はい、政治家の方も多くが利用されてきましたよぅ」

 竜人の女はほがらかに微笑んだ。


「わかった。ところで、そなたはずいぶんと多くの王都の政治家とも会ったことがあるかと思うが――」


 俺は王都の支配を固めていくうえで何が必要か聞いてみた。


「これはあくまで商人の言葉ですがぁ――」

 ヤーンハーンはゆっくりと、けれど、なかなか興味深いことを答えた。

 やはり、ただの者ではないな。政治家としてもこの竜人の女は優秀だ。


「ヤーンハーン・グラントリクス、いずれ重用させてもらうことになると思う。よろしく頼むぞ」


 その後、ラヴィアラたちも茶式に出たが、「苦いし、よくわかりませんでした……」と渋い顔をしていた。


「エルフは草花には通じていそうだと思ったけどな」

「だからといって苦いものを好むわけではありませんよ……」



 官吏登用試験の結果、正式に第一弾の役人が確定した。

 多くは政権の末端に位置する役人として働くことになる。


 そして、彼らを派遣すると同時に早くも第二回の試験についても準備を進めていた。ケララとラヴィアラに手伝ってもらっている。


 ケララは問題の選定。ラヴィアラはどっちかというと雑用だが、その代わり、武具について詳しいので、そういった問題をあえて出すために知恵を借りている。


「こんなに何度も試験をしなくてもいいんじゃないでしょうか? そこまで役人を増やさなくても、政権は機能していると思いますが。昔からの役人もある程度残っていますし」


「ラヴィアラ、俺は昔ながらの政権を維持するためだけに役人を増やそうとしているんじゃない」

「摂政がお選びになった官僚が増えれば、相対的に摂政の影響力が王城に置いても、増すことになります。摂政はそういったことをお考えなのかと思います」


 ケララがあっさりと真相を見抜いた。

 ラヴィアラはバカにされたような形になったと思ったのか、ちょっとむすっとしていた。


「どうせ、ラヴィアラは武人ですよ」

「そう、すねるな。ケララに悪意がないのはお前もわかるだろ」

 ラヴィアラの頭を撫でて、なだめた。


 もし、摂政が変わったからといって、新摂政が新しい政策をいくつも打ち出せば必ず不満が出る。その不満は政権の不安定化に直結する。


 歴史をひもといてみても、急進的な政策を実行したせいで、多くの反発を招き、あっさりと滅亡した政権はいくつもある。


 たとえば税金が増えるような変革は民衆ですら猛反発する。そんなものを喜んで受け入れる者はいない。ほかにも王都周辺の貴族の利権と対立するような政策もまずい。


 そもそも人間というのは保守的なので、変化そのものを嫌がることも多い。今の王であるハッセなんてその最たるものだろう。


 では、どうやって俺の権力を拡充していくかといえば、俺を支持する人間の割合と数を増やしていけばいい。


 既存の役職や制度そのものには変更を加えない。けれど、ちょっとずつそこの担当者を俺の息がかかった者に変えていく。

 

 ハッセやその取り巻きたちは制度が変わったりしてないから、安心している。これまで摂政についた有力な貴族のように、あくまでも王朝を庇護しつつ、権力を保っている者と考える。


 気づいた時には俺がすべてを操作できるような形にする。

 試験であれば、採用するのは俺の故郷の人間というわけでもないから、同郷者の優遇という批判すら来ない。

 前王が何も仕掛けてこないままということもありえないだろうし、早目に勢力を固めておくぞ。


 と、そこにルーミーとセラフィーナが入ってきた。


「あっ、本当に試験問題を考えてらっしゃるんですわね」

「お姫様が見学に来たいということで連れてきたわ」


 セラフィーナが何か企んでるような顔で笑っていた。


「これはこれは妻たち、何かご用かな」

 わざと大仰に、冗談めいたふうに言った。


 それにしても俺の奥方も立場のせいとはいえ、増えてきたな。

 出産後、マウストで休んでいるフルールを除けば、妻が揃ったことになる。ケララは正式に側室ということにはなっていないが、そのことは公然の秘密になっているし。


「そうね、あなたはこんなに美しい奥方をはべらせて実に幸せ者だわ。お姫様ももっと美しくなっていく年頃だし」

「はい、わたくし、摂政様の隣に並んで恥ずかしくないようになりますから!」


 ルーミーはセラフィーナと手をつないで楽しそうに笑った。ルーミーもセラフィーナになついているらしい。


「しかも、今日はマウストからも奥方が一人お越しになったわ」


 後ろを向いてセラフィーナが目くばせする。

 フルールが遠慮がちに入ってきた。

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