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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
新王擁立と摂政就任

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54 試験をやってみる

 その後、ルーミーをセラフィーナに紹介した。

 ルーミーはセラフィーナにも、物怖じせずにいくつも質問を浴びせたりして、セラフィーナを少し困惑させていた。

 正直、あのセラフィーナがたじたじになる姿なんて見たことがなかったので、傍目に新鮮ではあった。本人にとってみたら大変だろうが。


 二人きりになった時、セラフィーナは愚痴をこぼした。

「小娘とは聞いていたけど、ああいう子が来るとは思わなかったわ……」

「そうだな。あんなに純真な人間とは考えてなかった」


「わたしにはあの子が妹にしか見えないわ」

「奇遇だな。俺にもそう思えた。アルティアとは全然違うタイプだけど」


 セラフィーナは、ふぅとため息をついた。

「旦那様はあの子を妻にしないといけないのよ。なかなか骨が折れるかもね」

「君がいろいろ教育してやってくれ」


 正直なところ、王都を手に入れたことで業務量は激増している。

 周辺の情勢だって落ち着いているとは言いがたいし、縁組を喜んでいる余裕もない。


「わかったわ。でも……出家していたわけじゃないとしても修道院に入っていた、あんないたいけな子でしょ。初夜のことを教えるのは、罪悪感があるわね」

「そういうのは……もっとずっと先でいい……」

「でも、嫁ぐのに早すぎるという歳でもないとは思うけど」


 そりゃ、政略結婚なら十歳にも満たない少女が輿こし入れすることだってある。

 でも、妻と見れるかと言えば、また別の話だ……。


「あら、旦那様のほうが照れちゃってるのね」

「君に変なところを見られたな」


「けど、安心したかも」

 セラフィーナは俺に体を近づけてきた。


「正室の座は明け渡すけど、旦那様のことを一番に想ってるのはわたしだから……」

 少し憂いを帯びた瞳。

 セラフィーナも苦しい決断だったのだとあらためて感じた。


「少なくとも、君に注ぐ愛の総量が減ったりはしないと誓う」

 俺はセラフィーナが安心できるように自分の胸に近づけた。



 摂政になって、第一にやるべきことは何か、ラヴィアラとケララに諮問した。

 ちなみに二人とも、俺が摂政になるのとほぼ同時に所領が加増され、名誉職的な地位も与えられている。


「ラヴィアラは人材育成だと思います」

「差配する土地が広がりました。代官や総督には側近を置くとしても限りがあります。使える者は拾い上げるべきかと」


 ケララには事前に聞いてもいたし、だいたい答えはわかっていたが、ラヴィアラも似たことを答えた。


「わかった。優秀な者はどんどん登用しよう。まあ、形式上、王家に仕える者となるだろうけどな」

 摂政はあくまでも王の補佐をする役目だ。最初から露骨に王家の支配地域を牛耳るのはあまりよいことじゃない。


「提案してもよろしいでしょうか」ケララが口を開く。「都市の支配に関しては、その都市の商人を役人として使えば、土地に詳しいので効率がよいかと思われます。無論、商人側に立ったことばかり言う危険もありますが」


「そうだな。ファンネリアみたいな財務に明るい者がいれば使ってはいきたい。まだまだ軍人も必要だが、こちらのやり方に従わない者なら取ってもしょうがないし」


 現在、俺がもっている軍隊は全国規模で見ても最も統率がとれている自信がある。

 だが、現在の数のままでは全国をとれない。人員を補充する間に有象無象が増えてくる。そういうのをまともな兵にしていく必要は出てくる。


「それにしても、まだまだ役人は必要だな」

 今度はラヴィアラが手を挙げた。なぜか、一瞬、ケララをにらんだけど。何か対抗心みたいなものがあるのか……?


「神官の方であれば知識もありますし、そういった方を使うのはどうでしょうか?」

「なるほどな。悪い発想ではないか」

 金の勘定や折衝の能力はまず文字が読める層が必須だ。そのあたり、神官連中なら最初にクリアしている。

 だが――


「神殿もいくつか派閥があるからな……。上手く使わないと危ないことになるな……」


 ――ならば、科挙とかいうのを試してみるか?

 オダノブナガが変なことを言った。


 なんだ、そのカキョっていうのは? 何のことかさっぱりわからない。


 ――わかるように言えば、紙の試験だ。試験をやらせて成績のいい者を登用する。といっても、やったことはないぞ。海を隔てた国でやっていたという方法だ。上手くいけば、お前に直結する官僚層を作れるかもしれん。上手くいくかの保証まではできんがな。


 いや、それは面白いかもしれないな。

 試験の成績だけなら、縁故も何もない。純粋に能力が高い奴が、少なくとも試験でいい点が取れる奴がわかる。


 よし、やってみよう。それ一つで致命的な問題になるとも思えないしな。

 最後の問題に「何か提案できる策を書け」とでも入れれば、いいアイディアをいただけるかもしれないし。


「二人とも、一つ、思いついたぞ」

 職業が考えたことは、俺が思いついたことと同じだ。

「王都で試験をやる。その試験で役人の一部を決める。参加は自由だ。出題範囲は経典の有名どころと、金勘定に関する問題。それと地理と歴史の知識、ついでに古典の教養も入れるか」


「えっ……? 試験ですか……!? まるで大学みたいですね……」

 ラヴィアラはぽかんとしていた。


 たしかに大学みたいかもしれない。


「ずいぶん変わった方法ですね……。前例がないので、なんとも言えませんが……」

 ケララはこういう新しすぎることには混乱するらしい。

 しかし、俺はどのみち新しい政治体制を作るつもりではあるからな。


「やるぞ。どうせ、代々、家を継いでるだけの貴族層に役人をやらせても信用できんし、逆に貴族層でも賢い奴がわかればそいつを使ってやれる」


 こうして、俺の一存で官吏登用試験が決まった。

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