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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
新王擁立と摂政就任

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55 王の妹との結婚式

 官吏登用試験の発表が町などの掲示板で行われると、かなりの反響があったらしい。


 成績がよければ誰でも役人するというのは、相当異様な内容だろう。

 もちろん、身分が低ければ教育機会も少ないから合格は難しいだろうが、理論上はたとえば、神官としては下級だが賢い人間などが役人になれる可能性がある。


 一方でなかば世襲的に役人などの地位を保っていた王都近郊部の中小地主みたいなのからは不満が出た。


 その不満に対しては、こう答えた。

「試験でいい点をとってくれれば、何の問題もなく採用する」


 世襲制だけでは、人間の質を維持するのに限度がある。

 完全な実力主義というのも大変だが、ほどほどに流動性があるほうがおそらく社会も活発化するだろう。


 というか、俺の家臣団自体が譜代の家臣なんてものはそんなに多くない。

 これは当たり前で、元のネイヴル家の領地にいた家臣の数など知れているのだ。領土が爆発的に広がっているのだから、いろんな人間を吸収するしかない。


 新王ハッセからも「こんなことをして上手くいくのだろうか……」と不安そうなことを言われたが、まあ、変なことをしてほしくないという感情はわかる。

「陛下、これまで王は何度も王都を追われてきました。それはなぜかといえば、既存のシステムに寄りかかっていたからです。そのシステムが不完全であるから、敵勢力に敗れてしまったのです」


「なるほど……。それは正しいかもしれんな……」

「なので、まずは優秀な人間をふるいにかけて見つけるべきです。極論、陛下に忠誠心があると言ってるだけの輩よりは、仕事ができるけれども裏で舌を出している輩のほうが、陛下の役には立ちます」


「そんな、いつ寝首をかかれるかわからないような者を使うのは――」

「もし、本気で忠義に厚い者ばかりなら、陛下が隠遁生活を送っている時にそばに来ていたはずですが」


 ハッセは黙ってしまった。

 それが答えだ。大半の領主は結局、王家を見限っている。王家を滅ぼすほどの気概もないが、かといって本気で没落している側につくつもりもない。


「必ずや、王都近辺の土地を大きく発展してみせます。それこそパッフス様たちの勢力の成長を防ぐ術なのです」

 あくまでも、ハッセのためと言っておく。

「わかった。それと、妹との婚儀の日程だが……」

「はい。そちらも進めていますので」


 ルーミーには同じ女子のケララが勉強係、セラフィーナがもろもろの教育係ということになった。

 たまに顔を出しているが、ルーミーはなかなか勉強熱心なようだった。

 その時も熱心に古い本に目を通していた。


「摂政様、古典の本がほしいのですが、数が少ないのか見つからないのですわ。ご存じないでしょうか?」

 言われたのはかなり専門的なものだった。俺も読んだことはない。

「ルーミー様は実に優秀ですよ。修道院での基礎が実によくできております」

 ケララもかなり感心しているようだった。


「ルーミー様は素直なの。だから、飲み込みも早いのよ」

 横にいたセラフィーナも同意していた。

「あとは、少し世間知らずなところがあるけど、そこはわたしが教育するわ。旦那様の妻として恥ずかしくないようにね」

「わかった。期待してる」


 セラフィーナが俺の期待を裏切ることなんてないからな。



 そして、三か月後。

 俺はルーミーとの結婚式を挙げた。

 さすがに王の妹と摂政との婚儀ということで、参加人数もかなりの規模にのぼった。

 とくに地方領主などは、この婚儀を祝わなければ、敵と認定されかねないので必死なのかもしれない。


 婚儀の前に着飾ったルーミーとあらためて会った。

「あっ、摂政様。いえ、今日からは、あなた、とお呼びしたほうがよろしいかしら」

 王城の庭に咲いている花がすべて恥ずかしくなって顔を隠すほどの、美少女がそこにいた。


 ティアラも宝石がちりばめられていて、実に豪華だ。しかし、悪趣味ということではなく、ちゃんと清楚さを表現することすらできていた。


「おかしいな。もっと、あなたは子供っぽいところがある方だと思っていたのだけど、こんな立派な貴婦人になっているとは」

「わたくし、セラフィーナ様とケララさんにたくさん教えていただきましたわ。今、わたくしが輝いているとしたら、お二人のお力のおかげです」

 ほがらかにルーミーは微笑んだ。


「弱ったな。あなたがそうもかわいいと、俺がほかの王の家臣から嫉妬されてしまいます」

「お上手ですこと。わたくしもあなたにふさわしい人間になれるように努力してきたのですわ。無学な人間で恥をかいてしまうのはこちらですから」


 奥でセラフィーナも笑っていた。

 どう、よくやったでしょとでも言いたげだ。


 これで王都での俺の権力はもう一段階上がったな。


 もっとも、今はそんなことより、この美しい娘を妻にできることを素直に神に感謝しよう。


 ――覇王にも感謝してもよいのだぞ。この覇王がいなければ、領主の弟という立場で終わっておったかもしれんからな。


 いきなり口をはさんできたな。わかってるよ、お前にも感謝してる。


 たしかに、俺が神に感謝するというのも、ちょっとおかしいか。


「では、行こうか。ルーミー」

 俺はルーミーの手を取った。

「はい、あなた。わたくし、よき妻になりますわ」


 俺はゆっくりと婚儀を神に誓う役割の神官のほうへと歩いていった。


 正式な婚儀の席では、二人がくちづけを交わすことになっている。神官がくちづけをするように言った。


「あなた、うれしいですわ」

「君も必ず幸せにする。これはそのための誓約のキスだ」


 キスの瞬間、俺は王家と婚姻関係で結びついた。

 王という権力にも一歩近づいたと言っていいだろう。

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