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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
新王擁立と摂政就任

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56 官吏登用試験終了

 官吏登用試験は当初の予定よりもずっと多くの参加者が現れた。


 会場には試験官として、学者たちを配備している。ズルをする奴が現れないとも限らないからだ。

 もともと王都では学者身分の試験は開始されていたから、試験の形式自体はそれに準じた。参加者の数が文字どおり桁違いなので、会場の数は増やされることになったが。


 試験当日は俺もケララやラヴィアラと会場の視察を行っていた。

 悩んでペンを鼻に乗せているような若者もいた。


「皆さん、悪戦苦闘してらっしゃいますね」

 他人事のようにラヴィアラが言った。


「ちなみに問題はこんなのだ。ラヴィアラは解けるか?」

 ラヴィアラはすぐに険しい顔になった。

「まったく、わかりません……」


「俺の生え抜きの家臣でよかったな。今から仕官するとなると大変だったぞ」

 そうだとしても、ラヴィアラなら弓の腕前を披露して、そっちで仕官しようとしただろうが。


「こんなの、わかる人がいるんですか、ケララさん?」

 ラヴィアラが嘆息しながら尋ねた。ケララは淡々とした表情をして、問題用紙をラヴィアラから受け取った。


「うろ覚えの場所もありはしますが、多分ですが七割ほどは答えられるかと思います」

 ケララは自分を大きく見せようとするところがないから、七割というのも正直な意見だろう。


「これが七割……。やはり、頭の出来が違いますね……」

 ラヴィアラはしょんぼりしてしまった。

「これじゃ、アルスロッド様にあきれられてしまいます……」

「別にあきれないから安心しろ。親衛隊の中には文字もまともに書けない奴も混じってる。適材適所だ」


「そうです。それに、ラヴィアラさんも利発ですよ。ただ、私は昔からこういった教育を受けてきたから、得意なだけです」

 王家に近い立場の家臣にとっては、教養は必須だからな。あまりに粗野な者が王のそばに仕えていると、王の品格自体が疑われてしまう。


「なんだか、慰められてしまいましたね。けれど、こんな難しい問題を解ける人なんてどれだけいるんでしょうか? これを千人や二千人ができるとは思えません」


「二千人も新規に官吏を必要とはしてないから、大丈夫なんだ。五十人も選ぶことができれば、第一回としては上々だ」

 役人にまったく教養がない奴がつくと、支配される側とあつれきを起こすことがよくある。そもそも、基礎的な知識があったほうが業務もまわしやすい。


「ですね。それに商人階級も最近は裕福になって、経済学だけでなく、古典なども学ぶ人も増えました。子弟を大学に通わせる人も多いですし」

「ケララと話をしていると、話が早くて助かる」


 そのとおりだ。これまで、役人と距離があった層から能力のある者を選び出して、俺の配下につける。厳密には王の下だが。


「国を動かすには武人だけじゃダメだからな。必ず、官僚層がいる。その官僚層を作る第一段階にする。でないと、国作りの時に困るだろ」


 国作りという言葉の時だけ、わずかに声を強くした。


 俺が主導する国をいつか作ってやる。

 むしろ、もうそこまで進むしか俺に未来はない。少なくとも、ネイヴル家に未来はない。


 過去も、中途半端に覇権を握った者は暗殺されたり、反乱軍に負けて没落したりして、消えていった。偉くなりすぎたがゆえに目の敵にされるせいだ。


 一方で、今の王朝は軍閥やら大領主やらの力を借りないとやっていけないとはいえ、長く続いている。それは彼ら初代の王が王国をはっきりと作るところまで休まずに仕事をしたからだ。


 摂政でとどまっていれば、いつか俺を倒そうとする奴に負ける。俺の目の黒いうちは大丈夫でも、二代目で持つかどうか。


 ――正しい判断だな。覇王のいた世界でも、次の代になったら、いきなり反乱が起きたようなことがある。代替わりというのは隙が生まれるからな。秦の始皇帝が死んだら、もう国は機能しなかった。平家だって清盛があと十年生きてれば、もう少し戦えたかもしれぬ。


 相変わらず、あんたの単語は全然わからないけど、言いたいことはよくわかるよ。


 まだ子供も幼いけれど、どうせなら跡を継がせてやりたいしな。


「アルスロッド様、今日はとくに遠い目をしていらっしゃいますね」

 ラヴィアラに指摘された。

「まるで、何十年も先の行く末のことを考えていらっしゃるようですよ」

「まさにそんな先のことを考えてたんだよ」


 ラヴィアラは、「ほえぇ……」と呑気な声を出した後、「摂政になると大変ですね」と言った。

 摂政じゃなくても、俺はそれぐらい考えてたけどな。


 現実可能性は別として、領主なら一度は考えるはずだ。

 自分の国家を作りたいものだな、と。


 そのチャンスをこうして手に入れられたんだから、有効活用させてもらう。



 試験結果は二日ほどで出た。

 七割が正解だった者は約八百五十人中、三十八人だった。


 ひとまずちょうどいい数だろう。そこから二次試験として面接を課した。

 一応、すべて摂政の俺が顔を見た。ほかにもケララと財務官僚のファンネリアなどを呼んでいる。俺がわからない範囲のことをカバーしてもらうためだ。


「国を富ますにはどうするべきだと思うか? 何を言おうと罰することはないから好きなように答えてくれ」

 わざと抽象的な質問をしてみた。


・経済を大きくするべきです。

・土地を開発し、農地を増やすべきです。

・早く戦争を終わらせて、戦争にかかる費用を抑えるべきです。


 なかなかバリエーション豊かな意見が出た。妥当性は別として、はっきりと意見が言えた奴は通すことにした。


 その中にこんな意見を言う奴がいた。


「私が作った武器を使えば、戦争に勝てます。狩りも便利にできます」

 ひげ面で目のらんらんとした中年男だった。

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