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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
王都突入へ

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50/170

50 王都に迫る

「こんな県は前座だ。俺は皇太子を王にするため、王都を目指す!」


「うおおおおっ!」という大きな声が起こる。長らくみんなには我慢させてしまっていたからな。


「いつになったら、王都を狙うのかと思った者もいただろう。俺はゆっくりと力をためていた。シャーラ県はシヴィークが目を光らせてわずかのうちに見事に安定させた。もはや、危ぶむ要素もない! 今日、明日で敵の残党を滅ぼしてやるぞ!」


 といっても、メルヤ家の重臣団にはもはや奉じる者もいないため、投降する者が続出した。

 一方で、最後まで抵抗する者もいたが、きっちりと玉砕してもらった。死ぬ気であるのなら説得も詮無いことだ。

 残党はアントワーニ家の者と一緒に王都のほうに逃げていったらしい。ずっと逃げ続けないといけないというのも大変だな。


 二日後には俺は焼け落ちたドクト城の城下に入った。

 城跡に仮の小屋を建てて、ここの城将を決めることにした。後背を守る重要な役目だ。


 俺は居所にラヴィアラを呼んだ。

「できれば俺はここをお前に守ってもらいたいんだけど」

「アルスロッド様、ラヴィアラにわがままを言わせてください」


 ラヴィアラの顔を見たら、これはもう絶対に折れることはないなとすぐにわかった。


「ラヴィアラの言いたいことはだいたいわかるけど、一応教えてくれ」

「ラヴィアラは、アルスロッド様と王城に入城したいです! こんな記念すべき日は二度とないんですから!」

 やっぱりな。そう言うと思った。


「俺の目標は入城することじゃないぞ。お前も知ってるだろ」

 王になること、それが俺の望みだ。

 全部言う必要もない。


「それでも、ラヴィアラはアルスロッド様の横でこの喜びを分かち合いです。この城を守るのがいかに大事かはわかっていますけれど……」

 俺はため息をついた。

 実のところ、俺もラヴィアラと分かち合いたかった。


「親衛隊はせっかくだから全部連れていってやりたいしな。ノエン・ラウッドにやらせるか。あいつは攻めるより守るほうが得意だし」


 次に俺はケララを居所に呼んだ。


「王都に入るにあたって恥ずかしくないように、確認をとらせてくれ。皇太子殿下に恥をかかせるわけにもいかないからな」


「承知いたしました。まずは略奪を厳禁する旨を徹底するのが肝要ですね」

 俺はちょっと拍子抜けした。


「そんなのはどこの土地を奪った時でも同じだ。もっと威儀に関わることを教えてくれ」

「はっきりと申し上げますが、よろしいでしょうか?」


 少し俺は気おくれしそうになったが、「隠さずに言え」と伝えた。

 これでひどいダメ出しが来たら、さすがの俺でも落ち込むぞ。


「侯爵はすでにマウストでも威儀を意識なさってこられました。あの通りに進めば、なんら問題ないでしょう。もはや、侯爵は摂政として国を差配して誰も咎められないほどご立派です」

 俺はあっけにとられた。


「ケララ、俺はお前に調子のいいことを言う佞臣ねいしんの役割は期待してないぞ」

「私も佞臣になる勉強はしておりませんので、わかりかねます」


 そんな言葉を馬鹿正直にケララは言った。


「どんなことを言っても、お前へのちょうは薄れることはないぞ」

「くどいようですが、私は臣下として申しております。妻として申してはおりません」


 よく、こんなに表情を変えずにこんなにうれしいことを言ってくれるものだ。


「わかった。俺はお前を信頼している。ウソではないと信じよう」

「ありがとうございます。私も侯爵に変わらぬ忠節をお約束します」


 それでは周辺の領主に皇太子に供奉するように命令を送るぐらいで、ひとまずとどめるか。それで、誰が味方で誰が敵か明らかになる。


 俺は城南県に進軍した。

 何人かの領主がすぐに俺のところに馳せ参じた。


「ご足労ありがたいことだ。とはいえ、俺に頭を下げても意味がないぞ。礼は皇太子殿下に頼む。君たちは皇太子殿下に仕えるのだからな」


 城南県の最大勢力はサンティラ家だったが、すでに敵は戦意を喪失していたらしく、家臣や一族が続々と降ってきた。これではまともな戦争すら行えないだろう。


 もはや、防戦が不可能ということは王都でもわかっていたのか、王であるパッフス六世は一族たちとともに落ちていったという。今後も王を名乗り続けるだろうが、王都を留守にしているという時点で、印象は最悪だ。


 ハッセは無事に皇太子から王になれそうだな。

 なってもらわないと困る。


 俺はわずかな抵抗勢力を蹴散らして、城南県をあっさりと解放した。

 もう王都への道に障害物はなくなった。


 もう、戦争らしい戦争もなさそうだったので、マウストから正装用の衣服を取り寄せた。それなりに着飾って入城を果たしてやろう。


 俺もうれしいけど、それ以上にうれしい人間がいた。

 皇太子ハッセその人だ。


「すべては侯爵のおかげだ。なんと礼を言っていいかわからん……。ありがとう、ありがとう……」

 号泣されて俺も扱いに困った。


「皇太子殿下、感動するのは王都に入ってからでもよいのでは……」

「いや、ひとまず今の感謝の気持ちを伝えておこうと思ったのだ。もちろん、王都に入ってからも感謝はする。摂政の地位も約束しよう……」

 その言葉は、俺も聞き逃せなかった。


「摂政の地位、なにとぞよろしくお願いいたします。王国の平和のためにも、ぜひともその地位につきたいと考えておりますので」

「うむ、決して約束を違えることはしない」


 長かったが、ついにここまで来た。

 いや、そう長いというほどではないか。摂政まではそう苦労せずに来れたな。

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